ギヤードモーターとは?仕組みや減速機との違い、主要メーカー紹介
ギヤードモーターは、モーターと減速機(ギヤヘッド)を一体化させたことで、低速かつ高トルクでありながら省スペースを叶えた装置です。
この記事では、ギヤードモーターの基本的な知識から、メリット・デメリット、用いる際の注意点まで詳しく解説いたします。
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目次
1.ギヤードモーターとは?定義と用途
ここでは、ギヤードモーターの定義と使用用途について解説します。
(1)ギヤードモーターとは
ギヤードモーターはモーターと減速機(ギヤヘッド)を一体化したものの総称です。
モーターの回転数を落としたい場合、従来は継ぎ手を用いて減速機と連結する方法が採用されていました。しかし、モーター、減速機、継ぎそれぞれが独立した装置であるため、モーターの回転数を落とすだけで、一定以上のスペースが必要になっていたのです。
減速させるだけであれば、インバーターによる制御で減速させることも可能です。
しかし、インバーターを用いた場合、減速機を採用したときほど高トルクが出力されないという問題がありました。
また周波数の調整の他に、電圧の調整も必要になります。電圧の調整を誤ると、過電流による焼失の危険も考えられます。
これらの課題を解決するために開発されたのが、省スペースかつ低速高トルクを叶えるギヤードモーターなのです。
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(2)ギヤードモーターの用途
ギヤードモーターには様々な用途があります。製造現場はもちろん、林業や農業、普段の生活の中でも意識しないまま利用しているのです。
以下、代表的なギヤードモーターの用途を見てみましょう。
・汎用コンベヤ ・食品機械 ・農耕機械 ・無人搬送車 ・オフセット印刷機 ・立体駐車場 ・車のパワーウィンドウ |
汎用コンベヤは、1本のベルトを輪上にして上部にモノや土砂を載せて運ぶ、いわゆる流れ作業などで利用されることが多い装置です。
食品機械は、給食センター食品メーカーで採用されることが多い、食材を切り分けたり調理中に攪拌する装置などを指します。早すぎず、ゆっくりすぎないスピードが求められるため、ギヤードモーターはうってつけといえるでしょう。
農耕機械に使われているギヤードモーターと言えば、代表的なものがミニコンバーターです。畑や田植え前の土を容易に掘り返すために使われます。無人搬送車は工場や倉庫でモノを運び込む・運び出す際に人が乗車せずとも動く搬送車です。
オフセット印刷機は文字通り、専用の印刷用紙に印刷する機械を指します。出版・印刷業界では必須の機械といえるでしょう。
これらの機械・装置において、ギヤードモーターは、基本的に駆動部に採用されています。防水性に優れていたり、静穏性が高かったり、ギヤードモーターによって特徴も様々だからこそ、あらゆるシーンで利用されています。
また、身近なところでは、立体駐車場や車のパワーウィンドウなどにも採用されています。
【参考動画】ギヤードモーターについては以下の動画も参考にして下さい。
2.ギヤードモーターの構造と仕組み
ギヤードモーターの基本的な構造は、ギヤヘッドとモーターに分かれます。
画像引用:https://www.cls-motor.com/products/dc/geared
減速機と呼ばれるギアヘッド部分には、出力軸や各種歯車、ベアリングやオイルシールなどが主要構成として組み込まれています。
そして、ギヤヘッドとの取り付け部分が専用にカットされたモーターとつながっています。このモーターの出力軸には歯車が切られているため、継手を用いることなくギヤヘッドとモーターが一体化できるのです。
仕組みとしては、高速で回転するモーターに歯車をかみ合わせることで、回転数をコントロールするというシンプルな構造です。入力側に小さな歯車、出力側に大きな歯車を用いれば、小さな歯車が1周したとしても、図にあるように、大きな歯車は半分ほどしか回転しません。
この異なる歯車の進み方によって、回転数の低下と高いトルクを生み出すのです。モーターの回転数そのものが下がるわけではありません。
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3.ギヤードモーターに使われる減速機の主な種類
ギヤードモーターには様々な種類がありますが、分類される際のひとつの基準となるのが減速機部分の種類です。ここでは。ギヤードモーターで使われている減速機の種類について紹介します。
