
バイパスコンデンサとは?働きや仕組み、種類、容量の決め方を解説
バイパスコンデンサは電子回路の電源ラインに設置される部品で、一般的な電子回路やIC(集積回路)の安定化を目的としたコンデンサを指します。
本記事ではバイパスコンデンサの原理や構成、メリット・デメリット、選び方などについて解説します。
バイパスコンデンサを設置するときに考慮すべきことについても解説するため、バイパスコンデンサを取り扱う方はぜひ本記事でバイパスコンデンサについての理解を深めてください。
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目次
1.バイパスコンデンサとは?働きや仕組み、デカップリングコンデンサとの違い
(1)バイパスコンデンサとは?コンデンサとの違い
ここではコンデンサについて解説した上で、バイパスコンデンサについて説明します。
①コンデンサとは
コンデンサとは電子回路の基本的な部品の一つで、あらゆる電子機器に使用される重要な部品です。
主な性質は二つあります。
・電荷(電気)を一時的に蓄える |
電気を一時的に蓄えて放出する働きにより、電圧が不足した時に補助する役割を担ったり、カメラのストロボなど瞬間的に強い電圧が必要な機器に使用されることもあります。
また、直流(DC)を通さず交流(AC)を通しやすい性質を利用することで、回路内の電気をきれいに整えることもできます。
水で例えると、コンデンサは以下のようにダムのような働きをします。
・水(電気)を一時的に蓄え、必要な時に放出する |
これらの特性を利用し、コンデンサは電源ラインの電圧変動を抑制する、ノイズを除去するなどの目的で使われます。
②バイパスコンデンサとは
バイパスコンデンサ(Bypass capacitor)は、電子回路において不要な高周波ノイズを逃がす(バイパスする)ことで除去したり、低周波ノイズを吸収して電圧を安定させるために使われるコンデンサです。
電子回路やIC(集積回路)などが安定した動作をするために重要な役割を果たし、身近な家電製品やPCだけでなく、医療機器や産業用機器などあらゆる電子機器に使用される汎用性の高い部品です。
「バイパスコンデンサ」を略して「パスコン」と呼ばれることもあります。
バイパスコンデンサという名称の部品が存在するわけでなく、ノイズ除去などの目的で配置したコンデンサの総称を指します。
(2)コンデンサの構造と仕組み
コンデンサは、基本的に絶縁体を2個の向かい合わせた金属板(電極)で挟んだ形をしています。絶縁体とは電気を通さないもののことで、コンデンサの絶縁体は特に誘導体と呼ばれます。
コンデンサに電気を流すと絶縁体に隔てられた電極に+とーの電荷がそれぞれ貯まり、電気が流れなくなると貯まった電荷が少しずつ放出(放電)される仕組みです。
金属板の構造も平行板型を始め、表面積を大きくするために巻き型、積層型などさまざまな種類があります。
(3)バイパスコンデンサの働き
バイパスコンデンサが必要である理由は以下の3点です。
①電源電圧の安定化
電子回路ではICなどのスイッチング動作(ON/OFF)によって電圧が不安定になることがあります。電圧が不安定になると回路の動作も不安定になり、適切な動作ができなくなることがあります。そこで回路上にバイパスコンデンサを設置し、電源電圧の安定をはかります。
②ノイズの除去
電子回路では様々な要因で回路内にノイズが発生することがあります。ノイズがICに流れ込むと誤動作を起こすリスクがあるため、バイパスコンデンサによってノイズを速やかにGNDに逃がすことで回路の動作を安定化できます。
③電流のリターンパスの最適化
バイパスコンデンサをGNDとの間に適切に配置することで電流の戻り道(リターンパス)をスムーズにし、電磁放射などを低減することで回路の動作が安定します。
(4)デカップリングコンデンサとの違い
バイパスコンデンサと似た概念にデカップリングコンデンサがあります。
デカップリングコンデンサは、電圧の安定化とノイズ除去のために使われるコンデンサの総称です。厳密にはデカップリングコンデンサのうち、「コンデンサの中でも高周波ノイズをGND(グラウンド)に逃がす働きをするもの」をバイパスコンデンサと言います。つまり、バイパスコンデンサはデカップリングコンデンサに含まれる概念です。
実際の回路設計ではほぼ同じ意味で使われることが多く、「バイパスコンデンサはデカップリングコンデンサの一種」ということを理解で問題ありません。
【参考動画】
