荷役作業自動化で物流改善 オススメ機械やリスク管理法解説
荷役とは、船舶やトラック、航空機などの輸送機器への積み込みや積み降ろし、入出庫など作業を総称したものです。物流という活動のなかでも中核を担う作業といえます。
当記事では荷役作業の概要や物流との関係性、荷役用のロボット、物流に潜むリスクと対処方法を解説します
目次
1.荷役とは?物流との関係性や職業について解説
結論からいえば、荷役作業は物流という大きな流れの中にある1セクションにあたります。以下では物流と荷役の関係性と、荷役作業の概要について解説します。
(1)荷役作業と物流の関係性について
まず物流とは、製品や農産物などの物資を生産地(供給者)から消費者(需要者)へ渡るまでの過程を意味します。具体的には次の業務です。
- 配送
- 荷役
- 梱包
- 郵送
- 配送の管理 など
上記の2つめに荷役作業があります。つまり関係性を挙げるのであれば、「物流という活動のなかの1つに荷役作業がある」というイメージです。
ちなみに、物流とよく似た意味のロジスティクスという言葉があります。こちらは物流のあらゆる工程を一元管理するという意味です。物流が一連の活動を表すなら、ロジスティクスは経営・営業視点で管理することになります。「在庫をどう管理するか」「生産量をどうコントロールするか」「コストは削減できるか」などをチェックし、需要と供給双方のニーズを合わせた効率的・戦略的なプロセスを目指します。
さらに広義的な意味としてあるのが、サプライチェーンという概念です。サプライチェーンは物流に加えて調達や製造、販売、消費などの一連の流れすべてを指します。サプライチェーンの一元管理はサプライチェーンマネジメント(SMC)です。
(2)荷役作業の大まかな流れ
荷役作業の大まかな作業は次のとおりです。
荷役作業の流れ | 概要 |
積み降ろし | 輸送車両などから荷物を降ろすこと |
運搬 | 荷物を移動させること |
積付け | パレットなどに荷物を積み上げること |
入庫 | 倉庫や物流センターに荷物を保管すること |
ピッキング | 保管してある荷物を必要分だけ取り出すこと |
仕分け | ピッキングした荷物をさらに出荷先・車両別などに分けること |
出庫 | 仕分けした荷物を実際に出荷すること |
トラックからの荷降ろしや倉庫での在庫管理、ピッキング作業など、日常生活でも耳にすることの多い作業になります。
(3)荷役作業に携わる運搬の仕事
厚生労働省が管轄する「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」の資料では、荷役作業に携わる運搬の仕事として以下の分類を行っています。
①港湾荷役作業員
港湾荷役作業員とは、港湾(船が入出港し、人の乗り降りやモノの積み降ろしなどを行う場所)にて船舶からの荷物の積み込み・積み降ろし・荷捌き室からの搬出などの作業に従事する人です。
②郵便集配員・電報配達員
郵便集配員・電報配達員とは、郵便物を集配する仕事に従事する人、および電報を配達する仕事に従事する人です。
③陸上荷役・運搬作業員
陸上荷役・運搬作業員とは、運送店や駅、工場、事業場、住宅などで荷物の積み降ろしや運搬の作業に従事する人です。さらに細かく運搬作業員・積卸作業員・引越し作業員に分けられます。
④倉庫作業員
倉庫作業員とは、倉庫にて荷物の搬入から積み降ろし、積み直し、梱包などの作業に従事する人です。なかでも冷蔵倉庫での作業に従事する場合は冷蔵倉庫作業員と呼ばれています。
⑤配達員
配達員とは、「貨物自動車の運転への従事」「郵便物を集配する仕事への従事」を除いた、以下の仕事を行う人のことです。
- 荷物や商品などを決められた場所に配達する人
- 取引先を巡回して荷物や商品を配達・回収する人
- 自動販売機に商品を補充し売上金を回収する人
さらに以下の4つに分類できます。
- 荷物を運ぶ「配達員」
- 取引先の事務所や個人宅を巡回する「ルート集配員」
- 定期購読者に新聞を配達する「新聞配達員」
- 自動販売機への商品・金銭補充や売上金の回収を行う「自動販売機商品補充員」
⑥荷造作業員
荷造作業員とは、輸送目的のためにダンボールや木箱を組み立てたり、モノを箱詰め・袋詰したりする人のことです。テープやバンドなどによる梱包作業に従事する場合も、荷造作業員に当てはまります。
2.荷役作業で用いられる機械・ロボット
荷役作業で用いられる機械やロボットは、「マテリアルハンドリング(マテハン)機器」が主流です。
マテリアルハンドリングとは、生産・物流拠点内の製品や原料などのすべての荷物の移動・運搬にかかわる取り扱いを指します。一方、マテリアルハンドリング機器は、それら物流作業の効率化・省力化のために活用される機械・ロボット・システムです。
2020年現在ではAI・IoTの技術を取り込んだ、高性能なマテハン機器も登場しています。さまざまな倉庫や工場で荷役作業の自動化に貢献し、物流技術の中心になっているのです。
以下では、荷役作業のときによく活用される機器をご紹介します。
