【基礎】ネットワークアナライザとは?原理とできること、Sパラメータ
ネットワークアナライザとは、基板や部品が試験体として高速信号にどれだけ対応できているか、仕様どおりか、その動作で満足されるかなどを試験します。このコラムでは、ネットワークアナライザの原理や構成と試験体を試験する際に必要なSパラメータ等を紹介します。
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目次
1. ネットワークアナライザとは?種類とできること
ネットワークアナライザとは、基板や部品が試験体として高速信号にどれだけ対応できているか、仕様どおりか、その動作で満足されるかなどを試験します。
ここでは、ネットワークアナライザの種類や、ネットワークアナライザでできることを紹介します。
(1)ネットワークアナライザの種類|スカラーネットワークアナライザとベクトルネットワークアナライザ
ネットワークアナライザとは、新しいデバイスの特性を知るための、検査装置です。
ネットワークアナライザには、以下の2種類があります。
スカラーネットワークアナライザ | 高周波数デバイスの振幅を測定し、周波数特性を測定する |
ベクトルネットワークアナライザ | デバイスの振幅だけでなく、位相の測定ができ、広い範囲での利用が可能 |
上記2種類は、構成や使い方に大きな違いは無く、ベクトルネットワークアナライザがより多く利用されています。
一般的に、「ネットワークアナライザ」とは「ベクトルネットワークアナライザ」を指します。このコラムでも「ベクトルネットワークアナライザ」は「ネットワークアナライザ」と記述します。
(2)ネットワークアナライザでできること
ネットワークアナライザは、伝送した信号が、伝送・透過・反射する割合、また、伝送ラインの歪みの要素の有無を測定し、仕様に合った信号処理ができるかどうかを確認します。
代表的な測定項目は以下の通りです。
伝送特性 Sパラメータ | 信号レベルの変化 |
挿入損失 | 入力対出力の信号変化 |
回路と端子間の分離度 | 入力対出力の信号変化 |
利得 | 入力対出力の信号変化 |
挿入位相差 | 位相差 |
群遅延 | 被試験体のポート間の通過時間 |
ネットワークアナライザについては、以下の動画も参考にして下さい。。
引用:【素人向け完全解説】ネットワークアナライザとは?(Nano VNAを使って、測定器の使い方を使い方を超解説①)
引用:【高周波・無線】知って得する!ネットワークアナライザの基本 #68
2.ネットワークアナライザの原理と構成
(1) 被試験体(DUT)
ネットワークアナライザで検査する被試験体をDUT(Device Under Test)として記載します。図1に示すようにDUTは2箇所からの側方入出力ができ、それぞれをポート1、ポート2とします。
(実際には、1つの入出力、複数の入出力など、電子デバイスや基板ごとに異なります。)
図1の四角図部分が、DUTです。
図1は、イメージし易いように、試験体の中にトランジスタが含まれているといる回路という想定です。
DUTには2つのポート、ポート1とポート2が左右にあり、それぞれ入出力端子に接続しています。
ネットワークアナライザは、信号発生器の特性(振幅や周波数)を細かく変えて、ポートの入出力の変動を調べます。
(2)ネットワークアナライザの原理と構成
図2は、ネットワークアナライザの概略構成図を表しています。
図2上は伝送特性検査の構成図を、図2下では反射特性検査の構成図を示しています。
ネットワークアナライザは、信号発生器の入射信号から、入射波、反射波、透過波を測定します。
信号入口で、入射する信号のうち一部が反射されるか、全部が入射できたとしても全信号が伝送できるか(透過するか)などを、伝送ラインにある特性ピーダンスのようなもので測定しています。
以下では、伝送特性検査と反射特性検査について、そしてそれらの切り替えについて紹介します。
①伝送特性検査
信号発生器からの信号は、パワースプリッターで2方向に分割され、1つはリファレンス受信部(基準信号)に入り、もう1つはDUTの入力となり、DUTを通った後で、テスト受信部(伝送信号)に入ります。
