【図解】DCモータとは?仕組みと構造、種類、ACモータとの違い
モータは回転によるトルクで、接続する機器を回転させる機械です。
モータは大きく分けて、バッテリーなどの直流電源で動くDCモータと、発電所から家庭に届く交流電源で動くACモータがあります。モータの使用範囲は、あらゆる業種、あらゆる機器に組み込まれていて、回転だけでなく、クランやカム、歯車を使用すれば、直線運動も可能で、プリンターの動作用などに使用されています。
本コラムではモータの基本原理やACモータとの違いを踏まえながら、DCモータについて解説します。
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目次
1.モータとは
モータができる以前は、機器を回転させるには、蒸気や水力の力をクランクやカムなどの装置を使って、回転力を得ていました。そして内燃機関が現れると、内燃によるピストン運動をクランクやカムなどを使って回転力としていました。これらの回転力は、工業用や自動車などの大型機械には使えても、家庭で使用することが難しいという弱点がありました。
次に回転の動力源として現れたのが、電気モータです。
電気モータは、工業用の大型の回転機械から、家庭の洗濯機のような小型の回転機械、さらにはロボットの細かい動作まで幅広く使用できるという大きなメリットがありました。
また、電気には、DC直流電源とAC交流電源があり、用途によって使い分けられています。
ここではモータについての基本事項を解説します。
(1) モータの基本的な仕組み
モータはAC(交流)、DC(直流)を含めいろいろな型式のものが作られていますが、モータが動作する基本原理は、どれもみな同じです。
図1は、モータの回転する原理についてのイメージ図です。N極とS極の永久磁石の間に電流が流れるコイルが置かれ、コイルが回転しています。(磁石を固定子、コイルを回転子といいます)
電流は、N極からS極に向かって流れています。コイルには、ブラシと整流子によって、通電して電気が流れます。コイルに電源を接続してコイルの導体に電気を流すことで、フレミングの左手の法則によって、コイルの上方向、または下方向に磁力が働きます。
図1のコイルの左側では上側に磁力が働き、コイルの右側では下側に磁力が働くため、コイルは時計方向に回転します。この磁力による回転を負荷に接続すれば、回転力の必要な機械の動作が可能となります。
しかし、もしコイルが90°の位置に来たときは、磁力の大きさと方向が逆向きになるため、回転が止まることになります。その場合は、90°の位置に来る前に電源を止めると、コイルは慣性力で回り続け90°を超えますが、90°を超えたところで電源を再投入すれば回転を継続します。
このようにコイルの位置を検出して、電源入り切りを加える回路を構成すれば、コイルは周り続けることになります。
(2) ACモータとDCモータの比較
ACモータとDCモータの簡単な比較をすると、次の表のようになります。
項目 | DCモータ | ACモータ |
電流種類 | 直流 | 交流 |
消費電力 | 少ない | 多い |
価格 | 安価 | 高価 |
騒音 | 小 | 大 |
使用範囲 | いろいろな機能があり、使用範囲が広い | 機能は限られているため、使用範囲も限られる |
2.DCモータとは
DCモータは直流電源で動くモータです。
直流は交流のように変化せず常に一定のため、DCモータは安定した回転が期待できます。
ここではDCモータについて、その種類や原理・構造を解説します。
(1) DCモータの種類
代表的なDCモータとして、ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータがあります。
ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータの比較は以下の通りです。
項目 | ブラシ付きDCモータ | ブラシレスDCモータ |
回転子 | 永久磁石 | コイル+鉄心 |
固定子 | コイル+鉄心 | 永久磁石 |
回転制御 | ブラシ+整流子 | 駆動回路+回転検出センサ |
電磁ノイズ | 発生する | 発生しない |
振動 | 有り | なし |
寿命 | 短い | 長い |
回転数 | 大きくない | 大きい |
以下でそれぞれについて解説します。
(2) ブラシ付きDCモータ
電源を回転子に流すためには、DC電源電流を接続するパーツが要ります。それが、整流子とブラシです。
整流子とブラシは必要なパーツである一方、以下のようなデメリットがあります。
・整流子とブラシは回転体に常に接触し摩耗に対する寿命が短いため、メンテナンスが定期に必要
・騒音や電気的ノイズの発生
図3は、ブラシ付きDCモータの原理と構造を紹介しています。
ブラシ付きDCモータの構造は、図3の左側の図で、固定子として磁石が固定され、回転子としてコイルがあります。また、図3の右側は、ブラシ付きDCモータの組立図のイメージです。
電源は、整流子からブラシを通して供給されます。DC電圧を調整することで、モータの速度を調整します。ブラシ付きのため、電気的ノイズの発生、ブラシや整流器の定期的なメンテナンスが必要です。
(3) ブラシレスDCモータ
ブラシレスDCモータは、DCモータから、ブラシをなくした構造のモータです。
ブラシで電源を供給するのではなく、電子回路でブラシに変わる電源を供給します。ブラシなしの構造であるため、ブラシ付きDCモータで解説したデメリットもありません。
図4は、ブラシレスDCモータのイメージ図です。
ブラシレスDCモータは、ブラシ付きの固定子の磁石と回転子のコイルを入れ替えた構造です。