(1)フォークリフト
フォークリフトとは、車両の前方に付いたツメ(フォーク)を利用し、さまざまな荷物やパレットなどの持ち上げ・移動・荷降ろしを行える産業車両です。
数百kgから1t以上の荷物まで持ち上げられるため、人力では運べない荷物も運搬できます。また前方のツメを上下にスライドさせることによって、通常では届かない高所への荷降ろしや荷物持ち上げも可能です。
ただし、運転するにはフォークリフト技能講習を受け、試験に合格しなければなりません。
(2)ソーターシステム
ソーターシステムとは、荷物を品種別や出荷先別など、目的に応じて分けていくための自動仕分機械です。ベルトコンベアなどから流れてきた荷物を、スライドショー式やパン式などさまざまな分岐機能によって、自動で仕分けしていきます。
(3)ピッキングシステム
ピッキングシステムとは、倉庫や工場内で保管されているモノのうち、指定条件に合うものを選んで取り出すピッキング作業を補助する機器です。
ピッキング作業には、指示どおりに保管しているモノを探し出す「摘み取り方式」と、モノをまとめて取り出してから荷捌き室などで細かく分ける「種まき方式」があります。品番や数値などを出荷指示書などをチェックしながら、必要な分だけ集めていきます。
ピッキングシステムは、バーコードやデジタル表示器、音声機能などを用いることで、ピッキングの効率化・間違い防止など実現したものです。
(4)自動倉庫
自動倉庫とは、入庫したモノを格納した後に、コンピュータを用いて在庫数や入出庫を管理するシステムのことです。パレット単位やバケット単位で保管できる上、コンピュータでの呼び出しによって自動的に目的のモノを取り出せます。
またスペースを立体的に使えるため、多くのモノを格納することが可能です。在庫状態も把握しやすいため、トレーサビリティ(モノの運搬・格納などの記録の追跡のしやすさ)にも優れます。ただし導入には相応のコストが必要です。
3.物流作業で考えるリスクとは
物流作業は重量物の持ち運びや輸送車両の運転、マテハン機器の操作など、肉体的疲労や操作ミスによるケガや事故のリスクが考えられます。
またマクロの視点で考えると、さまざまな業界や個人の生活に影響を及ぼす大きな業界です。取引先や消費者へ適切に荷物を供給するためにも、物流作業のリスクを事前に把握しておきましょう。
(1)死亡事故や障害事故のリスク
危険が伴う物流作業では、後遺症が残ったり命を落としたりする事故につながる可能性があります。たとえば次の事故です。
- トラックとフォークリフトに挟まれて死亡
- 貨物船で船倉に落下して死亡
- 重量物持ち上げ時に腰を痛めて腰椎椎間板ヘルニア発症
- コンベアに指を巻き込まれて切断 など
陸上貨物運送事業労働災害防止協会のデータによると、2020年1~10月に起きた「陸上貨物運送事業」「交通運輸事業」「港湾運送業」の死亡事故を合わせると74件でした。
なかでも陸上貨物運送事業はそのうち62件と、荷役作業にかかわる作業は死亡事故率が高めという結果になっています。荷役作業については厚生労働省も安全ガイドを作成するなど、リスクマネジメントの必要性を積極的に呼びかけ中です。
(2)交通事故のリスク
荷物の載せた輸送車両は、常に交通事故のリスクを背負っています。とくに輸送車両でもっとも多いのトラック関係の事故には気を配らなければなりません。公益社団法人全日本トラック協会の調査によると、事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数は、過去3年間220~250件で推移していて、1~2日に1回死亡者が出ている計算です。
また貨物への被害や流通全体の途切れ、会社の社会的な信用の低下などの影響を考えると、交通事故に関するリスクマネジメントも非常に重要であるといえるでしょう。
(3)災害関係のリスク
日本は地震や台風などの災害が多い国であるため、物流業界は災害リスクを常に頭に入れおく必要があります。災害によって物流が止まると、物流業界だけでなく生産者や製造会社、小売店などあらゆる業界に多大な悪影響を及ぼします。
災害が起きたときの交通網の確認や、作業員・物資の調達先などを事前にチェックしておきましょう。リスクを完全に0にすることは不可能ではあるものの、最小限に留めるための対策は打てるはずです。
(4)情報セキュリティのリスク
物流業界にもAI・IoTの技術導入や情報管理のシステム化が進んでいる一方、外部への情報漏えいやデータ消失などの情報セキュリティリスクが増えています。実際に2018年には5月には、海外から物流企業への大規模サイバー攻撃が発生するなどの事件も発生しました。日本政府は「物流分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」の制定・改定を行うなど対策を呼びかけています。
大切な顧客データや取引先の情報、社員の個人情報を守るためにも、リアルの作業だけでなくデジタル面でのリスクも考えておきましょう。
4.物流のリスクマネジメントの方法!作業改善はどう進める?
