ACモーターとは?原理や構造、メリット・デメリット、選定のコツ
ACモーターは家庭用電化製品、産業機械、輸送システムなど、幅広い用途で利用されています。工業分野では、ポンプ、ファン、コンベヤーベルト、工作機械など、さまざまな機械の駆動に用いられており、重要な役割を果たしている装置です。ACモーターは高い効率と堅牢性がありますが、選定に際しては特徴やメリットとデメリットを考慮する必要があります。
この記事では、ACモーターの特徴やDCモーターとの違い、動作原理や構造をはじめ、メリットやデメリット、自社に導入する際の選定ポイントなどをご紹介します。
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目次
1.ACモーターとは
ACモーターは、交流電源(AC:Alternate Current)を動力源として駆動するモーターです。交流の特性を利用して電磁場を発生させ、変動する電磁場によってローター(回転子)が回転して動力に変換します。
ここでは、ACモーターの種類や回転速度や出力の計算方法、DCモーターとの違いなどをご紹介します。
(1)ACモーターの種類
ACモーターには、大きく分けて3つの種類があります。
・整流子型モーター
・同期モーター
・誘導モーター
以下で詳しく解説します。
①整流子型モーター
整流子型モーター(コミュテータモーター)は、ブラシと整流子を使用して電流の方向を切り替える構造で、小型の家電製品に適しています。低速で高いトルクを発生させられますが、ブラシの摩耗が問題となる場合があります。
②同期モーター
同期モーターは電源の周波数に同期して回転するモーターで、速度が負荷の変動に影響されにくく、定速運転に優れます。高精度な速度制御が必要な場合や、一定の速度を維持する必要がある場合に適しています。
③誘導モーター
誘導モーター(非同期モーター)は、ステーターからの磁場によってローターに電流が誘導されることで回転するモーターで、多くの産業用途や家庭用電化製品に使用されています。構造が単純で耐久性に優れており、メンテナンスが少なく済みます。
(2)ACモーターの回転速度と出力の計算方法
ACモーターを導入する際には、回転速度や出力への理解が必要です。ここでは、回転速度と出力の理論計算式と計算事例を示します。
①回転速度
ACモーターの回転速度を計算するには、モーターの種類と電源の周波数が重要な要素です。
以下に、同期モーターと非同期モーターに分けて計算方法を紹介します。
・同期モーターの場合
同期モーターの回転速度は電源の周波数と極数に依存し、以下のように算出します。
例)電源の周波数が50Hzで、モーターが4極の場合、回転速度は以下のように算出されます。
回転速度=60×50÷(4÷2)
=1500rpm
・非同期モーターの場合
非同期モーター(誘導モーター)の場合、理論上の回転速度は同期速度と同じです。ただし、スリップの発生により若干遅くなるため、実際の回転速度を求めるには、同期速度にスリップ分を乗じます。
例えば、電源の周波数が60Hzの4極モーターでスリップが3%の場合、回転速度は次のように計算します。
同期速度=60×60÷(4÷2)
=1800rpm
実際の回転速度=同期速度×(1−スリップ率)
=1800×(1−0.03)
= 1746rpm
②モーター出力
ACモーターの単位時間あたりの仕事量(出力)は、回転速度とトルクを用いて以下の計算式で算出します。
例えば、ACモーターの定格トルクが10Nm、回転速度が1500rpmの場合、1分間あたりの出力は次のように計算できます。
出力=1500×10×2π/60
=1.57kW
(3)DCモーターとACモーターの違い
DCモーターとACモーターには以下の表のような違いがあります。どちらも特定の用途に最適化されたモデルも多数あるため、基本的な違いを紹介します。
項目 | ACモーター | DCモーター |
電源 | 交流電源 | 直流電源 |
構造 | 比較的単純 | 基本的にブラシと整流子が必要なため複雑 |
効率 | 高効率(大出力向き) | 中~高効率(小出力向き) |
速度制御 | 複雑(周波数調整が必要) | 容易(電圧調整で可能) |
トルク特性 | 定速で一定トルク | 低速時に高トルク |
メンテナンス | ブラシレス構造では比較的少なめ | ブラシ付きでは摩耗が起こるため頻度は高い |
主な用途 | 産業用途、家庭用電化製品など | 小型の精密機器、可変速アプリケーションなど |
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2.ACモーターの原理と構造
ACモーターは構造が単純で堅牢、長寿命であるため、特に大出力が必要な産業用途に適しています。ここでは、ACモーターの動作原理と構造をご紹介します。
(1)ACモーターの動作原理
ACモーターは交流電流によって生じる磁場を用いて、モーター内部の回転部分を動かします。交流電流は方向と強さが周期的に変わり、電流をモーター内のコイルに通すことで磁場が周期的に変化します。
この変化する磁場が、モーターの回転部分にある磁石を引きつけたり押し返したりして連続的な回転運動を引き起こし、シャフトを通じて機械的エネルギーとして外部に伝達されます。
(2)ACモーターの構造
ACモーターの主要な構成部品には、以下のようなものがあります。
ステーター(固定子):モーターの外側にある固定されている部分で、コイルが巻かれており、交流電流が流れると磁場を生成します。
ローター(回転子):モーターの中心部にあるシャフトに取り付けられている部分で、ステーターの磁場の影響を受けて回転します。
シャフト:ローターが取り付けられ、回転運動を外部に伝える部分です。
ベアリング:シャフトがスムーズに回転するように支える部品です。
ハウジング:モーター内部を保護し、固定するための外側の筐体です。
【参考動画】
引用:誘導電動機の仕組みとは?
