工事の現場やイベント運営で活躍するトランシーバを使いやすく、便利にしたのがIPトランシーバです。
従来のトランシーバをはじめとする無線機とは異なり、携帯電話通信網を利用した長距離通信が可能で、免許不要で導入できる点が魅力です。

本記事では、IPトランシーバの基本的な仕組みやメリット・デメリット、選び方のポイントを詳しく解説するとともに、国内の主要メーカー20社を紹介します。
IPトランシーバの導入を検討している方は、ぜひ本記事をご参考にしてください。

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１．IPトランシーバとは？

IP（Internet Protocol）トランシーバは、LTE（Long Term Evolution）トランシーバーとも呼ばれていて、携帯電話の電波を利用して通信を行うトランシーバです。
IPトランシーバの仕組みや利用分野について解説します。

（１）IPトランシーバの仕組み

通常のトランシーバは話す側の機器本体から電波を発し、聞く側が電波を直接受信することで通話を行います。

しかしIPトランシーバは、相手側ではなく既存の携帯電話用通信網に向けて電波を発し、受け取り側は携帯電話通信網を介して電波を受け取ることで通話を行います。

この通信方法により、IPトランシーバはお互いに携帯電話会社の電波を受信できる状況であれば、全国どこにいても通話ができます。
IPトランシーバ間に電波を通しにくい遮蔽物があったり、距離が離れていたとしても、それぞれのIPトランシーバが携帯電話基地局の電波を受信できてさえいれば通話が可能なのが最大の特徴です。（図１）

図１　IPトランシーバの仕組み

（２）IPトランシーバの用途

屋外と屋内、室内と室外など通常のトランシーバでは通話がしにくい環境でも、IPトランシーバならばスムーズな通話が可能です。
IPトランシーバの主な利用場面を紹介します。

①工事現場

ビル工事における上の階と下の階での通話や、トンネルの入口と出口など、通常のトランシーバであれば障害物によって通話が難しい環境でIPトランシーバが活躍しています。
機器同士が建物で隔てられていたり、屋外と屋内での通話が必要なシチュエーションでも、IPトランシーバは通常の無線機に比べてクリアな音質であり声が聞き取りやすく、工事現場での使用に適しています。（図２）

図２　IPトランシーバの用途

②イベント会場

広いイベント会場の離れた場所同士での通話や、複数の部屋の外と中などで、IPトランシーバの持つ「どこでも通話ができる」という特徴が活かされています。
IPトランシーバの機種によっては複数人での同時通話が可能なものもあり、イベント運営などのリアルタイムの連絡が重要となるシーンでもIPトランシーバが活躍します。

③駅や空港

広い駅や空港では、作業者の距離が離れやすく、また障害物も多いため、IPトランシーバが便利です。

④医療現場

建物の別フロアでの通話が必要な医療現場などでもIPトランシーバが利用されています。

【参考動画】IPトランシーバについては以下の動画も参考になります。

引用：無線ＬＡＮトランシーバーの機能＆通信距離テスト　アイコムのＩＰトランシーバー IP100Hを試してみた

引用：【IP無線とは】概要と無線機、トランシーバー、インカムとの違い

２．IPトランシーバのメリットとデメリット

IPトランシーバのメリットと主な用途について解説します。

（１）IPトランシーバのメリット

IPトランシーバのメリットについて解説します。

①長距離通信が可能

IPトランシーバは機器同士がどれだけ離れていても、それぞれの機器が携帯電話の電波を受信可能であれば通話ができるため、基本的に距離の制約がありません。
機器間に遮蔽物があり通常のトランシーバでは通話が難しい環境や、距離が離れていても通話が可能なことがメリットです。

引用）https://www.next-gears.net/how-to/wirelessdevice/2713/

②電波使用届出が不要

通信のために無線機を導入する場合、無線機の種類や用途により電波法第二十七条の二十一に則り「無線局の登録申請手続き」が必要となります。
しかしIPトランシーバは独自の無線局としての電波を使用せず、携帯電話用の電波を使用するため無線局としての届出は不要で、導入したらすぐに使用することができます。

