電子部品産業の動向と日本企業が生き残る道
IoT・5G・AI・ドローンなど、最新のテクノロジーにより私たちの日々の生活がどんどん便利になっていきます。このような技術革新を支えるためになくてはならないものが電子部品です。様々な種類の電子部品がこれらの技術を支えています。
電子部品の性能はどんどん向上していますが、多くの場合、その製造方法は既存の工法の組み合わせから成り立ちます。そのため、日本の得意な高度な技術による差別化がしにくく、人件費の安い中国や台湾などのメーカにおされているのが現状です。
本コラムでは、このような現状を説明し、今後日本の電子部品企業が勝ち残るための道について説明します。
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目次
1.電子部品産業の動向
電子部品は身の回りのあらゆるもの、家電、自動車、医療機器、インフラ、通信など、多くのモノに何かしらの形で搭載されている必需品です。
今現在、電子部品が搭載されていないモノにおいても、センサや通信モジュールなどの電子部品を搭載することで、これまでにないユーザ体験を生むことが期待されており、様々な事例が出てきています。
身近な例では、ユニクロのセルフレジがあげられます。ユニクロでは、商品が入ったかごを所定の位置に置くと、直ぐに商品リストと価格、合計金額が表示されます。この仕組みは、商品のタグに埋め込まれたRFIDという電子部品です。RFID書き込まれている商品情報をレジが読み取っています。
また、Googleは血糖値を計測するセンサを内蔵したコンタクトレンズを開発していることを発表しました。これも、これまでには電子部品は搭載されていなかったモノに電子部品を搭載した事例です。
以上のように、今後も人類が技術を革新し続ける限り、電子部品は重要な産業であり続けます。
電子部品における市場予測は、一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)から報告されています。https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/pdf/executive_summary_2020_2021.pdf
2.電子部品の種類と製造方法
電子部品は大きく、能動部品と受動部品に分類されます。能動部品とは外部からのエネルギーを整流したり、増幅したりする機能を持つ電子部品です。一方、受動部品とは外部からのエネルギーを受け取って、消費したり放出したりする部品です。
以下主要な部品を紹介します。
(1)能動部品
①種類
能動部品の代表的なモノは、ダイオード・バイポーラトランジスタ・ICなどの半導体製品です。
ダイオードは電流を一方方向にしか通さない性質を持ちます。そのため、電流を整流するのに用いられます。
バイポーラトランジスタは電流を増幅する機能を持ちます。高周波回路やバッファ回路に用いられます。
ICはIntegrated circuitの略で、集積回路とも呼ばれます。一つの部品に、トランジスタやダイオード、抵抗などの機能を集積し、複雑なロジックを構成しています。コンピュータに搭載されているメモリやCPUもICの一種です。
②半導体製品の製造方法
半導体製品の製造工程は、半導体素子に回路を形成する前工程と、半導体素子をパッケージングする後工程に分類できます。
前工程では、シリコンウエハの表層にフォトレジストと呼ばれるマスクを施して、選択的に表層に絶縁性や導電性を持つ膜を形成していきます。これらの膜の積み重ねにより、複雑な回路をシリコンウエハの表層に形成します。
半導体製品は1枚のウエハからいくつの素子を製造することができるか(集積度)がコストに影響します。そのため、配線をどんどん狭くして、集積度をあげることが試みられています。
後工程では、半導体素子を電子部品としてプリント基板に実装しやすい形状にパッケージングします。まずは、ウエハから切り出した半導体素子を基板に固定します(ダイボンディング)。そして、基板と半導体素子を金・銅・アルミのワイヤーで配線します(ワイヤボンディング)。配線が終わると樹脂で封止します(モールド封止)。封止後は基板から電子部品を切り出し、必要に応じて端子を曲げます(リードカット&フォーミング)。さらに、性能検査や外観検査を行い、梱包して出荷されます。
(2)受動部品
①種類
能動部品の代表的なものは、抵抗、コンデンサなどです。
