【図解】非破壊検査とは?欠陥を読み当てる技術と代表メーカー5選
目次
1.はじめに
製品を検査することは、製造を担当する人にとって、品質が確保されているかを確認する、重要な工程作業の一つです。
検査するする人にとって、異物や傷などの欠陥は、目で見える欠陥だけとは限りません。
しかし、目で見えないからと言って、少し削って確認しようとすることもできません。
このときに有効な検査手段が、非破壊検査です。
私たちにとって、最も身近な非破壊検査は、健康診断での検査でしょう。胸のレントゲン、お腹の超音波検査など、健康の安心のためには欠かせない診断技術です。
非破壊検査の原点をたどれば、1895年にレントゲンが、X線が光を通さない不透明なものでも透過する、と発見したことに始まります。
非破壊検査は、日本の重厚産業を支える鉄鋼機器の、溶接線欠陥を見つけるために発展を遂げ、現在ではあらゆる産業で使用されています。
このコラムでは、非破壊検査とは何か?について、ご紹介します。
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2.製造の検査とは
図1では、製品の製造から出荷までの工程と、工程ごとに行われる検査のイメージを紹介します。
図1の下側に、製品ができるまでの工程検査を、上側には、製品の安全や故障時の検査の種類を示しています。
- 受入検査
材料入庫時に仕様と外観を検査します。 - 半製品検査
材料から加工し、組み立・製品とする前の中間品の検査で、寸法や外観など設計仕様どおりかを検査します。 - 製品検査
半製品を組立てて製品としたときの検査で、性能や構造を検査します。 - 出荷前検査
表示や印刷部分の検査と、梱包内の製品個数の検査を行います。 - 抜取検査
中間品や製品が、強度的仕様を満足するか、漏れの要因はないかの検査です。 - 故障解析
客先からのクレームなどによって、故障の要因を探る必要があると判断されたときに行う検査です。電子部品や基板でも、破壊まで行って原因調査を行います。
工程検査は全数検査で行われます。
それに対し、抜取検査は、製品を壊す可能性があるため、製品製造数の何%のように、設計上、合理的数量で行われます。
3.非破壊検査とは
(1)非破壊検査と破壊検査の違い
図2では、破壊検査と非破壊検査についてご紹介します。
中身のある密閉容器の中に、ある塊が外観検査で分かったとき、それが内容物がゲル状になったものか、異物かは、目視では確認できません。
それが異物かどうかを確認するには、容器を半分に切断することで、異物かどうかの判断ができます。
これは、一種の破壊検査です。
一方、X線を透過して外観検査を行うと、X線画像として異物の形がはっきりと写し出され、異物かどうかの確認ができます。
これが、非破壊検査です。
(2)製造品検査の例
製品が作られ出荷されるまでに、どのような検査が具体的に行われるかについて、見てみましょう。
ポリエチレンびんが製造されるときの検査について、JIS-Z-1703の規格を表1で紹介します。
表1 ポリエチレンびん試験規格
試験項目 | 試験内容 | 試験方法 |
外観検査 | 内外面にきず及びひびがないこと。
あわ,異物混入などの使用上有害な欠点がないこと。 |
全数検査 |
形状検査 | びんの形状は,図 とすること。 | 全数検査 |
漏れ試験 | 漏らないこと | 抜取検査 |
落下試験 | 破損並びにせんの気密性を損しないこと。 | 抜取検査 |
煮沸試験 | 内容量の変化が 6%以内であること。 | 抜取検査 |
ストレスクラッキング試験 | 協定した値以上であること。 | 抜取検査 |
せんの破損試験 | 破損しないこと。 | 抜取検査 |
寸法検査 | 寸法は,図 と表 とすること。 | 抜取検査 |
表1の検査は、材料受入から出荷までに工程の段階ごとに行われる検査です。
表1の検査項目のうち、外観検査と形状検査や寸法検査は、非破壊検査と言えます。
一方、漏れ試験や落下試験など抜取で行う検査は、壊れてもよいという前提での検査ですので、破壊検査と言ってもよいでしょう。
4.非破壊検査の手法
