SRモーターとは?自動車への応用、原理や欠点|主要メーカー7選
高価なレアアースを原料とした永久磁石を使用せず、安価で高い信頼性をもつモーターとして注目される、SRモーターをご存じでしょうか?
騒音や振動が多いという、SRモーターならではのデメリットも近年の技術革新により解消されつつあり、自動車向けモーターとしてもSRモーターの市場は拡大しています。
本記事では、SRモーターの基本的な仕組みやメリット・デメリットに加え、主要メーカー7社を紹介します。SRモーターの導入を検討中の方は、ぜひ本記事をご参考にしてください。
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目次
1.モーターとは?代表的な種類
モーターとは、電界と磁界の作用によって生じる力を利用して、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、動力として取り出すことができる機器です。
電源を供給するだけで力を得ることができ、また排気ガスなどもないため、工業向けの大型モーターから家庭用の小型モーターまで、世の中のさまざまな製品の動力源として活躍しています。
現在ではさまざまな種類のモーターが開発されていて、装置や産業ごとに適したモーターが普及し国内消費電力の約50%がモーターによる消費電力と言われています。
SRモーターもこの中の一つであり、近年主にEV分野において注目されている形式のモーターです。
モーターには大きく分けて、直流で駆動するDCモーター、正弦波交流で駆動するACモーター、非正弦波で駆動するモーターの3種類があり、SRモーターは非正弦波で動作するモーターに分類されます。
直流駆動 | DCモーター |
正弦波交流駆動 | ACモータ― |
非正弦波駆動 | SRモーターなど |
DCモーターはシンプルな構造から小型化が容易で、おもちゃや小型機器に多く使用されます。
ACモーターは回転数やトルクを制御できることから、産業用機械や大型家電などに使用されることが多いモーターです。
DCモーター、ACモーターについての詳しい解説は、以下の記事も参考にしてください。
2.SRモーターとは?
SRモーター(Switched Reluctance Motor)とは、モーターの一種であり非正弦波の電源で駆動するモーターです。
最大の特徴はモーター内部に永久磁石を使用せず、磁束中の磁性体が磁気抵抗(リラクタンス)の小さくなる方向に動こうとすることで働くトルク(リラクタンストルク)を回転に利用している点が挙げられます。
シンプルな構造や低コストで設計が可能な点から、近年EVを始めとするモビリティ分野で注目されているモーター形式です。
(1)SRモーターの原理
SRモーターは通常のモーター同様、磁極を発生させる一対の固定子と中心で回転する回転子で構成されています。
電源電圧により固定子に磁極を発生させると、磁極間の磁束が回転子を通り抜ける状態になり、このとき磁束内の回転子には固定子からみて磁気抵抗が少なくなる向き、すなわち固定子と回転子が一直線になる向きに動こうとする力が働きます。(図1)
この力がリラクタンストルクであり、このトルクによって回転エネルギーを得るのがSRモーターの動作原理です。
図1 SRモーターの回転原理
ポイントは固定子に発生させる磁極がN極であってもS極であっても磁束さえ発生すればよく、また回転子も磁石である必要がなく磁性体であれば良いというところです。
さらに、固定子を多極化することで効率化することができます。
例えば、固定子Aと90°ずらした位置に固定子Bを設け、固定子Aと固定子Bに繰り返し磁極を発生させます。
すると、回転子は磁気抵抗の少なくなる向きに回転を続け、回転軸から動力を取り出すことができるのです。(図2)
図2 SRモーターの多極化
SRモーターの特徴は、固定子の磁極はN極とS極どちらでもよく、同じ極で発生と消失を繰り返させれば良いため直流電源で駆動が可能であることです。
(2)SRモーターにおける制御回路の重要性
多極化したSRモーターにおいて磁束を発生させて回転子を回転させる際、回転子の回転と磁極を発生させるタイミングが重要になります。
もし回転子と固定子が一直線に並んだ時にも強い電流を流したままにすると、電磁力により発生するラジアル力によって回転子は半径方向に引っ張られてしまい、これが回転を妨げる逆トルクとなりエネルギーをロスしてしまいます。(図3)
図3 SRモーターのラジアル力
また、固定子は中空であり変形に弱い構造であるため、ラジアル力の反作用によって変形してしまい、回転と一緒に変形箇所も回転する現象が起こります。
この変形と高速回転が合わさってしまうことからSRモーターは独自の振動と騒音を発生してしまうことが多く、長くこれが普及にいたらない原因でした。
しかし近年ではこの特性を解消する高速で電源をスイッチングさせる技術が確立され、振動や騒音の少ないSRモーターが開発されています。
SRモーターの運用には、回転子がA相磁極にさしかかる直前で素早く電源を遮断し、トルクを途切れさせないようただちにB相磁極を立ち上げる高精度な電源制御回路が必要となります。(図4)
図4 SRモーターの電源制御
(3)PM(Permanent Magnet)モーターとの違いは?
