【図解】画像解析による長さ測定│メーカによる実施例も紹介
目次
1.はじめに
画像処理の技術は、カメラ・照明・処理装置などの機械の高精度と高機能により、高い精度で画像解析などの処理が行えるようになっています。
しかし、画像処理には、高性能なハードウェアのほかに、細かく分析できるソフトウェアの技術が不可欠です。
ソフトウェアを動かすコンピュータの処理速度、容量が格段に向上していることが、画像処理の高機能・高精度を支える要の一つです。
大きな問題があるとすれば、画像処理ソフトウェアをどのように効率的に動かすかの、プログラミングができるかでしょう。今日では、それらの研究が、産学をまたいで進められ、大きな成果を上げ実用化されています。
このコラムでは、物体の寸法を測定するという話から、いかに細かな注意をを加えながら画像解析が進められているかの一端を、ご紹介します。
また、画像解析をはじめとする画像処理に関して、
- 省力化、省人化してコストダウンしたい
- 検査レベルを高めて品質価値を高めたい
というご希望がございましたら、お気軽に画処ラボまでお問い合わせください。ルール型画像処理からAIによる画像処理まで、ご希望に対して幅広い対応が可能です。
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2.画像解析とは
画像解析とは、画像から基本要素を取り出し、データを得るための画像処理です。
画像解析は、工業・農業・セキュリティ・医用など多岐の分野で利用されています。
画像解析は、画像認識と表裏一体として使われています。画像認識とは、画像の中から特定のものを見つけ出す、写っているもののなかから判別するなどを行うことです。
この画像認識を行うためには、画像がどのようなデータで構成され、画像の特徴は何かを調べなければならず、画像解析の出番となります。
そういう意味では、画像認識は画像解析の1つの応用分野とも言えます。
画像解析の目的は、画像の特徴を抽出し、抽出したものの位置関係から、画像は何を意味しているかを調べることです。
(1) 特徴
その特徴とは、属性・領域・輪郭です。これらは、
- 属性
構成する画素の輝度や色です。 - 領域
画素の集合が類似の属性を持っている範囲です。 - 輪郭
領域を構成する画素集合の境界部で、エッジといいます。
(2) 画像解析の方法
- 前処理
画像を解析する前に、ぼやけや照明の当たり具合での不鮮明さ、ノイズなどを取り除く画像処理です。 - 特徴抽出
特徴となる属性・領域・輪郭を抽出する処理です。 - 形状認識
画像から得られる物体の領域に関する特徴、大きさと方向など、を調べる処理です。 - 物体抽出
画像の中から同じような属性のものを抽出する処理です。
下の図はリンゴの画像です。人はこれを見て、おいしそう、熟れている、粒がそろっている、照明の角度でもっと良くなるのに、などと考えるでしょう。
人にはリンゴの画像ですが、200万画素のそれぞれに数値の入った、数字の集合体です。
コンピュータには、画像データからは、0~255の3原色の数値だけが見えています。
そのため、おいしそうということは、コンピュータには判断できません。
人がおいしそうという定義、輝度の階調や範囲を教えてあげることで、コンピュータは、200万ピクセルの中から、それに合った数千ピクセルの数字の集合体を計算・解析して見つけます。
画像解析とは、どのような種類のものでも、結局、このようなコンピュータの動作と言えるでしょう。
問題は人間が作るアルゴリズムや定義、計算方法でしょう。
3.画像解析の具体例
画像計測が必要な場合として、ワークの長さの測定を画像処理するケースを図1でご紹介します。
図1は、ラインAとラインBから異なる部品を製造する工程で、寸法検査を行った後に、2つの部品はラインCに送られ、組み立てられるという想定例としています。
部品の組み立て時にわずかでも設計通りの嵌め合いになっていないと、以降の行程で生産される製品に異常が出るため、精密な寸法検査が必要なために、寸法検査はラインAとラインBで行う中間検査と仮定します。