ここからは実際に、物流業界のリスクマネジメントの手法について解説します。どのように作業改善を進めればよいのかの参考にしてください。
(1)物流BCP(事業継続計画)の作成
BCPとは事業継続計画のことです。事業がテロや自然災害、システム障害などの危機的な状況下に陥ったとしても、被害を最小限に留めつつ早期復旧を行うための行動計画や経営指針を意味します。
そして物流BCPは物流の体制(サプライチェーン)にフォーカスしたものです。東日本大震災による大規模な物流機能停止を経験したときに、物流BCPの重要性が見直されました。
この物流BCPを作成することで、緊急時にどのように行動すればよいかの指針が定まります。具体的には次のとおりです。
- 物流機能が停止したときにどう回復させるのか(人員・交通網など)
- 他の取引先や協力会社とどう連携を取ればよいか
- 顧客へはどう対応すればよいのか
- 企業の立地や周辺の状況は把握しているか など
決して利益やビジネス拡大に貢献する分野ではありませんが、資金を投入してでも考慮すべき重要なリスクマネジメントといえます。
(2)リスクアセスメントの実施
リスクアセスメントとは、現場・職場に潜在的に潜む危険・有害性を洗い出してリスクの除去・低減を行うための一連の手法です。物流現場のリスクに対応するために、このリスクアセスメントの実施は有効になります。
おおまかな流れは次のとおりです。
リスクアセスメントの流れ | 例 |
現場の危険性や有害性を洗い出す | 仕分け用のコンベアと人の作業場が近い |
抽出したリスクの危険度・可能性を評価する | 巻き込まれて大ケガするリスクがあり、ヒヤリハット事例も多かった |
評価したリスクの具体的な措置を検討する | コンベアの移動は難しいため安全柵やカバーを設置する |
措置後の結果や効果を記録する | ヒヤリハット事例が減り安全性が向上したと評価 |
具体的にはマトリクスを用いたリスクの見積作業やリスクポイントの設定など、細かい手法が存在します。厚生労働省の「事例でわかるリスクアセスメント」や陸災防のホームページなどを参考にしてみてください。
(3)サプライチェーン全体の分析
物流は非常に広範囲に影響を与える活動です。自社システムや作業だけでなくサプライチェーン全体の分析を行い、影響範囲や前後工程の異常への対策法を把握しておきましょう。
とくにシステム関係やセキュリティについては見直しておかないと、自社だけでなく他社や顧客の情報漏洩につながります。取引先が中小企業の場合はセキリュティが万全でない可能性もあるため、取引前には必ず自社でもセキリュティチェックを行いましょう。
(4)物流関係の保険の加入
災害や事故に対する備えとして、物流業界向けの保険に加入するもリスクマネジメントの1つです。たとえば次の保険が存在します。
【損保ジャパン】
・物流総合保険
https://www.sompo-japan.co.jp/hinsurance/risk/property/pd/
【三井住友海上】
・外航貨物海上保険
・グローバル・サポートワン(外航貨物 物流包括保険)
・フルライン(国内貨物総合保険)
・サポートワン(新・物流包括保険) など
https://www.ms-ins.com/business/cargo/
【東京海上日動】
・内航貨物海上保険
・運送保険(一輸送)
・運賠ナビゲーター
・運送業者貨物賠償責任保険 など
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/marine_site/kamotsu/
5.荷役作業・物流関係におすすめのメーカー・ロボットシステムインテグレータ4選
ここからは荷役作業や物流関係の仕事へのソリューションを提供している、おすすめのメーカー・ロボットインテグレータを4つご紹介します。
①株式会社FAプロダクツ
【特徴】
FAプロダクツは年間200台もの実績がある関東最大級のロボットシステムインテグレーターです。一貫生産体制をとっており、設計から製造までをワンストップで対応。費用・時間にムダなく最適化を行うことができます。
また、お打ち合わせから原則1週間以内に「お見積りとポンチ絵」をご送付。
【ポンチ絵とお見積りのサンプル】
テキストやお電話だけでは伝わりづらいゴールイメージを共有し、スピード感を持った対応を心がけています。
また、同社の「画処ラボ」では、画像処理を用いた外観検査装置の導入に特化し、ご相談を受け付けています。従来は目視での官能検査に頼らざるを得なかった工程の自動化をご検討の際などにご活用ください。
業界最大級の画像処理検証施設を開設!