(1)非破壊検査の手法比較
非破壊検査の代表的な手法について、表2で紹介します。ここでの紹介する検査以外にも、多くの非破壊検査があります。
表2 非破壊検査の比較
検査方法 | 原理 | 検出する欠陥 | 特徴 |
放射線透過検査 | X線を透過させ、異物があると透過量が少なくなる。 | ブローホール、溶け込み不良、内部欠陥、容器のレベル、異物、空隙 | き裂があると、透過量が多くなる。
フィルムで恒久的に記録できる。 |
超音波探傷検査 | 超音波を入力させると、異物、欠陥部で反射波を生じる。 | 溶け込み不良、内部欠陥、巣、厚さ、結合不足 | 装置が小型軽量化できる。 |
浸透探傷検査 | 浸透液を浸透させると、欠陥部で浸透し、それを現像する。 | 割れ、ピンホール、線状キズ、表面開口 | 装置が小型軽量化できる。 |
磁粉探傷検査 | 検査体を磁化すると、欠陥部で漏れ磁束が生じ、磁粉を付着させる。 | 割れ、線状キズ、表面欠陥 | 装置が小型軽量化できる。
強磁性体材料に適用でき、ステンレス鋼・アルミには適用できない。 |
赤外線検査 | 外部から熱を加えて励起し、検査体の温度変化を検出します。 | ホットスポット、接着不良、熱伝達状況 | サーモグラフィは、検査体が発する熱分布を測定する。 |
渦電流探傷検査 | 交流を流したコイルを試験片に近づけると、試験体に渦電流が流れ、欠陥部ではコイルのインピーダンスが変化する。 | 割れ、線状キズ、表面欠陥 | 検査速度が速く、消耗材の費用が少なく済む。 |
表1で紹介した非破壊検査の中のいくつかを、図3~図5で紹介します。
(2)非破壊検査の手法1-目視とRT
図3で紹介する非破壊検査は、目視検査と、X線検査(RT)です。
図3の左図は、目視検査です。
目視検査は、人の目で行う検査ですが、目では不十分のときは、ルーペや顕微鏡を使います。必要に応じてファイバースコープも有効な道具です。
図3の右図は、X線による放射線透過検査です。
図のように検査体内部に異物があると、異物周辺に比べX線の透過量が減少するため、異物の形状が分かります。
(3)非破壊検査の手法2-UTと赤外線
図4で紹介する非破壊検査は、超音波検査(UT)と、赤外線検査です。
図4左図は、超音波検査です。
図のように試験片内部に空隙の欠陥があると、超音波の大部分が反射され、その周囲の反射波と比べて空僻の形状が分かります。
図4右側は、赤外線によるワークの温度分布を検査している図です。
熱のある検査物体からは、その温度に応じた赤外線が発せられ、赤外線カメラでその分布を測定します。
(4)非破壊検査の手法3-PTとMT
図5で紹介する非破壊検査は、浸透探傷試験(PT)と、磁気探傷検査(MT)です。
図5左図は、浸透探傷検査で、一般にPT検査と言われています。
検査物体の亀裂欠陥部に浸透液を吹きかけ、全体をふき取った後に、現像液で現像させると、欠陥部に浸透した液が赤く変化し、欠陥部を浮きだたすことができます。
図5右図は、磁気探傷検査で、MT検査と言われます。
電磁石で検査物体を磁化させた後に、欠陥部に磁粉をかけると、欠陥部から出る漏洩磁束に、磁粉が付着し、欠陥部が拡大されて磁粉模様が現れ、欠陥を観察できます。
5.非破壊検査を扱うメーカー5選
この章では、会社が有する非破壊検査の方式について紹介します。Webページを合わせて紹介していますので、詳細はそのページで確認してください。
(1)株式会社FAプロダクツ
【特徴】
FAプロダクツ社は、年間200台以上の装置・ロボット等の導入実績を持つ、関東最大級のロボットSIerです。
一貫生産体制をとっているため、検査装置のメーカー選定から検査装置導入、メンテナンスまでワンストップで対応。
さまざまな業種での製造ライン構築とともに、多数の実績とノウハウを持ち合わせており、製造品や製造条件から最適な検査装置導入をご提案します。
また、同社の「画処ラボ」では、画像処理を用いた外観検査装置の導入に特化し、ご相談を受け付けています。従来は目視での官能検査に頼らざるを得なかった工程の自動化をご検討の際などにご活用ください。
業界最大級の画像処理検証施設を開設!
