AI活用で生産技術はどう変わるか?導入事例からわかる効果と課題
AI(人工知能)の発達とIoTとの連携により、製造メーカでも生産技術へのAI適用が実用化レベルに到達しており、生産工程の自動化は想像以上に進んできています。
今回は、AIとはそもそも何なのか、また、AIの製造現場への活用による期待効果や、実際に導入されている事例について解説します。AIの導入による人手不足解消や生産効率の向上は、これからの製造メーカにとっての重要命題であり、生産技術者がAIとどのように関わるべきかについても紹介します。
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目次
1.AIとはそもそも何なのか?
「AI:Artificial Intelligence」は、「人工知能」という言葉で日本でも広く知られています。それでは、製造業の生産技術に活用されるようなAIには、どのような特徴があるのでしょうか?
(1)AIの最大の特徴は「自己学習能力」
AIがこれまでのシステムと違うのは、要素技術の一つである「機械学習」によって、人間のように学習しながらさまざまなアウトプットができることです。
また、「ディープ・ラーニング(ニューラルネットワーク)」と呼ばれる機械学習アルゴリズムによって、ビッグデータのような人間では解析できないような複雑かつ大量の情報をインプットして解析を行い、生産工程にフィードバックすることも可能となります。
(2)AI技術の分類
AIに関しては、技術や機能のレベルによって以下の4段階に分けられています。
レベル1「制御」:AI家電など
レベル2「推論」:質問応答システムなど
レベル3「機械学習(マシンラーニング)」:学習解析ソフトなど
レベル4「深層学習(ディープ・ラーニング)」:画像認識システムなど
製造業においては、AI技術を適用する生産システムに応じて、これら4つのレベルから選択・活用することになります。
2.生産技術へのAI導入の効果と事例
AIの製造現場への活用に関しては既に実証実験が進められており、一部の工程にはシステムの導入が進んでいます。AIの導入によって期待される効果と、各メーカによる導入状況は以下の通りです。
(1)生産ラインの自律制御
AIによるビッグデータ等の自動データ処理技術は、生産工程の異常等を分析して制御系にフィードバックするなどして、自動制御による生産を可能にします。
住友ベークライトでは、NECとの共創活動によって、AI活用による生産ラインの自律制御を達成しています。
(引用:住友ベークライト株式会社ニュースリリース)
AIが生産工程内に設置されたセンサーのデータを元に制御ルールを逐次分析して、バッチ連続型生産ラインの自動監視と自律制御を行っています。これにより、AIを活用していない従来の生産方式に比べて、生産効率は20%向上しています。
(2)検査工程の自動化による品質向上
AIの機械学習の一つである「ディープラーニング:深層学習」は、製品検査の判定にも活用することができます。従来は、人の目視による官能評価であったり、事前に登録された欠点データを元に機械判定を行っていましたが、検査精度にはバラつきがあります。
しかし、AIを活用すれば、検査データを元にAIが合否判定の学習を継続して行い、検査ルールを明確化することが可能です。
フジクラでは、レーザダイオードの外観検査に、AIによる画像自動判定システムを導入し、これまでの目視検査からの切り替えを行っています。AIによる製品の画像判定精度は、98%に到達して人間による検査精度を超え、70%超の工程削減を達成しています。
(3)熟練工の代替
ものづくりの現場では、職人とも呼ばれる熟練工の経験や勘によって、製品の製造はもちろん異常を検知して対処しているケースも少なくありません。AIを活用することで、職人の勘を数値化してフィードバックすることで、熟練の技を代替する取り組みも進んでいます。
オークマ株式会社では、金属加工機器のNC旋盤システム「ARMROID」を発表しています。
これまでは、金属加工の精度チェックや加工時のビビり対策などの一連の作業を、熟練工の経験と勘に頼っていましたが、対話形式ガイダンスに沿って生産データを入力することで、ロボットが熟練工の手際に近い加工を行ってくれます。
(4)物流の効率化
AIの活用によって、工場における物流の自動化も進められています。人が操作するフォークリフトなどで搬送作業を行っていると、操作ミスや過積載による事故が発生する場合もあります。AIが自己判断を行えれば、自動搬送によって搬送作業におけるヒューマンエラーを防ぐこともできます。
工場での製品搬送などの物流には「AGV:無人搬送車」が使用されていますが、従来のAGVはあらかじめ決められたルートを走行するだけでした。
それに対し、OMRONでは「AI搭載モバイルロボット」を開発しており、AGV自身がリアルタイムで周辺環境を確認しながら、障害物などを検知して自動走行できるようなシステムを実現しています。
(5)生産計画の自動作成
製造業において、生産計画と必要な人員配置を決める要員計画は、生産効率にも直結するような重要要素です。そのため、製造工程はもちろん、作業する人員についての知識も豊富な、熟練の生産管理担当者の経験に左右される側面もありました。
この生産・要員計画に関して、ニチレイフーズは、日立製作所との協創活動を通じて、AIを活用した自動立案システムの本格導入を2020年から開始しています。
(引用:株式会社ニチレイフーズHP)
ニチレイフーズのこれまでの生産実績データを元に、最適な計画パターンをAIによって分析することで、従来の10分の1ほどの時間で最適な生産・要員計画を導き出せるようになっています。
3.AI導入でこれからの製造現場はどう変わるか
日本では、ドイツの「インダストリー4.0」と同じように、「ソサエティー5.0」という科学技術政策が打ち出されており、これから製造業界でも「DX:Digital Transformation」化が進んでいきます。
