
【入門】組込み開発とは?一般ソフトウェアとの違い、ツール10選
近年、組込みシステムは、家電や自動車、産業機器、医療機器など、私たちの生活やビジネスを支えるあらゆる分野で活用され、組込み開発の重要性がますます高まっています。
本記事では、組込みシステムの特徴や開発の流れ、課題と解決策、具体的なツールの選び方など組込み開発について基本から最新トレンドまでわかりやすく解説しています。各ツールにどんなものがあるのか、何を基準に選べばよいのかなど、何がご自分にとってよりベターかを改めて判断できるでしょう。
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目次
1.組込み開発とは
ここでは、組込み開発の概要と、組込みソフトウェアと一般ソフトウェアの違いについて解説します。
(1)組込み開発とは
組込み開発とは、 特定の機能を持つ機器に組み込まれるコンピュータ(マイコン)を動作させるためのソフトウェアを設計・開発すること です。一般的なパソコンやスマートフォンは多目的に使えますが、組込みシステムは特定の目的に最適化されており、確実な動作が求められます。
例えば、 電子レンジ はボタンを押せば決まった時間だけ加熱し、終了すると音を鳴らします。これは、内部のマイコンがプログラムされた通りに動作しているからです。ほかにも、 自動車のブレーキ制御やエアバッグ、エアコン、医療機器、工場のロボット など、組込みシステムはさまざまな分野で使われています。
【参考動画】
引用:組込み開発とは①
(2)組込みソフトウェアと一般ソフトウェアの違い
組込みソフトウェアと一般ソフトウェアの最も大きな違いは、組込みソフトウェアは自動車やロボットなどの特定のハードウェア上で、その機器に特化した動きが求められることに対して、一般ソフトウェアはパソコンやスマートフォンなど汎用のコンピュータで使用されることです。
たとえばMicrosoft社のOficeソフトは、パソコンやスマートフォンといったデバイスで動く一般ソフトウェアに当たります。
一般ソフトウェアは汎用デバイス上で「主役」として使用されるのに対して、組込みソフトウェアは特定の機器におけるひとつの機能として、機器が目的通りの動きができるよう縁の下の力持ち的に支える役割を担います。
2.組込みシステムの特徴と必要性
ここでは、組込み開発の特徴と、その必要性について解説します。
(1)組込みシステムの主な特徴
特徴 | 説明 |
特定の目的に特化 | ・特定の用途に特化して設計されており、効率的な動作が可能 ・例えば、自動車のエンジン管理や電子レンジの温度制御など |
省エネルギー | ・電力消費を抑えるように設計されている ・バッテリー駆動や長時間稼働する機器に最適 |
高い信頼性 | ・長期間安定した動作が期待できる ・特に医療機器や航空機など高い信頼性が必要な機器に適している |
小型化 | ・限られた空間に収めるため、システムが小型化されている ・小さな機器でも多機能を実現できる |
【参考動画】
(2)組込み開発が重要な理由
組込みシステムは、 たとえば以下のように、私たちの生活を便利で安全なものにするために不可欠な存在と言えます。
必要性 | 説明 |
日常生活における利便性向上 | 自動車・家電などで活用され、生活を便利で快適にする。例えば、スマート家電や運転支援システム。 |
効率化と自動化の促進 | 製造業や農業、物流業界で組込みシステムを活用し、生産性や管理の自動化を促進。 |
コスト削減と最適化 | 特定の目的に特化することで、汎用コンピュータよりもコストを抑えた効率的な運用が可能。 |
このように、組込み開発は私たちの身の回りのあらゆる製品に関わっており、その技術はますます進化しています。
3.組込み開発の流れ|要件定義~テスト
組込み開発は、ハードウェアとソフトウェアが密接に連携するため、厳密な開発プロセスが求められます。以下はその主な流れです。
フェーズ | 説明 |
1.要件定義 | システムに必要な機能や性能基準を明確にする。 |
2. システム設計 | ハードウェアとソフトウェアの構成、インターフェースの設計を行う。 |
3. 開発(実装) | CやPythonなどでプログラムを作成し、システムを構築。効率的なコードが求められる。 |
4.デバッグ・テスト | クロスデバッグ環境や実機でテストを行い、バグ修正や最適化を実施。品質を確認。 |
5.運用・保守 | 継続的なアップデートや不具合対応、必要に応じた機能追加を行い、システムの安定性を保つ。 |
