X線回折装置とは?選定や活用ポイント・注意点、おすすめメーカ4選
X線回折装置(XRD)とは、分析対象物にX線を照射した際の回折パターンによって、有機・無機物質や高分子、金属などのさまざまな物質の特性を解析する装置です。
生産現場では、薄膜解析による密度や結晶配向性などの品質管理に関わる項目の分析、粉末状の異物などが発生した際に、その物質を特定して発生源対策を行う際によく活用されます。
本記事では、X線回折装置の選び方のポイントや装置導入のメリットやデメリット、X線回折装置を取り扱うおすすめメーカを紹介します。
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目次
1.X線回折装置とは
「X線回折装置:XRD」は、X線の回折を利用してさまざまな材料や製品の特性分析や定性分析ができる装置です。
まずは図1を使ってX線回折装置の原理のイメージを解説します。
図1は、測定したい試料にX線を照射している図です。試料の原子は、いくつかの格子状に、同じ距離を持って並んでいます。
原子にX線を当てると、原子で散乱・干渉・透過が起こり、原子の並びが良いと、最終的に回折したX線が放出されます。
この回折したX線を検出器で捕らえて、データを解析すれば、試料の成分が分かります。
- 入射したX線の角度がθとすれば、入射したX線と回折したX線の角度は、2θとなります。
これは干渉原理の公式で、 2d sinθ=nλ で表されます。
n は回折次数、λはX線の波の波長、d は試料の原子間の距離です。 - 2θは検出器の角度を表し、2θをx軸、X線の強度を y軸にとって、グラフに表すと、図1の右側のグラフのような線図が現れます。
- この線図から、試料の成分が何であるかが分かります。
これはX線回折図パターンで、物質の指紋と言えるものです。 - 世界的なデータベースには、無機物・有機物を合わせ、国際的なデータベースICDDには、約100万件のデータが蓄積されています。
このデータベースと照らし合わせることで、試料が何であるかが分かります。
ただし、照らしわせるまでに、得られた回折データの同定処理が必要です。
図2は、X線回折装置の構成についてのイメージを紹介します。
図1で紹介したように、X線を検査したいものに当てると、原子がきちんと並んでいる試料なら、X線の回折波が出力され、X線検出器で捉えることができます。
X線の強度と回折角度の関係をグラフ化するためにX線発生装置を制御してX線の強度を操作し、回折角度を操作するためにX線検出器が接続されているゴニオメータを制御します。
得られたデータは即座に制御装置に送られ、解析されます。
また、X線解析装置については以下の動画も参考になりますのでご覧ください。
X線回折装置
引用:X線回折装置 | 名古屋市工業研究所 技術情報「なごやなこちゃんねる」
ここまでできる!こんなことがわかる!X線回折分析(基礎編)
引用:【JASIS 2017】ここまでできる!こんなことがわかる!X線回折分析(基礎編) | Rigaku Marcom
開放機器紹介~X線回折装置
引用:開放機器紹介~X線回折装置~ | 地方独立行政法人 山口県産業技術センター
2.X線回折装置の選び方
ここでは、X線回折装置を選ぶ際のポイントについて紹介します。
(1)測定対象物に対応したものを選ぶ
X線回折装置は、以下のようなさまざまな物質の分析が可能です。
- 有機・無機物質の粉末
- 高分子材料
- タンパク質
- 金属部品
- 有機・無機薄膜半導体
- エピタキシャル膜 など
また、解析方法も以下のように多岐にわたります。
- 粉末X線回折
- 単結晶X線回折
- 薄膜解析
- X線小角散乱 など
そのため、製品の開発・研究目的や品質管理目的など、自社でのXRDの使用目的を網羅した上で必要な機能を選定する必要があります。
(2)測定者の経験・スキルに左右されないものを選ぶ
X線回折装置は、測定する対象物や項目によって試料作成や条件設定に経験やスキルが必要な場合があります。品質管理などの目的で使用する際には、測定者による誤差を出にくくするために全自動タイプの装置を選びましょう。
(3)導入前後のサポートが充実しているメーカを選ぶ
X線開設装置は、オプションパーツやアクセサリーの使用によって測定機能拡張も可能です。自社の測定目的を伝えた上で、多角的なアドバイスをくれるメーカを選びましょう。
X線回折装置は、X線を照射するX線管球や試料を回転させるゴニオメータなど、測定精度に特に影響を与えるパーツの交換や定期メンテナンスが必要です。X線回折装置の製造メーカや販売代理店のメンテサービスがしっかりしているものを選択しましょう。
3.X線回折装置の導入メリットと注意点
