熱衝撃試験機とは?試験方法や種類・選び方、主要メーカ3社を解説
熱衝撃試験は、急激な温度変化を与える試験で電子機器や金属製品、樹脂製品の評価に用いられています。近年では、温度変化の激しい自動車の電装化に伴って熱衝撃試験の重要性が高まりつつあり、導入を検討している企業もあるのではないでしょうか。
そこで本記事では、熱衝撃試験とは何かの解説に加えて、熱衝撃試験機の主要なメーカや選び方のポイントなどを紹介します。
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目次
1.熱衝撃試験(冷熱衝撃試験)とは?
まずは、熱衝撃試験の概要や用途、種類について解説していきます。
(1)熱衝撃試験(冷熱衝撃試験)の概要
熱衝撃試験(冷熱衝撃試験)とは、温度の変化が試験体に与える影響を観察する試験です。熱衝撃試験を行うことにより、試験体が周囲の環境変化にどの程度耐えられるのかを評価できます。
製品を構成する各種材料は、温かくなると膨張し、冷たくなると収縮する特徴を持っており、その際の膨張率は材料によって異なります。単一の材料で構成された製品であれば影響は比較的少ないですが、異種材料を組み合わせた製品の場合は各材料の膨張率の差によって応力が発生し、応力の蓄積によってクラックや破壊が起こりやすくなります。その結果、想定よりも早く壊れてしまったり、不具合を引き起こしたりするのです。
図1は、熱衝撃試験器のイメージ図です。
図1では、ワークの収納されている試験槽があり、前後に、冷凍槽と高温槽があります。
熱衝撃試験のために、冷風と高温風をワークの収納槽に導入し(図では両方の風がいっぺんに入っているように書かれていますが、同時に入ることはありません)、試験槽を冷やしたり温めたりします。
図2は、熱衝撃試験の試験のための温度変化のイメージ図です。
図2では、試験槽の温度変化の様子を描いています。当初は常温ですが、図では初めに低温で試験槽を維持した後に、高温風に切り替えて試験槽に導入し、温度を設定まで上げます。
図の「さらし温度」とは、冷温と高温を維持している時間で、目的によって、数分から数時間、場合によっては1日以上の場合もあります。
試験の目的は、ワークの接合面などの、材料の異なる部分が熱強度にどれだけ耐えれるか、故障が起きないかをテストすることで、材料・試験目的によって、図2の時間は変わってきます。
テスト目的である強度試験以外には、プリント版のような電子機器の熱による機能低下のテストにも使用されます。
図2では、低温と高温の1回のサイクルの試験について表していますが、ワークや試験目的によって、このサイクルを数回行う試験もあります。
熱衝撃試験では、高温と低温を短時間で交互に繰り返し与えることで、試験体に意図的に応力を発生させます。膨張と収縮を繰り返す過程で、試験体のどの部分に負荷がかかってクラックや破壊につながるのかを観察し、製品の耐久性や信頼性を評価する目的で行われています。
(2)熱衝撃試験の用途
熱衝撃試験は、高い信頼性が求められる製品や、自動車のように急激な温度変化にさらされる可能性の高い製品の評価に使われています。代表的な用途は以下の通りです。
- はんだ付けによる接合評価
- プリント基板・実装基板の信頼性評価
- 材料変更に伴う信頼性評価
- 異種金属の溶接部の耐久性評価
- 樹脂製品の熱歪みに対する耐久性評価
- 市場に出回った後の不具合発生の再現試験
(3)熱衝撃試験の種類
熱衝撃試験には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を紹介します。
①気槽式熱衝撃試験
気槽式熱衝撃試験は、熱風と冷風を交互に吹き付けることで試験体に温度変化を与える方式です。ヒートサイクル試験や温度サイクル試験と呼ばれることもあります。
熱風と冷風を交互に吹き付けるという仕組みのため、後述する液槽式に比べると温度変化が緩やかになります。実際に市場で製品を使う際の温度変化も緩やかであることが多いため、不具合発生の再現などがしやすいのが特徴です。