「画処ラボ」ではルールベースやAIの画像処理を専門エンジニアが検証。ご相談から装置制作まで一貫対応します。
【所在地】
茨城県土浦市卸町2丁目13-3
TEL.050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
https://jss1.jp/
【営業品目】
- 産業用ロボット
- 生産設備合理化・省力化の設計及び製作
- 基板電気チェッカーや貼合・折曲など
- 治具の設計・製作
【実績】
NM社(電子部品の製造販売)、HS製作所(情報通信・社会産業・電子装置・建設機械・高機能材料・生活の各システム製造販売)、TT社(ショッピングセンターなどリテール事業)、SM社(自動制御機器の製造・販売)、OR社(自動車安全システムの製造販売)
②富士電機株式会社
【特徴】
富士電機株式会社とは、1923年に創業されたパワー半導体・電子デバイス・発電プラント・食品流通を主に取り扱うメーカーです。物流ソリューションの豊富な実績とノウハウを活かして物流業務の課題に応えています。
倉庫運用管理システムやデジタルピッキングシステム、各種マテハン機器の制御システムなどの製品・技術を提供し、物流業務全体の生産性向上を提案しています。IoT分野への対応も可能です。
【所在地】
東京都品川区大崎一丁目11番2号 ゲートシティ大崎イーストタワー
TEL:03-5435-7111(代表)
https://www.fujielectric.co.jp/
③株式会社トヨコン
【特徴】
株式会社トヨコンとは、物流業務の改善のために包装資材、包装設計、省人化機器、倉庫管理、梱包業務、システム開発の6つのサービスを提供するメーカーです。物流に関するあらゆるソリューションを提供しています。
たとえばマテハン機器では、出荷包装業務に強みがあり包装の自動化機器や搬送設備、搬送ロボットを提案しています。
【所在地】
愛知県豊川市川花町2丁目62番地
TEL.0533-84-3191(代表)
FAX.0533-84-6577(代表)
https://www.toyocongroup.co.jp/
④株式会社豊田自動織機
【特徴】
株式会社豊田自動織機とは、フォークリフトを含めた4つの世界販売No.1シェアの部門を持つ、産業用車両・自動車・エレクトロニクス・物流メーカーです。
世界的なメーカーとなったトヨタ自動車の母体とも呼べる企業で、1926年創業以来の長い歴史と経験値を持ち合わせています。フォークリフトや自動倉庫を取り扱うのはトヨタL&Fという部門です。
【所在地】
愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地
TEL(本社):0566-22-2511
https://www.toyota-shokki.co.jp/index.html
6.荷役作業関係のロボット導入に関するご相談はFAプロダクツへ
荷役作業は物流という活動の一部であり、積み上げや降ろし、倉庫管理などの核を担っています。技術や人員などのコストもかかるほか、事故やケガのリスクあるなど、とくに作業の見直しや改善が求められる工程です。
もし荷役作業関係のロボットやシステム導入を検討している場合は、ぜひFAプロダクツへご相談ください。
関東最大級のロボットシステムインテグレーター 生産設備の設計から製造ならお任せください
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