放射温度計とは?原理や高精度で測定する使い方、デメリットも解説
放射温度計は、熱源物質から出される放射エネルギーを検知して、エネルギーに応じた赤外線波長から温度を1秒もかからずに検出できる温度計です。一方で、上手に使うにはいくつかのポイントがあります。
この記事では放射温度計の原理や特徴、メリット・デメリットから、高精度で測定するためのポイントまで詳しく紹介します。
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目次
1.放射温度計とは
温度計の種類は、接触式か非接触式の2つに大別されます。
以下は代表的な温度計についての比較です。
種類 | 温度計名称 | 測定範囲(℃) | 精度 | 原理 | 備考 |
接触式 | 測温抵抗体 | -200~450 | ±0.1℃ (クラスAA) |
温度により金属の抵抗値の変化を利用。 | 白金測温抵抗体 |
熱電対 | 0~1100 | ±1.0℃ (クラス1) |
異なる金属の両端に温度を与えると電圧が発生。 | R(白金ロジウム-白金) | |
非接触式 | 放射温度計 | 0~1600 | ±1.0% | 放射エネルギーが絶対温度の4条に比例する法則によります。 | 機種・メーカーごとに精度は異なる |
ここでは非接触式温度計に分類される、放射温度計について紹介します。
(1) 放射と放射温度計
図1は、部屋のストーブが点けられ、ストーブの上には水の入ったやかんが置かれ、人が冷え切った体を温めている図です。
図1から、ストーブから出る熱はがどのように周囲を暖めるかを説明します。
ストーブからの熱は、対流・伝熱・放射という3つの形態で伝導します。
・対流
ストーブの熱で温められた空気は、温められ軽くなって上昇⇒天井付近で冷えて下降⇒また上昇以下のように上昇と下降を繰り返します。
これを対流と言います。
・伝熱
ストーブの上に置かれたやかんには、接触部分から熱が伝わり、やかんのお湯が沸きます。
これを伝熱と言います。
・放射
ストーブの前に何もなければ、空気を暖めて対流となりますが、ストーブの前にいる人には熱エネルギーが直接当たり、体を暖めます。
これが放射です。
放射によって、ストーブの熱エネルギーは人の体に降りそそぎます。言い換えれば、人は、熱エネルギーを放射によって受け取っていると言えます。
放射により体を温めている人が熱エネルギーを受けて数値に表すセンサーだとすれば、この人が放射温度計と言えます。
放射温度計とは、放射により熱エネルギーを受け取り、数値に表す温度計です。
(2) 熱源が出す電磁波と放射温度計
熱エネルギーは電磁波です。
例えば、太陽から出る熱は、電磁波として地球に伝わっています。
図2の上側では、電磁波について紹介しています。
電磁波は、図のように から までの波長が含まれた波です。波長の大きさによって、紫外線・可視光線・赤外線などのように呼ばれます。
図2の下側の図は、温度の出す放射エネルギーと電磁波波長の関係のグラフです。
赤外線の範囲は約0.7μmから1mmで、放射温計はこの赤外線を検知して、温度を測定します。
ある赤外線波長から、縦線を引いて見ると、同じ赤外線波長でも、温度が高くなるにしたがって、放射エネルギーも高くなっています。
赤外線の波長と温度は、ステファン・ボルツマンの法則など、ある一定の法則によって分かります。
一方で、水蒸気や炭酸ガスは特定波長の赤外線を吸収するため、放射エネルギー量を測定する際には水蒸気や炭酸ガスの存在が障害となります。放射エネルギー測定に誤差が生じ、正しく量れません。
それに対し、図2の8~14μmの波長の赤外線の範囲は、大気の窓とも呼ばれ、水蒸気や炭酸ガスによる吸収がありません。
放射温度計の赤外線波長は、8~14μmとすれば、誤差の少ない測定が可能です。
(3) 放射温度計の原理
図3は、物体と放射エネルギー(赤外線エネルギー)の関係を示しています。
物体に放射エネルギーが放射されると、次の3つの方式で放射を受け取ります。
反射 | 放射エネルギーの一部が、物体表面で反射 |
透過 | 放射エネルギーの一部が物体に吸収されず、そのまま素通りで物体を透過 |
吸収 | 放射エネルギーの一部が、物体に吸収される |
吸収されたエネルギーは、物体から同じ量が放射されます。この放射する量の比率を放射率と言います。
放射率を1としたものを黒体と言います。黒体は、反射も透過もしない理想的な物体です。
放射率は物体により、また同じ物体でも表面の状態により異なります。
放射温度計は、物体が放射する放射エネルギーを、8~14μmの赤外線にあるエネルギー量を測定し、温度に換算して、温度測定を行います。
このときに黒体から放射されるエネルギーを計測すれば、そのまま温度として誤差のない温度測定ができますが、実際には物体は物体の持つ放射率で熱エネルギーを放射するため、例えば放射率が0.6であれば、測定する温度も0.6低い温度で検出されることになります。
そのため放射温度計は物体の放射率を補正し、黒体として放射するようにエネルギー量を補正します。補正したエネルギーは、黒体からのエネルギーとなるため、放射温度計で使用した赤外線の波長から、その波長に合った温度が測定できるのです。
放射率の値の例を、以下の表で紹介します。
表1 放射率の例
物質 | 温度 | 放射率例 | 備考 |
水 | 0~100℃ | 0.92~0.96 | - |