「画処ラボ」ではルールベースやAIの画像処理を専門エンジニアが検証。ご相談から装置制作まで一貫対応します。
【所在地】
茨城県土浦市卸町2丁目13-3
TEL.050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
https://jss1.jp/
【営業品目】
- 産業用ロボット
- 生産設備合理化・省力化の設計及び製作
- 基板電気チェッカーや貼合・折曲など
- 治具の設計・製作
【実績】
NM社(電子部品の製造販売)、HS製作所(情報通信・社会産業・電子装置・建設機械・高機能材料・生活の各システム製造販売)、TT社(ショッピングセンターなどリテール事業)、SM社(自動制御機器の製造・販売)、OR社(自動車安全システムの製造販売)
(2)原電子測器株式会社
【所在地】
埼玉県戸田市美女木東2丁目2番9号
TEL:048-449-0911(代表)
【特徴】
https://www.eddio.co.jp/product/karyu_roll/
下図は、原電子測器社の、ロール用渦流探傷装置で、客先のロール研削装置に、表面きず探傷用センサーを取り付け、研削部の動きと同期し、ロール表面のきずを探傷する装置です。
この装置の特徴は、ロールきずの管理ができること、探傷諸元を保存できること、探傷波形保存と再生ができることなどです。
図は、グラインダーの上部に設置した場合の、システムの組み込み例です。
(3)マークテック株式会社
【所在地】
東京都大田区大森西四丁目17番35号
TEL:(03)3762-4451
【特徴】
http://www.marktec.co.jp/product/ndt/category/tabid/106/pdid/104/catid/68/Default.aspx
下図は、マークテック社の自動車部品全自動磁粉探傷装置です。画像処理技術を用いて、自動車部品検査の定量的評価と自動判定を行います。
この装置の特徴は、磁粉液評価装置で磁粉液を管理て探傷性能を一定にできること、合否判定基準を定量化したこと、三極コイル採用により走間・非接触で磁化でき、検査工数が低減できることです。
図の上段は、全自動磁粉探傷装置、下段は、装置の構成例です。
(4)ダイヤ電子応用株式会社
【所在地】
大阪市淀川区西中島3-5-2 新居第10ビル2F
TEL:06-6101-1013
【特徴】
https://www.dia-elec.com/products/jidousha_products/xsenibutsu.html
下図は、ダイヤ電子応用社のX線自動異物検査装置です。
部品に混入した異物を、X線透過試験法で検出し、異物混入品を自動排出します。
インライン型は、ワークをベルトコンベア上に自動投入でき、オフライン型は、ワークをパーツフィーダーに投入します。
検出性能が0.3mm以上の異物検出、サイクルタイムが5秒以上の処理能力が、特徴です。
(5)株式会社KJTD
【所在地】
東京都豊島区東池袋3丁目1番1号 サンシャイン60 45階
TEL:(03)5957-7367(代)
【特徴】
https://www.kjtd.co.jp/products/sds_win/index.html
下図は、KJTD社のフルデジタル超音波探傷映像化装置 SDSⅢシリーズです。
この装置は、超音波探傷技術と映像処理技術とを組み合わせた超音波探傷映像化装置です。
探傷走査中は、リアルタイムでCまたはB、Cスコープを表示し、走査終了後に解析と評価を行います。KJTD社独自のMURAI処理法による、2値化・2色・16階調カラー表示・256階調カラーグラデーション表示で欠陥映像が得られることが、特徴です。
図の上段左側が、SDSⅢで、上段左側が、鋼材中のボイド(赤)と介在物(青)のサンプル映像です。
図の下段は、SDSが有する豊富な走査パターンを表しています。
6.非破壊検査導入に関するご相談はFAプロダクツへ
非破壊検査は、例えば、ボイラー・化学プラント・造船・大口径配管などの溶接欠陥を見つけるために使われ始めました。
その技術は放射線、超音波、磁気など、使用する環境に応じて多方面化し、電子部品やシリコンウェーハのような微細な欠陥を見つけるまでに応用範囲を拡大しています。
非破壊検査は、コンピュータの高性能化から画像処理の高度化に応じ、非破壊検査結果の診断と判定を、自動で行うまでにシステム化が進んできています。
そして、ディープラーニングによる画像診断技術を取り入れて、非破壊検査の診断を人のそれより正確なものとする取り組みが始まっています。
しかし、どのように検査技術が高度化しようと、検査は目視による外観検査から始まっています。非破壊検査による診断も、人による外観検査の延長に過ぎません。
したがって、人による外観検査の技量が、ディープラーニングによる非破壊検査診断のレベルを左右すると言って良いのではないでしょうか。
非破壊検査の技術や装置を開発しているメーカーは、いずれも過去の診断技術をベースとして、現在の高度な非破壊検査装置を生み出しています。
その技術は、非破壊検査技術のノウハウの詰め合わせ、と言ってもよいくらいの完成度があります。
検査をより精度が高くしたい、見つけ難いものを見つけたい、という悩みがあれば、FAプロダクツまでお気軽にご相談ください。
また、画像処理を活用した外観検査自動化をご検討の際は、画処ラボもご活用頂けます。
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