設計通りの寸法精度に入っていれば、Cラインで組立の行程に入り、次工程に送られます。
4.画像解析による長さ測定方法
(1) 人が計測する場合
図2では、ラインAとラインBの部品の寸法検査を、人が行う場合(左側図)と、画像処理で行う場合(右側図)のイメージを紹介しましょう。
人が検査を行う場合には、
- トレーサビリティの取れた計測器を用いる。
- 必要にあった公差を満たす計測器、ノギスかそれ以上の精度ならマイクロマータを使う。
- 公差内でも人によって計測値がずれる可能性があるため、それが許容できる計測精度であること。
- 計測結果は、全て記録し、後で製品異常などがあったときに検証できるようにすること。
- 計測器は定期的に基準器による検査を行い、記録を残すこと。
などのルールの元で検査を行う必要があります。
また、検査を行っている間に部品が流れていて、滞ることがあれば、製造ラインを一時停止することが必要になります。
(2) 画像による寸法測定(長さ)方法
図3は、画像による寸法検査の手順を紹介します。
- ワークの画像を画像処理装置に送ります。カメラの解像度は、ワークの測定精度に合った解像度を有するカメラを使います。
- 画像処理アルゴリズムを使い、画像を二値化するなどの処理を行い、エッジ抽出します。
- 計測する対象物のエッジから、エッジ間のピクセル数を数えて、長さを測定します。
例えば、25画素なら、25×(1画素の長さ)として長さが計測できます。 - しかし、エッジの本当の位置は、捉えた1つのピクセルの間にあるため、そのピクセルをサブピクセル化して、エッジ点を捉えます。
- サブピクセル化によって、測定対象の正確な長さが分かります。
- 画像による寸法測定の最大のメリットは、製造ラインを止めることなく必要な部品の計測を行い、OKであれば直ちに組み立てに入れることです。
(3) 画像処理で計測する解像度
図4では、200万画素のカメラで捉えたピクセルデータを紹介します。
- 200万画素で撮影した映像は、1600×1200画素で表されます。
- 1例として、1ピクセル(画素)の長さは004mmとなり、5×5ピクセルの物体の長さは、0.02mm×0.02mmとなり、物体の長さや面積が計測できます。
- 撮像視野100mmでワークの画像では、画素の分解能は、
100mm÷1600画素=0625mm
となります。 - エッジ間が120ピクセルあったときは、5mmと測定できます。
(4) 画像処理で計測する実際方式
図5では、サブピクセルによってエッジ間の正確な位置を検出し、エッジ間の長さを測定する方式を紹介します。
- 図5は1画素(ピクセル)の図です。
- 長さを測るエッジは、最左端のピクセルと再右端のピクセルの間の距離を測ります。
- 1ピクセルの中には図のように白1から黒0、間にグレー0以上1以下の階調で構成され、この中にエッジがあります。
- このエッジを検出するには、1ピクセルの左端から右端までの入力画像を微分します。
- 二次微分によって変化の大きい部分がエッジ点です。
- 最左端のピクセルと再右端のピクセルそれぞれのエッジ点間の長さが、物体の正確な長さです。
- サブピクセルの分割数は、メーカーによって異なり、1000分割までできるところもあり、サブピクセルの分割幅によって、長さの分解能が異なります。
5.画像解析による個数測定例
前の章では、画像解析による長さの測定についてご紹介してきました。
この章では、他の画像解析の方式について一例、図6でご紹介します。
図6で紹介する画像解析は、リンゴの個数をラベリングで測定する方式です。
- 原画像は5つのリンゴの画像ですが、画像解析では、このリンゴの個数を数える解析を行います。
- 原画像を二値化することで、画像を白と黒の画像とし、リンゴを白で表します。
- 白で表されたリンゴは、1の集合体として画像データとして表されます。
- 1が連なった集合体を1つのリンゴとして、Aとしてラベルを付けます。
- 同様に、他のリンゴを示す1の集合体に、B,C,D,Eとつけます。