ほかにも、テストエリア内に設置した試験体を動かす必要がないため、振動や接触による試験への影響を最小限に抑えられることや、通電状態で試験ができる、といった点もメリットとして挙げられます。
②液槽式熱衝撃試験
液槽式熱衝撃試験は、高温と低温の液体に試験体を交互に浸けることで温度変化を与える方式です。液槽式の試験機は、一般的に高温槽と低温槽の2槽で構成されており、テストエリアを移動させて温度変化を与えます。
あらかじめ目的の温度にした液体に浸けるため、上述した気槽式に比べて急激な温度変化を与えられます。そのため、試験時間を短縮したい場合には液槽式を選択するのが効果的です。一方で、実際の使用環境ではあり得ない故障が起こる可能性もあるので、再現性という観点では注意が必要になります。
③湿度冷熱衝撃試験(結露サイクル試験)
湿度冷熱衝撃試験では、試験機が湿度制御の可能な高温恒湿器を備えており、急激な温度変化に伴って発生する結露の影響も評価できます。
結露は、腐食や誤作動の原因になり電子機器の性能に大きな影響を与えます。特に高い信頼性が求められる車載電装品などの試験では、結露の影響を評価することが不可欠です。
熱衝撃試験のみを行う方式に比べると温度環境が制限される傾向にありますが、1つの試験機で熱衝撃試験と結露サイクル試験の両方を行えるのは大きなメリットといえるでしょう。
以下の動画も参考になさってください。
引用:東京都立産業技術研究センター 都産技研 冷熱衝撃試験機[実証試験S]の紹介
2.熱衝撃試験機の選び方
ここでは、熱衝撃試験機を選ぶ上でのポイントを3つご紹介します。
(1)仕様で選ぶ
熱衝撃試験を実施する上で重要なのが、試験条件です。評価したい製品に合わせた条件で試験を行わなければ、正しく評価を行えなくなります。熱衝撃試験機によって仕様が異なるため、自社で実施したい条件と合致しているかを確かめるようにしましょう。
カタログなどで最低限見ておきたい仕様は、次の通りです。
- 高温さらし:高温環境での温度範囲
- 低温さらし:低温環境での温度範囲
- さらし時間:試験体が設定温度に到達した後に維持する時間
- 温度復帰時間:試験体が設定温度に到達するまでの目安時間
- 試験サイクル数:高温環境・低温環境を繰り返す回数
(2)方式で選ぶ
上述した通り、熱衝撃試験は主に次の3種類に分けられます。
- 気槽式熱衝撃試験
- 液槽式熱衝撃試験
- 湿度冷熱衝撃試験(結露サイクル試験)
◆ 最も一般的で型式も豊富にある、気槽式の試験機を検討するのがおすすめです。
◆ 試験時間を短縮したい場合やより厳しい環境での試験を行いたい場合は、液槽式が選択肢に加わります。
◆ 結露の影響も評価したいのであれば、湿度管理のできる試験機を選定することになるでしょう。
◆ それぞれの特徴やメリット・デメリットを踏まえて、対応した熱衝撃試験機を選定してください。
(3)メーカで選ぶ
提供している熱衝撃試験機のラインナップや方式の違い、カスタマイズ可能な範囲、カスタマーサポートの内容といったように、各メーカにはそれぞれ特徴があります。
熱衝撃試験機自体の性能はもちろんですが、各メーカの特徴も踏まえて総合的に選定することが重要です。導入した試験機を使いこなして正しく評価をするためには、カスタマイズ対応の有無やカスタマーサポートの充実度も重視するすることは、絶対条件です。
3.熱衝撃試験機の主要メーカ3選
次に、熱衝撃試験機の主要なメーカと、代表的な製品をご紹介します。さまざまなメーカから熱衝撃試験が提供されているので、選定時の参考にしてください。
(1)エスペック株式会社
【特徴】
エスペック株式会社は、最先端技術の発展を支える環境試験機の主要メーカです。環境試験機・二次電池関連機器・半導体関連装置といった試験機や検査装置を提供しています。主力製品である環境試験機は幅広いラインナップを揃えており、熱衝撃試験機だけでも小型から大型までさまざまなタイプの中から選ぶことができます。
【所在地】
大阪府大阪市北区天神橋3-5-6
TEL.06-6358-4741(代表)
【製品情報】
