半導体露光装置とは?選び方や活用のポイント、おすすめメーカ3選
半導体は、デジタル化社会全体を支えている製品のひとつです。銀行や鉄道などのインフラ事業や、医療ネットワーク・スマホや家電など、生活の中核を担う部分にも半導体が使われています。
社会を支えている半導体を作るため、機械を独自で開発しているメーカがあります。
この記事では、半導体製造の中核となる半導体露光装置の選び方から、販売メーカと製品を紹介します。また導入のメリット・デメリットと半導体露光装置を用いて生産性を上げるポイントも解説します。
もし、半導体露光装置のコンサルティングを受けて、
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目次
1.半導体製造装置とは
半導体露光装置とは、半導体を製造する過程でウェハに回路パターンを露光(焼き付ける)装置です。
図1は、露光によってウェハ上に半導体回路を作る方法のイメージです。
ここでは、半導体製造装置によって半導体の回路がどのように作られるかの概要を説明します。
【露光によって、ウェハに半導体回路を作る手順】
a.半導体回路はパソコンなどで設計・製作し、レクチルに印刷します。
b.レクチルの下にはマスクがあり、紫外線のような周波数がぶれない強い光を照射します。
マスクの下には薄い膜を張ってある「ウェハ」があり、その上にレジストという現像液が重ねられています。
マスクから出る光は、回路が印刷された部分は通すことができず、回路がない部分に光を通します。
c.レジストには、回路のある部分に相当する所には光が当たりませんが、その他の部分に光が当たります。
その結果、レジストに光が当たったところだけ、変質します(写真の現像と同じ原理です)。
d.変質した部分は洗い流せば消えてしまします。図1中央の「現像工程」の図のようになります。
e.レジストが残っていない部分を切り取る(エッチング)と、半導体回路が、ウェハに転写されます。
f.最終的には、レジストは特殊な液で取り除かれ、半導体回路が刻まれたウェハが残ります。
図2では、半導体露光装置の概要をご紹介します。
図2の左端のウェハを並べた図をご覧ください。
図1の露光による回路の製作には、ウェハの何か所かに同じパターンの回路が刻まれます。(図2左上)
ウェハ上に同じパターンの回路を縮小してなるべく多く作れば、半導体回路の需要に追いつきさらに増産が可能であり、図2の投影光学系とある部分には高解像度のレンズによって、レクチルに刻まれた回路の数分の1からさらに縮小したサイズの回路が、ウェハ上に刻まれます。
それが、左端のウェハを並べた図の下側の図です。
この回路を作るためには、光学系の解像度だけでなく、図2の右側のような、ウェハを数nm(ナノメートル)単位で移動・調整する機構が必要です。
半導体露光装置の理解を深めるためには、以下の動画も参考になります。
人類史上最も精密な機械ー半導体露光装置
引用:2015-206:人類史上最も精密な機械ー半導体露光装置 | ChannelONG
【フォトリソグラフィ】最先端の半導体露光装置が数ナノメートルの表面加工できる仕組み
(長い動画ですので、余裕のある方がご覧ください。半導体露光装置の基本が詰まっています。)
引用:【フォトリソグラフィ】最先端の半導体露光装置が数ナノメートルの表面加工できる仕組み | 科学技術を見る極微の視野
【前工程編】工場見学:半導体ができるまで|実際の製造工程を見ながらわかりやすく解説!!【サンケン電気】
引用:【前工程編】工場見学:半導体ができるまで|実際の製造工程を見ながらわかりやすく解説!!【サンケン電気】| サンケン電気株式会社 Sanken Electric
引用:【後工程編】工場見学:半導体ができるまで|実際の製造工程を見ながらわかりやすく解説!!【サンケン電気】| サンケン電気株式会社 Sanken Electric
2.半導体露光装置の選び方
半導体露光装置は、露光する光源で5種に分類できます。これらのうちのどれを導入するか、となったとき、「露光方式」と「光源の波長」に着目するのが一般的です。
露光する光源 | 露光方式 | 光源の波長 |
UVランプ(g線) | ステッパー方式 | 436nm |
UVランプ(i線) | ステッパー方式 | 365nm |
Krfレーザ | ステッパー方式orスキャナー方式 | 248nm |
Arfレーザ | ステッパー方式orスキャナー方式 | 193nm |