(1)平行軸歯車減速機
モーターがはめ込まれる入力軸と、モーター側の出力軸が平行になっているタイプを指します。もっとも一般的なタイプの減速機となっていますが、バックラッシの隙間が大きいため、駆動音が大きく振動の調整が難しいという特徴があります。
(2)ウォーム減速機
ねじが切られたシャフト(軸)に合わせて、直交に歯車が設置された「ウォームギア」を採用した減速機です。一般的な歯車のように、溝同士がかみ合うのではなく滑りながら接触するため、音や振動を抑えることが可能です。一方、熱が発生しやすいというデメリットもあります。
(3)遊星歯車減速機
メインとなる太陽歯車の周囲に遊星歯車、遊星歯車キャリア、内歯車がある減速機です。太陽の周りを惑星が周回する様を模して、上記の名前が付けられました。入力羽軸と出力軸を一列に廃せるため、よりコンパクトな設計が可能です。
(4)波動歯車減速機
楕円と新円の2つの形の異なる歯車を用いることで、高精度かつ高効率、高いねじり剛性が期待できる減速機です。同時に噛みあう部分が多いことから、バックラッシが発生しづらいという特徴があり、ロボット産業や航空産業で高い注目を集めています。
4.ギヤードモーターのメリット
ここではギヤードモーターを用いるメリットを紹介します。
(1)より大きな負荷に対応可能
一般的なモーターと比べた場合、ギヤードモーターの方が、回転できる慣性負荷モーメントが減速比の2乗に比例して大きくなるとされます。
慣性負荷モーメントとは、物体が現在の運動状態を維持しようとする力を指します。ギヤードモーターの場合、この現在の状態を維持しようとする力(回転しようとする力)が、標準モーターより大きいということです。そのため、時々で適切なトルクを供給できることから、対応できる幅が広くなると考えられます。
(2)小型化ができる
ギヤードモーターはモーターと減速機が一体化した装置です。そのため、モーターと減速機を個別に利用するより、省スペースでの利用が可能になっています。
また、小型化できるということは、軽量化もできるということです。駆動部に余計な負荷をかけないで済むこともメリットといえるでしょう。
なお、小型化の目安としては、通電時かつ停止している際のトルク値が同じ標準モーターとギヤードモーターを比較した場合です。
(3)起動・停止時のダンピングを抑えられる
大きな慣性負荷がかかる場合や、短い加減速時間でも、一般的なモーターよりダンピングが穏やかです。
また、歯車による減速機と一体化したギヤードモーターは、剛性が高いことも特徴です。この剛性の高さによって、ねじれが起きにくく、内部機構にズレが生じないためダンピングが起こりにくいのです。
なお、ここで言うダンピングとは、モーターによってもたらされる起動・停止時の振動を指します。
5.ギヤードモーターのデメリットや注意点
ギヤードモーターも含め、装置のメリットを享受するには適正な選択・利用が重要です。ここでは、ギヤードモーターを用いる際の基本的な注意点について紹介します。
(1)機種によりメリット・デメリットの確認が重要
ギヤードモーターに使われている減速機の種類は豊富にあり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
たとえば食い違い軸歯車と呼ばれるネジ車のような減速機は、滑りが大きいことから摩耗が激しいという面があり、他の減速機より効率が落ちるペースが速く、メンテナンスの頻度も上がるでしょう。
一方で、ねじが軸方向にあるという独特な形状であるからこそ、大きな速度比を得られるという面もあります。
使用目的に合ったギヤードモーターを選択するのはもちろんですが、その機種の弱点も確認しましょう。
(2)使用環境によっては合わない機種もある
ギヤードモーターはモーターと減速機が一体化しているため、使用環境によっては水や塵芥の侵入で故障してしまうことも考えられます。
たとえば屋外で用いる際には、屋外用にチューンナップされたギヤードモーターを使いましょう。
また、ギヤードモーターの近くに燃えやすいものを近づけると、モーターの熱によって発火や爆発の恐れがあります。発火しやすいものの近くで使う場合は、防爆仕様のギヤードモーターである必要があります。
ギヤードモーターは、機種によって減速機の違いだけではなく仕様も大きく異なります。使用環境に合わせたギヤードモーターを選択できるよう、事前にしっかりチェックしましょう。
(3)設置にある程度のスペースが必要な場合もある
