工業用測定機器のキホン│特徴・種類・ありがちなトラブルを簡単解説
工業用測定機器は、その名のとおり、製品を正しく測定する機器です。製品のクオリティを保つ上で、重要なツールとも言えるでしょう。
この記事では、
- 検査部門に配属されたけど工業用測定機器にどのようなものがあるかわからない……
- 計測する際にどんなことに注意して計測をしたらいいのか、事前に把握しておきたい
そのような方に向けて、工業用測定機器の特徴やその種類、ありがちなトラブルをご紹介します。工業用測定機器の基本をおさえるための参考としてください。
FAプロダクツでは、工場設備のメンテナンス・リプレースにご対応いたします。
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目次
1.工業用測定機器とは?
工業用測定機器とは、製品が設計通りにできていることの確認を行うために使用する測定器のことです。長さを計測するスケールや重量を計測する質量計などは、一般的にも使用されますが、工業用ではより細かい値まで計測ができることや精度という点で異なります。
例えば、一般的なスケール(定規など)では最小単位が1mmですが、工業用のスケール(ノギスやマイクロメータ)では最小単位0.001mmまで単位表示があり、1/1000も細かく計測することが可能です。
2.工業用測定機器の特徴
工業用測定機器の代表的な特徴を4点挙げていきたいと思います。
(1)計測精度が高い
工業用測定器の特徴の一つとして、計測精度が高いことが挙げられます。
工業用では、必要とされるレンジや精度に合わせて設計されており、同じ計測機でも用途に合わせた選定が必要となります。例えば、マイクロメータなどを例に挙げると、計測精度を高めるために、スピンドルを採用して軸方向の送り量を細かくすることで最小単位が数ミクロンとなるような設計としています。
(2)定期的な校正が必要
工業用測定器は、ただ計測するだけでなく、その計測結果を保証する必要があります。そのため、定期的に校正を行うことにより、正しく計測できる状態にメンテナンスを行います。
また、計測機器は、日々の使用で少しずつ計測値がズレてくるため、この観点でも定期的に校正を行う必要があります。
(3)一般では使用しない様々な計測機器がある。
一般的な計測機器は、長さを測る場合には定規やメジャーが一般的ですが、工業用には、長さを測るものだけでも、ノギス、マイクロメータ、ダイヤルゲージ、ハイトゲージなど様々な種類があります。
計測部位もさまざまあることから、適切な用途に合わせた機器があります。一般では使われないさまざまな機器があることで、計測時に痒いところに手が届く機器があるのが工業用と一般用途での違いです。
(4)正しい計測環境で使用する必要がある。
工業用計測機器の特徴の最後として、計測環境を適切にする必要があります。特に計測を行う環境では、適切な温度と湿度を管理する必要があります。
温度を適切にする理由は、測定器が金属であることから温度により、測定器自体の長さが変化してしまい計測結果が変化してしまう可能性があります。そのため、計測機を扱う際には一定温度に保つ必要があります。
湿度を適切にする理由は、測定器の錆や腐食を防止するためです。測定器の端部に錆が発生することにより計測結果がズレてしまったり、内部での錆や腐食により破損してしまう可能性があります。
一般的には、計測室を専用に設置することが一般的で、JIS Z 8703 : 1983 に基づいた、標準状態で計測を行います。
3.工業用測定機器の種類
次に、工業用測定機器の具体例を計測するパラメータに合わせて紹介していきます。
(1)長さの測定
長さの計測を行う物だけでも、計測対象によって部位や状態が異なるため、さまざまな測定器があります。代表的な物を下表で紹介します。
<計測シーン> | <代表的な測定機器> |
硬いものの全長を測定 | ノギス、ダイヤルゲージ |
柔らかいものの厚さを測定 | ダイアルゲージ |
径を測定 | シリンダゲージ/リングゲージ |
高さを測定 | ハイトゲージ |
深さを測定 | デプスゲージ |
隙間を測定 | シックネスゲージ |
①ノギス
測定対象を先端の2枚の板で挟むことで計測します。気軽に手に持ちながら計測するような使い方が一般的です。
②マイクロメータ
測定対象を先端の2つのシャフトで挟むことで計測します。マイクロメータは台座に固定して計測する使い方が一般的です。
③ダイヤルゲージ
測定対象を先端の測定子で挟むことで計測します(ダイヤルシックネスゲージ)。一定の計測圧をかけた状態で計測ができることから、ゴムなどの柔らかい製品の計測で使用されます。また、旋盤などで、ワークに測定子を押し付けた状態で回転させて、円周触れの確認を行うなどの使われ方も頻度が高い使用方法です。
