フェイルセーフとは?事例や目的と機能、導入のメリット・デメリット
製造現場では、設備機器を使用する作業員の労働災害リスクの低減が欠かせません。また、最終ユーザーが使用する電気機器などの製品でも、使用の際の誤作動によって重大な事故につながることがないようにする必要があります。
しかし、作業員のトレーニングやマニュアルの整備だけでは、事故リスクの低減には限界があります。そのため、作業者やユーザーの安全を守るためには、設備や装置の設計段階からリスクマネジメントを行ってシステムを構築するフェールセーフの導入が大切です。
この記事では、フェイルセーフの定義や目的、設備や装置などへの導入事例、導入するメリットやデメリットなどをご紹介します。
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目次
1.フェイルセーフとは?
ここでは、フェイルセーフについての基本的な解説をします。
(1)フェイルセーフとその目的
フェイルセーフとは、システムや装置が故障や異常の際に、安全または最小限のリスクの状態を保つために設計された機能やシステムです。
システムや装置が故障または異常を起こした際に、人命に危険を及ぼす最悪の事故や被害を防ぎ、安全な状態を維持することが目的で、特に危険や重大な損害のリスクがある場面でフェイルセーフの設計が重要になります。
例えば、エレベーターが停電で停止した場合、自動で最寄りの階に停止して扉が開くように設計されるなど、人々の安全を保護し、物的損害を最小限に抑えるために広く採用されています。
(2)フェイルセーフが導入される理由
フェイルセーフが導入される理由は、技術的な故障や人的ミスによるリスクを軽減するためです。
例えば、交通機関、医療機器、工業設備などのシステムでは、故障が発生すると重大な事故や障害につながる可能性があり、フェイルセーフが不可欠です。
フェイルセーフ機能によって故障時に自動的に安全なモードに移行したりシステムを停止させたりすることで、重大事故の発生という最悪のシナリオを防ぎます。
フェイルセーフの導入は、技術の進歩に伴いさらに重要になっており、人々の生活をより安全で信頼性の高いものにするために、不可欠な要素となっています。
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(3)フェイルセーフ設計に含まれる機能
フェイルセーフ設計では、以下のような機能を含んでいます。
機能名 | 内容 | 効果 |
冗長化 | システムの重要な部分に予備のコンポーネントやサブシステムを用意する | 一つの部分が故障した場合でも、他の部分が機能を引き継ぎ、システム全体が正常に動作し続けることができ |
自己診断機能 | システムが自らを監視し、異常や故障を検知した場合に警告を発する機能 | 早期に問題を特定し、自動停止や安全稼働を前提とした制御モードへの移行といった対処を取ることができる |
自動停止機能 | システムが異常な状態や危険を検知した場合に自動的に停止する機能 | 機械の過熱、電気系統のショート、化学プロセスの異常など、さまざまな現場の状況に合わせてシステムを安全な状態に保つために使用される |
これらの機能を備えた設備・機器の設計により、一部のコンポーネントが故障しても、システム全体が安全なレベルを維持しながら機能し続けることができます。
(4)フールプルーフとの違い
設計手法 | 目的 |
フェイルセーフ | システムが故障や異常を起こした際に、安全な状態を維持する |
フールプルーフ | システムの操作ミスや誤用を防ぐ |
フェイルセーフとフールプルーフは、どちらもシステムの安全性を高める概念ですが、フェイルセーフは故障時の安全性に、フールプルーフはユーザーの誤操作を防ぐことに重点を置いています。
また、フェイルセーフは、システムが故障や異常を起こした際に、安全な状態を維持することを目的としています。つまり、故障時の事故を未然に防ぐための安全策が組み込まれています。
一方、フールプルーフは、操作ミスや誤用を防ぐことに焦点を当てています。ユーザーが誤った方法でシステムを使用することを物理的またはソフト面から不可能にすることで、誤操作による事故や故障を未然に防ぐ設計です。
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2.フェイルセーフの導入例
フェイルセーフ設計は製造工程で使用される設備や装置、消費者が購入する電化製品などさまざまなものに導入されています。ここでは、具体的な導入事例を5つ紹介します。
(1)自動車のブレーキシステム
自動車のブレーキシステムには、フェイルセーフの設計が組み込まれています。
例えば、油圧ブレーキシステムにおいては、主系統に異常が発生した場合に備え、副系統が機能するようになっています。これにより、もし主系統に漏れや故障が生じた場合でも、副系統が作動し車両を停止させることができます。
この二重のシステムにより、ブレーキの信頼性が大幅に向上し、ドライバーと乗員の安全が確保されています。
(2)産業用ロボットの安全装置
産業用ロボットには、機械の誤動作や操作ミスを防ぐためのフェイルセーフ機能が組み込まれています。
