遠隔操作ロボット導入のメリットは?仕組み・市場動向・事例から検証
昨今の日本は人手不足が深刻化してきており、省人化につながる遠隔操作ロボットへの期待が年々高まってきています。各企業でも、これまで人手でしか難しかった作業を、遠隔操作ロボットを使って解決させる開発が進められています。
さらに最近話題の第5世代移動通信システム(5G)が、遠隔操作の発展を後押ししています。
そこでこの記事では、遠隔操作ロボットに関わる歴史や市場動向、製造業で活用される遠隔操作ロボットの具体例を交えて全体像を確認していきます。また、遠隔操作ロボットの仕組みや導入する際のメリット・デメリットについても解説します。
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目次
1.遠隔操作ロボットの歴史と市場動向
(1)遠隔操作ロボットの歴史
①遠隔操作ロボットのはじまり
遠隔操作ロボットの歴史は古く、はじまりは1948年アメリカのアルゴンヌ国際研究所です。そこでは放射性物質を取り扱うために、初めて機械式の遠隔操作マニピュレータが研究開発されました。
こうした人が立ち入れない環境で作業を可能とする遠隔操作技術は、様々な分野で用いられることになります。そして最初は単純な機構だった遠隔操作ロボットは、多種多様なニーズに応える形へ進化していきます。
▼参考文献
②遠隔操作技術の利用
遠隔操作ロボットのニーズの1つとして災害対応ロボットがあります。この災害対応ロボットは、1994年雲仙普賢岳の災害による復旧工事、2011年東日本大震災における被災状況の把握などに用いられました。ここでは無線機と中継機を利用した遠隔操作技術が用いられています。
▼参考文献
- 消防防災科学センター「消防防災の科学」No.133-レスキューロボットの現状と課題
- 東芝レビュー68巻10号(2013年10月号)-災害復旧を支援する遠隔操作型ロボット
- 西尾レントオール(株)建築ICT-無人化施工通信システム
③社会的な課題を解決する分身ロボットの登場
また、遠隔操作ロボットで社会的な課題を克服しようというニーズもあります。社会的な課題とは、病気や怪我、外出困難などの理由により移動が制限されてしまい社会へ参加できないという問題です。
代表的なものはオリィ研究所が提供している「OriHime」シリーズの分身ロボットです。2010年に開発されたこの分身ロボットは様々な試みを経て、2018年には分身ロボットを用いて接客作業ができることを実証しました。ここではインターネット回線を利用した遠隔操作技術が用いられています。
▼参考文献
- 吉藤健太朗(OriHime開発者) note-2010年7月7日に”OriHime”というロボットが生まれて10年。10分で振り返る10年の軌跡
- オリィ研究所-分身ロボットカフェ「DAWN」Ver.β
(2)市場動向
こうした遠隔操作ロボットの歴史を振り返ると、近年の市場動向は徐々に変わりつつあるのがうかがえます。それは、ロボット開発技術が進化しているのもありますが、その最たる要因は通信技術の発達です。
これまで有線や無線といった遠隔操作技術はありましたが、まだまだ距離などの制約はありました。しかし、第5世代移動通信システム(5G)の登場でそれを利用・前提とした技術が市場のトレンドとして顕在化してきています。特に産業分野の動きが活発になってきています。
①技術者不足の問題解決を期待
川崎重工では、後ほど詳しく紹介する遠隔操作ロボットシステム「Successor®︎」を利用し、スマートファクトリーの実現に向けたローカル5Gの実証実験を行っています。「Successor®︎」とは作業者が専用の遠隔操縦装置(コミュニケータ)を使って直接操作した動作をAIが学習し、自動運転に変換する機能を備えたものです。
この実証実験では工場内にローカル5G設備の設置を行い、無線での遠隔操作のノウハウを獲得するものです。将来的にはローカル5G設備を設置した工場同士を光通信でつなぎ、遠隔地の「Successor®︎」を操作することが期待されています。
なおローカル5Gについても後で詳しく解説していきます。
▼参考文献
②高度な遠隔運用を期待