ギヤードモーターは標準モーターに比べて小型化されています。しかし、標準モーターに比べれば小さいというだけであり、使用用途によってはそれなりのサイズになることもあります。
たとえば小さなロボットに使われるギヤードモーターと、搬出用エレベーターに使われるギヤードモーターでは、必要とされる出力が大きく異なるため、サイズは大きく異なります。また、ギヤードモーターの種類や、必要とされる出力によってもサイズは異なります。
設置に必要なスペースをよく確認しましょう。
6.ギヤードモーターの代表的メーカー
ここでは、ギヤードモーターを扱っている有名なメーカーについて、それぞれの代表的な製品や特徴などを紹介します。
(1)三菱電機
引用:https://www.mitsubishielectric.co.jp/
三菱電機は、1921年、大正時代に創業した歴史ある大手総合電機メーカーです。様々な機械製品、装置の開発・販売を手掛け、長年にわたって蓄積された高い技術力が大きな特徴といえます。
ギヤードモーターにおいては、最適化による既存製品との互換性や省エネに力を入れています。
代表的なギヤードモーター |
特徴 |
プレミアム効率IE3シリーズ | 発生損失を従来のギヤードモーターより、30~40パーセント削減した省エネモデル。 フレームにアルミを採用したことで、冷却性能を向上、併せて軽量化に携行しています。引用:https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/drv/gear/ex/watch/ie3.html
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引用:https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/drv/gear/ex/watch/ie3.html
(2)住友重機械工業
機械コンポーネントを始めとする、6つの事業セグメントからなる住友重機械工業。オイルタンカーのような大きな造船から、小型減速機、ラミネーターなどごく小さな機械や装置まで手掛けています。
ギヤードモーターにおいても豊富な種類を誇り、省スペース、高効率、長寿命など目的によって様々な製品の選択が可能です。
代表的なギヤードモーター |
特徴 |
プレスト®NEOギヤモータ | かみ合い率の高い歯車を用いたことで、高い静音性を実現。オイルシールを3重にすることで密封性も向上、壊れにくく長寿命が期待できるでしょう。
引用:https://cyclo.shi.co.jp/product/feature/gear-motor/prest_neo.html?selection=category |
ベベル・バディボックス®減速機 4シリーズ | 歯車にサイクロ、もしくは遊星歯車を採用することで、一般的な平衡軸歯車より摩耗が少なく長寿命が期待できます。潤滑方式をオイルに統一したためメンテナンス性も向上しています。
引用:https://cyclo.shi.co.jp/product/feature/gear-motor/buddybox_4.html?selection=category |
アステロ®ギヤモータ | モーターとギヤヘッドが分離できるため、工夫次第で様々な使い方が可能に。よりコンパクトな取り回しが可能になりました。取り付けるスペースはあるけれど、障害物があって取り付けるまでのハードルが高いようなシーンでも重宝します。
引用:https://cyclo.shi.co.jp/product/feature/gear-motor/astero.html?selection=category |
(3)タミヤ
引用:https://www.tamiya.com/japan/index.html
世界最大規模の模型メーカーとして、国内だけではなく海外でも有名な模型・プラモデルメーカーです。もともとは一般建築材の加工販売として創業されましたが、創業2年後には木材模型の販売を始めています。
ギヤードモーターにおいては、ごく小型なものを扱っており、ロボット用やDIY目的として高い人気を誇ります。
代表的なギヤードモーター |
特徴 |
AO-8001 タミヤ ギヤードモーター 3633K36 | ギヤ比36:1、ロボット制作に便利な、小さいながらもオール金属のギヤードモーターです。丸ビスやワッシャーなどもセットになっています。
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