IP無線機とは?原理と特徴、無線機の種類や携帯電話との違いを解説
遠くにいる人と通話するというだけであれば、通常の電話や携帯電話などで十分でしょう。しかし、業務上、常に通話状態にしておく必要があり、必要時には即時の応答が求められる場合には、通話のたびにダイヤルを回す携帯電話ではなく、無線機がベストな選択と言えます。
このコラムでは、無線機の中でも特にIP無線機について、原理や使用上の利点や欠点、携帯電話との違いなどを紹介します。
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目次
1.IP無線機とは|原理や電話との違い
ここでは、IP無線機について解説します。
(1) 電話網の仕組みとIP無線機
IP無線機は携帯電話網を利用して、通信を行う無線機です。
はじめに、いくつかの電話網の種類ごとに仕組みを紹介します。
図2では、電話の種類ごとの概要を紹介しています。
➀アナログ電話
公衆電話網(PSTN)によって、発信者と受信者を接続します。
PSTNの中で共有される電話交換機によって、回線で多くの加入者を接続します。
②IP電話
IP(インターネットプロトコル)の通信方式で、音声データの送信と受信を行います。
インターネット回線を通して、デジタルパケット化された音声信号を送受信します。
③携帯電話
Docomoやauのような通信会社が基地局の電波塔を全国に設置し、携帯電話網を構築しています。
携帯電話はこの携帯電話網に接続し、ネットワークを介して全国のどこからでも通話ができます。
④IP無線機
携帯電話網を利用して、無線機同士での通話を行います。携帯電話と同様の範囲で使用できる上、音声信号がパケット化されるため携帯電話網が乱れても、音声の品質が保たれます。
(2)電話と無線機の違い
無線機はタクシー、バス、電車、工事現場などで使われます。
無線機を持つ人が多くいても、1つの無線機からの発信が、他の無線機にも同時に伝わり、必要な人が応じれば良いため呼び出す無線機を指定する必要もありません。
図1は、建屋B、C棟それぞれの配線・機器の工事を行う場面で、無線機を使って作業を進めるイメージを表しています。
工事前に建屋Aにある大元電源を切り、B、C棟の安全を確保した上で、工事を着工します。
大元の電源の切・入りの手順や、勘違いがあると大きな事故が起こるので、作業主任者、作業者X,Y,Zの連携と報連相が確実に行われなければなりません。それらを支える道具が、無線機です。
無線機の良い点は、発信した内容が、全員に同時に伝わることです。一方で、近くで周波数が近い無線機が使われると、雑音や他からの会話の一部が混ざり、誤った情報発信や、聞き取れないという障害が起こります。
IP無線機の通信方法も、基本はほかの無線機と同様です。個別通信、グループ内通信、一斉通信などさまざまな通信手段で利用されます。
(3)IP無線機の原理
ここでは携帯電話との比較から、IP無線機の原理について解説します。
図3の上側は、携帯電話の通信イメージです。
図3の下側は、IP無線機の通信イメージです。
携帯電話は、全国の基地局間に接続されたネットワークを通して無線接続される方式の電話です。
通信の初めに相手側の電話番号を入力し、ネットワークを構築後に、送受信が行われます。送受信終了後に、相手側に話をしたいときは、電話番号を入力して電話網に電話の送受信の無線接続を行います。
携帯電話には次のような欠点があります。
携帯電話の欠点 |
エリア外では通信できないことがある |
電話網が乱れる要因、電波を乱す物があったり、大量の通話が集中した時などがあると、通話が途切れたり、聞きづらくなることがある |
基地局や電波塔でトラブルが起こると、電話網の断絶(通信障害)が起こる |
一方、IP無線機も基本は携帯電話と同様、携帯電話網を使用して通話の送受信を行います。
IP無線機が携帯電話と大きく異なる点は、VOIPという通信手段を取っていることです。
IP無線機から出た通話データ(メッセージ)は、そのまま送られず、一旦パケットデータに書き換えられます。パケットデータは、いわばメッセージの塊りのようなもので、インターネット回線を通して、相手側のIP無線機に送られます。
通話先のIP無線機が5台あれば、5台同時にメッセージパケットが送られ、すべての受信側IP無線機が同時にメッセージを受け取ることができます。
そして、携帯電話と違い、通話データがそのまま送られるわけではないため、パケットデータの送信中にもし携帯電話網が乱れることが起きても、メッセージには影響せず品質が確保されます。
【関連動画】IP無線機については、以下の動画も参考にしてください。
引用:IP無線の使い方
2.無線機の種類とIP無線機の特徴
IP無線機は、無線機の種類のひとつです。
ここでは無線機の種類とその概要から、IP無線機の特徴を解説や一般的な無線機の活用シーンを紹介します。
以下の表1は、無線機の種類と特徴についてのまとめです。
表1 無線機の種類
種類 | 通信範囲 | 免許 | 利点 | 欠点 | 備考 |
簡易業務用無線機 | 10km範囲 | 必要 | 安定した通信が可能 | ・重量が大きい。 ・バッテリーが消耗しやすい |
出力が大きい |
特定小電力トランシーバ | 1 km範囲 | 不要 | ・バッテリーの持続時間が長い ・軽量で携帯性に優れる |
・遮蔽物で通信が遮られる ・混信しやすい |
最大出力5W |
MCA無線機 | 中継局を中心に20km範囲 | 必要 | チャネルに自動で割り当てるため、混信や雑音はない | ・中継局から離れると通信できない ・他の中継局と契約必要 |
全国的に見ると中継局が少なく、通信エリアが限定される |