SRモーターと構造が似ているモーターに、PM(Permanent Magnet)モーターがあります。
PMモーターは回転子に永久磁石が使用され、固定子の巻線に発生させた磁極に回転子の磁極が吸い寄せられることで発生するトルク(マグネットトルク)を利用したモーターです。(図5)
図5 PMモーターの回転原理
回転子の磁極が回転により固定子の磁極と近づいた後、今度は固定子の磁極を逆の極とすることで再び同じ方向へのマグネットトルクを発生させ、軸の回転を得ることができます。
固定子の磁極を繰り返し反転させる必要があるため、電源に交流電源が必要なのが特徴です。
つまりPMモーターとSRモーターの違いは、以下の2点です。
・回転子に永久磁石を使用するかどうか ・交流電源で駆動するか、直流電源で駆動するか |
PMモーターはSRモーターと比べて高効率、高応答性といった特徴がありますが、高価な永久磁石を使用するためコストが高くなりやすく、また複雑な構造はメンテナンス性の点でSRモーターに劣る傾向があります。
特にSRモーターはレアアースから製造される永久磁石を使用しない点で、材料の供給不足問題を解消する有力なモーターとして注目が集まっています。
(4)SRモーターの用途|電気自動車への応用を期待
SRモーターは永久磁石を使用しない点や、回転子に巻線が不要な点から単純な構造の設計が可能であり、安価で小型、高耐久性といった特徴があります。
これらの特徴から掃除機や洗濯機など、高速回転を繰り返す製品に使用されています。
また近年では、永久磁石を持たないことによる高温耐性や、安価でありながら過酷な環境での運用に耐えうる特徴から電気自動車への採用が期待され、研究が続けられています。
また、火花を放つ可能性のある整流子を持たない直流モーターであるため、防爆区画で使用される装置の駆動モーターとしても使用されています。
また、SRモーターについては以下の動画も参考にしてください。
引用:【第44回】SRモータの基本と応用(パワーエレクトロニクス講座)
3.SRモーターのメリット
SRモーターのメリットを解説します。
(1)単純な構造
SRモーターは、鉄心とコイルのみで回転力を生み出すことができるため、モーター構造を単純にできるというメリットがあります。
単純な構造は過酷な環境での使用に耐えうるというメリットに繋がります。
(2)低コスト
SRモーターは鉄や銅などの入手性が高い材料で製造可能なため、製造コストを下げやすいというメリットがあります。
SRモーターが発明された時から、振動を始めとするデメリットがありながらも研究が続けられてきたのは、この製造コストが低いという特徴が産業においてとても大きなメリットであるからに他なりません。
(3)高トルク
SRモーターは、特に低速時に高トルクを発揮する特徴があります。
この特徴は牽引用モーターなどの大型モーター製造においては、高トルクをもちつつも巨大な永久磁石が不要なモーターとして、他のモーターにはないSRモーターのメリットとなります。
(4)高速回転に対応
SRモーターは永久磁石の磁束による逆起電力が生じないため、高い電圧をかけなくても高速回転させることができます。
また回転子に巻線を持たないことも高速回転に適した構造であるため、掃除機や工具など高速回転が必要な機器に向いています。
(5)直流動作可能
SRモーターは直流での動作が可能なため、インバーターなどで交流を制御する必要がないというメリットがあります。
(6)永久磁石不要
SRモーターは永久磁石を使用しないため、レアアースなどの希少な資源に依存せずに製造できるのがメリットです。
また、回転による温度上昇に弱い永久磁石を使用しないことで、高温環境下でも安定した性能を維持できるのもSRモーターの強みと言えます。
4.SRモーターのデメリット
SRモーターのデメリットを解説します。
(1)トルク脈動
SRモーターは、同期モーターのように回転する磁束と回転子が同期して回転するわけではなく、固定子への通電時に回転子が引き寄せられる力(リラクタンストルク)を利用して回転します。
このとき回転を維持するために固定子への電流遮断、通電を繰り返す必要があり、このたびにトルクも発生、消失を繰り返すためトルク変動が発生してしまいます。
この繰り返すトルク変動が脈動となり、一定トルクが必要な場面ではデメリットとなってしまうのです。
しかし近年では多極化や電源制御の高性能化により、トルク脈動を解消する研究が進んでいます。
(2)振動・騒音
SRモーターは、回転子と磁極(固定子)が一直線にならんだ時、回転子が半径方向に引っ張られるラジアル力が生じてしまいます。
このラジアル力は固定子にも作用するため、中空構造の固定子は変形してしまいます。
この変形箇所が回転子に合わせて回転することで、機械的な振動や騒音が発生してしまうのがSRモーターのデメリットです。
