故障事例から学ぶ設備の生産保全|進め方と対応ポイント
生産設備の故障が発生すれば、製品の品質保証はできず、顧客や取引先への安定供給の義務を果たすこともできません。設備故障は、設備はあるべき動作をしていない状態であり、設備劣化を起因とした「劣化故障」や、時に重大なトラブルに発展する「突発故障」などもあります。
ここでは、設備故障の事例を元に、故障発生時の基本的な対策として行う「生産保全」による対応方法や、設備故障を防ぐための必要な「ゼロトラブル」を目指す活動の詳細を説明します。
また、最後には「攻めの保全」を実施する製造メーカーの生産保全活動について紹介します。
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目次
1.よくある設備故障の事例
故障とは、何らかの問題が発生して設備が正常に稼働しない状況を指します。故障は、発生の仕方や原因によって大きく6に分けられます。
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(1)劣化故障
設備自体はもちろん、使用している部品が次第に劣化することで、機械性能が発揮できなくなる故障です。予防保全などによる定期検査で劣化の度合いを確認できるため、ある程度予知が可能な故障に該当します。
【劣化故障の事例】
- 冷却ホースの劣化による水漏れ
- エアタンクパッキンの劣化によるリーク
- 油圧ポンプのオイル劣化による流量低下
(2)突発故障
設備機器を通常運転している最中に突然発生する故障。定期検査などでは予知することが難しく、時には重大トラブルに発展します。
【突発故障の事例】
- 樹脂押出し機のスクリュー破損による機械停止
- 電動機軸受け破損による送電停止
- Vベルトの破断による搬送停止
(3)間欠故障
【間欠故障の事例】
- 社内LANの定期的な通信遮断
- 欠点検出器管理用パソコンのソフトエラー
- 搬送ロールの共振
(4)初期故障
設備導入後の比較的早い段階で、そもそもの設備機器の設計上の問題や、機器の設置環境が原因となって発生する故障です。
【初期故障の事例】
- 搬送ロール設置後の偏回転
- 空気圧調整弁の開閉不具合
- 電磁流量計が正常動作しない
- ダイアフラムポンプの送液脈動の発生
(5)偶発故障
初期故障と摩耗故障の間の期間で偶然発生する故障です。
設備機器の寿命を示す「バスタブ曲線」において、偶発故障期は安定稼働機に入っているため、摩耗故障期までの期間に機械設定の入力間違いといったヒューマンエラーなどでも、偶発故障が発生することもあります。
(6)摩耗故障
設備機器の駆動部の金属疲労や摩耗、老化によって時間が経過するほど悪化していく故障のことです。摩耗故障期に入ると、該当設備の寿命が近いという状態になります。
【初期故障の事例】
- Vベルトの摩耗劣化によるドロー異常
- チェーンの偏摩耗よる断裂
- 繰り返し軸受の損傷
- 印刷ロールのメッキ剥がれ
2.よくある設備故障への基本的な対応方法
設備故障への対応は、予防保全や事後保全などの、生産保全によって対応を行います。
基本的には、故障発生箇所の調査によって原因を特定して、該当部品の交換や補修などの対策を行いますが、予防保全などの場合は、定期的な設備診断を行って部品の交換などを行います。
(1)予防保全によって対応する故障
故障の中でも、定期的な検査によって故障が予知できるものに対しては、予防保全による診断や部品交換によって対応を行います。具体的には、「劣化故障」「間欠故障」「偶発故障」「摩耗故障」が予防保全によって対応する故障となります。
(2)事後保全によって対応する故障
故障発生前の予知が困難な「突発故障」に対しては、事後保全によって対応します。機械停止を伴うような重大故障の場合は、保全部門だけで対応せず生産部門や営業部門などとの協議が必要です。
突発故障の場合は、事前に交換部品の準備ができていないこともあり、故障状態が長引いてしまう恐れもあります。
突発故障による影響が軽微であれば、次の計画保全の時に部品を交換するなどして対処することもあります。
(3)改良保全によって対応する故障
改良保全とは、発生した故障を再発させないために行う生産保全のことであり、各故障の原因が判明すれば改良保全による対応が可能です。
「突発故障」のように、発生がイレギュラーな故障に関しては、改良保全によって完全に防止できるとは限りません。
