複合加工機とは？NC旋盤やマシニングセンタ、５軸加工機との違い
昨今の資材高騰などにより、製造業において製品のコストを抑えていくのは年々、困難になっています。生産コストを抑えるため、部品の加工における効率化はより重要な要素と言えます。そのような状況の中、複合加工機を検討している企業も少なくないでしょう。
この記事では、高い加工精度を確保しながら工程集約が期待できる複合加工機( Multi-Tasking Machine）について、旋盤など他の加工機との違いや、種類と構造、導入するメリット・デメリットなどについて、分かりやすく解説します。
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目次
１．複合加工機とは
複合加工機とは旋盤加工とフライス加工をはじめミーリング、穴あけ、ねじ切り、研削など多岐に及ぶ加工を1台で行うことが出来る工作機械のことです。
手動で操作するのではなく、プログラムで加工長や加工の種類などを指示することで自動で加工を行うことが出来ます。
ワーク(加工対象)または切削工具の角度の変更、工具の種類の変更なも自動で行うことが出来るため幅広い形状の加工に対応していて、通常では複数の加工機が必要であったり、ワークを掴み変える必要がある複雑な部品も一工程で完了出来ることが最大の特徴です。
また、加工機の移動がなくなるためワークの掴み変えが減り、その際加工誤差も生じません。結果としてより高い精度で部品を切削できるというメリットもあります。
複合加工機は主に航空機・自動車・医療機器といった高い精度が求められる産業の部品加工で活躍しています。
工程や人員を集約できたり、加工精度の向上が見込めるため、今後、製造業の幅広い分野で普及していく可能性があり切削加工のスペシャリストとも言える加工機です。
【参考動画】
複合加工機については以下の動画も参考にしてください。
引用：Mazak / INTEGREX i-100H / 様々な機能をご紹介✨ / 複合加工機 /vol.27
２．複合加工機とさまざまな加工機の違い｜CNC旋盤、マシニングセンタ、5軸加工機
（1）複合加工機とNC旋盤 (CNC旋盤)の違い
旋盤は高速回転させたワークの外側(内径切削の場合は内側から)工具を当てることで加工を行います。主に丸棒やパイプの外径及び内径切削加工を行います。
NC旋盤は、旋盤にプログラムでの自動加工機能を追加した加工機です。
似たものにCNC旋盤というものもありますが、それとNC旋盤の違いはプログラム指示の与え方にあります。
NC(Numerical Control)旋盤は単純に加工長などの数値を与えるだけですが、CNC(Computerized Numerical Control)はコンピューターソフトを用いてより細かく感覚的に加工指示を与えることができます。CNC旋盤はNC旋盤の上位互換というイメージです。
ただ、CNC旋盤が主流になってきた最近ではこの2つの区別はかなり曖昧になっていて、一般的にはCNC旋盤のこともNC旋盤と呼ぶ場合が多いです。
NC旋盤には基本的に工具側を回転させる機能が無く、その部分が複合加工機と大きく違う点になります。
加えて工具を自動で交換する機能や工具の角度変更などの調整もNC旋盤には出来ません。
（2）複合加工機とマシニングセンタ(フライス盤)の違い
マシニングセンタとは主に円対称でない角材などのワークの平面に対して切削加工をするフライス盤に、プログラムによる自動加工機能を組み込んだ加工機です。
基本的には縦方向にワークを固定するテーブルがあり、上方向から高速回転する工具をあてて加工をするような構造になっています。
NC旋盤とは逆に、この加工機にはワークを高速回転させる機能がないため、旋盤のような円形の外径及び内径の切削は出来ません。
複合加工機との違いは、ワークを高速回転させる機能の有無です。
（3）複合加工機と5軸加工機の違い
マシニングセンタは加工位置をXYZ(縦・横・奥行方向)の3方向にのみ調整が可能です。
5軸加工機とはそれにワークを固定するテーブルの角度を調整する機能を追加した加工機のことを言います。
より複雑な形状の加工が行えるマシニングセンタという訳で言えます。
５軸加工機もワークを高速回転させる機能はないため、その部分で複合加工機と性能が異なります。
【関連記事】５軸加工機については、以下の記事で詳しく解説しています。
３．複合加工機の種類と構造
ここでは複合加工機の種類について、構造それぞれの構造も含め詳しく解説していきます。