紙 | 常温 | 0.95 | つやの黒紙 |
紙 | 常温 | 0.70~0.90 | 白紙 |
人の肌 | 常温 | 0.98 | 体温計 |
コンクリート | 0~100℃ | 0.94 | - |
ガラス | 20~300℃ | 0.75~0.95 | ファイバガラス~パイレックス |
鉄 | 500℃ | 0.3 | 合金鋼 |
鉄 | 50℃ | 0.95 | ざらつく鋼 |
鉄 | 100℃ | 0.75 | 酸化鉄 |
放射温度計については、以下の動画も参考にしてください。
また、本記事に関連したコラムは以下の通りです。
2.放射温度計の種類と構造
(1) 放射温度計の構造
① 構造
放射温度計が測定するのは、物体の表面温度です。
図4では、放射温度計の構造を紹介しています。
放射温度計は、測定物の熱源から放射される赤外線エネルギー量を赤外線センサによって検知し、測定物の熱源の温度を測定します。
図4のように放射エネルギーをレンズで集光し、サーモパイルの中心に集めます。サーモパイルは、周囲に黒体化した熱電対が複数個直列に並べられ、高い温度計測がなされます。
また、図4の下側の図のように、放射エネルギーの範囲(面積)を熱源より大きくとると、熱源の温度に加え、周囲の低い温度も混じって平均化された放射エネルギーとなり、正確な温度測定ができません。
測定箇所は熱源の真中から熱源枠を超えず余裕ある範囲(面積内)で、集光を調整します。
② 放射率の補正方法
温度測定後には、前章で紹介した放射率を決定してから補正を入力し、正しい温度へ変換する必要があります。
放射率補正の方法は、例として、以下のように行います。
(2) 放射温度計の種類
放射温度計を、移動の可否・計測範囲・測定方法で分類します。
① 移動の可否による分類
a) 携帯式
放射温度計を手で持ち運び、必要な場所の温度計測が可能です。
b) 設置式
放射温度計を測定する箇所に設置して、連続的に温度計測します。
② 計測範囲による分類
【全放射温度計】
放射エネルギーを、全波長域で求める形式です。
全波長の計測は、全波長での検出素子や光学材料を選択することが難しいという問題があります。
そのため一般的な温度計測には向いておらず、学術的な観測という点で使われることが多いです。
【単色温度計】
単色温度計は、放射エネルギーをある波長域に絞り、温度を計測します。
第2章(2)で説明した、大気の窓に相当する赤外線領域での観測により、温度を検出します。
③ 計測方法による分類
【2色放射温度計】
異なる2つの波長の赤外線を検出し、2つの赤外線のエネルギー比を比べることで、温度を算出します。
この方式は放射率の影響をほとんど受けないため、有効であると言えますが、一方で、放射エネルギーが2つの波長で均一に変化しないということに注意が必要です。
【サーモグラフィ】
サーモグラフィは、放射エネルギーから赤外線を分析し、画像を使って温度分布を示します。これを利用した機器に、サーモグラフィカメラがあります。
サーモグラフィカメラは、放射エネルギーの赤外線の量から温度を計り、赤外線量と温度が比例関係にあることを利用し、低い温度は青色に、高い温度は赤色に、色が連続するように画像を表します。
例えば、火災現場をサーモグラフィカメラで画像に表せば、火災現場の状況を把握しやすく、その状況から、対策を講じることができます。
3.放射温度計の特徴とメリット・デメリット、その対応
放射温度計について原理や構造などについて紹介してきました。ここでは放射温度計の特徴や注意点をまとめます。
表2 放射温度計の特徴と注意点
特長・注意点 | 対応など | |
利点 |
温度測定の速度が、接触式温度計に比べて、速い。(1秒以内に計測) | 表面の温度測定しかできないため、内部の温度変化に対して表面が変化するまでに時間差がある場合は注意が必要 |
次のような箇所の測定には最適です。 ・近づけない危険場所(遠くから測定可能) ・衛生管理の必要な食品や薬品を、非接触で測定可能 |
||
水のような液体の測定は、表面の測定で正しく測れる | 液体は常にかき混ぜておくことで一定に保てる | |
動いている物体の測定が可能 | 測定ポイントを決めておけば、どのように動作しても正しい測定が可能 | |
欠点 |
周囲の物体に比べて低く測定される | ・測定対象の周囲に暖房装置などが有る場合、赤外線が妨げられるため ・ガラスのような薄い材料を測定する場合に発生する現象 |
放射温度計のレンズが汚れると、放射エネルギーが遮られ測定に誤りが生じる | ・レンズを拭く ・常時汚れる環境であれば、エアパージジャケットの利用で改善する可能性 |
|
測定箇所と温度計間に蒸気漏れのような異物があると、温度測定が不安定になる | ・異物は取り除く ・蒸気等はできるだけ避けて測定 |
|
熱源の内部の測定はできない | 内部の温度計測には接触式温度計を使用する | |
正しく温度を測るには、放射率の設定が必要 | 放射率の決定は、簡単ではありませんが、手間をかければ可能 | |
磨き上げられた金属では測定できない | 反射率の高い物体の測定はできない | |
大きい物体の表面温度の測定位置が時間とともに変わるような物体では、正しい表面温度を捕えられない | 大きい物体の場合は、測定ポイントを数カ所用意する |
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