- ラベルを付けた集合体が、A~Eの5つあることから、リンゴの数は5個と画像解析から出力されます。
- 以下の項目は、ラベリングするときに間違えないための注意点です。
- リンゴAとBの間には0の数値で分離されているため、コンピュータはAとBは異なるものとしてラベルをA,Bとして貼りました。
- もし、AとBの間に0がなければ、AとBは1つの集合体として認識され、AとBはA一つとしてラベルが貼られます。
- 原画像では照明の当たり方が悪く、二値化した画像には、1つの1の集合体から外れる場合があります。
- そのために、画像解析を行う前には、ノイズや照明補正などの前処理を施すことで、二値化したときに、明確に集合体が分離できます。
画像解析では、画像認識など他の方式がありますが、相関を用いた画像認識については、別のコラムで紹介しましょう。
6.画像処理メーカーの画像解析事例
この章では、画像解析に係る製造メーカーが有する、解析・処理に関する製造品や技術を紹介します。Webページを合わせて紹介していますので、詳細はそのページで確認してください。
①株式会社FAプロダクツ
【所在地】
茨城県土浦市卸町2-13-3
TEL:050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
https://jss1.jp/
【特徴】
画像処理装置の導入する際には、複数の画像処理メーカーと複数の画像処理機器メーカーを選択し、検査対象ごとに個別対応します。
FAプロダクツ社は、画像処理メーカーの選定から装置導入まで一貫対応することで、多数の画像処理メーカーとの選定から導入・運用・メンテまで一元管理。費用・時間にムダなく最適化を行うことができます。
また、お打ち合わせから原則1週間以内に「お見積りとポンチ絵」をご送付。
【ポンチ絵とお見積りのサンプル】
テキストやお電話だけでは伝わりづらいゴールイメージを共有し、スピード感を持った対応を心がけています。
加えて、FAプロダクツ社は、ガショラボ(ガショラボ)を運営しています。
ガショラボは、メーカー横断での機器選定から判断プログラムの選定及び装置の設置構想までを⼀括で提案し、設置からサポートまで⼀元管理する仕組みです。
その特徴としては、
- カメラ機器をマルチメーカーから選定できる
- 検討から設置までトータルインテグレーションができる
- ルール型画像処理からAIによる画像処理まで幅広く対応が可能
- AIでの画像処理システムの実現では、運用が難しい多品種商品検査が容易に行える
などがあげられます。
FAプロダクツ社によるサポート体制は、遠隔サポートの導入により、トラブル時の迅速な初期対応が可能です。
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②テクノスデータサイエンス・エンジニアリング株式会社
【所在地】
東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー27階
Tel:03-6383-3261
【事業内容】
・ビッグデータ・人工知能(AI)を活用したソリューション提供
・AI製品(AIモジュールを含む)の提供
・ソフトウェアおよび測定装置の開発・販売業務
【プロダクト事例】
同社では、インテリジェント監視ソリューション(画像解析を応用したソリューション)を提供しています。独自の知能化エンジンが、監視カメラや生産ライン上のセンサーから送られた情報を、有用なデータへと常時変換。それにより異常の検出や、生産ラインの停止を迅速に行います。
(引用:AI×画像認識・画像解析の活用事例・画像解析を応用したソリューション – インテリジェント監視ソリューション)
③伯東株式会社システムプロダクツカンパニー
【所在地】
東京都新宿区新宿一丁目1番13号
TEL:03-3225-8910
【製品】
・画像解析ソフトウェア(「Image-Pro」)
・画像解析ソフトウェア(「Image-Pro 3Dモジュール」)
