産業用PCが実現するDX!製造設備のスマート化でのメリットを紹介
これまでの記事で、製造設備のスマート化に関する世界の潮流と日本の現状が大きく異なるということを紹介し、世界で産業用PCが導入される理由について考えてきました。
また、前回の記事では日本に産業用PCが導入されない理由を詳しく分析し、既存のやり方を変えられない製造現場の風土や、IT人材の欠如といった課題があることをご紹介しました。
日本の製造業が国際的な競争力を維持するためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)によってスマートファクトリーを実現し、工場の生産性を向上させることが重要となってきます。
最終回となる本記事では、産業用PCが実現するDXということで、製造設備のスマート化の具体的イメージと、メリットについてご紹介していきます。
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こちらの記事は連載です。ほかの記事は、下記よりご覧ください。
連載【日本の製造業における産業用PC導入の現状と課題】 |
目次
1.多品種生産ラインの構築
(1)多品種少量生産の要求や激しい需要変動の時代
ひと昔前のものづくりは、少品種大量生産が主流であり同じ製品を大量に作って売ることで、市場の要求に応えていました。しかし、今では顧客ニーズの多様化に伴って製品が多種多様になり、多品種少量生産によって個々の顧客に合わせた製品を生産することが必要不可欠となりつつあります。
また、社会環境や顧客ニーズの変化が読みにくく需要変動が激しい時代にもなっており、工場は需要に合わせた生産体制を構築しなければ、余剰在庫を抱えてしまったり、逆に生産が追いつかずに機会損失をしてしまうことになりかねません。
そのような状況の中では、ある特定の製品しか製造ができなかったり、生産量を柔軟に変えられない生産ラインはリスクにしかなりません。これからの工場では、「生産量可変・生産変更がスピーディ・多様な製品種に対応可能」な生産ラインの構築が求められています。
(2)設備の変更を伴わない多品種生産ラインを構築
産業用PCには、プログラムの変更によって様々な生産設備と連携し、制御ができる汎用性の高さがあり、多関節ロボットアームや画像処理機器、AGV(無人搬送車)を組み合わせた生産ラインの構築が可能です。
産業用PCが現場に近い位置で生産設備からデータを収集・解析し、インターネットを通じて上位システムとも連携することによって生産状況を把握。得た情報を元に生産設備を制御することで、生産ラインを自律的に稼働させることができます。
ロボットアームと画像処理の組み合わせで複数の製品種の製造に対応でき、AGVによって搬送の自由度が高いため、設備の変更を伴わずに、多品種生産ができる生産ラインの構築が実現されるようになります。
実際に、オムロン・NTTドコモ・ノキアによる実証実験が行われるなどしており、5GやIoTなどの関連技術も含めて、有効性や可能性が研究されています。
出典:経済産業省 「2020年版ものづくり白書(PDF版)」第1章第3節 製造業の企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
(3)多品種生産ラインのメリット
このような多品種生産ラインが実現できることによるメリットは次のようなものです。
- 管理のための最小限の人員で、生産ラインを稼働できる
- 既存の設備を活用し、最小限の変更をするだけで生産品の変更や更新ができる
- 稼働時間を変えることで、需要変動にも柔軟に対応
- 生産設備からの継続的なデータ収集・解析による生産効率の向上
市場ニーズに柔軟に応えて生産ができるようになれば、工場の生産性は格段に向上します。産業用PCの導入は多品種生産ライン構築の第一歩となるでしょう。
2.工場の見える化・分析・予測
(1)製品設計から製造までを一括で見える化・分析
①エッジコンピューティングによる見える化
スマートファクトリーの実現のためには、各種生産設備やIoT機器からリアルタイムでデータを収集・分析して見える化をする必要があります。しかし、そのような膨大なデータを基幹となるサーバ一台に任せていては、負荷がかかってしまってリアルタイムで最適な処理の妨げになりかねません。
その懸念の解消のためには、各現場に近い位置でデータを収集・分析し、負荷を分散することでリアルタイム性を確保する「エッジコンピューティング」の技術が必要となっており、そのエッジコンピューティングの役目は産業用PCが担うことができます。
出典:総務省「平成の情報化に関する調査研究」
産業用PCの活用によってデータ収集と分析を行い、基幹システムを始めとする他の機器と連携することによって、工場全体の見える化が実現できるようになり、生産効率の改善やトラブルの防止といった様々なことへのデータの活用が可能です。