③IPアドレスによるセキュリティ

IPトランシーバは機器に割り振られたIPアドレスを用いて通信を行うため、通常の無線機のように近い周波数の電波を拾ってしまい混信し、通話を聞かれてしまうことがありません。また、意図的に通信を傍受して会話を聞かれてしまうリスクもないため、セキュリティ面で安全性が高いのもメリットの一つです。

（2）IPトランシーバのデメリット

メリットの多いIPトランシーバですが、IPトランシーバならではのデメリットもあります。

①繋がりにくい地域がある

IPトランシーバは携帯電話の電波を利用して通信を行うため利用範囲が広いという利点がありますが、その反面、携帯電波の電波が届かなければ通話ができません。
特に屋外でも、基地局の電波の届きにくい山間部や、標高の高い地域においては通話ができない可能性があります。
また同様の理由から、地下においても電波が届きにくく通話ができないことも多いでしょう。

②電波利用料が1台ごとに発生する

IPトランシーバは通話に携帯電波の電波を利用するため、通信には1台ごとに電波の利用料がかかります。

３．IPトランシーバを選ぶポイント

IPトランシーバ導入における機種選定ポイントを解説します。
届出不要なため活用シーンが増え、メーカー各社よりさまざまな機種がリリースされていますので、導入環境に応じた機種選定を行うことが重要です。

（１）使用場所

IPトランシーバを屋外で使用する予定であれば、防塵性能、防滴性能を考慮して機種を選ぶのがポイントです。
過酷な環境での使用を想定された機種も多く、防水対応の機種や耐久性を売りにした機種もリリースされています。
化学プラントでの使用であれば防爆対応製品を選定したり、使いやすさを求めるのであればタッチパネル付きの機種を選定することもできます。
また自動車など車内で使用するのであれば車載型のIPトランシーバの選定も視野に入れましょう。

（２）同時通話数

通常のトランシーバは一方向のみの通話しかできませんが、IPトランシーバは機種により複数機器の同時通話が可能です。
一方的な連絡だけではなく、双方向的な通話が想定される場合や、グループでの通話が必要な場合、このような機能をもつ機種を選定しましょう。

（３）音質と遅延

通話における音質も重要な選定ポイントです。
IPトランシーバは通常のトランシーバよりも音質はクリアな傾向ですが、周囲の音が大きい環境などで使用する場合は音質ができるだけクリアな機種が良いでしょう。

また、IPトランシーバは音声のデジタル変換によりわずかに遅延が生じてしまうので、遅延が問題となる現場であれば、遅延の少ない機種を選定することも重要です。

（４）バッテリー性能

長時間の連続使用が想定される場合、途中で使用が中断されないためにもバッテリー性能が良いものを選定するのがポイントです。作業途中で充電を行う想定の場合、機器の充電時間もあらかじめ確認しておきましょう。

