【図解】画像検査のアルゴリズムとは?装置メーカー5選つき
目次
1.はじめに
製造の現場では、キズの有り無しや正しい表示がされているかの外観検査、仕様通りに製作されているかの測定検査が行われています。
カメラの機能や精度、照明の方式、画像処理装置の著しい性能向上によって、高精度な自動での外観検査や測定検査が可能です。
その結果、私たちの生活に必要なものは、品質が良く安全で安心な製品を手にすることができています。
自動で高精度な外観検査や測定検査をもたらしたものは、ハードウェアの向上もさることながら、画像処理を行うソフトウェアの向上、特に画像検査アルゴリズムの向上が欠かせないでしょう。
このコラムでは、画像検査アルゴリズムの検査に及ぼす効果について、その一端をご紹介します。
もし、検査・検品に画像処理を追加して、
・省力化、省人化してコストダウンしたい
・検査レベルを高めて品質価値を高めたい
というご希望がございましたら、お気軽に画処ラボまでお問い合わせください。
ルール型画像処理からAIによる画像処理まで、ご希望に対して幅広い対応が可能です。
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「画処ラボ」ではルールベースやAIの画像処理を専門エンジニアが検証。ご相談から装置制作まで一貫対応します。
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2.アルゴリズムとは
画像処理を司るものは、ハードウェアとそれを動かすソフトウェアの両輪で、画像を処理しています。画像を処理するソフトウェアは、アルゴリズムとプログラムがあります。
この2つはどう違うのでしょうか?
画像検査アルゴリズムとは、画像を解析し検査対象が正しいかどうかを検査する手順と定義できます。
一方、プログラムとは、アルゴリズムをもとに、C言語のようなコンピュータ言語で書かれ、入力や出力と関連付けられて画像の検査が進行するものと、定義できます。
検査の手順では、画像取り込み、前処理、検査プログラム起動、判定プログラム起動、出力処理と進みます。
画像取り込みでも、前処理でも、ある手順にしたがってプログラムが遂行されます。したがって、これらもアルゴリズムといって良いでしょう。このコラムでは、特にアルゴリズムはこれといった捉え方はせず、検査のために画像を処理するソフトウェアを「アルゴリズム」として考えます。
3.画像検査の種類とアルゴリズム
(1)画像検査とは?
画像による検査とは何か、そのイメージを紹介した図が図1です。
図1では、CCDカメラで撮像したワークの画像から、欠陥の有無を検出するイメージを表しています。
ここで、欠陥の有無は、画像を見れば一目でキズの欠陥があることが分かります。
しかし、このとき、画像から判断できるのは人です。
一方、画像処理を行う主体は、コンピュータです。
コンピュータは、図1の右側で示すような、0から256階調を数字で示した画像データでしか判断できません。
赤枠で示すような欠陥を示すデータを、コンピュータは見つけ出し、それが欠陥と認識する必要があります。
これが画像による検査で、見つけ出すための手順が、画像検査アルゴリズムです。
(2)画像解析アルゴリズム
図2は、画像検査を行うための画像解析手順の一例です。
- 画像入力
検査画像の入力処理を行います。カラー画像から256階調のグレー画像への変換も含みます。さらに、ここでは、画像に含まれるノイズの除去のような前処理も含むものとします。 - 欠陥領域検出
画像の背景を消すことや、画像の二値化によって画像の欠陥を見やすくします。さらに、画像をいくつかの領域に区切って、欠陥の有無を検出します。 - 検査・計測
領域から欠陥の有無や大きさの検査、ワーク画像から寸法計測、面積計測、個数カウントなどを行います。 - 判定
欠陥の有無の判定、寸法などが仕様の許容以内かから、ワークがOKかNGかを判定します。 - 出力
判定によって、画像解析結果をディスプレイへの表示、ファイル格納、警報表示などの出力を行います。
aからeまでのそれぞれの画像処理は、画像検査アルゴリズムとして、それぞれが動作するイメージです。
(3)ワークの欠陥検出イメージ(例)
図3では、図2で紹介したアルゴリズムで、ワークの欠陥を検出するイメージを紹介しています。
図3のワークにある欠陥を検出するアルゴリズムの順序は、次のようになります。
- 画像入力
- 欠陥領域検索
画像をカラーからグレー化し、ノイズを除去します。検索アルゴリズムは、画像をいくつかの領域に分けて、欠陥のある領域を検索します。 - 欠陥検出・形状計測
画像を二値化し、キズの欠陥を検出するアルゴリズムです。検出したキズの欠陥の方向と、キズの大きさを計測します。 - 欠陥表示
二値化した画像をソルベール輪郭抽出アルゴリズムを使い、ワークと欠陥を見やすい表示として知らせます。また、欠陥データベースに登録するアルゴリズムを起動します。
(4)画像検査のための画像処理種類とアルゴリズム
画像処理の種類とアルゴリズム内容について表1でご紹介します。
表1 画像処理の種類とアルゴリズム
画像処理の種類 | アルゴリズムの内容 |
