油圧ポンプとは?原理と仕組み、種類と選定方法|主要メーカ10選
油圧ポンプは、大きな力を必要とするさまざまな面で活用される設備です。
例えば、車のブレーキやジャッキ、ショベルカーや船のクレーンなどがあげられ、実は私たちの生活の中でも重要な役割を果たしています。
この記事では、油圧の原理から、油圧ポンプの仕組みや特徴を解説します。国内の主要製品も紹介しているので、油圧ポンプについて知りたい方、購入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.油圧ポンプとは?仕組みと特徴
「ポンプ」と聞くと、一般的には液体や粉体の輸送をイメージがあるかもしれませんが、「油圧ポンプ」は移送を目的とした機械設備ではありません。
油圧ポンプは装置内に「油」を内蔵し、ポンプ機構によってその油に圧力をかけ、圧力を利用してさらに大きな「力」を生み出す装置です。
ここでは、その原理や仕組み、油を使用するメリットとデメリットについて説明します。
(1)油圧の仕組み
油圧の仕組みを説明する上で、重要となる基本原理が「パスカルの原理」です。
パスカルの原理とは「密閉され液体で満たされた空間の中で、静止した流体の一部に圧力が加わると、その圧力は空間内にある流体のすべての部分に等しく伝えられる」ということをあらわす原理です。
ここで、圧力について考えます。
圧力は「単位面積あたりに加わる力」と定義されています。すべての流体で圧力が等しいということは、単位面積あたりに加わる力が等しいということです。これは、面積が大きい部分にはそれだけ大きな力が伝えられるということになります。
油圧ポンプでは、油の圧力を加える部分を細く、つまり面積を少なくすることで、少ない力で大きな圧力を与えられるようになっています。密閉された配管を通して、力を発揮させたい部分は大きく、つまり面積を広くして、伝えた圧力を大きな力として利用します。液体を輸送するときのポンプ機構を利用し、圧力を加え続けることで、その何倍もの力を生み出すことができるのです。
(2)油圧ポンプの機能と構成
油圧ポンプの機能は、次のようにまとめることができます。
●電気もしくは手動の力によって生み出す運動エネルギーを、油(作動油)に伝えることで圧力エネルギーに変換する
●その圧力エネルギーを流体の特性を活かして作動部に伝える(パスカルの原理)
●作動部で運動エネルギーに変換し仕事を得る
最初の、電気エネルギーを利用して油へエネルギーを伝える設備としてはモーターが一般的です。圧力エネルギーを伝えるのは、配管とタンク、それらの付帯するバルブなどです。最後に、運動エネルギーとして実際に力を発揮するのは、シリンダを代表とするアクチュエータと呼ばれる設備です。
これらの設備を組み合わせることによって、多くの種類の油圧ポンプが開発され、実用化されています。
【参考動画】
引用:超初心者のための油圧講座~基礎編 その1~ (youtube.com)
2.油を使用するメリットとデメリット
パスカルの原理や油圧ポンプの仕組みがわかると、次に疑問となるのはなぜ「油」を使用するのかということでしょう。ここでは、油を使用する理由(メリット)を説明し、そのうえで注意すべきポイント(デメリット)も紹介します。
(1)ポンプに油を使用するメリット
油を使用する主なメリットは以下です。
●容易に高圧にすることができる
●温度による物性の変化が少ない
●潤滑油としても機能する
●防錆性(ぼうせいせい)に優れている
●管路を増やしたりホースの長さを変えることで油圧のエネルギーの配分を容易に変えることができる
気体では高圧をかけるまでに大きな体積変化が必要になるため、その分のエネルギー効率が悪く、大きな設備が必要になってしまいます。油なら、少しの体積変化で大きな圧力を生み出すことができ、潤滑性・防錆性に優れた特徴があり、機械設備としても長寿命化が期待できます。
(2)ポンプに油を使用するデメリット(注意点)
油を使用するうえで、以下のポイントには注意が必要です。
●漏洩時のリスク(作業者の暴露・環境の汚染)が大きい
●火災に対する配慮が必要
工事現場や工場などで、まれに油漏れによるトラブルがありますが、その原因のひとつが、油圧ポンプからの漏洩です。古くなったホースに亀裂が入っていたり、継ぎ手部分のパッキンがへたっていたりすると、その隙間からポタポタと油が漏れてしまうことがあります。
作業者にかかってしまうと健康被害のおそれもありますので、早急な処置が必要です。