3.ACモーターのメリットとデメリット
ACモーターは製造現場では欠かせない駆動装置であり、DCモーターとは違った特徴もありますがメリットやデメリットもあります。ここでは、ACモーターのメリットとデメリットをご紹介します。
(1)ACモーターのメリット
①効率が高く堅牢性がある
ACモーターは構造が単純で堅牢なため、非常に高い効率を実現します。交流電源を直接利用することで、エネルギー変換の際の損失が少なく、全体としての運用コストが低下します。
また、シンプルな構造により、耐久性が高くメンテナンスが容易なため、長期間にわたって安定した性能を維持し、修理やメンテナンス、部品交換の頻度が低減されます。
② 多様な用途での使用が可能
ACモーターは家庭用電化製品から工業用重機械、さらには輸送システムまで、小規模から大規模な用途にわたって非常に幅広く活用されています。
特に、大出力が必要な工業用途では、ACモーターの高効率と堅牢性が重宝されます。さらに、速度制御や回転方向の切り替えが比較的容易であるため、多様な操作要件に対応可能です。
③電源から直接動力を得られる
ACモーターは、DCモーターのように変換器や追加の電源装置を必要とせず、一般的な電源から電力を直接動力に変換できるため設置が容易です。
特に、電力インフラが整備されている地域や施設では追加の設備投資なしに効率的なモーター運用ができ、コスト削減だけでなく、システム単純化による信頼性の向上にも寄与します。
(2)ACモーターのデメリット
①電源に性能が左右される
ACモーターの性能は、電源の電圧と周波数の安定性に大きく依存します。電圧の変動や周波数の不安定性があると、モーターの効率が低下したり、過熱によるトラブルが発生したりする可能性があります。
電力供給が不安定な地域や電圧変動が頻繁に起こる環境では、モーターの寿命が縮まる恐れがあるため、追加の電力調整機器を必要とすることがあります。
②制御がDCモーターに比べて複雑
ACモーターの中でも、特に三相交流モーターの速度制御や逆転制御は、直流モーターに比べて複雑です。速度制御のためには周波数の調整が必要であり、インバータなどの追加機器が必要になります。
制御機器の使用はコスト増加やシステムの複雑化につながり、特に精密な速度制御が求められる用途ではデメリットとなることがあります。
③ 始動電流が大きい
ACモーターは起動時に大きな始動電流を必要とすることが多く、通常の運転電流の数倍に達することがあり、電気回路に過電流による瞬間的な負荷がかかります。そのため、電気設備への悪影響だけでなく、電力供給システムに対する負担も大きくなります。
大きな始動電流に対応するためには、電流を制限する始動装置やソフトスターターなどの追加設備が必要になることがあり、初期投資やメンテナンスコストが増加する可能性があります。
4.ACモーターを選定する際のポイント
ACモーターは堅牢性や効率が高いですが、DCモーターに比べて制御が複雑などのデメリットもあります。ここでは、ACモーターのメリットやデメリットを踏まえた上で、選定する際のポイントをご紹介します。
(1)用途に適した出力とサイズを選定する
ACモーターを選定する際には、使用するアプリケーションの要件に合わせた適切な出力とサイズの製品を選ぶことが大切です。
モーターの出力が過大であればエネルギーの無駄遣いになり、過小であれば十分な性能が得られない恐れがあります。
また、設置スペースや機械の設計に合わせたサイズの選定も必要です。特に、限られたスペースに設置したり、特定の機械に組み込んだりする場合には、サイズと形状が重要な選定基準となります。
(2)効率と耐久性のバランスを考慮する
ACモーターを選ぶ際には、効率の高さと耐久性のバランスを考慮する必要があります。
高効率のモーターは長期目線での運用コストが低くなりますが、初期投資が高くなります。一方で、耐久性が高いモーターはメンテナンスコストや故障リスクを低減できますが、効率が低い可能性があります。
モーターの使用環境や運用期間、導入コストやメンテナンスコストなど、トータルコストを考慮して最適なモーターを選定しましょう。
(3)電源条件と制御要件を確認する
自社で使用している電源の仕様、使用速度などの制御要件に適合するモーターを選定することが重要です。
特に、特定の速度制御や方向制御が求められるならば、機能をサポートするモーターが必要です。また、電源の電圧や周波数がモーターの仕様と一致しているかも確認しましょう。
適切な制御機能と電源条件の適合を確保することで、モーターの性能を最大限に引き出し、使用時のトラブルを避けられます。
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