製造業で重要視されるDX│動向や推進するための条件を簡単解説!
近年、各業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が、なぜ進められているのか?
それは、DXを推進することにより、業務の利便性や生産性などの変革が起こり、市場の変化に対応した競争力などが維持できるからです。
DXとは、「IT技術やデジタル技術などを導入し、収集・分析したデータを土台としたビジネスの変革」を言います。
この記事では、製造業におけるDXの動向、DXが製造業で重要視されてきている理由を解説しています。その上で、製造業がDXを推進するために必要な条件や取り組み事例をまとめました。DXをスムーズに遂行するための術として、ぜひご参考ください。
なお、そもそもDXとは何か?については、下記で詳しくご紹介しています。DXの基本的な知識や進める手順を知りたい方は、ご覧になっていただければ幸いです。
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目次
1.製造業におけるDXの動向と重要視される理由
最初に、製造業におけるDXの動向と重要性について、見ていきましょう。
(1)製造業におけるDX動向
①COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大による影響
DXは現在、COVID-19(新型コロナウイルス感染症、以下コロナ)の感染拡大の影響を少なからず受けています。IDC Japan 株式会社が、DXを実施している国内企業の担当者200人に実施したアンケートの結果によれば、DXにコロナの影響でDXの予算や体制などが拡大しているという回答が26.0%でした。
コロナによって、これまでの生活様式や働き方などは大きく制限されています。接触が避けられない業界を除けば、リモート技術などの活用で、テレワーク業務やオンライン作業などの接触型から非接触型への移行が加速しています。デジタル技術を大いに活用する施策であるDXに影響が及ぶのは、自然な流れと言えるでしょう。
ちなみに、同アンケートによれば、コロナによってDXで取り組むプロジェクトの優先順位の変化や取捨選択が行われているが継続するという回答は23.5%、コロナ以前と同じように推進していくという回答は19.5%となっています。一方で、コロナによってDXの取り組みがストップしたという回答は14.0%、中止となったという回答は9.0%、まだ方針が決まっていないという回答は8.0%でした。コロナによる影響がDXの推進を全面的に後押ししているとは言い難いですが、少なくともコロナはDXのターニングポイントのひとつであることは間違いないでしょう。
参考:IDC・国内企業のデジタルトランスフォーメーション動向調査結果を発表
②製造業DXセミナー
現在、多くの会社・団体が、製造業におけるDXの実現をサポートするセミナーが開催しています。たとえば、YouTubeチャンネルの「AMANO SCOPE 天野眞也」では、工場のあるべき姿をテーマに、DXやスマートファクトリーに知見を持つ専門家同士がディスカッションをしながら、具体的な解説を行っています。
③製造業向けDX支援
セミナーのほかにも、DXへの取り組みが様々な要因で進まない問題を解決するために、ソリューションツールの提供、DXの戦略、企画立案サービスなどの製造業へ向けたDXの支援をする企業や団体があります。後ほど、おすすめの相談先をご紹介します。
(2)製造業でのDXが重要視される理由
今見てきたように、DXは着々とそのフィールドを広げており、注目度を高めています。では、そもそもなぜ製造業でのDXが重要視されているのでしょうか。理由はさまざまですが、大きく次の3つがあると考えられます。
①作業効率がアップし、売上が増加する
DXを推進する際、RPAの導入が一般的です。RPAとは、Robotic Process Automationの略で、これまで人間が行ってきた作業をロボットにさせる技術を指します。
ロボットは、的確に、かつ素早く作業できるのが最大の特徴です。トラブルを回避しながら作業効率を上げることができ、売上や利益の向上が目指せます。
②人員不足に対応できる
①に通ずるところですが、DX化が進めば省人化が可能です。今問題となっている少子高齢化による従業員の減少、高度な熟練技能者の高齢化による退職に対応できます。ロボットではまかないきれない作業に人的リソースを割くことで、生産能力の向上や新たなビジネスの創出も期待できます。
③不要なコストを削減できる
日本では、経営・人材・技術などの事業部門ごとの既存のシステムが、老朽化や複雑化によってブラックボックス化していることが問題視されています(いわゆるレガシー問題)。そのまま放置してしまうと、大きな技術的負債を抱えてしまい、業務基盤の維持などが困難になるとも言われています。しかし、DXを適切に進めて既存システムの刷新に成功すれば、短期間でメンテナンスが可能になり、ブラックボックスが起こりにくくなります。
2.製造業におけるDXを推進するための要件
製造業におけるDXは、製造業が抱える課題を解決する有効な策として注目されています。
しかし、経済産業省の『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』(以下、DXレポート)によれば、どのように推進するべきか具体策を模索する企業が多く、喫緊の課題となっています。