画像加工 | ノイズ除去、エッジ抽出、拡大と縮小、画像強調、画像ぼかし |
画像補正 | コントラスト、明るさ補正 |
画像変換 | グレー画像への変換、二値化、限定色だけの表示 |
画像解析 | サーチによって得られた領域の面積や含まれる数量の計測 |
画像の特徴抽出 | サーチによって得られた図形の特徴算出、ディープラーニング |
画像認識 | パターン分類、文字認識、文字のOCR、画像の機械学習 |
表1で紹介するアルゴリズムは一般的に紹介されている内容です。
画像処理を行うメーカーでは、独自に開発した画像検査アルゴリズムが用いられています。
どの業種、どの製造プロセスでも適用できるアルゴリズムがありますので、メーカーの紹介サイトを見ることで、自社にフィットするアルゴリズムが見つかるかもしれません。
4.二値化によるブロブ解析
ブロブ解析とは、検査する部位を大きなかたまりとして表示させる方法で、検査画像を二値化するアルゴリズムはその一つです。
ブロブ解析で検出できる例を挙げてみましょう。
- 存在するかどうか
- 検査対象の数
- 検査対象の大きさ・面積
- 検査対象の寸法測定
- 検査対象の向き
- 検査対象の位置
- 形状の特徴量算出
二値化を紹介する図が、図4です。
二値化のアルゴリズムは、画素を0=黒と1=白に分け、白黒の画像で表す方法です。あるしきい値より大きな値を1へ、小さな値を0とします。
図4では、0~256階調のグレー画像を、しきい値150として、0と1に画素の値を変え、白と黒の画像に変換しています。
図5は、ブロブ解析のために、ボトルの検査画像を二値化するイメージ図です。
ブロブ解析は、次のステップで行います。
- 画像入力
検査画像を入力し、ノイズ除去などの前処理を施します。 - 二値化
図5では、二値化を行うときに、しきい値を2つのモードで比べています。
しきい値=100の時が左側の図です。このときの二値化では、ボトルの曲線部が出てしまい、ボトルの計測などの解析が難しくなります。
一方、しきい値=100の時が右側の図です。このときの二値化では、ボトル全体を表すことができ、ブロブ解析が可能です。 - 解析のための輪郭抽出
しきい値=100として二値化した画像から、輪郭を抽出し、輪郭間の寸法の計測ができます。
5.画像検査の方法例
図6は、画像検査の流れとアルゴリズムがどう適用されるかのイメージを紹介する図です。
- 入力アルゴリズム
ワークの画像を入力します。画像はカラー画像で、背景が描写されています。
ワークの画像検査の目的は、ワークの底辺の長さと面積を計測することとします。 - グレー化アルゴリズム
画像処理のスピードを上げること、背景を消すために、256階調のグレー画像に変換します。 - 回転アルゴリズム
撮像する画像は、ワークの状態によって様々な角度からの撮像画像となることが一般的です。そのため、計測できやすいように画像を回転させます。
図6では、ワークの図を回転させていますが、実際にはアルゴリズムは、ワークの位置情報から、傾いたワークに対しx-y座標を適用する操作を行います。 - 二値化アルゴリズム
ブロブ解析のために、画像を二値化します。ワーク画像は1つのかたまりとしてとらえられますが、背景も二値化されて点在するため、このままでは計測できません。 - 膨張と収縮アルゴリズム
点在する背景のブロブを消去するため、膨張アルゴリズムを2回適用します。膨張は、周囲の白色で置き換えるため、背景が消えます。
一方、膨張によってワークのブロブの周囲も白で置き換わるため、逆に収縮アルゴリズムを2回適用します。収縮は、周囲の黒色で置き換える操作です。
膨張と収縮によって、ワークだけが二値化されています。 - 輪郭抽出アルゴリズム
ワークの寸法や面積を測定しやすいように、輪郭を抽出するために、エッジ抽出アルゴリズムを適用します。 - 計測と判定アルゴリズム
最後に行うアルゴリズムは、ワークが仕様どおりに製造されているか計測し、OKかNGの判定を行う操作です。
6.画像検査アルゴリズムを用いたシステム導入に強いメーカー&ロボットSIer紹介
この章では、会社が有する画像検査のアルゴリズム製品や技術を紹介します。Webページを合わせて紹介していますので、詳細はそのページで確認してください。
①画処ラボ(ガショラボ)
【所在地】
神奈川県相模原市緑区西橋本5-4-30 SIC2-2314
TEL:050-3733-3774
WEB問合せ:https://gasho-labo.jp/#contact
https://gasho-labo.jp/
【特徴】
検査の自動化に伴って画像処理装置の導入する際には、複数のセンサーメーカーと複数の画像処理機器メーカーを選択し、それぞれ検査対象によって個別対応する必要があります。
画処ラボは、メーカー横断での機器選定から判断プログラムの選定及び装置の設置構想までを⼀括で提案し、設置からサポートまで⼀元管理。
さまざまなメーカーから、照明は50種類、カメラ・レンズは30種類をとりそろえており、機器や画像処理プログラムの選定だけでなく、装置の構想・設置、サポートまで、ワンストップで相談が可能です。
