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パワートランジスタ1
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パワートランジスタとは?原理や特長、役割、種類|主要メーカー3選

電気機器を動かす回路に使われるトランジスタですが、パワー不足の場合には大容量電流電圧を流せるパワートランジスタが活躍します。
本コラムでは、半導体の基本からパワートランジスタの仕組み紹介し、パワートランジスタと位置付けられるFETやIGBTを紹介します。

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1.パワートランジスタとは

パワートランジスタ4

パワートランジスタとは、トランジスタの中でも1W以上の許容電力(動作時)のものを指します。
トランジスタ同様、パワートランジスタも半導体の一種です。
ここでは、半導体やトランジスタを確認しながらパワートランジスタについて解説します。

(1) 半導体とパワートランジスタ

半導体は、「電気を一切通さない絶縁体通電する導体の中間」に位置付けられる物質・材料です。
トランジスタやダイオードなどは半導体を材料として製造されており、一般的に半導体の一種と位置づけられています。

半導体には、n型半導体p型半導体があり、n型とp型の半導体を接合することで、電気が流れる仕組みができあがります。(図1・表)

パワートランジスタ2

半導体の種類

自由電子・正孔の数

キャリア

n型半導体 自由電子が多くわずかな正孔が見られる 自由電子
p型半導体 多数の正孔とわずかな自由電子が見られる 正孔

また、半導体には一般的に使用されるもののほかに、定格電流1A以上の大きな電流を取り扱うことが可能なパワー半導体があります。通常の半導体と異なる点は、高電圧・高電流を扱えるだけの壊れにくい構造を有することや、高温になりやすいため発熱対策が施されている点です。

パワー半導体に求められる機能は、次の3点です。
・整流機能:一方向だけに電流を流す
・増幅機能:電気信号を大きくさせる
・スイッチング機能:電気を通したり止めたりをハイスピードで行う

パワートランジスタは、パワー半導体からなるデバイスです。

(2) トランジスタとパワートランジスタ

トランジスタとは、電気の流れをコントロールする半導体素子です。

上の図1(右側)のように、トランジスタにはn型半導体とp型半導体を接合した組合せにより、npn型pnp型の2種類があります。

npn型のトランジスタは以下のように動作します。
①ベース(B)に電流が加わるとp型のキャリアである正孔がエミッタ(E)側に移動して、B-E間に電流が流れる
②p型半導体の正孔がE側に移動するとp型半導体は自由電子に変わるため、コレクタ(C)側からベース側に電流が流れ、コレクタ電流 IC が流れる
(pnp型は、npn型とは逆の動作となります。)

トランジスタに電流が流れている状態でベース電流を止めると、正孔の移動がなくなり、トランジスタに流れる電流は停止します。

以上より、トランジスタは次の2つの機能を有します。
電流を流す機能:ベース電流によって変わる
・スイッチング機能:電流の流れを、on/offする

パワートランジスタはパワー半導体を使用することで、1W以上の許容電力(動作時)を可能にしたトランジスタです。
また、パワー半導体は、ダイオード、サイリスタ、パワートランジスタに分類され、パワートランジスタは、バイポーラトランジスタ、パワーMOSFET、IGPTの3種類に分類されます。

半導体やトランジスタについては以下の動画も参考にしてください。

引用:トランジスタの仕組みとは?

引用:【パワー半導体】半導体が高速スイッチになる仕組み

2.パワートランジスタの種類と原理

パワートランジスタ1

ここでは、パワートランジスタの以下の3つの種類を紹介します。
・バイポーラトランジスタ
・パワーMOSFET
・IGBT

(1) バイポーラトランジスタ

図3では、バイポーラトランジスタについて、回路図記号を用いて紹介しています。

パワートランジスタ9

バイポーラトランジスタとは、pn接合が2つあるトランジスタです。ダイオードのようにpn接合が1つのものは、ユニポーラと呼びます。

トランジスタは、ベース電流(IB)が流れると、コレクタ電流(IC)が流れます。IB、IC、IE間の関係は、IE=IB+IC となります。
トランジスタはベース電流によるスイッチの役割を果たし、小さなベース電流により回路が閉じて、負荷に大きな電流が流れます。