・画像解析ソフトウェア(「Image-Pro Plus」)
【プロダクト事例】
同社では、ASTM粒度測定モジュールと呼ばれる、画像解析ソフトImage-Pro Plusのオプションモジュールを提供しています。
こちらでは、特定のファイル、もしくは画像のASTM粒度を測定するため、切断法を利用しています。切断パターンは、ASTM粒度解析法で使用する水平線・垂直線・ASTMパターン・対角線の4つがあります。
図は、ASTM 測定画面の例です。
(引用:ASTM粒度測定モジュール)
④ヴィスコ・テクノロジーズ株式会社
【所在地】
東京都港区海岸1-11-1ニューピア竹芝ノースタワー20階
TEL:03-6402-4500
【製品】
画像処理システムの開発・製造・販売・保守サービス
【プロダクト事例】
一般的に、明るさ変化の最大点、すなわち対象物の形・材質が大きく変わるところの多くは、エッジ部分と考えられています。その最大点を検出するのが、同社が行うエッジ検出処理です。
具体的には、画像上の対象物を微分してエッジピークを抽出し、対象のエッジ特徴(エッジ部の位置やその有無、数など)を計測します。
図は輪郭(外形)部の検査で、画像上の対象物のエッジ有無の判定ができます。
(引用:エッジ検出とは・輪郭(外形)部の検査)
⑤株式会社宇部情報システム
【所在地】
山口県宇部市相生町8番1号 宇部興産ビル
TEL:0836-22-0111
【製品】
画像処理検査
・画像処理技術を用いた検査システム
・オリジナル検査ソフト、及び検査装置の提供
・豊富な検査ソフトのカスタマイズ
【プロダクト事例】
同社が提供しているのは、寸法測定システムです。
こちらは、あらかじめ登録しておいた測定手法と測定ポイントを元に画像解析を行い、物体の寸法を瞬時に計測してくれるのが特徴です。高精度な良否判定機能を備えているため、手作業でありがちな測定誤差を防げます。
検査対象は、LEDや基板といった電子部品と包装・容器です。
図は、欠陥イメージです。
(1)エッジ処理 (2)近似処理 (3)測定処理
(引用・寸法測定システム・欠陥イメージ)
7.おわりに
このコラムでは、画像解析の一つ、物体間の寸法測定について、その内容をご紹介しました。
お気づきの方が多くいらっしゃることでしょうが、内容は「概要」であって、ほんのさわり程度ということです。
例えば、
- 物体間の測定寸法とその精度をいくらまでにする必要があるから、カメラの解像度をいくらのものを使い、視野範囲とそれに対する照明の選び方、画像処理装置へのデータ転送時間はいくらにする。
- エッジ処理をするときに使うアルゴリズムは、ソーベルとかラプラシアンとか、何をどう使うのか。
- サブピクセルのエッジを見つけるための微分方法と、得られる解像度はどれだけで、最終的に、物体の寸法精度はいくらまでになり、誤差要因には何があるか。
などなど、多くの疑問があることでしょう。ただ、コラムでそれを解説すると、十数ページの解説書になってしまいます。
それほど、画像解析による寸法検査には、多くの技術や理論が含まれているということです。
さらに突き詰めて考えると、画像解析には、いろいろな方式があり、それら一つ一つに、寸法測定と同じような技術と理論が必要になるということです。
画像解析を行って生産効率化を目指そうとする製造業関係者の方は、どれから手を付けるかという悩みに直面することでしょう。
幸い、画像解析のどの分野でも確立した技術を持ち合わせている、メーカーやユーザーがおられます。
そのような会社との情報交換を遠慮なく行うことで、画像解析を短い時間で使得るようになり、製造効率向上に貢献できるのではないでしょうか。
FAプロダクツでは、AIを使った画像システムにより画像解析はもちろん、画像処理メーカーの選定から装置導入まで一貫対応することで、多数の画像処理メーカーとの選定から導入・運用・メンテまで一元管理し、製造業を支援しております。
お気軽にFAプロダクツへご相談ください。
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