NC工作機械とは?特徴や種類、メリットとデメリット、用途例
NC工作機械は製造業界に革命をもたらしたとも言える、今では製造業に無くてはならない機械です。
この記事では、NC工作機械の基本から種類をはじめ、導入のメリットとデメリットやポイントに加えて具体的な用途、そして今後の技術発展までを詳しく解説します。
NC工作機械の導入を検討中の方や、お悩みのある方はぜひ本記事を活用してください。
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目次
1.NC工作機械とは?NC加工、種類
NC(Numerical Control、数値制御)工作機械とは、入力された数値により工具を制御して加工を行う工作機械で、さまざまな材料の精密な加工に用いられています。
その幅広い用途や高い加工精度から、NC工作機械は製造業における部品加工の中核として重要な役割を果たしており、今日では製品の品質向上や生産の効率の向上に寄与しています。
本項では、NC工作機械の概要や種類について解説します。
(1)NC加工とNC工作機械
NC加工とは、数値制御装置により工作機械の動きを数値制御しながら切削する加工方法です。NCとは「Numerical Control=数値制御」を意味し、切削条件を入力することで作業を自動化することができます。
加工図面を元に手動で材料を加工する際には、工具を何rpmで回転させ、何m/sの速度でどの向きにどのように動かすか、加工したい材料をどちらに何mm傾けるかなどの、細かな工具や材料の制御が必要となります。
手作業の場合、これらの制御は作業者の感覚を頼りに行われますが、NC加工を行うNC工作機械では感覚による調整をパラメータとして数値化し、その数値を元に工具をコントロールして加工するため、切削の自動化だけでなく精密な加工も実現します。(図1)
NC工作機械は複雑な形状の部品の加工や、繰り返し大量に行う加工など人間の苦手とする加工を担うことで、製造業を支えています。
図1 NC加工イメージ
(2)NC工作機械の種類|NC旋盤、NCフライス盤、マシニングセンタ、ターニングセンタ
NC工作機械には用途や加工方法の異なるいくつかの種類があり、さまざまな分野で活躍しています。
主なNC工作機械の種類を紹介します。
①NC旋盤
旋盤とは、材料を土台に取り付けて回転させ、工具を押し当てることで不要な部分を削り、目的の形状に加工する工作機械です。
その構造上の特徴から、主に円筒形の部品の加工が得意です。
NC旋盤は、この工具の押し当て位置や深さを軸方向や径方向の数値として制御することで、自動で加工を行う旋盤です。
NC旋盤については以下の記事も参考になります。
②NCフライス盤
フライス盤とは、土台に固定した材料に回転する工具を押し当てて削ることで、目的の形状に材料を加工する加工機械です。
材料に対して自由に工具を当てることができるため溝入れや穴あけ、座ぐりなど平面加工が得意です。
NCフライス盤は、これらX軸、Y軸、Z軸の三次元方向の加工量を数値パラメータとして動作するため、複雑な形状の部品も精密に加工することができます。
③マシニングセンタ
マシニングセンタとは、NCフライス盤に自動工具交換装置を搭載したNC工作機械です。
従来NCフライス盤では工具交換のために機械を停止させ、人の手で工具交換を行います。そのため複数の工具が必要となる形状の場合、加工時間が長くなりやすいという欠点があります。
マシニングセンタは自動工具交換装置を備えているため、複数の工具を使用するフライス加工でも効率的に加工を行うことができます。
また、X軸、Y軸、Z軸に加え、材料の回転(C軸)を備えた4軸マシニングセンタや、4軸に材料の傾斜(B軸)を加えた5軸マシニングセンタといった多軸マシニングセンタを導入することで、曲面などの複雑な形状にも対応可能です。
マシニングセンタについては以下の記事も参考にしてください。
④ターニングセンタ
ターニングセンタとは、NC旋盤の機能を基本とし、マシニングセンタのもつフライス加工機能や自動工具交換装置も搭載したNC工作機械です。
複合加工機とも呼ばれ、複数の工具を切り替えながらの旋盤加工を行いつつ、穴あけといったフライス加工にも対応することができます。