４．IPトランシーバの主要メーカー20選！

ここでは、IPトランシーバの主要メーカをご紹介します。

アイコム株式会社	【特徴】 陸上無線や海上無線からIP無線まで、あらゆるジャンルの無線機を取り扱う総合無線メーカーです。 国内生産にこだわった信頼性の高さと、最新技術を取り入れた豊富な製品ラインナップが特徴です。国内無線機メーカーの老舗として知られています。 【所在地】 〒547-0003 大阪市平野区加美南1-1-32 【お問合せ】 https://www.icom.co.jp/contact/
八重洲無線株式会社	【特徴】 業務用からレジャー向けまで、プロの仕事を支える高い信頼性の無線機を開発、製造している無線機メーカーです。国内無線機メーカーの老舗であり、特徴である耐久性の高い無線機は過酷な現場での使用に向いています。 【所在地】 〒140-0013 東京都品川区南大井 6-26-3　大森ベルポート D館 【お問合せ】 https://www.yaesu.com/jp/contact/index.html
アルインコ株式会社	【特徴】 建設用足場や作業車といった建設機材やDIY用品を手がけるアルインコ株式会社は、IPトランシーバをはじめとする自社製無線機の製造、販売も行っています。建設分野での知見を活かした便利な無線機を含め、現場機材を総合的にフォローします。 【所在地】 東京本社：〒103-0027 東京都中央区日本橋2-3-4 日本橋プラザビル 大阪本社：〒541-0043 大阪市中央区高麗橋4-4-9 淀屋橋ダイビル 【お問合せ】 https://www.alinco.co.jp/contact/
株式会社テレコム	【特徴】 無線機と車載機を一緒に揃えられるをテーマに、無線機やIPトランシーバに加えて車載無線機やドライブレコーダー、置き去り防止装置といった車載機器のラインナップに力をいれているのが特徴です。自動車と無線を組み合わせた業務を総合的にフォローします。 【所在地】 〒224-0051 神奈川県横浜市都筑区富士見が丘15－6 【お問合せ】 https://www.telcom-net.co.jp/contact.html
ソフトバンク株式会社	【特徴】 大手通信キャリアであり通信エリアの広さや安定性が特徴です。警報や災害情報を配信する緊急速報に対応するなど、キャリアならではのサービスが特徴です。 【所在地】 〒105-0022 東京都港区海岸１丁目７−１ 東京ポートシティ竹芝オフィスタワ 【お問合せ】 https://tm.softbank.jp/form/mobile/201sj/index.php?_gl=1*akln9l*_gcl_au*NDg3MTQ1Nzg5LjE3MjIxMzU1MTk.
株式会社インカム	【特徴】 メーカー代理店として使用環境や用途、通信距離や使用人数などの条件から適切な機種選定までをお手伝いしてくれます。業務の効率化から災害対応まで、あらゆるニーズに合う豊富な機種をラインナップしています。 【所在地】 東京オフィス：東京都杉並区荻窪4丁目32番10号第一健康ビル7F 京都オフィス：京都府向日市森本町前田27番地10 【お問合せ】 https://www.incom.ne.jp/contact/
モバイルクリエイト株式会社	【特徴】 ハンディ型IPトランシーバや車載型IPトランシーバをラインアップしています。位置情報管理システムが標準搭載されているのが特徴であり、バスやタクシー、物流の最適な運行を通信と位置情報の両方からサポートします。 【所在地】 〒870-0823 大分県大分市東大道2丁目5番60号 【お問合せ】 https://mobacre.jp/contact/
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社	【特徴】 大手通信キャリアであり通話範囲の広さや災害に強いと言われるNTT通信網の信頼性が特徴です。通常の個別通話に加えて登録したグループで通話するグループ通話機能など、使いやすい機能を備えています。 【所在地】 東京都千代田区大手町2－3－1大手町プレイスウエストタワー 【お問合せ】 https://www.ntt.com/contact.html
第一電子株式会社	【特徴】 プリンターやクラウド録画カメラなど、オフィス環境の業務効率化サービスを展開するメーカーで、アプリ方式のIPトランシーバを提供しています。専用アプリによる翻訳や通話のテキスト化など、快適な業務環境を支援します。 【所在地】 兵庫県神戸市西区伊川谷町有瀬３０１番地 【お問合せ】 https://www.ddk.ne.jp/pages/570/