これらの段階を順に進めることで、機能的で高品質な組込みシステムが完成します。
4.組込み開発の導入課題と解決策
組込み開発には、ハードウェアとの連携やリアルタイム制御の難しさ、エンジニア不足といった課題があります。以下が整理した表です。
課題 | 解決策 | ||
項目 | 内容 | 項目 | 内容 |
ハードウェアとの連携 | ソフトウェアとハードウェアの同期が難しい | シミュレーションツールを使ったテスト | 仮想環境で事前にテストを実施 |
リアルタイム制御の難しさ | 高速な応答速度が必要な設計が求められる | 専用プラットフォームの採用 | 設計の標準化を進めることで効率化 |
エンジニア不足 | 組込み開発の専門知識を持つ人材が不足 | 外注を活用 | 開発コストの削減と効率化が可能 |
シミュレーションツールの活用、専用プラットフォームの採用、外注の活用などの解決策によって、これらの課題を克服することができます。これにより、開発の効率化やコスト削減が実現し、高品質な組込みシステムを構築することが可能となります。
【参考記事】

5.組込み開発ツール/プラットフォームの比較と選定のポイント
組み込み開発を始めるにあたり、最適な開発ツールやプラットフォームを選定することは非常に重要です。ツールの選定基準を明確にし、プロジェクトに適した環境を整えることで、開発の効率や品質を向上させることができます。
(1)選定基準
ツールやプラットフォームを選定する際、以下のポイントを考慮する必要があります。
要素 | 詳細 |
コスト | ハードウェア・ソフトウェアのライセンス費用や開発環境のコストを確認 |
開発の難易度 | 初心者向けか上級者向けか、学習コストを考慮 |
対応業界 | 自動車、産業機器、医療機器など、対象業界に適したプラットフォーム選定 |
性能・機能 | 処理速度、メモリ容量、消費電力、リアルタイム処理能力を考慮 |
エコシステム・サポート | 開発者コミュニティの規模、ドキュメント、技術サポートの有無を確認 |
(2)ツール/プラットフォームの比較
以下の代表的な開発ツール・プラットフォームを比較し、それぞれの特長を紹介します。
ツール/プラットフォーム | コスト | 難易度 | メリット | デメリット | 特徴 | 使用用途 | 対応業界 | |
1 | Arduino | 低価格 | 初級者向け | オープンソース、豊富なコミュニティサポート | 処理能力が限定的 | 簡単なプロトタイピングに最適 | 教育、趣味、簡易なIoTデバイス | 家電、教育 |
2 | Raspberry Pi | 低価格 | 初級者向け | フル機能のLinux環境、豊富な周辺機器 | 消費電力が高め | 小型コンピュータとして多用途に利用可能 | メディアセンター、教育、プロトタイピング | 教育、家電 |
3 | STM32 | 中価格 | 中級者向け | 高性能、低消費電力、多彩なラインナップ | 開発環境の設定がやや複雑 | ARM Cortex-Mコアを採用したマイクロコントローラ | 産業機器、家電、自動車 | 自動車、産業機器 |
4 | ESP32 | 低価格 | 中級者向け | Wi-FiとBluetoothを内蔵、高い処理能力 | 一部の機能が複雑 | 無線通信機能を備えたマイクロコントローラ | IoTデバイス、スマート家電 | 家電、産業機器 |
5 | FreeRTOS | 無料 | 中級者向け | オープンソース、リアルタイム性 | サポートがコミュニティベース | 組み込み向けリアルタイムOS | リアルタイム制御が必要なデバイス | 産業機器、自動車 |
6 | Zephyr | 無料 | 中級者向け | モジュール性、高いセキュリティ | 新興プロジェクトのため情報が少ない | 組み込み向けリアルタイムOS | セキュリティ重視のIoTデバイス | 医療機器、産業機器 |
7 | QNX | 高価格 | 上級者向け | 高信頼性、高セキュリティ | コストが高い | マイクロカーネルアーキテクチャのリアルタイムOS | ミッションクリティカルなシステム | 自動車、医療機器 |
8 | VxWorks | 高価格 | 上級者向け | 高性能、広範なサポート | コストが高い | 商用リアルタイムOS | 航空宇宙、防衛、産業機器 | 航空、宇宙、産業機器 |
9 | PlatformIO | 無料/有料プランあり | 中級者向け | 複数のプラットフォームをサポート、統合開発環境 | 初心者には設定が複雑 | クロスプラットフォームの開発環境 | マルチプラットフォーム開発 | 家電、産業機器 |
