製造業DX市場の成長に潜む日本企業の課題、その解決策とは
各業界におけるDXの推進が始まり、経済産業省などの省庁でもDXが進もうとしています。DXを行う上では、これまで構築して保守・運営してきた社内システムの変更などの課題がありますが、AIやIoTの技術発展に追従しながら自社サービスの質を向上させるためには、避けては通れません。
この記事では、DXの日本国内や海外の市場動向について、DX関連の調査会社の調査結果を元に説明し、DXを進める上で直面する課題やその解決指針について紹介します。
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目次
1.日本のDX市場規模や各業界の動向
DX(Digital Transformation)」の定義は、第3のプラットフォームであるクラウドやモビリティ、ビッグデータのなどのIT技術を活用して、新製品や新サービスなどの、これまでにない新しいビジネスモデルを創出して、他社に対する競争優位性を確立することとされています。
ここでは、日本のDX市場規模や各業界のこれからの市場展開予測について説明します。
(1)DXの日本国内市場展望
DXで具体的に活用される技術としては、人工知能(AI)やIoT、ロボティクスなどがあり、日本での市場規模も拡大してきています。
株式会社富士キメラ総研の2018年のプレスリリースによると、日本国内でのDX市場への投資金額は、2030年までに2017年の4.2倍にあたる2兆3,687億円にのぼると見られており、特に製造業や金融業、情報通信業での投資が進むと考えられています。
(引用:株式会社富士キメラ総研『2018デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望』)
(2)DXの業界別の市場予想
①製造業
製造業では、5G導入による「スマートファクトリー」化の更なる拡大や、保全業務の効率化といったサービタイゼーションへの投資が見込まれています。DXには、既存設備の切り替えや機能付与などが必要となるため、他業界に比べて投資額も高くなる傾向にあります。
②金融業
受付業務などのRPA導入による自動化などが進めらている状況であり、チャットボットなどの技術はもちろん、AIによる資産運用管理などのアプリ開発やセキュリティ関係への投資が増えると考えられます。
③情報通信業
他の業界へのDX導入に不可欠なのが、情報通信業の発達です。AIやIoTの技術向上はもちろん、ICTのインフラ整備やセキュリティ強化への投資が必要となります。
④交通・運輸業
ドライブレコーダによる運転解析などの技術への投資が既に進んでいます。また、AIの活用による自動運転技術やビッグデータの活用によって、新しい配送・配車サービスの開発にもつながるでしょう。
⑤流通業
流通業界では、店舗の接客自動化や商品のRFID管理・自動搬送技術、新しい顧客価値創出のためのサービス開発などへの投資が増加するとされています。
⑥医療・介護
患者情報のデータ化などが進み、看護師等の業務負担軽減やサービス向上が進むでしょう。5Gの普及による遠隔での診断や治療といった技術改革も期待されます。
2.DXの海外市場動向と日本の課題
前章では、日本国内のDX市場は、年月を追うごとに加速的に成長することを見てきました。
しかし、世界と比較すると、実は日本は対応が必ずしも早いわけではありません。世界のDX市場を確認したのちに、日本がどんな点でDX化が遅れているのか、乗り越えるべき課題は何かについてご紹介しましょう。
(1)世界のDX市場
2019年10月の「IDC(International Data Corporation)」によるDX関連の市場調査報告では、2020年から2030年の間にDX関連の世界的な投資額は7.4兆ドルにのぼると予想されています。同報告では、2023年までのDXによる10の市場予測についても記載されていますが、ここでは4つほど抜粋して紹介します。
- DXに対応しない企業は新規参入のDX対応企業によって淘汰される
- AI活用により業務変革できた企業は競合よりも50%速く顧客などに対応できるようになる
- DXに関連するセキュリティ向上に65%の企業が投資し、老朽化したシステムが無くなっていく
- DXとAI関連技術への投資は、2023年までに2,650億ドル以上に達する
(2)日本と米国企業のIT投資の違い
日本企業では、システムの保守・運用などの業務効率化やコスト削減といった、既存のシステムを守る投資に注力する傾向にあります。対して米国では、IT技術を活用した新規サービスの開発や市場調査など、ビジネスモデルの構築に向けた投資が主体となっています。そのため、どちらかというと攻めのIT投資となるDX推進に関しては、経営戦略の設定などの点で、日本が米国等に比べて対応が遅れていると考えられます。