屋外での漏洩でも、土壌への浸透や雨水側溝を通じて河川などの環境汚染につながる可能性もあるため、油吸着マットや土嚢(どのう)を常備するなどの対応が必要です。
また、油は消防法や労働安全衛生法で定められる「危険物」に該当することがあります。
屋内で利用する場合は、部屋を防爆エリアとして、安全性の高い電気設備を使用したり、防火区画としての建築区分にしたり、通常よりも上乗せした施工が必要になる場合がありますので、所轄の官庁と十分な協議・確認を行ないましょう。
3.油圧ポンプの種類と選定方法
油圧ポンプは、油に圧力を加える部分の機構の違いからいくつかの種類に分類することができます。ここでは、油圧ポンプの種類ごとに特徴を説明し、油圧ポンプを選ぶ際のポイントについて解説します。
(1)ポンプの種類
油圧ポンプの主な種類として以下の3つがあげられます。
●ギアポンプ
●ピストンポンプ
●ベーンポンプ
以下で順に説明します。
①ギアポンプ
ギアポンプは「歯車ポンプ」とも呼ばれ、ケーシングにおさめられた2つの歯車が噛み合いながら回転するポンプです。2つの歯車が回転する際に、歯の噛み合わせ部分に空間が生じ、そこに油が入り込むことで油に圧力をかけて押し出すことができます。
ギアポンプは、駆動スピードを一定に保つことができ、一般的には、他の種類よりも安価であることが多いです。
②ピストンポンプ
ピストンポンプは、ピストンの仕組みを使った油圧ポンプで、回転しているシリンダブロック内でピストンが往復運動することで空間を作り出し、そこに油が入り込むことで油に圧力をかけて押し出すことができます。
ピストン先端は、斜板に接しながら回転しているため、斜板が回転すると、その傾きが変わり、ピストンもストロークします。斜板の傾きを調整することで、油の吸い込み、吐出量を調整することができます。
ピストンは密閉性が高いため、より高い圧力をかけられるのが特徴で、高圧をかけたいときに使われる油圧ポンプです。また、一般的には、油圧ポンプの中で高額なコストがかかる種類です。
③ベーンポンプ
ベーンポンプは、ポンプ内部にベーンと呼ばれる羽根がついている油圧ポンプで、ロータが回転することによって、カムリングととベーンとの間に空間ができ、そこに油が入り込むことで油に圧力をかけて押し出すことができます。
ベーンは、ロータの回転による遠心力と油圧力で張り出し、カムリングに接した状態で駆動します。ベーン間の空間は、カムリングのカーブによって変化します。空間が広がる部分に吸い込み口が設けられており、空間が狭まる部分に吐出口が設けられており、四分の一回転ずつ油の吸い込みと吐出が繰り返されます。
ベーンポンプは、摩耗が少ないため、騒音が少なく、異物にも強い特徴があります。ポンプとしては長寿命が期待できますが、ベーンの部分は破損の可能性があるため、定期的な点検が必要となります。
(2)ポンプ選定のポイント
ポンプの選定における、確認項目には、設置環境・作動油の種類・使用条件など色々な条件がありますが、まずは基本的な以下の項目について明確にしましょう。
●吐出圧力
●騒音
●作動油管理の厳しさ
●コスト
例えば、騒音が問題にならない使用環境で、安価な製品が必要な場合には、ギアポンプが良いでしょう。最近では、制御性や効率、サイズ(容量)などを重視し、ピストンポンプを選定することが増えています。
各メーカーで、製作しているポンプも多種多様でさまざまな技術が開発されています。
4.油圧ポンプの用途
油圧ポンプの用途は多岐にわたります。ここでは具体的な使用例を紹介します。
(1)車
最も一般的な使用例のひとつが車のブレーキです。
何トンもある鉄の塊を、ペダルを踏む足の力だけで止めることができるのは、油圧ポンプによって力を増幅させているためです。車のハンドルも同じで、ハンドルを回す手の力だけで、重いタイヤを動かすことができます。このように、車一台のなかでもいくつもの油圧ポンプが使われています。
(2)船
船での使用例でイメージしやすいものは、貨物船のクレーンとハッチです。
貨物船では、積荷をクレーンで持ち上げ、そのまま船底に入れる形のものがあります。このとき、クレーンを動かす力も、船底に運び入れるためにハッチを開閉する力も油圧ポンプを使用しています。
石油などを運搬するタンカーでは、船底にタンクがいくつも設置されており、それぞれを仕切っている弁があります。この弁には石油などの重さがかかっているため強い力でなければ開閉できず、油圧ポンプによって行なわれています。
他にも、錨の引き上げや戦艦の砲台作動、深海探索船の作業アームなど、船の中でのさまざまな用途で油圧ポンプが使用されています。
