放電加工機の基礎!特徴・運用の注意点・更なる自動化方法
製造現場では、さまざまな加工を行う設備が稼働しています。私たちの便利な生活はそれらの加工機によって支えられていると言えるでしょう。
本記事では、非常に硬い金属でも簡単に加工することのできる放電加工機について、特徴や種類、導入・活用時の注意点、おすすめのメーカーなどをまとめて紹介します。
なお、加工機そのものの解説については、下記で解説しているのでご覧いただければ幸いです。
目次
1.放電加工機とは何か?
(1)放電加工とは
放電加工は、電極と被加工物との間に発生するアーク放電の火花の熱によって、被加工物を溶かして加工する方法です。被加工物が電気を通す材質であれば、硬さに関係なく加工ができるという特徴があり、主に金属加工で用いられています。
金属を加工する方法としては、工具を使って金属を削る切削加工が主流です。しかし、切削加工では被加工物よりも硬い工具を使わなければ工具が折れてしまうため、加工ができません。製品を大量生産するために用いられる金型には非常に高い強度が求められるため、焼入れ材や超硬合金といった非常に硬い金属を使って製作されることが多いのですが、切削加工ではこれらの金属を加工するのが困難でした。
しかし、放電加工であれば被加工物の硬さに関係なく高精度な加工が行えるため、金型を製作するうえで欠かせない技術となっています。金型以外にも、高い強度が必要とされる部品の加工に広く活用されています。
※危険物保安技術協会 「危険物関係用語の解説(第23回)」より抜粋
(2)放電加工機の仕組み
放電加工機は、放電加工を用いて被加工材を加工する設備です。電極や加工内容の違いによって、形彫り放電加工機、ワイヤー放電加工機、細穴放電加工機などに分かれています。
放電加工機の基本構成は次の図の通りですが、それぞれの持つ役割をみてみましょう。
※危険物保安技術協会 「危険物関係用語の解説(第23回)」より抜粋
①放電加工機本体
放電加工機本体は、電極、加工槽、移動テーブルなどで構成されています。加工槽には加工液が満たされており、被加工物が固定されています。電極と被加工物を近づけてアーク放電を発生させ、電極か移動テーブルが加工したい形状に沿って動くことで放電加工が行われます。
②加工制御装置
放電加工機を動かす頭脳となる部分であり、多くの放電加工機は数値制御(NC)装置によって制御されています。
③加工液供給装置
放電加工機では、絶縁性の高い加工液を循環させています。加工液は放電加工を補助する重要なもので、電極と被加工物の間のギャップを埋めて電流が流れる電界を保つ役割や、加工屑を除去する役割を持っています。
加工液供給装置によって加工屑を含んだ加工液は濾過されて再び加工槽に送り出されます。
(3)放電加工機の特徴
放電加工機でできることやメリット・デメリットについて解説します。
①放電加工機のメリット
1.材料の硬さに関係なく加工ができる
上述した通り、放電加工は被加工物の硬さに関係なく加工ができます。放電加工を用いるうえでの最大のメリットと言える特徴であり、放電加工によって非常に硬い材料でも簡単に加工できるようになりました。
2.複雑かつ精密な加工ができる
放電加工の精度は非常に高く、数μ単位での精密な加工ができます。また複雑な形状や異形状の加工にも適しています。
3.被加工材に接触せずに加工ができる
放電加工は、電極と被加工物が物理的に接触をせずに加工を行います。そのため、工具を物理的に接触させる切削加工などに比べて被加工物に与える負担が少ないです。
②放電加工機のデメリット
1.加工スピードが遅い
放電加工は少しずつ被加工物を溶かしながら加工をしていくため、どうしても加工スピードは遅くなってしまいます。そのため、大量生産には適しておらず、製造コストが比較的高い加工方法であると言えます。
2.加工するためには電極が必須である
放電加工は電極がなければ加工できません。黄銅でできたワイヤーや、銅の電極を用いるのが一般的ですが、基本的には消耗品になるため、コストがかかります。
3.導電性のない材料は加工できない
放電加工は被加工物の硬さに関係なく加工ができますが、その反面、電気を通さない材料は加工することができません。
2.放電加工機の種類
放電加工機は、電極の種類や加工内容によっていくつかの種類に分かれています。代表的な「形彫り放電加工機」「ワイヤ放電加工機」「細穴放電加工機」をそれぞれ紹介します。
(1)形彫り放電加工機
形彫り放電加工機は、放電加工によって電極の形状を被加工物に転写する設備です。銅やグラファイトなどの電極を彫りたい形に加工し、被加工物に近づけて放電させることで、電極が反転した形状ができあがります。
電極は切削加工などで製作されるため、加工のしやすい柔らかい金属が用いられています。電極を加工するコストはかかるというデメリットはありますが、複雑な形状でも一度で転写できることや、貫通させないで底付きの形状に加工できるというメリットがあります。
樹脂成形用の金型などを製作するときによく用いられる設備です。
(2)ワイヤー放電加工機
ワイヤー放電加工機は、直径0.05mmから0.3mm程度の非常に細いワイヤーを電極として用いて放電加工を行う設備です。黄銅のワイヤーがよく使われており、数値制御(NC)によってワイヤーを走行させて被加工物を求める形状に切断していきます。
電極の加工をする必要がないことと、非常に細いワイヤーを使って切断するため材料のロスが少ないことが特徴です。しかし、ワイヤーをノコギリのようにして被加工物を切断することから、貫通させない底付きの形状の加工はできません。また、ワイヤーは放電加工機から垂直方向に供給されて加工を行うため、水平方向への加工を同時に行うこともできません。
プレス加工用の金型などを製作するときによく用いられている設備です。
(3)細穴放電加工機
細穴放電加工機は、非常に細い穴をあけるのに特化した放電加工機です。加工したい穴径に合わせた棒状やパイプ状の電極を使用して、被加工物に穴をあけることができます。