(4)保全予防によって対応する故障
保全予防とは、これまでの設備運用や保守活動の結果から、新規設備を導入する際に事前に故障などのリスクを減らすために行う保全活動です。
「初期故障」を防ぐためには、保全予防によって設備の設計段階から注意を払い、機器の設置箇所に関しても事前検証が必要となります。
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3.設備故障を防ぐためのポイント
設備故障を防ぐためには、設備導入前や導入後における生産保全活動が非常に重要になります。
特に「TPM(全員参加の生産保全)」によって、生産に直接関わる部門以外の全員が、生産保全に対する意識を高める必要があります。
TPMとは、総合的設備管理(Total Productive Maintenance)を意味し、製造設備の保守管理において活動範囲を設備管理部門に限定せず、総合的に行うことで設備停止時間の減少を目指し、生産性の向上を計る活動です。
1971年に日本プラントメンテナンス協会(現在の日本プラントメンテナンス協会)により提唱されました。
(1)TPM活動による設備故障の防止
TPMは、生産活動に潜む「16大ロス」によって発生する災害や故障、品質トラブルを「ゼロ」にすることを目的として、各部門が横断的に関わる生産保全活動です。
つまり、工場で発生するロスの撲滅や未然防止のために、予防保全や事後保全、改良保全といった生産保全に、保全部門や生産部門以外の部門も関わっていくのです。
設備故障を防ぐ(ゼロにする)ためには、以下のような「TPMの8本柱」に沿って活動を行うことになります。
- 個別改善の実施:個別の設備ごとにロスを生む原因を改善する活動
- 自主保全の取り組み実施:自分が携わる設備の保全を自分で行う
- 計画保全の実施:予防保全や改良保全を計画的に行う
- 教育訓練システム構築:ロスを防ぐための知識やスキルの醸成
- 品質保全システム構築:不良品の発生を防止するための活動
- 設備・製品開発の体制構築:開発品の生産適用時にロスを減らすための活動
- 管理関節部門の保全活動:生産現場以外の部門も積極的に保全活動に参加する
- 安全・衛生のための環境づくり:ゼロ災や環境保全のための活動
(2)東レ株式会社の「攻めの保全」
東レ株式会社の東レエンジニアリングでは、「保全Innovation活動」と銘打った生産保全プロジェクトを立ち上げ、TPM活動を中心とした活動を行っています。TPM活動には、共通テーマとして「4Z活動(ゼロアクシデント、ゼロトラブル、ゼロクレーム、ゼロロス)」を掲げています。
「保全Innovation活動」は、大きく以下の3つの期間に分けて、保全能力の向上に努めています。
導入期:自社の生産保全の弱みを「なぜなぜ分析」で実施し、個人の技能レベルを評価。
成長期:TPM活動の開始により、部内での業務報告や保全教育訓練用のマニュアルを作成。
成熟期:重大故障やヒヤリハットのフォロー会議実施や予備品管理強化委員会を発足。教育訓練は引き続き実施。
TPM活動における重要項目である「全員参加」を推進するために、若手社員の中から活動リーダーを選出したり、毎月のフォローミーティングによって情報共有を徹底しています。
各人の自主保全スキルを高めるために、「一人KY」や「一人なぜなぜ分析」といった教育訓練を取り入れています。
生産保全において重要な保全ノウハウの伝承のために、解説付きの保全チェックリストを作成・共有し、年齢層の高い保全社員から若手まで保全スキルを高める活動を行っています。
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【営業品目】
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本社/事業所:〒299-0109 千葉県市原市千種2-16-40
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FAX 0436-63-6336
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5.設備の故障検査システムの導入に関するご相談はFAプロダクツへ
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