【図解】AI画像処理の仕組み、ディープラーニング画像認識
目次
1.はじめに
人工知能AIと言えば、将棋や碁で、プロも負かしてしまうコンピュータ技術でしょう。
コンピュータがパソコンとして普及し始めたときに、ほぼ必ず付属していたものが、ゲームソフトです。トランプや麻雀を初めとして、将棋のゲームがありました。
その頃の将棋ゲームは、ある程度の上級者であれば、負けることはなかったように思えます。それが、コンピュータの進化とともに、スマホが行き渡るころになると、将棋の上級者といえどもなかなか勝てなくなりました。それもそのはず、将棋のプロが負けるほどに、コンピュータの能力が向上したのですから。
このような力をコンピュータに与えた技術が、人工知能AIの技術です。
AI技術は、産業のあらゆる分野に浸透しています。製造業では、検査システムや画像処理にその力を発揮しています。
このコラムでは、画像処理におけるAIについて紹介します。
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2.AIによる画像認識処理の仕組み
人工知能(以下AIと略します)の技術は、次のような分野で力を発揮しています。
- 文字認識
文字検索、自動翻訳 - 音声認識
スマホによる音声会話 - 画像認識
顔認証システム、自動車の自動運転 - 深層学習
将棋や碁のゲームソフト
製造業においては特に、画像認識が大きな力を発揮します。検査装置の画像をもとに、AIが不良品の判定を行うことができるからです。
(1)画像認識とは
図1は、AIによる文字の画像認識についての紹介です。
「5」という数字文字のいろいろなパターンの入力画像に対し、AIは、「5である」という答えを出すことができます。殴り書きのような手書きの「5」や、イラスト風の「5」に対しても、正確に「5」と画像認識することができます。
(2)文字の画像認識のステップ
図2では、図1の「5」を画像認識するステップを紹介します。
- 画像前処理
入力された「5」の画像には、背景やノイズがあるため、ノイズ除去や背景除去などの前処理を行います - 「5」の特徴を抽出します。
例えば、「5」は横棒と縦棒があり、左側が解放された曲線です。 - 抽出された特徴から、他の数字「2」「3」「7」の特徴と比較し、判定処理を行います。
- 「5」と判定し、出力されます。
(3)画像から特徴を抽出し、正誤を見分ける
このように、様々なパターンの「5」に共通する特徴をAIに学習させ、正誤を判定するのが画像認識処理です。
このような認識をパターン認識などと呼びます。正解の「5」という文字と入力文字の画像を比較し、「5」かどうかの判断をくだす方法です。
この技術を応用することで、さまざまな装置の自動化に貢献しているのです。
3.ニューラルネットワークとディープラーニング
(1)AIによる画像認識の方式
前章で「5」の画像認識にAIが使われることを紹介しました。
このAIの学習方法には、ルールベース、機械学習、ディープラーニングといったものがあります。
- ルールベース
人が「5」の特徴量を教え、コンピュータが特徴量に基づき、「5」を選びます。 - 機械学習
人がたくさんの入力画像の中から「5」の画像がどれかを教え、コンピュータはそれを元に特徴量を学習し、「5」を選びます。 - ディープラーニング
複数枚ある入力画像画像から、AIが「5」の特徴量を自ら見つけ出し、「5」を選びます。この際に使われる仕組みはニューラルネットワークと呼ばれます。
(2)ニューラルネットワークとは
ニューラルネットワークは、機械学習において、画像情報の入力の手間を少なくするために開発された手法です。
図3が、ニューラルネットワークの模式図です。
ニューラルネットワークは、脳の神経ネットワークを模倣した仕組みです。
入力された情報を、学習データ層と呼ばれる層に渡し、さらに学習データ層から出力へとつなげます。各層のデータ受け渡しに「重み付け」と呼ばれる処理を行っていくことで、正しい出力が得られるよう調整します。
図2の「5」であれば、入力から横棒・縦棒・円弧・曲線といった情報を、重み付けを変えて各層に受け渡して処理を行い、正しい回答が出力されるように調整していきます。そのプロセスを繰り返すことにより、「5」という数字の特徴量を定義するのです。
ニューラルネットワークは、当時のコンピュータの能力が小さく、学習データをが多すぎると対応できないという問題がありましたが、PC機器の高性能化に伴い、次のディープラーニングに引き継がれました。
(3)ディープラーニングの方法
図4は、ディープラーニングの模式図です。
ディープラーニングは、図4の通り、学習層をさらに増やした方式で、コンピュータ性能の向上によって実現可能となりました。
より複雑な経路をたどることにより、たとえば「猫と犬の見た目の違いの定義」「リンゴとナシの見た目の違いの定義」といった「言語化できない違い」をAI自らが学習し、見分けることができるようになったのです。
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4.AIを使った画像処理
図5では、AIによる画像処理について、さらに具体的に紹介したものです。
図5は自動車や自転車などの「車」の図から、自動車の特徴量を定義し、自動車の図が入力されたときに、「自動車」と出力されるまでを表しています。
車の入力画像から、画像の前処理を施して特徴の分かる図として特徴量を定義し、入力画像が特徴量と一致すれば、「自動車」と判定します。
AIの方式によって、3章(1)で紹介したと同じように、次のような処理の方法が行われます。
- ルールベース
人が「自動車」の特徴量、タイヤ。フロントガラス、ライトなどを定義します。ルールベースは、定義に合った「自動車」の画像を認識できます。
この方法は、大量の画像があると、定義づけに対応できない問題があります。 - 機械学習
車の画像から、「自動車」はどれかということを人が教えます。機械学習は、車の特徴を量を獲得し定義し、定義に合った「自動車」の画像を認識します。
この方法は、大量の画像を扱う必要がある、人による対応の手間が増加するという問題があります。 - ディープラーニング
ディープラーニングは、入力された車の画像から、自動車の特徴量を自ら学習し、その定義に合った「自動車」の画像を認識します。