X線回折装置を導入するうえでは、導入したときにどんなメリットが得られるのか、どんなところに注意しなければならないのか、事前に把握することが大切です。メリット・デメリットを以下にまとめましたのでご参考ください。
(1)X線回折装置導入のメリット
①製品や材料の特性を詳細に分析できる
X線回折装置は、結晶密度や配向度など製品特性に直接影響するような微小レベルの分析・測定が可能です。そのため、研究開発などの基礎分析はもちろん、製品の品質管理までさまざまな工程に活用できます。
②製造ラインのトラブル対策に活用できる
製造ラインでの品質管理はもちろんですが、生産中に製品欠陥が発生した際の発生源特定などにも利用できます。
③高レベルな品質管理ができる
X線回折装置の導入によって測定できる項目が増えれば、製造条件や品質管理項目の最適化も可能です。歩留まりの向上など、直接的な生産上のメリットはもちろん、幅広い顧客の製品納入規格要望にも対応でき、受注を増やすことも不可能ではありません。
(2)X線回折装置導入の注意点
①X線回折装置だけでは分析できないものがある
X線回折装置は、定性分析において直接的に対象物質の成分を分析することはできません。そのため、未知の物質の分析の際には、既知の物質の回折パターンを参考に同定する必要があります。
②試料の採取や分析準備に工数がかかる
X線回折装置で分析したいものが表面に完全に露出している場合は、比較的簡単に分析ができます。
しかし、例えば生産ラインで問題が発生した場合など、対象となる物質が埋没している際などには、現物の採取が必須です。例えば測定対象の金属状物質がポリマーなどに埋没していると、分析面を露出させなければいけません。
③分析担当者の経験・スキルが分析に影響する
X線回折装置を使用する担当者の経験やスキルによって、分析に時間がかかったり分析精度が変わる場合があります。化合物の同定などの分析結果は、既知の物質の回折パターンと照合することで判断します。そのため、判定結果についても担当者の経験や判断力が影響します。
X線回折装置の使用者はライセンス付与制にするなどの対応が必要であり、分析試料の採取や測定準備についてもそれなりの教育時間が必要になります。
4.X線回折装置を用いて生産性を上げるポイント
上記のメリットや注意点を踏まえて、X線回折装置を用いて製造ラインにおける生産性を向上させるポイントをご説明します。
(1)解析データを蓄積する
X線回折装置で試料物質を同定するためには、既存の物質との照合が必要になります。そのため、分析結果の精度向上や判断時間の短縮のためには、自社での発生が想定される物質の回折パターンデータの蓄積が重要です。
また、X線回折装置の分析結果と分析対象物の外観、生産ライン内の欠点検査機の画像などを一緒にデータに残すことで、類似した欠点などが発生した際の判断の助けとなります。
(2)分析タイミングを明確にする
X線回折装置は、生産ライン内で判断ができない欠点(異物や汚れなど)が発生した際にも活躍します。生産中に発生した欠点が致命的なものならば、発生源対策が必須となり、場合によってはライン停止と欠点の現物採取が必要になります。
そのため、欠点の品質保証状の評価ランクや発生状況によって、X線回折装置による分析タイミングなどのアクションプランを決めることが歩留まりの維持・向上には必須です。
(3)自社の分析目的にあった装置を選ぶ
自社で分析したい対象物や解析したい内容によっては、SEM-EDSやFT-IRのような他の解析装置を選ぶか、さまざまな解析装置を併用するといった対応が必要です。
解析装置によっては導入が高コストなだけでなく高度な専門スキルが必要です。
常に検査の必要がないのなら、自社内に別途専門の分析部署を設ける必要はなく、外部委託の対応で十分です。
5.X線回折装置のおすすめメーカと取扱い製品
さいごに、X線回折装置のおすすめメーカ4社と、それぞれの取扱い製品の特徴をご紹介します。
(1)株式会社島津製作所
【特徴】
・分析計測機器のみならずさまざまな産業に対応した部品も取り扱う大手メーカ
・X線回折装置をはじめとした計測機器導入実績が豊富で顧客ニーズに幅広く対応可能
・日本だけでなく世界で導入実績がありメンテナンスサービスまで充実
【取り扱いX線回折装置】
島津製作所では、2種類のX線回折装置に加えて、ワイドレンジ高速検出などのオプション検出器やシステムパッケージを取り扱っています。ここでは、X線回折装置を2シリーズ紹介します。
①XRD-7000
画像引用:株式会社島津製作所・XRD-7000
超大型試料(最大幅400mm×奥行き550mm×高さ400mm)に対応した試料水平型ゴニオメータを設置しており、平行ビーム光学系の採用によって凹凸形状の試料の解析にも対応。
②XRD-6100
画像引用:株式会社島津製作所・XRD-6100
縦型高精度ゴニオメータを搭載し、装置サイズが「幅900×奥行き700×高さ1600mm」とコンパクト設計で、高精度の角度再現性を実現しています。