バイパスコンデンサについては以下の動画も参考にしてください。
引用:電圧・電流・ノイズの観点から見るパスコンの役割【エンジャーのエンジニア教室】
2.バイパスコンデンサの種類と原理
(1)バイパスコンデンサの種類
バイパスコンデンサはコンデンサが果たす役割の一つで、部品の名称を指すものではありません。
異なる周波数のノイズや電源変動に対応するために、以下の種類のコンデンサを複数組み合わせることがが一般的です。
①セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサはコンデンサの中でも容量が小さなコンデンサです。
高周波ノイズ除去に優れているため、高周波ノイズが発生しやすいICの近くに配置します。
小型でESR(等価直列抵抗)が低く、高速応答性が高いのが特徴です。
②電解コンデンサ
電解コンデンサはコンデンサの中でも容量が大きなコンデンサです。
電源回路の低周波ノイズを吸収したり、電圧不足時に電圧を補助できるため、バイパスコンデンサとして使用するときには電圧を安定させる役割で用いられます。
(2)バイパスコンデンサの原理
バイパスコンデンサはコンデンサが持つ以下の二つの原理を利用し、ノイズ除去、回路の安定動作や電圧の安定化などの効果をもたらします。
・セラミックコンデンサが高周波ノイズだけをGNDに逃がす |
コンデンサの種類 |
コンデンサの性質 |
得られる効果 |
セラミックコンデンサ |
高周波ノイズを通過させる |
ノイズをGNDに逃がして電流を整える |
電解コンデンサ |
低周波ノイズを吸収する |
回路の電圧を安定させる |
高周波ノイズは高速なスイッチング動作をするICで発生しやすいため、セラミックコンデンサをICの近くかつGNDとの間に設置するのが一般的です。
低周波ノイズは電源から供給される電圧の変化を吸収するために、電源供給ラインの入口に設置されます。
3.バイパスコンデンサのメリットとデメリット
ここではバイパスコンデンサを使用するメリットとデメリットを紹介します。
(1)バイパスコンデンサのメリット
バイパスコンデンサの最大のメリットは、回路動作を安定化できることです。
ICは高速なスイッチングを繰り返すことでノイズを発生させます。ノイズは電源電圧の変動や信号の乱れにつながり、結果的に回路の動作が不安定になったり、ICから出力される信号が乱れるなどの不具合が生じます。
バイパスコンデンサを設置して瞬間的な電圧変動やノイズを除去することで、回路やICが正常に動作できる環境を作ることが可能です。
(2)デメリット
バイパスコンデンサのデメリットは以下の2点です。
①回路設計や配置に注意が必要
バイパスコンデンサは、適切に配置しなければノイズが増えるなどの悪影響が生じる場合があります。
複数のコンデンサを配置する都合上、基盤のスペースも必要になるためレイアウト設計の配慮も重要です。
②複数の種類を適切に選ばないと十分な効果が得られない
コンデンサは、例えば以下のように種類によって除去できるノイズの周波数に違いがあります。
・セラミックコンデンサは低周波ノイズを吸収することができない |
また、コンデンサの容量によっても対応できるノイズの周波数に違いが生じます。
このように、適切なコンデンサの種類を選ばないと十分な効果が得られないため、設置する際には注意が必要です。
4.バイパスコンデンサと併せて考慮すること
ここでは、バイパスコンデンサを使用する際に併せて考慮すべきことを解説します。
(1)インダクタンス
インダクタンスとは電流の変化を妨げる性質のことです。
電流が流れる配線や電子部品には必ずインダクタンスが存在し、特に高周波信号に大きな影響を与えます。
配線が長くなるとインダクタンスが増えてしまい、バイパスコンデンサを設置しても高周波ノイズを十分にGNDに逃がせなくなります。
水で例えると、長いホースに息を吹き込んで水を押し出すイメージです。ホースが長いとより大きな力が必要ですが、ホースを短くすればより小さな力で水を押し出すことができます。
インダクタンスも同じで、配線が長くなると電気が流れるときの抵抗が大きくなります。
バイパスコンデンサを設置する際には、配線を短くするために以下のような対策が有効です。
・高周波ノイズの発生源(主にIC)の電源ピンの近くにバイパスコンデンサを設置する |
(2)GNDプレーンの設計
GNDプレーンとは基板上でGNDを広い面積で確保する設計手法です。
電流のリターンパスを最適化し、ノイズ低減や電源の安定化を図ることができます。