5.製造品検査-AIによる画像処理
図6は製造ラインを流れる製品から、不良品かどうかを判定し、OK・NGの判定をする検査システムのイメージです。
照明に照らされたワークをカメラ入力で撮像して画像処理処理装置に送り、画像処理とAI画像認識処理を行う流れとなっています。なお、ハードウェアの図は省いています。
図6の通り、製造品の不良として、模様が入っていること、キズがあること、リードフレームに欠けがあることが挙げられます。
こうした特徴を見分けるために、下記のような手順が取られます。
- 前処理
AI処理を行う前に、入力画像の背景除去やノイズ除去を行います。
さらに、キズの領域を拡大するといった、画像の前処理を行います。 - 特徴量定義
AIは、不良チップと正常チップの画像を比較し、不良チップの特徴量を定義します。 - 画像認識
学習した不良チップの定義にしたがって画像認識を行い、製造品がOKかNGかを判定します。
6.画像処理AIに関わるメーカー紹介
この章では、画像処理AIに係る会社の製造品や技術、事例を紹介します。また、事例から、効果などがうかがえるでしょう。
Webページを合わせて紹介していますので、詳細はそのページで確認してください。
①画処ラボ(ガショラボ)
【所在地】
神奈川県相模原市緑区西橋本5-4-30 SIC2-2314
TEL:050-3733-3774
WEB問合せ:https://gasho-labo.jp/#contact
https://gasho-labo.jp/
【特徴】
検査の自動化に伴って画像処理装置の導入する際には、複数のセンサーメーカーと複数の画像処理機器メーカーを選択し、それぞれ検査対象によって個別対応する必要があります。
画処ラボは、メーカー横断での機器選定から判断プログラムの選定及び装置の設置構想までを⼀括で提案し、設置からサポートまで⼀元管理。
さまざまなメーカーから、照明は50種類、カメラ・レンズは30種類をとりそろえており、機器や画像処理プログラムの選定だけでなく、装置の構想・設置、サポートまで、ワンストップで相談が可能です。
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②株式会社Phoxter(フォクスター)
http://www.phoxter.co.jp/index.html
【所在地】
大阪府豊中市新千里西町1-2-14 三井住友海上千里ビル6F
TEL:06-6155-6744 /
【事業内容】
http://www.phoxter.co.jp/product/preferrednetworks.html
http://www.phoxter.co.jp/product/pfn_ex.html
フォクスター社は、CCDカメラ、赤外線カメラ、照明、カメラ入力ボード、画像処理ソフトなどの画像処理装置を扱う会社です。
図はディープラーニングによる外観検査の事例です。
木目の中にある節・黒点などの不良品を検知する検査を、Preferred Networks Visual Inspectionで学習させ、判別結果を得ています。
③日本電気株式会社(NEC)
【所在地】
東京都港区芝五丁目7番1号
Tel:03-3454-1111
【事業内容】
https://jpn.nec.com/rapid/
https://jpn.nec.com/process/material/case/jsr/index.html?cid=jpntop180003
RAPID機械学習は、日本電気社の人工知能ディープラーニングを搭載した機械学習ソフトウェアです。手本となる画像を学習させて判断モデルを作成。画像のような非構造化データに対応し、高精度な画像分類やマッチングシステムを実装します。
下図はJSR株式会社に適用した事例です。
電子顕微鏡で撮像した製品画像の特徴をディープラーニングで学習し、高精度な画像認識を可能としています。
④株式会社日立ソリューションズ
https://www.hitachi-solutions.co.jp/
【所在地】
東京都品川区東品川4ー12ー7(日立ソリューションズタワーA)
TEL:03-5780-2111 (代表)
【事業内容】
https://www.hitachi-solutions.co.jp/mfigazouhantei/sp/
https://www.hitachi-solutions.co.jp/mfigazouhantei/sp/usecase/gaikan_kensa.html
日立ソリューションズ社の「画像判定トータルソリューション」は、撮影画像の解析とAIによる機械学習・ディープラーニングにより、製造現場での部品検査や判定作業の省力化・効率化に寄与します。画像分類、類似検索、動作解析、物体検知、異常監視などで効果を発揮します。
下図は、外観検査に適用したイメージ図です。
⑤株式会社ブレインパッド(BrainPad)
【所在地】
白金台本社 東京都港区白金台3-2-10 白金台ビル
【事業内容】
https://ai.brainpad.co.jp/discovery/
https://ai.brainpad.co.jp/case-study/194/
ブレインパッド社の事業は、ビッグデータ活用サービス、デジタルマーケティングサービスです。そのサービスのひとつ「+AI」は、人工知能によりイノベーションを生み出すサービスです。
図は、食品工場の製造ラインに、AIを活用することで、原材料の不良品検知を行った事例です。製造ライン中を流れる食品の画像から、良品か不良品かを見分けるルールをAIが学習。不良品の判別アルゴリズムをディープラーニングと画像処理技術を用いて構築しています。
7.AIを用いた画像処理システム導入のご相談は画処ラボへ
AIによる画像処理の高度化の背景には、コンピュータ技術やカメラなどのハードウェアの高精度化・高速化や、画像処理工学や認識工学といった理論の発展があります。
しかしその一方、ディープラーニングは2010年代に始まったまだ若い技術です。現場でその効果を十全に発揮するためには、既存技術のノウハウや成功・失敗の経験を持ち、新規技術のキャッチアップを行える専門家との協力が必要不可欠。共に事業を効率化していく良きパートナー選びが大切と言えるでしょう。
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