(3)日本のDX推進における課題
①経営層のコミットの問題
日本でもDX推進によって、新しいビジネスモデルを展開することの重要性を理解した経営者は多いでしょう。ただ、ユーザ側の企業にとっては、従来のシステムからの切り替え負担などもあり、企業内での反対があるのも事実です。そのため、経営層がDXによる経営改革が経営戦略上でも重要であることを明確にした上で、推進をコミットしなければいけません。
②既存システムがDX推進を妨げている
日本のDX推進を妨げている要因の一つに、企業のITシステムのレガシーシステム化があります。レガシーシステムとは、既存システムの技術面での老朽化や、追加や書き換えによる肥大・複雑化などにより、運用・保守なども含めたコストが高くなっているシステムのことです。日本の約8割の企業が、自社にレガシーシステムが存在しているというレポートもあり、避けては通れない課題となっています。
(引用:『DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』 P.6)
レガシーシステムがあることによって、DXを推進するための新規技術とのデータ連携が困難になったり、複雑化しているシステムの調査に時間が掛かかるといった技術面のデメリットもあります。また、これまでシステム開発を行ってきた人材の定年退職等により、レガシーシステムのノウハウ継承がなされておらず、技術がブラックボックス化されてしまっているといった問題も内包しています。
これら、レガシーシステムによる影響は「2025年の崖」とも呼ばれており、経済損失は最大で年12兆円にのぼると言われています。
③IT技術者の不足
日本では、少子高齢化の影響もあって、DXに関連するIT技術等のスキルを持った人材の不足も課題となっています。特に、日本企業ではITシステム導入時にベンダー企業の人材に頼る傾向があるため、ユーザ側の人材不足が深刻です。
また、企業のIT投資のうち、実に8割以上が既存システムの運用や保守に割り当てられており、DXに向けた取り組みを行える人材育成に注力できないことも問題視されています。
3.DX推進の課題解決に必要なこと
日本の企業は、DXを推進する上で、一筋縄ではいかない問題を抱えています。では、そうした企業は、どのような対応をしたらいいのでしょうか。ここで、主な対策を3つご提示します。
(1)DXに必要な人材の明確化
DXを進める上では、ベンダー側とユーザ側のそれぞれが、以下のような意識やスキルをもった人材を確保および育成することが重要となります。
①ベンダー企業に必要なDX人材
- 受託開発だけでなく、独自のアプリ開発など自社の成長戦略に着目できる人材
- 変化の速いIT技術の最新技術を理解し、実現性も見極められる人材
- ユーザ目線でのUX設計ができる人材
②ユーザ企業に必要なDX人材
- DXによる経営改革の推進を行える経営者
- IT技術を自社のDXによる経営改革に具体的に落とし込める人材
- 自社のDXに必要な要件を明確にして設計・開発できる人材
- AI等に習熟したエンジニアやデータサイエンティスト
(2)人材を確保・育成するための対策
DX導入のための開発を継続することにより、ベンダーとユーザの双方に知見やスキルが蓄積され、人材育成にも繋がります。
DXに対応するために、IT技術者に新たに求められるスキルを整備し、既存技術者への学び直しの機会を与えることも重要です。たとえば、大学と企業が連携してDX関連プロジェクトに取り組み、スキルの獲得と育成を行う必要もあります。民間のプログラミングスクールの講座にも、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」が適用された講座もあり、国からの補助を受けながら学ぶ土壌もできつつあります。
(3)レガシーシステムの仕分けと再発防止
レガシーシステム問題を解消するためには、まずはデータの仕分けが重要であり、DX推進に向けて必要なものと不要なものを分けた上で、新技術との融合を果たしていく必要があります。また、これから先のレガシーシステム発生を防ぐためには、外国のようにユーザ企業側でもITエンジニアを確保・育成し、自社システムのブラックボックス化を防ぐ必要があります。
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製造業でのDX化推進に当たっては、5Gの導入によるオートメーション化に伴う設備の入れ替えなども発生します。
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