水で例えると、循環する水の戻り道を大きくするイメージです。もし戻り道が細いと、水がスムーズに流れずに詰まりやすくなってしまいます。
GNDプレーンをICとバイパスコンデンサの近くに確保することで、電流の戻り道を短縮し、バイパスコンデンサの効果を高めて効率的にノイズを除去できます。
5.バイパスコンデンサの選び方と設置のポイント|容量やESR
ここでは、バイパスコンデンサを使用する際の選び方や設置時のポイントを紹介します。
(1)よく使われるバイパスコンデンサの種類・容量
バイパスコンデンサには使用目的や対応するノイズ周波数に応じていくつか種類があり、複数のコンデンサを併用するのが一般的です。
コンデンサ種類 |
代表的な容量 |
主な役割 |
効果 |
セラミックコンデンサ |
0.1μF〜1μF |
高周波ノイズをGNDに逃がす |
・回路の動作安定化 |
電解コンデンサ |
1μF〜100μF |
低周波ノイズを吸収する |
・回路の動作安定化 |
(2)選び方のポイント|容量やESRなど
バイパスコンデンサを選ぶ時には以下のポイントを考慮します。
①容量とノイズ周波数帯域
コンデンサの種類や容量によって対応できるノイズ周波数が異なります。
例えば以下のように、目的に適したものを選ぶことが重要です。
・高周波ノイズを抑える場合は0.1μFのセラミックコンデンサ |
ICの仕様書にもコンデンサの推奨値が記載されているので確認しましょう。
②ESR(等価直列抵抗)の低さ
電解コンデンサは比較的ESRが高いコンデンサですが、ESRが低いものを選ぶことでスムーズな電力供給が可能になります。
③サイズ
コンデンサは種類や容量によってさまざまなサイズのものがあります。
基板のスペースやサイズ、配置の制約を考慮し、適切なサイズの部品を選んでください。
④動作温度と耐電圧
電子回路は高電圧がかかることや、使用時に高温になる場合も多いです。故障などのトラブルを避けるために使用環境に適した耐熱性、耐電圧の部品を使用しましょう。
(3)配置のポイント
①ICの電源ピンの直近に配置
バイパスコンデンサを配置する際には、配線を短くしてインダクタンスを抑えることが重要です。
ノイズ除去効果を高めるためにICの電源ピンの直近に配置するのが効果的です。
②GNDプレーンの確保
高周波ノイズを効率的に逃がせるよう、GNDプレーンを確保することが重要です。
電流のリターンパスが最短になることで、不要なノイズを防止できます。
③異なる容量のコンデンサを並列に配置する
コンデンサは容量ごとに対応できるノイズの周波数が異なります。
容量の異なるコンデンサ(例えば0.1μF + 10μFなど)を並列に配置することで、より広い周波数帯のノイズをカバーすることが可能になります。
6.バイパスコンデンサの主な使用例
バイパスコンデンサは身近なパソコンから産業機器まで、あらゆる電子機器などに使用されています。
ここからは、バイパスコンデンサが使用されている使用例について、代表的なものをいくつか紹介します。
(1)マイコンやデジタルIC
マイコン(MCU)やロジックIC(CPU)は、高速なスイッチングを繰り返すことでノイズが生じやすいため、バイパスコンデンサでノイズを抑えることが必須です。
(2)電源回路
スイッチングやリニアレギュレータでは、出力される電圧のゆらぎを抑えるためにバイパスコンデンサが使用されています。
(3)通信機器
Wi-FiやBluetoothなどの無線通信回路では回路にノイズが走ると通信品質に大きく影響するため、バイパスコンデンサが重要な役割を果たしています。
(4)オーディオ機器
オーディオアンプやスピーカー回路では電源ノイズが音質に影響を与えるため、ノイズ除去のためにバイパスコンデンサが使用されています。
(5)自動車の電子制御回路
自動車に搭載されるECU(エンジン制御ユニット)や各種センサー回路は、車両の電圧変動が激しいためバイパスコンデンサで安定させることが重要です。
(6)産業用機器やロボット
PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やロボットのモーター制御回路では大電流が流れるため、電源の安定化の目的でバイパスコンデンサが使用されます。
PLCやモーターについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。。

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