④シリンダゲージ/リングゲージ
測定対象と同一内径のリングゲージでシリンダゲージの0点合わせを行い、測定対象の内径をシリンダゲージでそのズレ量を計測します。高い精度での計測を求められるシリンダブロックの内径計測などで使用されます。
⑤ハイトゲージ
測定対象とハイトゲージを両方とも定盤の上に置き、基準からの測定対象高さを計測します。ダイヤルゲージを測定子としてハイトゲージを定盤の上でスライドさせて計測する等の使用方法もあります。
⑥デプスゲージ
測定対象にデプスゲージの基準面を当て、スケールを深さまで突き当てることで深さを計測します。
⑦シックネスゲージ(Feeler gauge)
計測したい隙間に差し込むことで計測します。複数の厚みを持ったゲージがセットになっているのが通常で、挿入できるゲージとできないゲージを見極めることで計測値とします。
(2)硬度の測定
工業用測定器には、製品の硬さを計測する測定器があります。製品の硬さは、機械強度を代用するパラメータとして扱われることが多く、設計要求として図面に記載されることも多いです。
一般的には硬さ試験機と呼ばれる測定機器を用いて計測を行われます。測定対象の材質や形状によって使い分けられます。
<硬さ試験の種類> | <使用例> |
ロックウェル硬さ(Hr) | 熱処理後の金属の硬さを計測する際に使用します。 |
ビッカース硬さ(Hv) | 薄く小さな部品の硬さ分布を計測する際などに使用します。 |
ブリネル硬さ(Hb) | 鋳造品などの粒子が粗く不均一な金属の硬さを計測する際に使用します。 |
ショア硬さ(Hs) | 検査室に持ち込むことが難しい大型の金属部品などの硬さ計測に使用します。 |
ヌープ硬さ | 脆い材料の硬さ計測を行う際に使用します。 |
(3)圧力の測定
工業用測定機器には、製品そのものを計測するだけでなく、特性等の計測を行う製品も多くあり、その一つに圧力計があります。工場配管の圧力をモニタリングするための圧力計から、試験セルでの圧力計測を行う圧力センサ等様々な種類があります。
(4)トルクの測定
単純な計測だけでなく、組み立てと同時に計測を行える機器もあります。その一つとしてトルク計があります。トルク計では、ボルトやナットの締結を行いながら締結トルクを計測することができます。
アセンブリ工程で図面に記載された締結トルクを保証する際に用いられたり、分解調査の際の締結力低下有無を確認する際に用いられます。
4.工業用測定機器においてありがちなトラブルや対応方法
工業用測定機器を使用する上で、ありがちなトラブルとその対処法について3つ解説していきたいと思います。
(1)校正頻度不適による計測値ズレ
よくありがちなトラブルとして、社内の測定機器の構成頻度が適切でないことによって、計測値がズレてしまうケースです。こう言ったケースは後から気付くケースが多く、計測ズレがどのタイミングから発生したのか遡及して確認する後戻りが発生します。
このようなことにならないように、測定機器の校正頻度をしっかりと決めておく必要があります。
(2)計測室温不適による計測値ズレ
製品が温度によって熱膨張または収縮し、計測結果がずれてしまうケースがあります。特に摺動部品などの数ミクロン程度の公差の製品では、室温による変化割合が大きいものとなります。
例えば、海外工場から出庫した部品の寸検結果が、日本で計測すると異なっているようなケースがあります。このようなケースでは、どちらの工場にも計測室はあったものの、日本と海外で計測室温が異なっていたことにより、計測結果がズレてしまうなどの要因があります。
このようなことが起こらないように計測環境の室温は一定に保ち、社内で思想を統一していく必要があります。
(3)ワークとの接触による損傷
測定機器を扱う際にワークと接触し、測定子が変形等の損傷が発生するトラブルもよくありがちです。
例えば、ポイントマイクロメータのような先端が細い測定機器で計測する際に、デジタルディスプレイを見ながらダイヤルを回すことに一生懸命になってしまい、先端が変形してしまうなどのトラブルがあります。
このようなトラブルが起こさないためには、計測作業を標準化し、問題の起きにくい作業手順を作っていくことが必要となります。
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【営業品目】
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5.工業用測定機器導入に関するご相談はFAプロダクツへ
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