大容量のバイポーラトランジスタは電流増幅率(β=IC/IB)が小さいという特徴があります。
負荷電流が必要な場合には、ベース電流を大きくする必要があります。

それを解消して、負荷電流を上げる方法が、ダーリントン接続です。
ダーリントン接続は図3のようにバイポーラトランジスタを1つ加え、その負荷電流を新たなトランジスタのベース電流として大きな電流増幅率を得るものです。

トランジスタをそれぞれ①と②として、それぞれの電流増幅率を、β1、β2としたとき、回路全体の電流増幅率βは、次のようになります。
β=β1×β2+β1+β2

例えば、それぞれのトランジスタの電流増幅率を10とすれば、全体の電流増幅率は、
β=10×10+10+10=120となって、大きな負荷電流を得ることができます。

(2) パワーMOSFET

図4は、パワーMOSFETの構造図と回路図記号を紹介しています。

パワートランジスタ8

パワーMOSFETは、MOS構造のFET(電界効果トランジスタ)です。

MOSFETは、n+n-pn+の4層構造です。「n+」はドープ密度が高く、「n-」は密度が低い層です。

MOSFETはソース(S)ドレン(D)ゲート(G)の3端子が接続されます。
ゲート(G)に正の電圧を加えると電極に近いp層の自由電子が引き寄せられ、n型となってドレン(D)とソース(S)間に電流 ID が流れます。

パワーMOSFETは、電圧で制御する素子であるため、電流のスイッチングは高速・短時間でターンオン、ターンオフ可能です。
また、抵抗による電圧降下が大きく、大電流の回路に用いると、大きな損失が生じます。
構造上、耐圧が低いという問題があり、使用する回路には制限があります。

(3) IGBT

図5は、IGBTについて構造図と回路図記号を紹介しています。

パワートランジスタ10

バイポーラトランジスタは大電流を流すことはできますが、電流によるスイッチングのためスイッチング動作を高速に行うことはできません。
MOSFETは電圧でゲートをON/OFFするため高速のスイッチングが可能ですが、構造上耐圧から、大電流を流すことができません。

IGBTは、バイポーラトランジスタとMOSFETの欠点を補い、両者の利点を併せ持ったデバイスです。
電圧駆動のMOSFETを前段に置き、大電流を流せるバイポーラトランジスタを後段に置いて組合せ、大容量の電流を高速のスイッチングで制御できるデバイスとしました。

半導体については、以下のコラムも参考にしてください。


3.パワートランジスタの特長と使用用途

パワートランジスタ7

ここでは、パワートランジスタを始めとしたパワー半導体(パワーデバイス)の特長や使用用途、課題とその対策方法を解説します。

パワー半導体(パワーデバイス)の特徴は表1の通りです。

表1 パワーデバイスの特徴

素子 特長 備考
ダイオード 半導体pn接合で、1方向だけに電流が流れる素子です。 v=0でターンオンし、i=0で単オフします。
サイリスタ pnpnの4層で構成される3端子素子です。
外部入力が無ければ双方向にオフ状態です。
バイポーラパワートランジスタ pnpまたはnpn接合の大型トランジスタです。
ベース電流によって、on/offを制御できます。
逆電圧対応に逆並列ダイオードを設置します。
パワーMOSFET ゲート電圧で、on/offを制御します。 チャネル型大型FETです。
IGBT バイポーラパワートランジスタの長点と、パワーMOSFETの長点を取り入れた素子です。 主素子がトランジスタで、作動素子がMOSFETです。
GTOサイリスタ 素子をOFFにできるサイリスタで、ゲートに負の電流を流すことで達成します。
光トリガダイオード pn接合部に光を当てて点弧ができます。
トライアック(双方向サイリスタ) 2つのサイリスタの逆並列接続により、両方向電流が流せます。 交流電力の調整が簡便となり、小型電熱器制御素子に適用。

表1のパワーデバイスで制御できる機器とその範囲を、図6にまとめました。
黒字が電気機器の名称と動作範囲を示し、赤字がパワーデバイスの名称と適用範囲を示しています。

パワーデバイスを必要とする機器は、以下のような電源や周波数の変換、ハイスピードのスイッチング機能を必要とする機器です。
・発電と送電
・電車への電源電圧変換や周波数変換
・冷蔵庫・洗濯機・エアコンなどの家電製品の電源とON/OFF制御
・産業用機械や汎用インバータへの電源
・オーディオ・DVD・照明機器・ACアダプタなどの低電力変換と高周波数変換