EUV | スキャナー方式 | 13.5nm |
以下より詳しく解説します。
(1)露光方式
半導体露光装置の露光方式は「ステッパー方式」と「スキャナー方式」の2種あり、その特徴は以下の通りです。
ステッパー方式 | スキャナー方式 | |
特徴 | ・チップを1枚毎に露光
・露光範囲がスキャナー方式より狭い ・解像度が低い ・スキャナー方式より安価 |
・チップと光を走査して露光
・露光範囲がステッパー方式より広い ・解像度が高い ・ステッパー方式より高価 |
それぞれの特徴を詳しく解説します。
①ステッパー方式
ステッパー方式は、チップを1枚毎に露光させるため、露光範囲がスキャナー方式より狭い特徴があります。
照射した光はレンズの内接面を通過するため、光が歪みやすく解像度が上がりにくい特性をもっています。
解像度が上がりにくいため、スキャナー方式より精度を必要としないことから装置価格が安価となります。
②スキャナー方式
スキャナー方式は、チップと光を走査して露光する方式です。走査することで露光範囲が長方形になり、ステッパー方式より広いという特徴があります。
照射した光はレンズの中央部のみを通過するため、歪みが少なく解像度を上げやすい特性をもっています。
解像度を上げやすいため、高精度のステージが必要になるなど装置価格が高価になります。
(2)光源の波長
光源の波長によって、半導体回路の線幅が異なります。光源の波長が短いほど回路線幅を細くできます。細くすると機器も高精度なものが必要となり、装置価格が高価になります。
3.半導体露光装置のメリット・デメリット
ここでは、半導体露光装置を導入すると得られるメリットと注意すべきデメリットを解説します。
(1)メリット
①時代のニーズに合った生産ができる
最新の機種を導入することで、時代のニーズにあった生産が可能です。
第5世代通信システムの5Gや自動運転など、さまざまな分野で微細化かつ高精度な半導体が求められています。最新機種では、1.0μmの高解像度化が進むなど装置は進化しています。また重ね合わせ精度や露光技術の進歩により、より微細な半導体の製造が可能です。
②生産性と品質の向上
大量生産が必須の半導体製造ですが、最新機種の導入で生産性が向上します。後継機種などは、従来機より15〜20%生産性が向上している機種が多くあります。また、重ね合わせ精度も向上しているため品質が上がります。
(2)デメリット
①導入時の初期コストが必要
最新機種は、高精度化に伴い100億円を超えるモデルがあります。装置の規模や種類によりますが、コストに見合った装置選定が必要です。
②最新モデルは装置サイズが大型化する
レンズの開口率を大きくするために、最新機種のレンズは大型化しています。レンズの大型化に伴い、装置全体も大きくなります。そのため設置スペースの確保が必要です。
4.半導体露光装置を用いて生産性を上げるポイント
半導体露光装置を用いて、生産性を上げるポイントを紹介します。
(1)他の行程と生産量のバランスが取れているか
半導体の製造は、露光以外にもさまざまな行程があり、そのための専用設備が必要です。例えば他工程の生産能力が低い状態で、露光装置のみを最新機種にしても全体の生産性は向上しません。他工程と生産能力の足並みが揃うよう機械の導入計画を進める必要があります。
(2)導入コストのバランスが取れているか
高額化している露光装置は、目標としている品質と導入コストが見合っていなければなりません。高性能すぎる設備を導入した場合、売上と導入コストが見合っていない場合があります。実際に必要な品質と売上に見合った設備を選択することで、生産性を向上できます。
5.半導体露光装置の主要メーカと製品
ここでは、半導体露光装置の製造・販売を主力としているメーカと製品をいくつか紹介します。
(1)株式会社ニコン
【特徴】
一眼レフカメラや産業用カメラなどで有名な企業です。半導体露光装置でも、世界的に知られている会社です。
【所在地】
東京都港区港南2-15-3 品川インターシティC棟
https://www.ave.nikon.co.jp/semi/lineup/
【製品】
ステッパー方式とスキャナー方式の半導体露光装置で、以下2種の装置を紹介します。
- NSR-SF155(ステッパー方式)
- NSR-S622D(スキャナー方式)
以下より詳しく解説します。
①NSR-SF155(ステッパー方式)
NSR-SF155には、以下3つの特徴があります。