例えば、ロボットが予定された動作範囲を超えた場合、自動的に停止する安全装置が設けられています。また、人間がロボットの動作範囲内に入った際に、ロボットが自動停止するエリアセンサーの設置も普及しています。これらの機能により、作業員の安全が確保され、機械の誤動作による事故が防がれています。
(3)フィルム製造における張力制御システム
フィルム製造工程では、搬送しているフィルムの張力の管理が重要です。機械の張力が適切に維持されないと、フィルムの厚さや品質に影響を及ぼしたり、フィルムの破断やバタつきが発生したりする可能性があります。
そのため、フェイルセーフとして張力センサーと自動調整システムが設置されており、張力が異常値になると、システムが自動で調整を行うか最悪の場合は製造ラインが停止します。
(4)発電所の冷却システム
原子力発電所やその他の発電所では、冷却システムの導入によって安全性が高められ、事故のリスクが最小限に抑えられています。
原子炉は冷却に失敗すると重大な事故につながるため、多重の冷却系統が設けられています。冷却システムの一つが故障しても他のシステムが機能を継続し、炉心の温度を安全な範囲に保つよう設計されています。
(5)電子レンジ
代表的な調理用家電である電子レンジには、過熱や火災を防ぐためのフェイルセーフ機能が設けられており、使用者の安全が確保されています。
レンジ内部の温度を監視し、特定の温度を超えると自動的に電源が切れ、発火などのトラブルを防ぎます。また、ドアが開いている間はマイクロ波が発生しないように安全装置が設計されており、誤ってドアが開いた状態で運転されないように設計されています。
(6)エスカレーター
エスカレーターには、ステップの隙間に異物が挟まったり、過度の重荷がかかったりした場合に自動的に停止するフェールセーフ機能があり、使用者の安全性が高められています。
これは、階段の端に設置されたセンサーによって検出され、緊急時には迅速にエスカレーターを停止させることで事故を未然に防ぎます。
3.フェイルセーフを導入するメリットとデメリット
フェイルセーフは、製造現場で装置を使用する作業員や電気機器を使用するユーザーの安全をシステム面から守るものですが、導入によるメリットとデメリットがあります。
(1)フェイルセーフを導入するメリット
フェイルセーフを設備や装置、製品に組み込むことで、大きく3つのメリットがあります。
①誤操作や誤作動による事故の防止につながる
フェイルプルーフを導入する最大のメリットは、作業者やユーザーの誤操作による事故を防止できることです。
リスク検知や安全機構の設置により、操作者が間違った手順を取った場合や誤った方法で機器を使用しようとした際に、システムがハードとソフトの両面からその行為を阻止します。これにより、操作ミスによる損害や危険を大幅に減らすことができます。
②メンテナンスコストが削減できる
フェイルプルーフ設計の設備や装置を使用することで、長期的な目線で考えるとメンテナンス・修理面でのコスト削減が期待できます。
設備機器の操作ミスによって破損するリスクや、稼働時の負荷などによる機器の損傷が低減されるため、修理費用や交換部品のコストが減少し、全体的な運用コストが低下します。
③作業者のトレーニング負担を軽減できる
フェイルプルーフの導入により、操作者に求められるトレーニング量や教育コストなどの負担も軽減できます。
誤操作を物理的に防ぐシステムがあれば、操作者は装置使用時に複雑な手順や特別な注意事項を覚える必要が少なくなり、より効率的で安全な作業環境を構築できます。
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(2)フェイルセーフのデメリット
フェイルセーフの導入によって、作業者やユーザーの安全リスクを低減できますが、デメリットもあります。
①コストの増加につながる
フェイルプルーフを導入する主なデメリットの一つは、設計と実装のコストが増加することです。
フェイルプルーフシステムの開発には、ベース設計に追加の工程と資源が必要であり、これが製品の全体的なコストの押し上げにつながります。特にいくつもの複雑なシステムを組み合わせた設備や機器では、安全機能を組み込むための開発費用が大きくなる可能性があります。
②安全設計の過信によるリスクが生じる
フェイルプルーフシステムを導入することで、ユーザーがシステムの安全性に過度に依存し、注意力が低下する可能性があります。
作業者やユーザーがシステムがすべての誤操作を防ぐと過信すると、使用時に安全意識が低下したり、製造現場での適切なトレーニングの欠如にもつながったりして、予期せぬ問題や事故の原因となることがあります。
③設計の柔軟性が低下する
フェイルプルーフ設計は、場合によってはシステムの柔軟性を制限することがあります。
特定の誤操作を防ぐためにソフト面での厳格な制約を設けると、ユーザーが特定の状況で必要とする柔軟な操作ができなくなり、システムの稼働効率や利便性が低下する恐れがあります。
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