DXの推進において、最も大事なのは、経営トップによるDXの深い理解です。従来のビジネスを変革をさせるということは、すなわち仕事の仕方や働き方の変革、組織や人事の変革、これまでの企業文化や企業風土の変革が避けては通れないということ。経営トップが変革に強い責任をもって参加し、トップダウンでの意思決定ができなければ、さまざまな要因で抵抗にあった場合、DXは起こらないままで終わってしまいます。
それを踏まえた上で、DXを推進する上で何が必要なのか、DXレポートを参考にしながらご紹介します。
(1)情報資産や既存システムの全体像の把握
DXは、ただ新しいシステムを既存のシステムと入れ替えるだけでは不十分です。とりわけ、長年、同じシステムを利用していて、ブラックボックス化している可能性がある場合は注意しなければいけません。新たなシステムに入れ替えたとしても、同様にレガシー化する蓋然性が高いからです。
こうした事態を防ぐためには、まず自社の情報資産や既存システムの全体像の把握が必要になります。診断方法はさまざまですが、DXレポートでは、DXを推進する企業とITシステムの構築を請け負う企業双方から、客観的に行う仕組みが望ましいとされています。
(2)ITシステム導入の計画や意義の明確化
DXの推進によって、新たなITのシステムを導入する際、多額のコストや失敗のリスクが伴います。そのため中長期的な観点から、実現のシナリオを考えていかなければいけません。
また、新たなITシステムのレガシー化をいかに防ぐかも重要なポイントになります。経営陣は、DXに関わるすべての人にITシステム導入の意義を認識してもらうように働きかけるだけでなく、不要な機能の廃棄、共通プラットフォームの利用も積極的に行うことが求められます。
(3)ベンダー企業との良好な関係性の構築
ベンダー企業とは、新たなITシステムの構築を請け負う企業です。DXレポートによれば、DXは、DXを推進しようとする企業におけるIT人材の不足から、ベンダー企業が持つ技術を借りながら進めるのが一般的となっています。
ただ、日本では、経営層や最高情報責任者(CIO)の危機意識があまり高くないためか、ベンダー企業にシステム開発を丸投げするケースも珍しくありません。また、開発システムの不備や納期の遅れが生じた際に、ベンダー企業に責任を押し付けるケースも散見されます。こうした背景からかベンダー企業側も既存システムの大幅な変更の提案がしづらくなっていて、結局新システムのレガシー化が起こり、DXが失敗に終わるパターンもあるようです。
DXレポートでは、以上のような事態を防ぐために、双方の企業が目指すべき姿を確認し合い、これまでとは異なる関係性を構築することが大切としています。たとえば契約方法を見直したり(ウォーターフォール型の開発に関する契約にするのか、アジャイル開発に関する契約にするのか)、トラブルが起きたときには裁判外紛争解決手続(ADR)の活用を積極的に検討したりするなどです。
(4)DXが実行可能な人材の育成
前述のとおり、DXを推進する企業では、DXに必要な人材が不足しがちです。IT人材の確保・育成は、DX推進における的確な判断、ベンダー企業との良好な関係構築などの点から避けては通れないでしょう。DXレポートによれば、DXを推進する企業において求められる人材は、「CDO (Chief Digital Officer):システム刷新をビジネス変革につなげて経営改革を牽引できるトップ人材」「デジタルアーキテクト(仮称):業務内容にも精通しつつ IT で何ができるかを理解し、経営改革を IT システムに落とし込んで実現できる人材」などです。
(5)そのほかに気をつけたいこと
①デジタル化とDXを混同しない
デジタル化をすることがDXではありません。DXを進める上での手段としてデジタル化を行います。
例えば、生産性や効率を上げるためロボット導入し自動化を行ったとします。これまでの作業が「人からロボットに変わり、自動化された」ことがデジタル化であり、「ロボット導入で自動化されたことにより、生産性や効率が上がり、業績が伸びた」に変化することがDXと言えます。
②形だけで終わらない
DXは継続的な取り組みで、一過性の取り組みではないことに注意しましょう。例えば、デジタル技術を導入しデータの収集・分析・検証・評価を行い、社内外に事例紹介をしているが、実際の現場での実務は以前のままなどで、「DXに取り組みました」の「形だけ」になってしまうことなどです。
③リスクを恐れない
業務上でよくある、「失敗は許されず、成功しなければいけない」、「早期に成果を上げなければいけない」という前提でDXに取り組んでしまうことがあるようです。しかし、DXはビジネスを変革することが目的ですので、必ず成功する正解への道筋が明確ではありませんし、短期での成果も困難でしょう。また、人材・設備などのコスト面でリスクを感じる場合などは、DXによりビジネス変革することで創出される価値を予測し、照らし合せて検討してみましょう。
DXでは失敗のリスクやコストのリスクを恐れずに挑戦することが大切です。
3.製造業におけるDXの事例
続いて、IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「【動画公開】中小規模製造業が製造分野のDXを推進するために」を見ながら、DXの成功事例を3件ご紹介します。製造業におけるDXをどのように推進するか、具体的なイメージを掴むための参考としてください。
(1)事例1:株式会社IBUKI
①企業紹介
設立が1956年、従業員数は60名ほど(2020年10月)の、山形県で事業射出成型用金型の設計・製造・試作、金型製造のノウハウを活かした支援業務、システムの制作・支援、金型づくりの技術を活かしたビアグラスの製造・販売などを展開をしている企業になります。