パワートランジスタ11

4.パワートランジスタの電力損失と発熱、その対策

パワートランジスタ5

(1) パワートランジスタの電力損失と発熱

パワートランジスタの回路には抵抗成分が含まれており、流れる電流の大きさによって抵抗の大きさに応じた熱が発生し、導通損失として電力損失が生じます。
パワートランジスタの電力損失には、ONからOFFまたはその逆のOFFからONの時にも、切り替わり時の電力損失が発生し、これをスイッチング損失と言います。

パワートランジスタの電力損失は熱として失われるため、発生した熱量に応じて半導体の温度が上昇します。
発生した温度上昇は放熱によって温度上昇を抑えます。放熱が十分でない場合は半導体の温度上昇が続き、放熱とのバランスがとれるまで温度が上がりますが、温度上昇に対して半導体が耐えられなければ破損となるため、放熱を十分に行うような対策が必要です。

(2) パワートランジスタの電力損失と発熱への対策

電力損失や発熱の対策は以下の通りです。

電力損失の対策 導通損失を低下させる方法 ・導通時の抵抗(オン抵抗)が低い半導体を選ぶ
・半導体以外の部品や基板上パターンにも抵抗成分があり、電力損失の要因となるため、半導体と同様にオン抵抗の低い部品等を選定する
スイッチング損失を低下させる方法 ・容量成分の低い半導体素子を選ぶ
・電圧の立ち上がり・立ち下がり時間を短くする
・スイッチング周波数を低くする
発熱対策 ・設計時に温度上昇範囲を計算し、信頼性試験で確認する
半導体の高効率化によって、発熱量を下げる
熱伝導率の高い材料を使用し、放熱を高める
耐高温性の半導体材料を使用する

5.パワートランジスタの主要製造メーカー3選

ここではパワートランジスタの主要製造メーカーを3社紹介します。

(1) ローム株式会社

パワートランジスタ3引用:https://www.rohm.co.jp/products/power-transistors

【パワートランジスタの特長】
・圧倒的なノイズ耐量
・パワー半導体と駆動ICを一括検証できる
・高速スイッチングかつ低オン抵抗な性能を実現

ローム株式会社が提供する600~800V定格のパワーMOSFETスーパージャンクション技術を採用しています。

スーパージャンクション技術は、高速スイッチング・低オン抵抗を実現し、アプリケーション損失の低減が可能です。
また、PC、サーバー、充電器、照明のような電源アプリケーションでは、低ノイズ仕様や高速スイッチング仕様が最適で、スーパージャンクション技術が有効です。

PrestoMOS™シリーズは、最速クラスのダイオードを内蔵した製品で、モータ・インバータの省エネ化に特化したデバイスです。エアコン、冷蔵庫、洗濯機、太陽光発電などに有効です。

(2) 富士電機株式会社

パワートランジスタ12引用:https://www.fujielectric.co.jp/products/semiconductor/power_discrete/#anchor02

【パワートランジスタの特長】
・双方向スイッチや3レベルインバータ回路を構成できる
・業界トップクラスの低損失を実現
・低IR特性

ディスクリートIGBTは、力率改善回路やDC/ACコンバータ回路に適用し、UPS・パワコン・エアコン・溶接機などに有効です。また、逆耐圧を持つRB-IGBTは、双方向スイッチや3レベルインバータ回路の構成が可能です。

SiCショットキーバリアダイオードは、高速スイッチング特性、低VF特性、低IR特性、高順サージ耐量が特徴です。
自動車用パワーMOSFETは、低損失、低ノイズ、低オン抵抗が特徴です。

(3) STマイクロエレクトロニクス株式会社

パワートランジスタ6引用:https://www.st.com/ja/power-transistors.html

【パワートランジスタの特長】
・高電圧および低電圧アプリケーション向け
・幅広い製品ポートフォリオを提供
・高効率かつ長寿命のアプリケーションに適したソリューションを簡単に見つけられる

パワー・トランジスタSTPOWERファミリは、高電圧および低電圧アプリケーション向けの広範なパッケージ・ポートフォリオと革新的なダイ・ボンディング技術を活用しています。
提供できるパワートランジスタは、耐圧100V~1700VのパワーMOSFET、耐圧300V~1700VのIGBT、耐圧15V~1700Vのパワー・バイポーラ・トランジスタなどです。

6.パワートランジスタ関するご相談は株式会社FAプロダクツ

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