加工の柔軟性があり、多くの工程を自動化することで生産性向上に大きく貢献します。
NC工作機械については以下の動画も参考にして下さい。
引用:NCプログラムの基礎(加工シーンダイジェスト)
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2.NC工作機械のメリットとデメリット
NC工作機械は導入メリットが大きい反面、NC工作機ならではのデメリットも存在します。
NC工作機械のメリットとデメリットを解説します。
(1)メリット
NC工作機械のメリットについて解説します。
①高精度
NC工作機械の最大のメリットの一つは、人間の手では難しい高精度な加工が可能な点です。
入力した数値により工具を制御することによって、μm単位の精度で加工を行うことができます。また、曲線の多い加工や微細な加工など、熟練の作業者にしか不可能な加工も難なく行うことができます。
②高効率
NC工作機械は材料のセットとプログラム設定さえ行えばあとは自動で加工を行ってくれるため、作業効率が高くなります。
従来工具の交換や加工に要していた時間を他の工程へあてることができ、作業全体を通して効率化できるのが大きなメリットです。
③安全性
NC工作機械の導入により、事故のリスクを減らすことができます。
手作業による旋盤やフライス盤加工は、作業者の切創や機械への巻き込まれといった事故のリスクが常に存在します。
NC工作機械への安全カバーの設置や操作マニュアルを整備すれば、さらに安全な作業環境を実現できます。
(2)デメリット
NC工作機械のデメリットについて解説します。
①コスト
NC工作機械の導入には、高額な初期投資が必要です。
NC工作機械自体の機器費に加え、制御装置やソフト費用、設置工事費用や機器インフラなど周辺設備の導入費用がかかります。
導入の際はメンテナンスや消耗品の交換などにかかるランニングコストも考慮し、長期的な目線で費用対効果を検討しましょう。
②プログラム習得コスト
NC工作機械を効果的に運用するには、加工プログラムの習得が必要です。
プログラム知識の習得のための教育もあらかじめ導入計画に含んでいないと、NC工作機械による作業効率化のメリットが薄くなるでしょう。
また、加工ごとにプログラム設定が必要となることから、段取りが一つ増える点も忘れてはいけません。
3.NC工作機械導入時のポイント
NC工作機械の導入にあたり重要な検討ポイントを解説します。
(1)機器選定
NC工作機械の選定には、現場のニーズに適した機器を選ぶことが重要です。効率化したい作業や工程に合わせた機器選定を行わないと、思うように効率化されない可能性があります。
例えば以下のような選定ポイントが考えられます。
・加工したい材料に対応した機種を選定
・複雑な形状の加工が多い場合は、軸が多く複雑な形状に対応したNC工作機械を選定
・複数の工具を使った加工が多い場合は、工具交換を自動で行える機種を選定
NC工作機械導入の目的を明確にし、目的に合った機種を選定することが最も重要です。
(2)設置環境の整備
NC工作機械を導入する際は、パフォーマンスを最大限に引き出すために設置環境の整備が必要です。
機器の定格電圧を満たす安定した電圧源と、必要な圧力を満たしている乾燥した圧縮空気といった用役はもちろん、他の機器から振動が伝わらない基礎や振動対策を検討することも、重要です。さらに、加工部品に影響を及ぼす温湿度の変動がないこと、作業者による材料取り換えや機器メンテナンスに必要なスペースの確保など、事前に検討すべき設置環境は多岐にわたります。
(3)オペレーター教育
NC工作機械の効率的な運用には、オペレーターの教育が不可欠です。
加工材料や工具をセットするなどの操作技術はもちろん、最も重要なのは加工プログラムの習得でしょう。
社内での勉強会を行ったり、知識のある作業者による講習を行うことで技術を浸透させる必要があります。
自社での教育が難しい場合などは、NC工作機械メーカーが行うプログラミング講座を利用すると良いでしょう。
効率的な作業を行うためはもちろん、安全な作業を行うためにもオペレーター教育はとても大切です。