【所在地】
〒604-8511
京都市中京区西ノ京桑原町1番地
TEL.075-823-1111
https://www.shimadzu.co.jp/
(2)株式会社リガク
【特徴】
・1951年創業のX線分析・熱分析・X線非破壊検査機器の専門メーカ
・半導体、エネルギー、環境、医薬品など多くの分野の解析に貢献
・アメリカやヨーロッパ、中国を始めとしてグローバル展開中
【取り扱いX線回折装置】
測定者の経験やスキルに左右されないための全自動型X線回折装置や、卓上タイプの小型装置など、実使用を考え抜いたシリーズ展開を行っています。
①SmartLab
画像引用:株式会社リガク・SmartLab
全自動での多目的解析ができるX線回折装置で、測定したい項目や材料に応じて装置が最適条件を指示してくれるガイダンス機能があります。そのため、専門的な分析経験・スキルがなくても、配向測定や薄膜材料測定を行うことができます。
②MiniFlex XpC
画像引用:株式会社リガク・MiniFlex XpC
試料ローディング機構も備わった、品質管理目的での使用に最適化されたX線回折装置。連続測定を想定しており、5年間相当の長期的な耐久性を実現しています。
【所在地】
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-14-4
東京支店
TEL. 03-3479-6011
FAX. 03-3479-6171
https://japan.rigaku.com/ja/
(3)ブルカージャパン株式会社
【特徴】
・1960年に世界で初のNMR分光計を開発
・ミクロ、分子、細胞レベルでの高性能な科学機器と分析・診断ソリューション展開
・全世界90か所以上の拠点に6,000人以上の従業員が在籍
【取り扱いX線回折装置】
BRUKERのX線回折装置は、基礎研究はもちろん品質管理まで対応可能なシリーズ展開をしており、卓上タイプのX線回折装置も取り扱っています。
①D8 DISCOVER シリーズ
実験室系X線回折装置の中でも測定内部空間が最大級の装置で、BRUKER独自技術が豊富に盛り込まれています。ステージオプションやウェハー用真空チャック、雰囲気制御アタッチメントなどのアクセサリーもあるため、幅広い測定がこれ一台で可能です。
②D2 PHASER
画像引用:BRUKER・D2 PHASER
卓上タイプのX線回折装置で、複雑な光学系調製などを必要とせず、電源コンセントがあればどこでも使用可能です。オプションではありますが、6サンプルのチェンジャー機構もあり、高い測定品質・速度の両立が可能です。
【所在地】
〒104-0033
東京都中央区新川1-4-1
TEL. 03-3523-6361
Fax. 03-3523-6364
https://www.bruker.com/ja.html
(4)スペクトリス株式会社
【特徴】
・精密計測や制御機器の開発販売を行う8企業を傘下に持つグローバル企業体
・英国に本社を置き世界30か国以上に約7,900人の従業員が在籍
・X線回折装置は、マルバーン・パナリティカル事業部で取り扱い
【取り扱いX線回折装置】
スペクトリス株式会社のマルバーン・パナリティカル事業部では、粉末や半導体薄膜などさまざまな材料を一台で分析できるオールインワンのX線回折装置を取り扱っています。
①Empyreanシリーズ
多目的な研究用の使用を目的としたX線プラットフォーム。高効率かつ長寿命のX線管球や正確に角度を測るゴニオメータを持ち、さまざまな形態のサンプルを1分ほどの短時間で高分解能測定が可能です。
【所在地】
〒105-0013
東京都港区浜松町1-7-3 第一ビル
マルバーン・パナリティカル事業部
TEL. 03-5733-9511
Fax. 03-6735-8974
https://www.spectris.co.jp/
6.X線回折装置導入に関するご相談はFAプロダクツへ
X線開設装置は、有機・無機物質や金属、高分子といったさまざまな物質の特性測定や定性分析ができます。そのため、半導体メーカや製薬メーカなどで研究開発目的はもちろん、生産品の品質管理にも利用されています。
X線回折装置による測定方法や測定対象物は幅広く、さまざまなオプションやアクセサリーを使用して多角的な測定が可能です。そのため、自社の目的に合致したX線回折装置を選定する際に、どこから調べればいいか迷うこともあるでしょう。
FAプロダクツでは、これまでの実績をもとに、X線開設装置の導入や、FA化による生産性の向上に関して、それぞれの工場にとって最適なアドバイスを行っております。お悩みの方は、お気軽にご連絡ください。
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