- スカイフック構造を搭載
- 高精度
- 高い生産性
投影レンズを宙づりにする「スカイフック構造」を搭載し、機械の振動による影響を軽減したモデルです。重ね合わせ精度が25nm以下と高精度な上、300mmウェハで毎時200枚以上の高い生産性を実現した装置です。
②NSR-S622D(スキャナー方式)
NSR-S622Dには、以下3つの特徴があります。
- 20nm以下のプロセス量産に対応
- 実行波長134nm
- 高精度かつ高い生産性
超高性能CPUなどの半導体に対応した装置で、20nm以下の微細なデバイスのプロセス量産が可能です。Arfレーザと液浸法を組み合わせ、実行波長が134nmになる短い波長を実現した装置です。Arfレーザと液浸法の組み合わせは、ニコンが世界で初めて製品出荷に成功した技術です。
また重ね合わせ精度が2nm以下と超高精度かつ、毎時200枚以上も生産できる高い能力を持っています。
(2)キヤノン株式会社
【特徴】
家庭用プリンタなどでも有名な日本の企業です。半導体露光装置のシェアでは、世界でも上位のポジションを持っている会社です。
【所在地】
東京都大田区下丸子3丁目30番2号
https://global.canon/ja/
【製品】
ステッパー方式とスキャナー方式の半導体露光装置で、以下2種の装置を紹介します。
- FPA-3030EX6(ステッパー方式)
- FPA-6300ESW(スキャナー方式)
以下より詳しく解説します。
①FPA-3030EX6(ステッパー方式)
FPA-3030EX6には、以下3つの特徴があります。
- Krfレーザステッパー方式を搭載
- IoT関連デバイス対応
- 直径200mm以下の小型ウエハ対応
Krfレーザステッパー方式を搭載し、解像力や重ね合わせ精度を高い水準で作られた設備です。
IoT関連で使用する特殊素材の基盤に対応し、直径100mmの小型ウエハにも対応した機種です。
②FPA-6300ESW(スキャナー方式)
FPA-6300ESWには、以下2つの特徴があります。
- フルサイズCOMSイメージセンサ対応
- 定評のある前工程機のプラットフォームを流用
大広角レンズ搭載で、投影倍率1:3.125を実現し、33mmx42.2mmを一括露光できます。フルサイズのCMOSイメージセンサを一括露光できる世界で唯一の機械です。
また、すでに定評のある前工程機のKrfスキャナープラットフォームを流用することで信頼性のある機械です。
(3)ASMLジャパン株式会社
【特徴】
本社はオランダにある半導体装置メーカです。ヨーロッパとアジアを中心に拠点があり、半導体露光装置世界トップシェアをもつ企業です。EUV露光による半導体露光装置を唯一提供しているメーカです。(2022年1月現在)
【所在地】
東京本社
北品川4-7-354F
御殿山トラストタワービル
https://www.asml.com/en
【製品】
スキャナー方式の以下2機種を紹介します。
- TWINSCAN NXE:3400C
- TWINSCAN NXE:3600D
以下より詳しく解説します。
①TWINSCAN NXE:3400C
TWINSCAN NXE:3400Cには、以下3つの特徴があります。
- 最先端技術EUV露光搭載
- 回路線幅5~7nm対応
- 高精度かつ高い生産性
光の波長が13.5nmのEUV露光を搭載しています。これにより、回路線幅が5〜7nmに対応しています。13nmの高分解能により高精度で、300mmウエハで毎時170枚以上と生産性の高い装置です。
②TWINSCAN NXE:3600D
TWINSCAN NXE:3600Dには、以下2つの特徴があります。
- 最先端技術EUV露光搭載
- NXE:3400Cより高性能
NXE:3400C同様にEUV露光を搭載したモデルです。回路線幅が3〜5nm・生産性も15〜20%向上したNXE:3400Cの上位機種です。
6.半導体露光装置の導入に関するご相談は株式会社FAプロダクツへ
半導体露光装置は、露光する波長や方式の違いによって種類があります。
また導入コストが高額なため、用途に見合う装置を見つけるには時間と手間が必要です。どの半導体露光装置を導入すれば良いか、導入したけど上手く活用できていないなどでお困りの人はFAプロダクツへお気軽にお問い合わせ下さい。
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