(4)メンテナンス計画
NC工作機械を長持ちさせ長期的に運用するには、計画的なメンテナンスが必要です。
稼働時間が長くなりがちな工作機械は、適切なメンテナンス計画を立て運用することで、寿命を伸ばし故障のリスクを下げることができます。
潤滑油量やエア圧力、異音点検などの日常点検はリスト化して毎日実施し、NC工作機械を停止させて行う定期点検も時期を決めて実施することが安定稼働に効果的です。
また、交換部品のリスト化や手配、分解点検の日程などをあらかじめメーカーと打合せておくことも大切です。
4.NC工作機械の用途例
NC工作機械は、さまざまな産業分野で幅広く活用されています。
代表的な用途について解説します。
(1)機械部品
NC工作機械は、一般的な機械部品全般の製造において広く活躍しています。
シャフトやボルトなど、軸の加工を高い精度で大量に行う工程は、NC工作機械が特に得意とする加工です。
NC工作機械は、高品質の部品を均一に大量生産することが多い機械産業の基盤を支えています。
(2)医療分野
医療分野においてもNC工作機械は欠かせない存在です。
特に複雑な形状でも自由に加工が可能なマシニングセンタは、手術に用いられるさまざまな器具をはじめ、人口歯を固定する歯科用インプラントや、骨の代わりとして用いられる人口関節や人口骨の加工にも利用されています。
NC工作機械は、チタンなどの削るのが難しい材料であっても、プログラムした形状に加工できるという強みを活かして医療分野に貢献しています。
(3)自動車
自動車産業も、NC工作機械の主な利用分野の一つです。
エンジン内のシリンダーやクランクシャフト、ブレーキディスクといった高い精度が求められる主要部品の加工に、NC工作機械の持つ高精度加工が可能という特徴が活かされています。
また、EV化が進み内燃機関の採用が減少している自動車業界においても、バッテリーケースや電動モーター部品などには依然として高い工作精度が要求されています。そのため、NC工作機械は自動車産業においても引き続き重要な役割を果たしていくと考えられています。
(4)航空宇宙
航空宇宙産業においても、NC工作機械の高精度加工に需要があります。
複雑な形状を加工可能なマシニングセンタは航空機エンジン部のタービンブレードや翼の部品など、大型でありながら高精度が要求される部品の製造に使用されています。
また、人工衛星の部品製造にもその高い加工精度が活かされています。
(5)その他
NC工作機械はその他にも、スマートフォン筐体や電子機器、家具となる木材の削りだしなど、私たちの生活になくてはならないさまざまな製品の加工に利用されています。
5.NC工作機械の今後の発展
NC工作機械は、技術の進歩と共に日々進化を続けています。NC工作機械をとりまく未来の技術発展について解説します。
(1)技術ノウハウの数値化による技術躍進
NC工作機械の発展により、技術ノウハウの数値化による技術躍進が期待されています。
NC工作機械の普及は進んでいるものの、依然として手作業による工程は存在し、その多くは熟練作業者の感覚に基づいた技術に支えられています。
今後のNC工作機械の技術的進歩によって、多軸化や一度に複数箇所の加工を可能とするといった機能だけではなく、これら職人的技術の自動化も期待されています。
高精度でありながらも自動で、安全に大量生産を可能とするNC工作機械は、将来の人手不足を解決する重要な技術であると言えるでしょう。
(2)AIとの協業によるNC工作機の進化
機械としての技術進歩のみならず、ソフト面での技術躍進も日々目を見張る勢いです。
3Dデータを元に加工プログラムを自動で生成する技術のみならず、加工前の干渉確認をシミュレーションできるようにもなってきました。
また、加工実績のビッグデータからの機械学習により、最適な加工方法を自動で算出するAIの研究も進んでいます。将来的にオペレーターはプログラミングの負担から開放され、より生産的な検討に工数を割くようになり、製品開発はより迅速で効率的に進化していくと考えられています。
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