OKIでは、5Gとローカル5Gを活用した「AIエッジロボット」の開発を進めています。こちらも後ほど詳しく紹介しますが、最大の特徴はAIエッジコンピュータを搭載していることと、周囲360°をリアルタイムで確認できる俯瞰映像モニタリングシステム「フライングビュー®︎ 」です。様々なセンサから得られる情報をAIが検知し、リアルタイムで現場の状況を判断できることが強みです。
▼参考文献
(3)通信技術の進歩
上記の市場動向で軽く第5世代移動通信システム(5G)に触れましたが、ここではその5Gについて詳しく解説していきます。
①ローカル5Gとは
一般的に5Gと呼ばれるものは、docomo、KDDI、SoftBankといった通信事業者から提供されているパブリック5Gのことを指します。
この5Gの代表的な性能は3つあります。
- 最高伝送速度10Gbpsの大容量通信
- 1ms程度のタイムラグに抑えた低遅延性
- 100万台/K㎡の接続数を可能とした多数同時接続
それに対しローカル5Gとは、上記の性能はそのままにして通信事業者ではない企業などが、構内・工場内といった限られた場所に5Gネットワークを構築して利用できる無線システムを指します。
なお、このローカル5Gを設置するには国で指定された無線局の免許が必要ですが、免許を取得した企業の支援を受けて設置することが可能です。
②ローカル5Gの特長
このローカル5Gにはパブリック5Gの導入が進んでいない地域でも導入できることもメリットですが、主たる特長は以下の通りです。
- 5Gネットワークが施設内に限定されるので他の場所で発生した通信障害などの影響を受けにくい
- 狭い範囲しかカバーできないWi-Fiに対して、施設全体をカバーすることができる
- 外部のネットワークから切り離された通信環境になるため、機密情報などに対する強固なセキュリティを築ける
また、独立したネットワークを築ける強みは他にもあります。
拠点が離れていても同一のネットワークにアクセスできる仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network, VPN)のような仕組みを5Gで構築することができれば、将来的に遠隔地からロボットを操作できるようにもなるでしょう。
実際に、上記の市場動向で触れた川崎重工ではその実証実験を行っています。
③5Gを活用したIoTの取組例:ロボットアームの遠隔操作
▼参考文献
2.製造業で活用される遠隔操作ロボット
ここまで遠隔操作ロボットに関する歴史と市場全体の動向を見てきました。ここからは市場全体から現在製造業の工場で活用される遠隔操作ロボットに範囲を絞って、最近のトレンドを見ていきましょう。
(1)川崎重工「Successor®︎」
川崎重工が提供している遠隔操作ロボット「Successor®︎」は、2018年に川崎重工業西神戸工場のロボット製造ラインに導入され、2019年に一般販売が開始されました。また、このSuccesor®︎はシリーズ化し、2020年4月に研削ロボットシステム「Successor®︎-G」の販売が開始されています。
これらの遠隔操作ロボットを用いることにより、これまで作業者の経験や感覚が頼りで自動化が難しかった工程の自動化や、研削の火花が飛び散る危険な環境から離れることができ安全性を確保するニーズに応えることができます。
なお、川崎重工公式Youtubeチャンネルで、2017年国際ロボット展で紹介された「Successor®︎」の動きを確認することが可能です。
▼参考文献
- 川崎重工業(株)プレスリリース-新ロボットシステム「Successor」を販売開始
- 川崎重工業(株)プレスリリース-研削・バリ取り・表面仕上げ用遠隔操縦ロボットシステム「Successor®-G」を販売開始
- 川崎重工業(株)-新ロボットシステム「Successor」 詳細資料
(2)DENSO WAVE「COBOTTA®︎」
DENSO WAVEが提供している「COBOTTA®︎」は人協働ロボットですが、遠隔操作の媒体として使用されている事例があるロボットです。
使いたい場所で使えるポータブル性や、コントローラ一体型によるニーズに合わせたデバイスの統合制御、”マスター・スレーブ”の拡張機能を使えることから遠隔操作のニーズに応えることができています。上記の「5Gを活用したIoTの取組例:ロボットアームの遠隔操作」で紹介した動画でも、この「COBOTTA®︎」が利用されていることがわかります。