（1）NC旋盤型複合加工機(ターニングセンタ)
NC旋盤型複合加工機は、ベースは旋盤と同様の構造を取り入れ、工具を高速回転できる機能を搭載した加工機です。
旋盤同様、横軸にワークを取り付ける部分があり、上部に切削するための工具が位置します。工具は加工機内に別で格納してある工具棚まで移動して自動で交換が出来ます。
加工角度は工具が取り付く軸を回転させることで調整でき、フライス加工や穴あけの際にはその軸が高速回転します。
旋盤がベースになっているため、駆動軸などの回転軸(シャフト)の加工に適していて、部品の一部に仮に平面部が存在したり、側面に穴あけが必要で、しかもその穴にネジを切らないといけないといった場合、通常であれば旋盤加工をしてからフライス盤やボール盤に持って行って加工をしなければいけませんが、複合加工機なら全て同時に行うことが出来ます。
NC旋盤型複合加工機は、次に紹介するマシニングセンタ型と比較する形でターニングセンタ型と呼ばれることもあります。
【参考動画】
NC旋盤型複合加工機については、以下の動画も参考にしてください。
引用：Mazak / INTEGREX i-100H / 様々な機能をご紹介✨ / 複合加工機 /vol.27
（2）マシニングセンタ型複合加工機
マシニングセンタ型複合加工機は、NC旋盤型とは逆にマシニングセンタ(5軸加工機)の構造をベースに、ワークを高速回転させる機能を搭載した加工機です。
上図のように縦方向にワークを固定するテーブルがあり、通常のフライス盤のように上から工具をあてる構造になっています。
旋盤のように長尺の部材の芯ブレを抑えるために、センター押さえの機構がないこと以外はほとんどNC旋盤型と違いはありません。
【参考動画】
マシニングセンタ型の複合加工機を紹介した動画を下記に紹介します。実際の動きを確認してみてください。
（3）スイス式複合加工機
スイス式複合加工機は、構造のベースはターニングセンタ型と同様で、ワークを送る機構が追加で搭載されている加工機です。送り機能のある切断機に切削加工機がついたイメージです。
主に小型の部品で使われるこちらは量産性に優れています。長めにカットした丸棒などの材料をセットすれば後は自動で先端から順番に部品を切削し、切断して材料を送って…を繰り返していくことができます。
NC旋盤型複合加工機やマシニングセンタ型複合加工機と比較すると、加工できる材料の形状やサイズに制限はあるものの、よりリードタイムの短縮を狙える加工機です。
４. 複合加工機導入のメリット、デメリット
最後にこの加工機を導入するにあたってプラスになること、逆にネックになる部分について解説していきます。
（1）複合加工機のメリット
複合加工機を導入するメリットは以下の通りです。
①工程集約による省力化、リードタイム短縮
複合加工機を導入する最大のメリットは機能を集約したことによる人員の省力化と工程を集約したことによる部品加工のリードタイムの短縮です。
旋盤とフライス盤、2つの加工機にそれぞれ人を動員していたとすれば、複合加工機を導入することで半分にすることが出来ます。
また、工程を減らせる分時間も短縮され、生産管理も容易になります。
②設置スペースの削減
加工機を集約することで、工場内のスペース捻出にも貢献できます。特に工場内のスペースが圧迫してきてるメーカーなどでは、導入することでレイアウトに余裕が生まれるはずです。
③高精度を実現
一度にまとめて加工を行えるため、ワークの掴み変えなどで否応なしに生じてしまう加工誤差を無くすことができ、より精度の高い加工を行うことができるのもメリットの1つです。
誤差が減ることにより、同じ部品を何度も製作する中で起きる個体差も無くすことが出来ます。
特に、非常に高い精度が求められる部品を製作する必要のある業界では重宝する加工機になるでしょう。
【関連記事】
（2）複合加工機のデメリット
複合加工機を導入するデメリットは以下の通りです。
①導入コスト
最もネックになるのはやはり導入にかかるコストです。
他の一般的な加工機に比べて機能も多く複雑な仕組みなため、旋盤やフライス盤単体と比べると高額になります。
自社の工場に導入するだけのメリットがあるかどうか、よく検討する必要があるでしょう。
②幅広い加工知識と制御知識が必要
複合加工機を扱うには、一定の知識が必要になります。また、プログラム制御の知識も必要なため、使いこなせる人材が限られる点には注意が必要です。
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