電源はU,V,Wの三相電源を、直流電源を変換する回路で作りだして各固定子に供給しブラシレスを実現します。三相交流による回転性の揺らぎを改善して回転を正確にするため、ホール素子が使われます。ホール素子は、固定子のコイルの間に接続して、回転子の回転位置を検出して、回転性を維持します。
回転力と速度の関係は、ブラシ付きDCモータとほぼ同じ特性を示します。
ブラシがないため、騒音やのノイズの問題が無く、制御性の良い回転特性を示します。ハードディスクのようなIT機器の回転部として使用されるほか、家電製品にも使用されます。
DCモータについては以下の動画も参考になります。
引用:モーター制御基礎(2) ブラシ付きDCモーターとブラシレスDCモーターの違い
3.ACモータとは
ここでは、DCモータとの比較として、ACモータについて解説します。
(1) ACモータの分類
ACモータは、交流電源で作動するモータです。交流は直流(DC)とは異なり、一定周期で+と-が入れ替わります。回転速度を周波数に応じて一定にすることができません。
ACモータの種類を分類すると次のようになります。
➀ 整流子型モータ
DC用の直巻モータに交流をかけて回転させるモータです。
ただし、電磁誘導による熱が発生するため、鉄心を絶縁成層構造とする必要があります。
また、ブラシを用いますが、ブラシの経年劣化防ぐため常時使用は避けます。
電気掃除機や電動工具で利用されます。
② 同期型モータ
同期速度と回転速度が同じになる交流モータです。同期型モータは、テープレコーダやハイブリッドカーで使用されます。
次のようにいくつかの種類があります。
・ヒステリシスモータ
ヒステリシス特性を使って回転させます。振動や回転ムラがほとんどありません。
・インダクタンスモータ
固定子に流す電流周波数をロータに同期させて回転運動を行う交流モータです。
・リアクタンスモータ
誘導モータとして始動時に動かし、運転に入ると電源周波数に同期します。
③ 誘導型モータ(非同期モータ)
交流電源に直接接続しコイル周りに回転磁界を得ることで、回転子に誘導電流を生じさせて回転させます。
・かご形誘導モータ
回転子にかご型のロータを使用するモータです。かご型ロータとは、アルミニウムの電路からなるかご型の回転子です。
かご型誘導モータは、工業用などの大型モータを要する機器で、広く採用されています。
・巻線形誘導モータ
巻線形の回転子(ロータ)を使い、可変抵抗器を接続してモータ特性を変えます。
・単相誘導モータ
一般で使用する2線式の交流電源を接続したモータです。小型のモータで使用され、家庭用・小規模工場で広く使われます。
(2) 三相式誘導モータの動作
ACモータの中でも高頻度で使用されるものに、三相式誘導モータがあります。ここでは三相式誘導モータの作動原理について紹介します。
三相式誘導モータの電源は、交流三相電源です。
図2は、誘導モータの動作についてのイメージ図です。
固定子の導体部は、交流三相のU相、V相、W相に接続されています。
図の導体部の二重丸の部分は、紙面の下方から上方に向かう流れ、×印部分は、紙面の上方から下方に向かう流れを表しています。
U,V,W相は、グラフ図が示すように、それぞれ120°ずれています。
合成磁界方向が、時間とともに左側に向きを変えて、1サイクル電流が流れると、磁界方向は元の方向に戻ります。交流のグラフを時間的に縦棒で切っていますが、このような時間の流れとともに、磁界の方向が変わってきます。磁界方向の移動の様子は、磁界が時計方向に回転していることを表しています。したがって、磁界と導体の電流によって発生する電磁力も、磁界の回転に合わせて回転することになり、これは、回転子が回転していることを表します。
図2の右側にある図は、かご形三相誘導モータのイメージ図を紹介しています。
また、ACモータについては、次の記事を参考にしてください。
4.DCモータの活用例
ここではDCモータが活用される機器を紹介します。
(1) DCモータの活用
DCモータ使用先については、以下のようにまとめられます。
業種 | 主なDCモータの使用機器 | 備考 |
家電機器 | 小型扇風機、ラジコン、シェーバー、オーディオ機器 | 低電圧駆動です。 |
自動車 | パワーシート、パワーウィンドウ、ワイパ | 他多数。 |
産業機械 | 産業ロボットのサーボモータ、建設機械、農業機器 | ロボットについては(2)で詳述します。 |
医療機器 | 呼吸補助装置・酸素濃縮器のファン | - |
電気機器 | CD-ROM駆動、HDD駆動、コンピュータの冷却ファン、 | ノイズが起きないようブラシレスが採用されます。 |
(2) ロボットに対するモータの活用
ここではDCモータの活用例の中でも、ロボットに対する活用について説明します。
産業ロボットでは、複数のアーム部、関節部、走向部などを電気駆動装置で制御しています。そしてそれぞれの動作部をモーターで駆動します。
ロボットの駆動には、次のモータが使用され制御されます。
・ブラシレスDCモータ
・サーボモータ
・ステッピングモータ
以下はブラシレスDCモータ及びサーボモータをロボットに使用した場合のメリットとデメリットです。
利点 | 欠点 | |
ブラシレスDCモータ | ・安価 ・連続使用性 ・安定したトルク ・異なる速度での作業に対応 |
・駆動回路が必要で高価 ・ムラのあるトルク ・起動時の速度制御性の悪さ |
サーボモータ | ・高速高精度での位置決め ・円滑な回転力 ・安定したトルクが優れる ・ロボットのフィードバック制御に高速で安定して対応 |
・高価である |
産業ロボットでは、ロボット単体以外にも、関連周辺機器の動作のモータを使用するため、経済性と安全性、求められる精度などを考慮して、使用するモータを決定します。
また、ステッピングモータについては以下の記事を参考にして下ください。
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