なお、DENSO WAVEの公式Youtubeチャンネルで、「COBOTTA®︎」をマスターデバイスにした遠隔操作教示の様子を確認することが可能です。
さらに、2020年オンライン展示会「DENSO Robotics Online EXPO 2020」では、上記のマスター・スレーブ機能を利用してAIに学習させて再現する「模倣学習エンジン(仮称)」の開発も進んでいます。
また、Canon製のカメラと画像処理ソフトを用いて、IoT非対応箇所を遠隔で操作する様子も確認することも可能です。この動画では部品仕分け・タブレット操作をしていますが、場所を変えれば大型装置の操作パネルを遠隔操作することも可能な技術といえます。
▼参考文献
(3)OKI「AIエッジロボット」
OKIが開発している「AIエッジロボット」はまだ開発段階ですが、施設点検や防犯・見守りなどをロボットを遠隔操作して行えるニーズに応えることができます。
上記でも簡単に紹介しましたが、最大の特徴はAIエッジコンピュータを搭載していることと、周囲360°をリアルタイムで確認できる俯瞰映像モニタリングシステム「フライングビュー®︎ 」です。前後左右から撮影されるカメラ映像を1つにつなぎ合わせることで360°の俯瞰映像を得ることを可能としています。このような俯瞰映像からAIが普段と違う状況を検知し、リアルタイムで判断しています。
なお、OKIの公式Youtubeチャンネルで、「CREATE2019」で展示された試作機をコックピットから遠隔で操作する様子も確認することも可能です。
また、OKIシステムセンターからライブ配信を行ったAIエッジロボットのデモンストレーションも確認することが可能です。このライブ配信から、具体的にAIエッジロボットをどのように運用するのかイメージしやすくなります。
▼参考文献
3.製造業と遠隔操作ロボット
ここまで製造業で活用される遠隔操作ロボットを見てきました。いずれの企業もこれまで人が行っていた高度な判断・行動を自動化したいニーズを、遠隔操作とAIを組み合わせて解決しようとする動向を窺い知ることができます。
ここからは上記2.で紹介した遠隔操作ロボットの種類に範囲を絞って、その仕組み、導入するメリット・デメリットに焦点を当てて紹介していきます。
(1)遠隔操作ロボットの種類
①マスタースレーブ型
1.仕組み
マスタースレーブ型の仕組みはとても単純です。マスター側のロボットとスレーブ側のロボットがロボットコントローラーを経由して電気的に繋がっていれば動作させることができます。一般的なティーチングペンダント操作との違いは座標系を意識せずに直感的に操作できる点です。
下図は小型のロボットをマスターデバイスとして運用し、スレーブ側の大型ロボットを動かす関係となっています。この例では通信媒体は有線ですが、無線で動かすことも可能です。
また、このマスター側のロボットを工程に合わせたコントローラに置き換えることで、より人が作業する動作に近い動きをロボットに教え込むことができるようになります。
加えて、ロボットコントローラに相当する場所へAIが組み込まれることで、AIが動作を学習し、その動きを再現(自動化)する技術が開発されはじめています。
2.導入のメリット
このマスタースレーブ型を導入するメリットとして次のことがあげられます。
- 危険が伴う作業を、離れた場所から安全を確保して作業することができる
- 直感的に動かせることで作業効率の向上
3.導入のデメリット
このマスタースレーブ型を導入するデメリットとして次のことがあげられます。
- ロボットの遠隔操作可能距離が通信媒体によって制限されてしまう
- 遠隔距離に応じて通信速度に遅延が発生する
- 実質的に産業用ロボットを2台買うことになるのでイニシャルコストがかかる
②コックピット型
1.仕組み
コックピット型は建設機械系でよく見られる種類です。
カメラ映像、各種センサなど多岐にわたる情報をモニタリングしながら操作するので、より広い視野、知覚領域を拡大した情報を扱いたい場合に向いています。
下図は複数の警備ロボットをコックピットから動かしている様子です。
普段は自動運転(AUTOPILOT)の巡回ロボットを、施設などの異常が見られた際は遠隔操作に切り替えて現場に向かわせることが可能です。