10 | Keil MDK | 高価格 | 上級者向け | 強力なデバッグ機能、広範なデバイスサポート | コストが高い | ARMマイクロコントローラ向け開発環境 | 高度な組み込みシステム開発 | 自動車、産業機器 |
(3)ツール/プラットフォームの導入の課題と解決方法
開発ツールやプラットフォームの導入には、多くの課題が伴います。特に初心者や新しい分野に取り組む際には、事前に課題を把握し、解決策を考えておくことが重要です。
課題 | 詳細 | 解決方法 |
開発環境の構築が複雑 | OSのセットアップ、ドライバ、IDEの設定が必要 | 環境構築の自動化: Dockerなどの仮想環境で設定の再現性を高める |
学習コストが高い | 新しいツールの習得に時間がかかる | 学習リソースの活用: オンラインチュートリアルや公式ドキュメントを使う |
ドキュメント・サポート不足 | 公式ドキュメントが不足していることがある | コミュニティサポートを活用: Stack OverflowやGitHubを活用 |
デバッグやテストの難しさ | リアルタイムデバッグが難しいことが多い | デバッグツールの活用: JTAGデバッガやシリアルモニタを使う |
業界ごとの規格・標準の適用 | 自動車(AUTOSAR)、医療機器(ISO 13485)などの規格に適合 | 業界標準の理解と適用: 規格を確認し、適合するツールや手法を導入 |
組み込み開発では、適切なツール選定だけでなく、その導入に伴う課題の解決も重要です。事前にリスクを把握し、対策を適切に講じることで、スムーズな開発を進めることができます。
6.組込み開発におけるテストと品質管理の重要性
組込みシステム開発において、テストと品質管理は製品の信頼性を確保するために不可欠です。具体的には、以下のようなプロセスが必要です。
テストの種類 | 目的 | 重要性 |
単体テスト | 各モジュールやコンポーネントが設計通りに動作するか確認 | 早期に不具合を発見し、個別の問題を修正することが可能 |
統合テスト | システム全体での相互作用を確認 | モジュール間の問題を発見し、システムの整合性を確認 |
負荷テスト | 極限状態での性能確認 | 高負荷下でのシステムの安定性や性能を確認する |
リアルタイムテスト | 処理速度や応答性を評価 | リアルタイムでの動作確認ができ、システムが適切に動作するか判断 |
単体テストや統合テストを通じて早期に問題を発見し、負荷テストやリアルタイムテストでシステムの性能と安定性を確認することで、運用中のトラブルを未然に防ぎます。徹底した品質管理により、最終的な製品の品質を保証することができます。
【参考記事】

7.組込み開発の未来
組込み開発の未来は、技術革新によって大きく変化しています。特に、次のような進展が予想されています。
(1)IoTと5Gの普及
インターネット接続されたデバイス(IoT)の増加と5Gネットワークの普及により、組込みシステムはより高速でリアルタイムなデータ処理が可能となります。これにより、スマート家電、医療機器、車載システムなど、さまざまな分野で高度な機能を提供できます。
(2)AIと機械学習の統合
組込みシステムにAIや機械学習を組み込むことで、より賢いデバイスが誕生します。これにより、自律型車両やパーソナルアシスタントなど、自己学習能力を持つシステムが実現するでしょう。
(3)エネルギー効率と環境への配慮
環境問題への関心が高まる中で、エネルギー効率の良い組込みシステムの開発が求められています。低消費電力で長時間動作するデバイスや、再生可能エネルギーを活用するシステムが増加するでしょう。
(4)セキュリティ強化
IoT機器やネットワーク接続された組込みシステムが増加すれば、セキュリティ対策も重要になります。暗号化技術やセキュアな通信プロトコルを組み込んだ、ハッキングに強いシステム開発が進むと予想されます。
(5)自動化と開発の効率化
開発ツールの進化により、組込みシステムの開発はさらに効率的に行えるようになります。シミュレーションや自動化されたテストツールが普及することで、開発サイクルが短縮され、より多くの製品が市場に投入されます。
これらの技術革新によって、組込みシステムはますます多様化し、私たちの生活に欠かせない存在となるでしょう。
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