それに伴い、AIの活用によって、製造現場でも情報が必要な時に自動的に取得できるようになり、工場の自動化が進んでいくと考えられています。AIの導入によって、具体的には、以下のような変化が起こると考えられています。
(1)工場の自動化と省人化
日本は、少子高齢化による労働年齢人口の減少が進んでいることもあり、人手不足の解消も重要な課題となっています。
AIの導入事例でも紹介したように、既に一部の製造メーカでは工場の自動化が進んでいますが、IoTの活用とAIの導入により以下のような工場の生産機能の更なる自動化によって、省人化が期待されます。
- AIによる品質検査の合否判定の自動化
- これまでの生産ビッグデータ活用による生産効率の最適化
- AI導入産業ロボットによる人の作業代替
(2)保全活動の自動化など生産現場の改善
工場設備の故障の監視と予測を行う保全活動に関しては、保全担当者による直接確認に頼る部分が多く、スキルや経験による判断力の差もあります。
AIの導入によって、生産データの解析の自動化ができれば、故障の予見はもちろん、メンテナンスに必要な最適な冶具の自動提案や、購買システムとの紐付けによる部品調達などの効率化も期待できます。
(3)需要予測による生産計画や在庫管理の効率化
製造業で重要なのは、目標とする「QCD」を達成することです。この中の「D:納期」を達成するためには、ユーザの需要を先取りして在庫を積み、工場の製品在庫の情報を正確に把握してコントロールする必要があります。
AI活用によってこれまでの受注状況データなどを解析して、生産計画に反映させることで、作り過ぎや急な工程変更などといった「ムリ・ムダ」を削減することが期待されています。
4.生産技術者はAIとどう向き合っていくべきか
(1)生産技術者が身につけるべきAIスキル
生産技術者の目的は、あくまで生産における目標「QCD」を達成することです。そのため、全ての生産技術者が、プログラミングを習得してAIを活用したツールを作成できる必要はありません。
したがって、以下のようなスキルの習得をまず目指す必要があります。
- AIを生産工程にどのように活用するか判断できるスキル
- 工場におけるAIの学習用データを準備するスキル
- AIツールを使用できるスキル
そのためには、これまで生産技術者として培ってきた課題発見や分析、仮説検証の経験が役立つでしょう。
(2)生産技術へのAI活用には協創意識が必要
日本では、IT技術者はSIerに7割在籍しており、製造業者などを含むユーザには3割程度しかいないとされています。AIの導入事例にあるように、ものづくりに強いメーカとシステムに強いメーカとの協創・共創活動が、実際に工場の自動化などに結びついています。
製造業に在籍している生産技術者は、少なくともAIやIoTなどのITリテラシーを高めると同時に、システムに強いメーカとお互いの強みを活かすような取り組みを意識しなければいけません。そのためには、他メーカとの定期的な技術交流なども重要です。
5.AI導入の相談におすすめのメーカー・ロボットシステムインテグレータ3選
①株式会社FAプロダクツ
【特徴】
FAプロダクツは年間200台もの実績がある関東最大級のロボットシステムインテグレーターです。一貫生産体制をとっており、設計から製造までをワンストップで対応。費用・時間にムダなく最適化を行うことができます。
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テキストやお電話だけでは伝わりづらいゴールイメージを共有し、スピード感を持った対応を心がけています。
また、同社の「画処ラボ」では、画像処理を用いた外観検査装置の導入に特化し、ご相談を受け付けています。従来は目視での官能検査に頼らざるを得なかった工程の自動化をご検討の際などにご活用ください。
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「画処ラボ」ではルールベースやAIの画像処理を専門エンジニアが検証。ご相談から装置制作まで一貫対応します。
【所在地】
茨城県土浦市卸町2丁目13-3
TEL.050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
https://jss1.jp/
【営業品目】
- 産業用ロボット
- 生産設備合理化・省力化の設計及び製作
- 基板電気チェッカーや貼合・折曲など
- 治具の設計・製作
【実績】
NM社(電子部品の製造販売)、HS製作所(情報通信・社会産業・電子装置・建設機械・高機能材料・生活の各システム製造販売)、TT社(ショッピングセンターなどリテール事業)、SM社(自動制御機器の製造・販売)、OR社(自動車安全システムの製造販売)
②日立製作所
【特徴】
- ものづくりの総合メーカとして生産現場の実情に合わせたAI導入サポートが可能
- AIによる生産計画自動作成システムの導入実績あり
【所在地】
東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
TEL.03-3258-1111
https://www.hitachi.co.jp/
③NEC
【特徴】
- AI技術群「NEC the WISE」を活用し、さまざまな形態のメーカ要望に対応可能
- AIによる生産ラインの自動制御システムなど複数の導入実績あり
【所在地】
東京都港区芝五丁目7番1号
TEL. 03-3454-1111
https://jpn.nec.com/
5.AIシステムの導入に関するご相談はFAプロダクツへ
AI技術を導入したシステムや設備を導入する際には、IoTの知識はもちろん、生産設備に関する豊富な知識が欠かせません。そのため、これまで生産システムにAIを導入した経験のあるSIer企業を活用することで、導入ハードルを下げることができます。
自社でのAI技術のノウハウが蓄積されておらず、システム導入にお困りの方は、お気軽にFAプロダクツにお問い合わせください。
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