①冷熱衝撃装置TSAシリーズ
引用:エスペック株式会社 冷熱衝撃装置 TSAシリーズ(ダンパ切替による2ゾーンおよび3ゾーン方式)
引用:エスペック株式会社 大型冷熱衝撃装置『型式:TSA-603(600L)』
引用:エスペック株式会社 試料温度トリガー(STT機能)【冷熱衝撃装置TSD】
冷熱衝撃装置TSAシリーズは、気槽式熱衝撃試験機であり、テストエリアが移動しない静止型のため移動による振動ストレスがなく、より正確な試験結果が確保できます。
試験体の移し替えも不要のため、試験時間を短縮できるのが特徴。重量物や大型の試験体、小物部品の一括処理にも適しています。
また、温度管理が高精度に行えるようになっており、高温・低温のどちらでも試験体が設定した温度に到達するまでの時間のバラツキを最小限に抑えています。
耐熱性の高い試験体に対応した熱衝撃試験機で、300℃という高温環境での評価が行えます。ハイブリッド自動車や家電製品で用いられるパワー半導体の評価に最適です。テストエリアは固定されているため、試験体の測定や電圧付加のためのケーブル配線作業も容易に行えます。
冷熱サイクル試験と結露サイクル試験を1台でこなせる新発想のハイブリッド型試験機です。冷熱サイクル試験後に結露サイクル試験を行うなど、従来にない試験を実施できます。専用の試験機が2台必要だったのが1台で済み、低コスト・省スペースを実現します。
(2)株式会社二葉科学
【特徴】
株式会社二葉科学は、総合環境試験機器メーカとして環境試験機や熱処理機器、カスタム製品を提供しています。顧客が取り扱う製品によって求められる温度や大きさ、性能、機能といった仕様が異なるため、オールカスタムメイドの装置も提供可能です。
【所在地】
千葉県柏市旭町1-12-1
TEL.04-7141-2100(代表)
FAX.04-7141-2110(代表)
【製品情報】
ヒートショック試験装置(熱衝撃試験)
高温環境は+50℃~+220℃、低温環境は-10℃~-70℃といった温度変化を実現する熱衝撃試験機を提供しています。特殊仕様や特殊サイズの設計・製作も請け負っており、湿度制御が必要な場合にも相談可能です。
(3)楠本化成株式会社(ETAC)
【特徴】
楠本化成株式会社は、化成品や添加剤などを提供するメーカです。同社のETAC(エタック)事業部では「信頼性試験のパートナー」として、環境試験器・自動計測システムの製造・販売から受託試験までさまざまなソリューションを提供しています。
【所在地】
東京都千代田区内神田1-11-13 楠本ビル
TEL.03-3292-8681(代表)
TEL.03-3295-8681(エタック事業部)
【製品情報】
①温度サイクル試験機(気槽式) WINTECH NEO
冷熱交換効率に優れた冷熱回路システムと蓄冷・蓄熱材の最適化によって、熱衝撃試験機にとって重要な要素である温度復帰を最短時間で実現しています。±1℃以内の均一な温度分布も可能であり、高い基本性能を持った熱衝撃試験機です。300℃の高温環境に対応した仕様も提供しています。
パワーステアリングやEV用ハーネスといった長さのある試験体であってもそのまま投入可能な横長構造が特徴です。屈曲や加工による試験体への余計なストレスをかけずに、精度の高い温度サイクル試験を実現します。
4.熱衝撃試験機の導入に関するご相談はFAプロダクツへ
本記事では、熱衝撃試験の概要や用途、種類などを紹介した上で、熱衝撃試験機の主要なメーカや選び方について解説しました。
ものづくりに対する品質要求は高まり続けており、熱衝撃試験の重要性も向上しています。本記事を参考に、熱衝撃試験機の導入を検討していただければ幸いです。
FAプロダクツは、さまざまな工場設備や試験機の導入を支援しています。熱衝撃試験機や熱評価試験機の製造事例もあり、導入だけでなく自動化・省人化までサポートが可能です。熱衝撃試験機の導入でお悩みの際は、FAプロダクツへお気軽にお問い合わせください。
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