パワースプリッターは、同じ振幅・同じ周波数などの全く同じ信号に分割されます。
リファレンス受信部は基準受信部とも言われ、この基本信号と、DUTを通った後の信号が比較され、DUT通過後の信号変化が調査されます。
②反射特性検査
反射特性検査における信号発生器からの信号処理は、基本的に伝送特性検査と同じです。
大きく異なるところは、方向結合器が構成に加わっていることです。方向結合器によって、経路が決められた信号だけが通過できるようになります。
反射特性検査では、基本信号はDUTに入力されますが、一部か全部かが反射されて方向結合器に入り、信号波テスト受信部への入力となります。テスト受信部(伝送信号)とファレンス受信部(基準信号)の比較によって、どれだけ信号が通らなかったか、DUTの反射特性が検査されます。
③伝送特性検査と反射特性検査の切り替え
図2の2つの構成図は同じネットワークアナライザの構成図です。
図の上側と下側では信号検査の目的が異なりますが、DUTへの配線を変えることで伝送特性検査と反射特性検査を入れ替えることができます。
しかし、多数のDUTがある中で実際に煩雑な配線入れ替え作業を行うことは効率面等から不可能です。
実際のネットワークアナライザでは、テスト受信部と方向結合器をもう一台構成に加え、さらに切り替えスイッチも加え、伝送特性検査、反射特性検査、DUTの入力側を変えることで、特性試験に対応しています。
受信機の信号から、次のように信号特性が表されます。
反射特性 | 反射信号/入力信号=A/R |
伝送特性 | 透過信号/入力信号=B/R |
※入力信号の受信機信号をR、反射信号の受信機信号をA、透過信号の受信機信号をBとする
3.Sパラメータとは
Sパラメータとは回路の特性を示すパラメータです。
ネットワークアナライザは、このSパラメータで高周波の周波数特性を測定します。
図3は、図2のネットワークアナライザに接続されたDUTに対する、入出力図です。
図3のS21、S11等がSパラメータで、ネットワークアナライザの検査結果が表されます。
Sパラメータは図4のように表します。
Sの右下の2文字は、以下を表します。
Sの右下の1番目(図4の「a」) | ・出力ポート番号 ・aポートから出る出力信号(あるいは反射信号) |
Sの右下の2番目(図4の「b」) | ・入力ポート番号 ・bポートに入る入力信号 |
たとえば「 S11 」では、11の左側の1がポート1に入力する信号です。
11の右側の1がポート1から出る信号です。
S11 はA1/R1 であり、
S11=(ポート1の反射信号)/(ポート1の入射信号)です。
つまり、第2章(2)③で解説した以下の数式より、DUTの反射特性を表していることがわかります。
反射特性 | 反射信号/入力信号=A/R |
伝送特性 | 透過信号/入力信号=B/R |
※入力信号の受信機信号をR、反射信号の受信機信号をA、透過信号の受信機信号をBとする
同様に S21 は B2/R1で、
S21 =(ポート2の透過信号)/(ポート1の入射信号)
で、DUTの伝送特性を表します。
このように、マトリックスの4つの成分であるSパラメータが試験され、図4のマトリックスの数式で表されるように、DUTの反射信号や透過信号が、Dパラメータ(マトリックス成分)と、基準信号によって決定され、DUTの特性が検査評価されます。
こうしてSパラメータで試験体が検査され、1章(2)で紹介した以下のような項目が検査・評価されます。
伝送特性、Sパラメータ、挿入損失、回路と端子間の分離度、利得、挿入位相差、群遅延…など |
4.ネットワークアナライザの校正
DUTの周波数特性などを検査してDパラメータなどを決定したときに、その結果が正しいかどうかは大きな問題です。
ここでは、DUTの特性をネットワークアナライザで試験する際、その結果が正しいかどうか判定する方法を紹介します。
ネットワークアナライザによる検査結果が正しいかどうかを検討する際には、以下の2点について考える必要があります。
接続コネクタの特性 | DUTとネットワークアナライザ間を接続するコネクタの質や接続の強さなどによって、Dパラメータの結果が異なる |
ネットワークアナライザの結果の信頼性 | ネットワークアナライザの試験結果が正しいか、誤差を含むかで、結果が異なる |