切削加工ではドリルが折れてしまうため、細くて長い穴は加工が困難でしたが、細穴放電加工機であれば問題なく加工することが可能です。金型や部品に穴をあけるために用いられるほか、ワイヤー放電加工機でワイヤーを通すための穴をあける用途でも用いられています。
3.放電加工機を導入・使用するときの注意点
(1)最適な放電加工機を選定する
放電加工機を導入するときは、加工したい形状やサイズを考慮して設備を選定する必要があります。
底付きの形状であれば形彫り放電加工機、貫通して加工できる形状であればワイヤー放電加工機といったように、形状によって選択すべき放電加工機の種類が決まります。また、設備ごとに対応可能な製品サイズが決まっているので、自社で加工するものがどのようなサイズかを把握したうえで、機種を選定するようにしましょう。
最近では、放電加工の効率化のために材料や電極をロボットなどによって自動交換する機能を持った設備も登場しています。段取替えの手間を削減したり、夜間の自動運転によって生産性が向上したりとメリットが大きいので、選択肢に加えてもよいでしょう。
(2)安全対策をしっかりと行う
放電加工には事故のリスクがあるため、安全対策を徹底しなければなりません。
放電加工では絶縁性の高い加工液が用いられていますが、この加工液は水か油を主成分とした加工液であることが一般的です。後者の油を主成分とした加工液であり、かつ引火点が70℃以上のものについては、危険物保安技術協会が定める「放電加工機の火災予防に関する基準」などで定められた火災予防を徹底する必要があるので注意しましょう。
また、放電加工では高電圧を用いて加工を行うため、感電事故の発生にも注意する必要があります。メーカーの取扱説明書などに記載された内容をしっかり理解したうえで、十分に安全に配慮して操作をする必要があります。
4.放電加工機を導入するときにおすすめの相談先3選
①株式会社ソディック
【特徴】
株式会社ソディックは数値制御(NC)放電加工機メーカーのパイオニアです。放電加工機では世界首位級のシェアを持っており、世界中のものづくりに貢献しています。形彫り放電加工機、ワイヤー放電加工機、細穴加工機などの放電加工機のほか、射出成形機や食品機械、金属3Dプリンタなども取り扱っています。
【所在地】
横浜市都筑区仲町台3-12-1
TEL.045-941-4553(営業本部)
FAX.045-943-7880(営業本部)
https://www.sodick.co.jp/
②三菱電機株式会社
【特徴】
三菱電機株式会社は、総合電機メーカーとしてさまざまなFA機器を取り扱っています。三菱電機のワイヤー・形彫り・細穴放電加工機は、高速・高精度加工により生産効率を向上させて金型の製作に威力を発揮します。金型以外にも、高信頼性重視の部品加工を革新する技術となっています。
【所在地】
東京都千代田区丸の内二丁目7番3号
TEL.03-3218-2111(代表)
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/
③株式会社牧野フライス製作所
【特徴】
株式会社牧野フライス製作所は、マシニングセンタのメーカーとして有名ですが、各種放電加工機も取り扱っています。NC放電加工機、細穴放電加工機、ワイヤー放電加工機を一通り取り揃えており、高い性能と革新的な制御システムによって加工効率を向上させます。
【所在地】
東京都目黒区中根2-3-19
TEL.03-3717-1151(代表)
FAX.03-3723-4621(代表)
https://www.makino.co.jp/ja-jp/
5.放電加工機にロボットや自動機を組み合わせるご相談はFAプロダクツへ
本記事では、放電加工機の定義や仕組み、メリットとデメリット、放電加工機の種類、注意点などを解説しました。本記事を参考に、放電加工機への理解を深めていただけるとありがたいです。
放電加工機の登場によって、金型製作などの技術は大きく進歩しました。放電加工は金属の精密加工において欠かせない加工法の1つであり、今後はより高精度に加工のできる放電加工機や、自動化によって生産性を向上させた放電加工機が各メーカーによって開発されるでしょう。
より効率化を図る場合には、加工機へのワーク投入や搬送部分を自動化・ロボット化していくことも考えられます。
FAプロダクツでは、生産設備の導入コンサルティングから装置開発、保守メンテナンスまでを一貫して行っており、放電加工機へのロボット・自動機導入についてもサポートしております。
自動化をご検討の際には、是非ともFAプロダクツにお声がけください。
【特徴】
FAプロダクツは年間200台もの実績がある関東最大級のロボットシステムインテグレーターです。一貫生産体制をとっており、設計から製造までをワンストップで対応。費用・時間にムダなく最適化を行うことができます。
また、お打ち合わせから原則1週間以内に「お見積りとポンチ絵」をご送付。
【ポンチ絵とお見積りのサンプル】
テキストやお電話だけでは伝わりづらいゴールイメージを共有し、スピード感を持った対応を心がけています。
【所在地】
茨城県土浦市卸町2丁目13-3
TEL.050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
https://jss1.jp/
【営業品目】
- 産業用ロボット
- 生産設備合理化・省力化の設計及び製作
- 基板電気チェッカーや貼合・折曲など
- 治具の設計・製作
【実績】
NM社(電子部品の製造販売)、HS製作所(情報通信・社会産業・電子装置・建設機械・高機能材料・生活の各システム製造販売)、TT社(ショッピングセンターなどリテール事業)、SM社(自動制御機器の製造・販売)、OR社(自動車安全システムの製造販売)
関東最大級のロボットシステムインテグレーター 装置の設計から製造ならお任せください
050-1743-0310 営業時間:平日9:00-18:00