②デジタルツインによるシミュレーション
また、デジタルツインによるシミュレーション効果も期待されています。デジタルツインは、製造現場で集めたデータを元にして仮想空間に工場を再現することであり、仮想空間の工場でシミュレーションをすることで、最適化した結果を現実の生産設備にフィードバックさせることができます。
製品設計の段階でもこのシミュレーションを活用することで、製造がしやすかったり、不良がでにくい製品設計ができるようになるでしょう。
このように、製品設計から製造までの全てのフローを最適化できるようになります。
出典:国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究開発戦略センター 「革新的デジタルツイン」
(2)柔軟な生産計画の策定と予測
生産計画は、従来は生産計画担当者が過去の経験に基づいて計画を立てたり、変更を行っていました。しかし、需要変動が激しい現在では、頻繁な計画変動による調整が大変で非効率であるとともに、工場全体に精通した特定の人しか計画が立てられないという属人的な業務となっていました。
しかし、工場の見える化によって生産状況をリアルタイムで把握し、予測も正確に立てられるようになれば、需要変動に合わせた計画をAIが自動で策定して、製造現場へ指示を出すといったことも可能になります。
人の手で生産計画を立てるよりも遥かに効率がよく、特定の人に頼らずにすむため、業務改善に繋がります。
3.スマートファクトリーの実現
工場は、「多品種生産ラインの構築」や「工場の見える化・分析・予測」の章でご紹介したことを実現することによって、スマートファクトリー化が進行します。スマートファクトリーが実現すれば、どのようなメリットを工場が得られるのかを最後に紹介していきます。
(1)市場ニーズへ柔軟に応えられる
これからの変化の激しい時代における需要変動に対しても、「生産量可変・生産変更がスピーディ・多様な製品種に対応可能」な多品種生産ラインを持っていることによって柔軟に応えられるようになっているでしょう。
また、個々の顧客ニーズに合わせた多様な製品を生産できることになれば、顧客満足度も向上し、市場での競争力も高まっていくことが想定されます。
(2)工場全体の大幅な省人化、省力化
スマートファクトリー化によって、産業用PCで制御したロボットを始めとした、自律稼働する生産ラインが増加します。工場全体の大幅な省人化・省力化が進むことになるため、少子高齢化によってますます進む人材不足に対しても、対応できるようになるでしょう。
また、省人化・省力化と合わせて、工場の見える化・分析によって製造フローの継続的な改善が実施され、生産効率がアップすることによって製造コストを抑えることができます。海外製品の安いコストに対抗しつつ、顧客ニーズに合わせた製品ラインナップを揃えることによって国際的な競争力を維持することができます。
(3)ファウンドリ化・ファブレス化が進む
スマートファクトリーによって柔軟な生産計画や効率的な生産活動が実現されると、工場は大幅な省人化・省力化によって少ない人材で稼働できるようになります。また、多品種生産も手間なくできるようになるので、スマートファクトリーを実現した企業は、製造に特化する形でファウンドリ化していく可能性があります。
逆に、生産設備への投資をしなくてすむように製造は外部に委託し、自社は企画・開発に特化するといった流れで、ファブレス化する企業も多くなるかもしれません。
このように、各企業が自社の強い部分に特化する形で、柔軟に変化していくことが予想されます。
4.産業用PC導入に関するご相談はFAプロダクツへ
今回は、産業用PCが実現するDXということで、製造設備のスマート化の具体的イメージと、メリットについてご紹介してきました。
産業用PCの導入によって製造設備のスマート化が進み、それが工場全体のスマート化へと波及していきます。スマートファクトリー化といっても、何から進めればいいか分からないという方は、始めの一歩として、産業用PCの導入を検討されてはいかがでしょうか。
FAプロダクツは、関東最大級のロボットシステムインテグレータとして工場のスマートファクトリー化を支援しており、産業用PCの導入についてもコンサルティングにも対応しております。
産業用PCの導入をご検討の際は、お気軽にFAプロダクツへご相談ください。
連載【日本の製造業における産業用PC導入の現状と課題】 第一話:製造設備のスマート化、世界の「常識」と日本の「非常識」 第二話:世界で産業用PCが導入される理由は?スマートファクトリーとの関係を解説 第三話:日本に産業用PCが導入されない理由は?3つの視点から解説 |
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