接続コネクタについては、コネクタのもつインピーダンスなどの物理特性から、Dパラメータ測定に影響するものを全て検査して明らかにする必要があります。
ネットワークアナライザの結果の信頼性については、ネットワークアナライザが校正されている必要があります。
ただし、ネットワークアナライザに標準検査器は無く、計量法で基準として保証された基準器で測定器を校正することはできません。そこで、ネットワークアナライザ自身に高周波信号を投入し、必要なDパラメータを取得する試験を行います。
それぞれのDパラメータ結果を、DUTを検査した結果に対して補正を掛けることで、DUTの検査結果が誤差のない結果と判定できます。
5.ネットワークアナライザの主要メーカー紹介
以下では、ネットワークアナライザのメーカーと代表的な製品の特徴を紹介します。
(1) 株式会社ディエステクノロジー
ディエステクノロジー社のベクトル・ネットワーク・アナライザーDZV-1は、以下のSパラメータ測定を行います。
・アンテナインピーダンス ・VSWRの測定 ・RFコンポーネント ・デバイス |
DZV-1ユニットとPC側ソフトの通信及び電源は、USB経由で通信・供給します。
また、PC側ソフトにより、以下のような項目をグラフで表示可能です。
・LOG-MAG特性 ・位相特性 ・群遅延特性 ・スミス・チャート ・極座標 ・SWR特性 |
参考:https://www.dst.co.jp/products_search/special_function_component/measuring_component/item_33
(2) ヤマト科学株式会社
引用:https://www.yamato-net.co.jp
ヤマト科学のCeyear 3674は、会社が扱うベクトルネットワークアナライザの1つです。
周波数帯500Hz~110GHzと、最大110GHzの超高周波と、最大142dBという広いダイナミックレンジが製品の特徴の1つです。
そのほかにも、以下の特徴が挙げられます。
・内部ソース変調やリア・パネルからの出力が可能な、4ウェイ・パルス・ジェネレーター ・高精度なミキサーやインバーター機能を提供する、ミキサー/インバーター測定分析 ・ミキサーやインバーターの振幅応答・絶対位相・絶対遅延応答を測定するミキサー/インバータ・ベクトル測定解析 ・DUTの励振状態の動作性能を3次元ビューで表現する、ゲイン圧縮スキャン3Dプロット機能 |
参考:https://www.yamato-net.co.jp/product/detail/12779/
(3) キーサイト・テクノロジー株式会社
引用:https://www.keysight.com/jp/ja/home.html
キーサイト社のPNA-X ネットワーク・アナライザは、増幅器・ミキサー・周波数コンバーターなどを多機能で柔軟に測定するマイクロ波テストエンジンです。以下に、主な特徴を紹介します。
・PNA-X ネットワークアナライザ で検査機器を一体化し、簡素化テストが可能 ・広範に渡る続測定アプリによる短時間テストを実現 ・誤差補正を使い、線形・非線形デバイスを正確に特性評価 ・高度RFテストの速度、確度、使い易さを広範囲にわたるアプリで測定 ・マルチタッチディスプレイと直感的ユーザーインタフェースで、操作性を加速 |
(4) ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社
引用:https://www.rohde-schwarz.com/jp/home_48230.html
ローデ・シュワルツ・ジャパン社のベクトル・ネットワーク・アナライザの1つR&S®ZNAは、2または4ポートモデル、優れたRF性能、最大4つの内蔵信号源、独自開発の直感的タッチ専用操作の他、以下のような特徴があります。
・アクティブ&パッシブコンポーネントの精密測定 ・高ブロッキングされたDUTの特性評価に対応 ・優れた安定性、トレースノイズの極小化、高品質データによる信頼性 ・広いパワーの掃引範囲 |
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