近年では変形しにくい固定子や回転子の構造とすることで、このデメリットを解消する研究も行われています。
(3)高度な電源スイッチング制御が必要
SRモーターは、トルク脈動や振動・騒音への対策に加えて、効率的な回転のためには高度な電源制御が必要となります。
トルクが最大となる固定子を磁化する瞬間の電流値は大きく、その後ラジアル力を低減させるため電流値を下げながら回転し、回転子と固定子が重なる前に電流値を0に下げなければなりません。
また、磁化される次の固定子の電流立ち上がりは前の固定子に電流が流れているタイミングともずらす必要があり、効率的に回転させるにはこれらを可能とする高度な電源スイッチングを行わなければいけません。
モーター回転を制御するための高度な電源制御システムを必要とするのが、SRモーターのデメリットでもあります。
5.SRモーターの主要メーカー7選
SRモーターの主要メーカーを紹介します。
株式会社明和製作所 | 【特徴】 電気モーター類や部材、電動工具まで幅広く取り扱っています。自社一貫生産体制により、顧客ニーズに合わせた専用設計による生産まで対応しています。数台の試作機から数百台の生産機まで、幅広い要望に応えられるのが特徴です。 【会社概要】 ・所在地 〒819-1106 福岡県糸島市志登130-1 ・お問合せ https://www.meiwa-ss.co.jp/contact/092-322-3111 引用:https://www.meiwa-ss.co.jp/company/about/ |
ニデック株式会社 | 【特徴】 技術によって社会を快適にすることをスローガンに、「もっと」高性能な製品を開発しています。主に電気モーターや電子デバイス、計測機器など産業用機器を展開し、SRモーターは車載用製品をラインナップしています。 【会社概要】 ・所在地 京都府京都市南区久世殿城町338 ・お問合せ https://www.nidec.com/jp/inquiry/request/corporate/075-922-1111 引用:https://www.nidec.com/jp/corporate/network/hq/nidec |
有限会社モーションシステムテック | 【特徴】 各種モーターの開発・設計・試作・評価までを一貫して対応しています。 モーター開発ツールの販売や、モーター開発のコンサルティングにも対応しており、大学と開発したHEV向けSRモーターを販売しています。 【会社概要】 ・所在地 〒108-0074 港区高輪4-15-19-807 ・お問合せ http://www.motionsystem-tech.com/Contact.html03-3441-2205 引用:http://www.motionsystem-tech.com/Company.html |
株式会社大洋電機エンジニアリング | 【特徴】 独自技術による軽量化や精密化、高温や低温化などの特殊環境に対応したカスタマイズモーターを開発しています。インドの電動バイクメーカーと提携し独自の回生制動が可能なSRモーター技術を海外展開しています。 【会社概要】 |
株式会社ミツバ | 【特徴】 主に自動車やバイクといったモビリティ市場において、安全性や快適性へのニーズに応える電装品の開発・供給を自社生産により手がけています。小型EVの実現に不可欠な駆動用SRモーターを開発、実用化しています。 【会社概要】 |
長岡モーターディベロップメント株式会社 | 【特徴】 使用環境やニーズに合わせたモーターの設計・試作・立上・評価までを一貫して対応しています。モーター本体から駆動制御までを含めた開発を行っているため、短いリードタイムで設計できるのが特徴です。 【会社概要】 ・所在地 〒940-2135 新潟県長岡市深沢町2085-16 ながおか新産業創造センター ・お問合せ https://nagaoka-md.co.jp/contact/0258-94-5961 引用:https://nagaoka-md.co.jp/company/outline/ |
A.H.MotorLab | 【特徴】 各種モーターの設計・試作・評価を行っていて、特に次世代SRモーターの開発に力を入れています。大阪大学との共同研究により、低コストでありながら高い動作特性を持つSRモーターを開発しています。 【会社概要】 ・所在地 〒509-9131 岐阜県中津川市千旦林1363番地-1 ・お問合せ https://ah-motorlab.com/ja/contact_form/0573-64-8980 引用:https://ah-motorlab.com/ja/company/ |
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