②DX取り組みの動機と成果
経済環境などの変化で従業員数が激減し、経営再建を図るも、経営者が4度交代するなど苦戦を強いられていました。IT技術とIoT技術を導入・推進し、強みである金型製造の技術・技能を最大限に活用す、などの経営改革に取り組んだようです。
就業・営業管理などのIT系データと、技術伝承などの工場のOT系データをデジタル化し、自社のノウハウを外販する成果を上げました。グラフデータを活用した基幹システムの開発・運用により、情報の一括管理をすることでリアルタイムに情報を共有できる成果を上げました。
③事例動画
(2)事例2:株式会社 ウチダ製作所
①企業紹介
設立が1980年、従業員数は21名ほど(パート・役員含む)の、愛知県で金型設計・制作している企業になります。プレス加工、タップ加工などを一貫受注できる事が強みであり、主力製品のサッシブラケットは年産3,000万個です。
②DX取り組みの動機と成果
金型業界での繁忙期と閑散期の落差が大きいこと、金型受注量が安定していないことにより、経営が不安定になることで廃業が進み、メーカー減少による金型ユーザーの需要が賄い切れなくなっていました。同時に、金型設計の技術者不足の深刻さもありました。
IoT技術により、自社も含め、協力する同業他社と金型メーカのモデル変革に取り組んだようです。
IoTデバイスで、自社の稼働状況だけではなく、協力・連携している同業他社の稼働状況がリアルタイムで共有でき、各社で得意工程を担当した分散型の金型づくりという新しいビジネスモデルの成果を上げました。また、3次元CADを導入・使用したことで、精度の高い金型設計が可能になり、後工程の負担軽減、金型設計人材の若手育成などの成果を上げました。
③事例動画
(3)事例3:碌々産業株式会社
①企業紹介
設立が1903年、従業員数は160名ほどで、東京に本社を置き、静岡県など国内工場と海外の工場のグローバルな展開をしています。事業内容は、高精度加工機の設計・製造、各種専用機開発などの展開をしている企業になります。
②DX取り組みの動機と成果
納品した機械の頻繁に起こる故障や原因の把握が困難で、ダウンタイムが大きいことや、設備の減価償却期間が長期で、この間にビジネス環境が変化するなどで顧客との関係が途絶えてしまうことがありました。
設備の管理状態や稼働状況を把握するため、作業者の負担軽減を考慮するためなど、IoT技術でデータの収集を行い、クラウドで遠隔監視・共有ができる独自プラットフォームの開発・運用の成果を上げました。運用することで、顧客の使用する環境・方法をもとに、より良い製品の開発・設計が可能になる成果を上げました。
③事例動画
4.製造業がDXを実現するときにおすすめのメーカー・ロボットシステムインテグレータ3選
①株式会社FAプロダクツ
【特徴】
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業界最大級の画像処理検証施設を開設!
「画処ラボ」ではルールベースやAIの画像処理を専門エンジニアが検証。ご相談から装置制作まで一貫対応します。
【所在地】
茨城県土浦市卸町2丁目13-3
TEL.050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
https://jss1.jp/
【営業品目】
- 産業用ロボット
- 生産設備合理化・省力化の設計及び製作
- 基板電気チェッカーや貼合・折曲など
- 治具の設計・製作
【実績】
NM社(電子部品の製造販売)、HS製作所(情報通信・社会産業・電子装置・建設機械・高機能材料・生活の各システム製造販売)、TT社(ショッピングセンターなどリテール事業)、SM社(自動制御機器の製造・販売)、OR社(自動車安全システムの製造販売)
②三菱電気システムサービス株式会社
【特徴】
三菱電機システムサービス株式会社は、総合エンジニアリング企業のロボットシステムインテグレーターです。設備や製品に関するシステムの提案から設計、取り付け、保守、修理まで、総合的サービスを提供しています。
【所在地】
東京都世田谷区太子堂4-1-1
キャロットタワー20F
TEL.03-5431-7750(代表)
③株式会社ヘッドウォータース
【特徴】
株式会社ヘッドウォータースはロボットとAIアプリの開発や導入に力をいれているロボットシステムインテグレーターです。幅広い業種に対応できるAIを取り入れたシステムの開発から運用管理などを提供しています。
【所在地】
東京都新宿区新宿2-16-6
新宿イーストスクエアビル7F
TEL.03-5363-9361(代表)
5.製造業でのDX推進に関するご相談はFAプロダクツへ
ここまで、製造業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性を、近年の動向からなぜ重要視されてきているのかを紐解き、DXでの悩みや課題、DXを推進するためのやるべきことと手順、注意するポイントを事例紹介や、製造業での実体験・経験と、参考資料をもとに解説しました。DXに取り組むにあたってのイメージが掴めたのではないでしょうか。
FAプロダクツでは製造業におけるDXを推進するための支援を行っております。お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。
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