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②ヴィスコ・テクノロジーズ株式会社
【所在地】
東京都港区海岸1-11-1ニューピア竹芝ノースタワー20階
TEL:03-6402-4500
【アルゴリズム内容例】
https://www.visco-tech.com/application/general/crackfinder/
ヴィスコ・テクノロジーズ社の「CrackFinder」は、クラック検査で、クラックを人の眼のように形で認識するアルゴリズムです。
クラックを判別し難い素材での画像を、画像背景と区別し、高精度にクラックが検出できることが特徴です。
③美和電気工業株式会社
【所在地】
東京都新宿区新宿1-8-5 新宿御苑室町ビル
TEL:03-3341-2101(代)
【アルゴリズム内容例】
https://www.miwadenki.co.jp/solution/picture/#sec1
製品の地合いで、シート製品検査で起こる輝度のムラは、二値化処理では検査できないことがあります。これを解決した方法が、美和電気工業社の「動的しきい値法」です。
この方法は、ベースのコントラストを算出し、オフセット設定することで、検査領域だけの抽出が可能となります。
この手法を用いることで、図のように、二値化方法と比べ、キズの抽出に対して明確な効果が得られることが分かります。
(左から、1.原画像-2.二値化画像-3.動的閾値法-4.動的閾値法+モフォロジー処理です)
④株式会社ALBERT(アルベルト)
【所在地】
東京都新宿区北新宿2-21-1 新宿フロントタワー15F
TEL:03-5937-1610(代表)
【アルゴリズム内容例】
https://www.albert2005.co.jp/service/case/752.html
透かし模様によるノイズ、統一されないフォーマットによって起こる、印刷物の読み込み精度不良に対し、書類の文字読み取り自動化では、99%以上の正答率で識別が可能です。
このアルゴリズムは、読み込んだ画像データのレイアウト解析によって、項目ごとに文字列を認識して返します。文字認識はディープラーニングを利用しています。
⑤株式会社日立産業制御ソリューションズ
https://www.hitachi-ics.co.jp/
【所在地】
茨城本社:茨城県日立市大みか町五丁目1番26号
TEL:0294-53-6115(代)
東京本社:東京都台東区秋葉原6番1号(秋葉原大栄ビル)
TEL:03-3251-7200(代)
【アルゴリズム内容例】
https://info.hitachi-ics.co.jp/product/virkensa/mip/mipcas01.htm
2値化画像処理方式によるダンボールケースの印字検査は、下地の色合い変化・表面状態によって印字の濃度ムラや汚れ・染みなどで十分に正確な検査ができていません。
濃淡テンプレートマッチング方式では、この問題を克服することができています。
日立産業制御ソリューションズ社の「濃淡テンプレートマッチング方式」は、一般的な濃淡テンプレートマッチング方式に対し、若干のライン抜けを許容する欠点をライン抜け検査ソフトと併用することで、印字不良の検出精度が向上しています。
なお、濃淡テンプレートマッチング方式は、低コントラストの画像から基準パターンを検出し、登録文字と検査対象文字の濃淡変化分布を照合し、一致率の検査を行う方式です。
また、下図の左側は、濃淡テンプレートマッチング方式による濃淡入力画面例、右側は、2値化方式による2値化処理例です。
7.画像検査アルゴリズムを用いた自動化・効率化のご相談は画処ラボへ
製造品を外観検査や仕様の検査を行うときには、人の目や手で行う検査から、コンピュータによる自動検査方式に変わってきています。しかし、まだ人の検査の方が精度よく検査できることもあります。そうなると、信頼性は向上しても、どうしても時間が掛かり生産効率は低下するでしょう。
そのため、製造の効率をいかに高めるかが、製造競争に勝てる要因となり、自動検査装置と画像処理装置に求められるものです。カメラやコンピュータなどのハードウェアの性能・機能は日々向上を遂げていますので、画像検査のアルゴリズムの精度向上に寄せられる期待は大きいものがあります。
画像検査アルゴリズムは、いかに人がやる検査に近づけるかが開発のポイントで、ディープラーニングは人の脳神経をまねて、人がやる検査に近づけている手法です。
もう一つ、画像検査アルゴリズムを作り出すポイントは、これまでに開発された膨大なアルゴリズムを改善・組合せて、より良いアルゴリズムに近づけることです。
それを実現するには、従来からあるアルゴリズムを使うノウハウやノウホワイを知り尽くしていることに、掛かっていると言ってよいでしょう。
画像検査で困ったことがあれば、これらのノウハウを持ち合わせたメーカーや開発会社に相談することが、いかに早く画像検査アルゴリズムを実用化できるキーポイントとなるのではないでしょうか。
画像処理システムの導入をご検討の際は、まずは画処ラボまでお気軽にお問合せください。
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