株式会社熊本無線	【特徴】 無線機や無線システムの販売、リース、保守、工事を行っています。自治体やイベント会場向け機材も取り扱っていて、幅広い業種や現場をサポートします。 【所在地】 〒860-0004 熊本県熊本市中央区新町3丁目2番26号 【お問合せ】 http://kumamotomusen.com/contact/index.php
東京通信機株式会社	【特徴】 無線機を専門とした販売、レンタルを行っています。創業より無線の専門家として、ユーザーニーズに応える製品ラインナップと手厚いサポートを提供しています。カメラやネットワーク機器の取扱いもあり、総合的な現場の通信システム構築が可能です。 【所在地】 〒170-0011 東京都豊島区池袋本町2-39-14（東京通信機第3ビル3F） 【お問合せ】 https://www.to-tsu.jp/contact/
京浜蓄電池工業株式会社	【特徴】 バッテリーや電装部品、ナビやスピーカーなど車載機器全般を取り扱っています。IPトランシーバも車載型、ハンディ型の取扱いがあり、現在地表示と組み合わせた管理システムの構築が可能です。 【所在地】 〒230-0046 神奈川県横浜市鶴見区小野町56-4 【お問合せ】 https://www.keihin-battery.co.jp/contact/
ＪＲＣモビリティ株式会社	【特徴】 車載用レーダーやセンサー類やインフラ向け通信機器の製造、販売を行っています。サーバーを含めたシステム全体の開発、提案が可能です。 【所在地】 東京都中央区日本橋人形町2-31-11 【お問合せ】 https://www.jrc-m.co.jp/contact/index.html
モトローラ・ソリューションズ	【特徴】 高い世界シェアを誇る無線機メーカーであり、その品質は軍用品に採用されるほどであり、高い性能と堅牢性を誇ります。厳しい社内基準をクリアした高品質な無線機は、世界中の過酷な現場で使用されています。 【所在地】 〒101-0021 東京都千代田区外神田4丁目14番1号 【お問合せ】 https://www.motorolasolutions.com/en_xp/engage/webapp/get-in-touch.html
株式会社タックブレイン	【特徴】 無線機の長期レンタルや利用額に応じた割引に対応しており、使用環境に応じた機種選定もしてくれるのが特徴です。デモ機貸出に対応していて、本番環境でのテストがしやすいのが嬉しいポイントです。 【所在地】 東京オフィス：〒144-0055 東京都大田区仲六郷3-32-2-105 【お問合せ】 https://www.takbrain.com/contact
三和システムサービス株式会社	【特徴】 主要なメーカーはほぼ全て取扱いが可能で、近距離用の無線機から遠距離用の衛星電話まで幅広く製品を取り揃えているのが特徴です。さまざまな用途にあわせた製品の提案が可能です。 【所在地】 〒330-0851 埼玉県さいたま市大宮区櫛引町1丁目127番地 【お問合せ】 https://sanwa-system-service.com/contact_us/
シンエイ商事株式会社	【特徴】 業務用無線の販売、点検、サポートまで幅広く対応しています。無線機やIPトランシーバに加え、カメラと組み合わせた通信システムの構築が可能です。 【所在地】 〒110-0005 東京都台東区上野2-12-18 池之端ヒロハイツ603 【お問合せ】 https://www.shineishouji.com/contact/
ハイテラ　コミュニケーションズ	【特徴】 高いコストパフォーマンスをもつ中国の業務用無線機メーカーであり、世界各国でシェアを拡大しています。防爆対応など、各種プラントなどの現場に対応した製品をラインナップしています。 【所在地】 東京都千代田区外神田三丁目６番１号 【お問合せ】 https://www.hytera.jp/contact-us-1/
株式会社城山ホールディングス	【特徴】 業務用無線をはじめ、車載用運送管理機器、オフィス関連機器などを総合的に取り扱っています。無線機導入に関するコンサルティングも行っているのが特徴です。 【所在地】 兵庫県姫路市飾東町豊国289-1 【お問合せ】 https://www.shiroyama.co.jp/contact-shiroyamaholdings/
株式会社オンザウェイ	【特徴】 用途に合わせた機種選定から導入まで、無線機導入を総合的にサポートします。メンテナンスやバッテリ交換、さまざまな保証や保管までを含んだオリジナルのリースサービスが特徴です。 【所在地】 〒194-0013 東京都町田市原町田5-14-18 【お問合せ】 https://ontheway.co.jp/contact/

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