抵抗は電流を通りにくくする部品です。電気回路を正常に動作させるために電流の量を調整します。コンデンサは電気を蓄電する機能があります。交流を直流に変換するAC DCコンバータなどに利用されます。
これらの部品には様々な形の製品があります。部品を電子基板にどのように実装するかで、部品の形状を分類することができます。
電子基板に設けられたスルーホール呼ばれる穴に、部品の端子を挿入してはんだ付けを行う部品をTHD(Through Hole Device)と言います。大型の電子部品に多い形状です。
一方、電子基板にはんだを印刷後、電子部品搭載し、リフロー炉ではんだを溶融してはんだ付けを行う部品をSMD(Surface Mount Device)と言います。電子基板に部品を実装する工程では、SMDの方が高速動作で実装することができます。
②受動部品の製造方法
抵抗・コンデンサ・その他の受動部品のいずれも、様々な形状があります。しかし、基本的には部品として機能を発揮する部分と、電子基板への実装時に基板と接合する部分(外部電極)で構成されています。
これらの部品の製造には、印刷工程・焼成工程・メッキ工程が多く用いられます。
部品として完成した後は、性能検査や外観検査を行い、梱包して出荷されます。
3.電子部品の製造工程と差別化ポイント
2章で紹介した電子部品のほとんどは、製品構造とその作り方が数十年前に確立されています。そのため、各製造工程ごとに専用装置メーカが存在しています。例えば、半導体組立ラインにおけるダイボンディング工程やワイヤボンディング工程はそれぞれ専門装置メーカが存在します。
そして、これらの装置を購入して並べるだけで、誰でも電子部品製造のラインを構築することができます。そのため、日本と比較して人件費が安い分、設備投資に多額の予算を投入できる中国や台湾のメーカにおされているのが現状です。
日本企業として電子部品業界で勝ち残るためには、以下の取り組みが必要だと考えます。
(1)専用装置が無い作業を自動化し、究極の無人化工場を目指す
先述の通り、電子部品は専用装置を並べるだけで製品を作るラインが完成します。しかし、材料供給や梱包出荷など、専用装置を導入しても人がやらなければならない作業が残ります。
これらの作業までも自動化し、究極の無人化工場を目指すことで、労務費の安い海外に対するコスト競争力が得られます。
しかし、これらの作業はなかなか専用設備化が難しい作業です。人のように状況に応じて作業内容を判断したり、複雑なハンドリングが必要な場合があります。
これらの作業の自動化を実現するには、カメラなどのセンサを搭載した高度なロボットシステムが必要となるケースがあります。ハードルが高いとあきらめず、ロボットSIerに相談してみるのが良いでしょう。
(2)工場全体を最適化する
生産ラインの外も最適化し、コスト競争力を上げることができます。例えば工場全体のエネルギーの最適化が考えられます。多くの工場では、以下のロスが考えられます。
①熱のロス
電子部品組立工程には、熱を利用する工程が複数存在します。はんだ付け工程や樹脂成型工程、樹脂のアフターキュア工程などがそれにあたります。これらの工程では、工程に利用される熱以外に、周囲の環境に流れ出ているムダな熱が存在します。
これらの熱をうまく回収し、空調や発電などに利用できれば、工場全体の運営コストが削減できます。
②圧縮空気
設備の中には、圧縮空気を動力としているものがあります。これらは工場の付帯設備からチューブを通して供給されますが、チューブの継ぎ目からのエア漏れや、カラ運転によるエアの漏れがムダとしてあげられれます。まずはこれを見える化し、ムダを極限まで削減する取り組みが必要です。
③空調
電子部品工場は年中同じコンディションとなるよう、空調が制御されています。
天井が高く、空調の体積が大きい工場の場合、局所的に空調を制御することでムダを削減できる可能性があります。
4.製造業の工場改善に関するご相談はFAプロダクツへ
本コラムでは電子部品産業の動向から、電子部品業界における日本企業の勝ち残る道について説明してきました。
勝ち残るための一つの道は、完全無人化工場や工場全体の最適化です。これらを実現するには様々な技術から最適な手段を選択し、順序良く導入していく必要があります。
FAプロダクツでは、これらの難題に対し、豊富な知見から適切なコンサルティングを行います。完全無人化工場や工場全体の最適化を検討する際は、是非ともFAプロダクツにお声かけください。
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