(3)建設機械・重機
工事現場で目にする重機などの建設機械は、いうまでもなく大きな力が必要です。
ショベルカーのショベルや旋回モーター、クレーン車やホイールローダーなどには、ほぼ間違いなく油圧ポンプが使用されていいます。
この他にも、飛行機や工作機械、遊園地の遊具機など、多くの場面で使用されており、近年では、油圧ロボットにも注目が集まっております。
【関連記事】
5.油圧ポンプのメーカー・製品10選
ここでは、油圧ポンプのメーカーと製品をご紹介します。
株式会社オプトン | 【特徴】 油圧サーボバルブを超える新原理の油圧制御源の油圧ポンプとACサーボモーターのハイブリッド構造です。電磁弁類は不要でシリンダーの前進・後退・推力・スピードをサーボバルブと同等以上の精度で制御できます。油温を冷却する必要もなく省エネが見込まれます。 |
株式会社リベックス | 【特徴】 構造はケース回転のラジアルピストンタイプで、正転と逆転が可能な両回転型です。メーカー独自設計により、軽量化とコンパクト化を実現しました。 ピストンの倒れモーメントを無くすことで、低速回転が可能となり、広い回転域で安定した出力が得られます。 |
株式会社日本プララド | 【特徴】 ボルトテンショナー用のエアー油圧ポンプであり、高吐出量でボルトテンショナーを連結して複数の大型ボルトを同時かつ均一に締付けすることができます。スピードの速い高吐出量型もあり、ボルトテンショナーを4台以上連結する並行締めの場合に推奨されます。化学プラントなどの防爆エリアでも使用できます。 |
株式会社日本プララド | 【特徴】 油圧トルクレンチ80MPaとボルトテンショナー150MPaの両方の圧力で使用できるハイスピード自動油圧ポンプであるため、それぞれの油圧ポンプを持つ必要がなくなります。油圧ポンプ構造の中に油圧センサーとマイクロプロセッサーが内蔵されており、油圧ポンプにホースと油圧レンチを接続して1ストロークだけ試運転をすることで、「油圧レンチの機種」「油圧ホースの長さ」「油圧ホースの膨張量」を記憶し、自動で調整することができます。 |
株式会社日本プララド | 【特徴】 液晶タッチパネルのデジタル式で直接トルク値を「1Nm単位」で入力設定・表示することができ、ボルトの締付トルク値のデータを保存、USBメモリでPCへ取り込むことができます。 クーラーが標準装備され、油温の上昇をオイルクーラーで制御し、長時間の連続運転でも過熱や油圧低下の心配がありません。 オプションにて、高所作業などで便利な無線リモコン仕様にも変更可能です。 |
ユネックス合同会社 | 【特徴】 動力源は電気と空気のどちらかを選ぶことができ、化学工場などの危険物を扱うエリアでも使用が可能です。経済的な価格と軽量設計が特徴で、2段式ポンプは軽く持ち運べるために3Lのタンクを備えています。シンプルなワンボタン制御であるため、セットアップ時間が短縮され、作業者はより速く簡単に作業を行なうことができます。 |
エヌピーエーシステム株式会社 | 【特徴】 アルミニウムを使用した低価格の軽量タイプのハンドポンプです。作業効率の良い二段吐出タイプで、オプションで圧力計を取り付けることもできます。塗装をしていないので、医薬品工場などのクリーンルームでも使用できます。 |
エヌピーエーシステム株式会社 | 【特徴】 最高圧力70MPaで、電動油圧ポンプの性能と手動油圧ポンプの可搬性を兼ね備えた、非常に軽量な小型油圧ポンプです。油圧タンクは全密閉型となっており、あらゆる方向での使用が可能です。さまざまな油圧工具との組合せが可能で、多くの用途で活用できます。 |
エヌピーエーシステム株式会社 | 【特徴】 小型高効率のエアーモーター採用により、脈動の少ない吐出を実現しております。最高吐出圧力70MPaで可変吐出式のため、シリンダー速度や位置決めが容易です。吐出口に採用したスイベル継手によりホースの向きが自在で、人間工学に基づいたデザインによって操作性が向上しました。 強化プラスチックとアルミ鋳物の採用により軽量で持ち運びが可能です。 |
株式会社日本プララド | 【特徴】 ボルトテンショナー、油圧ナット用の単動型で、最高圧力70MPa~280MPaの超高圧ポンプです。見やすい大型110mmの圧力ゲージを付帯し、自動2段切替吐出機能もあります。アルミボディのため軽量で、操作性が良く作業時間が短縮できます。 |
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