IP無線機 | 全国範囲 | 不要 | ・通信距離にほぼ制限がない ・混信が発生しない |
通信障害に弱い | 携帯電話基地局圏内エリア |
表より、IP無線機の利点は、お互いに基地局のエリア内であれば全国どこでも広範囲に通信が行えることや、免許不要なので必要時いつでも使用できる点が挙げられます。
ただし、エリア外では通信できないため、例えば山中や海上などの工事現場等での使用は圏内であるかどうかよく確認する必要があります。
また、携帯電話同様に基地局や電波塔のトラブルによる電話網の断絶が発生すると通信障害が起こりますが、電波を乱す物があったり大量の通話の集中などによって通話が途切れたり聞きづらくなることはほとんど起こりません。
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3.IP無線機のトラブルと解決方法
ここでは携帯電話網で起きたトラブルの統計からIP無線機のトラブルの頻度の推定と、その対策方法を考えます。
また、IP無線機の利点と欠点から、使用する無線機の種類を検討します。
(1) 電気通信サービスにおけるトラブル
図4では、携帯電話網で起こったトラブルのうち、重大な事故と位置付けられている件数と発生年度を表した図です。
引用)総務省:https://www.soumu.go.jp/main_content/000897675.pdf
IP無線機は携帯電話網を利用しているため、電気通信サービスの事故の影響を受ける可能性が高くなります。
注) 事故の報告内容は、平成20年から、品質低下も加えられています。
重大な事故とは、電気通信設備の故障により電気通信役務提供の停止あるいは品質低下事故を指します。
表2はその概要です。
表2 重大な事故の位置付け
通話形態 | 事故の継続時間 / 事故の影響を受ける利用者数 |
緊急通報を取り扱う音声伝送役務 | 1時間以上 / 3万人以上 |
緊急通報を扱わない音声伝送役務 | 2時間以上 / 3万人以上 |
1時間以上 / 10万人以上 | |
セルラーLPWA使用する携帯電話 | 12時間以上 / 3万人以上 |
2時間以上 / 100万人以上 | |
インターネット関連サービス | 24時間以上 / 10万人以上 |
12時間以上 / 100万人以上 | |
電気通信役務 | 2時間以上 / 3万人以上 |
1時間以上 / 100万人以上 |
出典)総務省:https://www.soumu.go.jp/main_content/000897675.pdf
また、電気通信設備の故障による事故件数は表3の通りです。
表3 令和4年度の報告数(抜粋)
報告事業者数 | 報告件数 | 備考 | ||
重大な事故 | 23社 (10社) |
10件 (7件) |
事故は、報告事業者数として、提供元事業者と提供先事業者を個別に計上。報告件数は、1件に集約して計上。 | |
四半期ごとの報告を要する事故 | 407社 (220社) |
67,730件 (63,575件) |
事故は、報告事業者数、報告件数とも、提供元事業者と提供先事業者を個別に計上。 |
出典)総務省:https://www.soumu.go.jp/main_content/000897675.pdf
令和4年だけを見ると7件の大きな事故がありますが、10社で10件であれば、IP無線機の契約事業者に対して、年1回の大きな事故が起こっていることがわかります。
また、()内は令和3年度の報告件数で、令和4年度は令和3年度と比べて増加していることがわかります。
大きな事故の報告に上らない事故も合わせると、携帯電話網には、1年に何回かは通信異常が起こると考えられます。
一方、IP無線機は携帯電話網での通信ではなく一旦パケット化してのインターネット通信となるため、IP無線機の通信障害はそれほど多くないと思われます。
ただし、IP無線機を使用しての広範囲に及ぶ工事のような業務を行う場合、障害が起きた際のリスクが大きいため、万一を考えて簡易業務用無線機を予備として用意することも検討すべきでしょう。
(2) IP無線機の利点・欠点のまとめと解決策
IP無線機を業務用無線機と比較した場合のメリット・デメリットを解決策も踏まえてまとめます。
表4 IP無線機の利点と欠点
分類 | 内容 | 備考 |
利点 | 免許が必要なく、いつでも購入可能 | - |
・携帯網内であれば、全国どこでも無線機として機能 ・通信距離はほぼ無制限 |
携帯網は山沿いはカバーできていないところがあるため注意が必要 | |
通信内容は、パケット化され、インターネットを介して、送受信される | 個別通信、グループ内通信、一斉通信など、ほかの無線機と同等の機能 | |
無線機のような、混信や通話途切れなどが起こらない | - | |
機種によっては、通信キャリアがトラブル時に、別のキャリアに切り替えることが可能 | ただし利用コストは増加する | |
欠点 | 携帯網のトラブル(通信障害)時には、通話できない | 統計上、年1回、数時間程度起こりうる |
購入コストだけでなく、携帯網使用量のランニングコストがを無線機の数だけかかる | リースする選択肢もある |
以上のように、IP無線機には欠点もありますが、通常の無線機と比べて決して劣っているわけではなく、むしろ、高機能と言えるでしょう。
一方で、使用する現場やランニングコストなど、通常の無線機の方が安心できる場合もあります。
無線機の原理、利点と欠点を理解した上で使用するのが、ベストな選択でしょう。
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