2.導入のメリット
このコックピット型を導入するメリットとして次のことがあげられます。
- コックピットから複数のロボットを遠隔操作できるので省人化できる
- 有事の際には記録情報を素早く関係部署に共有することができる
- 導入するロボットに応じて役割を変えることができる
3.導入のデメリット
このコックピット型を導入するデメリットとして次のことがあげられます。
- 下地となる通信技術が発展したばかりなので、取扱メーカーが限定的
- コックピットの設置スペースを専用に確保する必要がある
4.遠隔操作ロボットを導入するときに頼りたいメーカー3選
遠隔操作ロボットはそれ単体の導入だけでは課題解決には繋がらないケースがよくあります。そのためメカ、電気、システム、教育といった総合的な導入の経験が豊富なSIを頼るといいでしょう。
ここでは頼りたいメーカを3社ご紹介します。
①株式会社FAプロダクツ
【特徴】
FAプロダクツは年間200台もの実績がある関東最大級のロボットシステムインテグレーターです。一貫生産体制をとっており、設計から製造までをワンストップで対応。費用・時間にムダなく最適化を行うことができます。
また、お打ち合わせから原則1週間以内に「お見積りとポンチ絵」をご送付。
【ポンチ絵とお見積りのサンプル】
テキストやお電話だけでは伝わりづらいゴールイメージを共有し、スピード感を持った対応を心がけています。
また、同社の「画処ラボ」では、画像処理を用いた外観検査装置の導入に特化し、ご相談を受け付けています。従来は目視での官能検査に頼らざるを得なかった工程の自動化をご検討の際などにご活用ください。
業界最大級の画像処理検証施設を開設!
「画処ラボ」ではルールベースやAIの画像処理を専門エンジニアが検証。ご相談から装置制作まで一貫対応します。
【所在地】
茨城県土浦市卸町2丁目13-3
TEL.050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
https://jss1.jp/
【営業品目】
- 産業用ロボット
- 生産設備合理化・省力化の設計及び製作
- 基板電気チェッカーや貼合・折曲など
- 治具の設計・製作
【実績】
NM社(電子部品の製造販売)、HS製作所(情報通信・社会産業・電子装置・建設機械・高機能材料・生活の各システム製造販売)、TT社(ショッピングセンターなどリテール事業)、SM社(自動制御機器の製造・販売)、OR社(自動車安全システムの製造販売)
②株式会社MUJIN
【特徴】
東京都にある世界から集まったトップエンジニアで構成された、製造・物流のプロによるロボット技術によって急成長している企業です。メーカ毎に操作方法が違う課題を独自の技術により解決し、物流・製造現場における人手作業でしか難しかった分野を、ロボットで自動化するソリューションを提供しています。
【所在地】
東京都江東区辰巳3-8-5
TEL.03-4577-7638
FAX.03-4577-7639
https://www.mujin.co.jp/
③株式会社コスモ技研
【特徴】
愛知県にある生産技術エンジニアリング、機械設計、電気制御、組立、現地据付調整まで責任を持って行うプロによって構成された企業です。重工業・航空・食品・医療・化学業界などの設備、ロボットによる自動化・無人化など、FAに関わるトータル技術を得意としています。
【所在地】
愛知県小牧市入鹿出新田285
Tel : 0568-71-6571
Fax : 0568-71-6570
https://www.cosmo-gi.com/
5.遠隔操作ロボット導入に関するご相談はFAプロダクツへ
遠隔操作ロボットは、ロボット単体だけでなく通信媒体やシステム構成など複合的に組み合わされたものです。自社で導入を試みようとしても、メカや電気などに詳しい人材が揃っていないと本当に遠隔操作ロボットを導入したら課題は解決するのか、と判断しにくいものになるでしょう。
もし、遠隔操作ロボット導入にお困りでしたら、ぜひFAプロダクツまでお問い合わせください。豊富な知見を活かし、お困りごとに合わせた最適なソリューションを提供いたします。
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