モジュール化とは?特徴やメリット、自動車業界・製造業の具体例
モジュール化は、部品や機能を独立した単位に分割する手法であり、製造業やソフトウェア開発など様々な分野で採用される重要な手法です。
この記事では、モジュール化の概要や特徴、さらにはそのメリットや導入に際して考慮すべき事項、具体的な事例を紹介します。
モジュール化は、部品や機能を独立したモジュールとして設計・開発することを指し、分割性や拡張性などの特徴を持ちます。そのため、開発効率の向上や再利用性の増大、コスト削減など様々なメリットがあります。さらに、モジュール化を導入する際には部品共用化や設計基準の確立などの作業が必要です。
記事では、自動車製造や小売販売などの実際の事例も取り上げ、モジュール化の具体的な効果を解説します。
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目次
1.モジュール化とは
ここではモジュール化の概要と、対比した考えとして挙げられるインテグラル型との違いについて解説します。
(1)モジュール化の概要
モジュール化とは、製品やシステムを構成する部品や機能を独立した単位(モジュール)に分割する手法です。モジュール化することにより、個々のモジュールは独立して開発、テスト、製造が可能になります。
例えば、自動車のエンジンや電子機器の基板など、異なる機能を担う部品をモジュールとして設計・製造することがあります。モジュール化によって、製品開発の効率が向上し、柔軟性や再利用性が高まります。さらに、不具合が発生した場合にも、影響範囲を限定して修正が可能であり、全体の信頼性が向上します。
この手法は、製造業だけでなく、ソフトウェア開発やシステム設計にも応用され、大規模なプロジェクトの管理や効率化に役立ちます。
(2)インテグラル型との違い
モジュール化する設計構想をモジュラー型と呼びますが、モジュラー型と対比する考えとしてインテグラル型があります。インテグラル型とは、個々の部品を調整し、最適な製品を作るための製品開発の考え方です。一方、モジュラー型では部品を独立したモジュールとして設計・開発することが特徴です。この両者の違いは、製品の構築方法や部品の役割にあります。
インテグラル型では、1つの機能が複数の部品から構成されます。これに対して、モジュラー型では機能とモジュールがほぼ1対1の関係になります。インテグラル型は部品同士の相互依存が強く、調整能力が高度である一方、モジュラー型は部品の再利用性や交換性が高く、設計や製造の効率化が図られます。
日本では、自動車や精密機械などの製造業においてインテグラル型が主流であり、部品同士の調整が重視されています。一方モジュラー型は、自転車やPCなど主にアメリカ企業が得意とする分野であり、既存の部品を組み合わせて新しい製品を作り出す能力が求められます。
【参考動画】
モジュール化について、以下の動画も参考にしてください。
引用:コンピュータ産業の転換点!? マイクロソフトCPU自社開発から読み解く、 “モジュール化”と “すり合わせ”【時事解説28】|中川先生のやさしいビジネス研究
引用:企業経営理論 経営戦略⑯【製品アーキテクチャ/モジュラー型・インテグラル型等】中小企業診断士試験対策|ほらっちチャンネル|
2.モジュール化の特徴
モジュール化の特徴は、ソフトウェアから製造業に至るさまざまな分野で重要視されています。
ここではモジュール化の特徴である
・分割性
・カプセル化
・連携性
・拡張性
の4つを詳しく解説します。
(1)分割性
分割性は、モジュール化の特徴の一つであり、システムや製品を複数の独立した部分に分割する能力を指します。
この特徴によって、大規模なプロジェクトや複雑なシステムをより管理しやすくすることが可能です。各部分は独立して開発、テスト、保守が可能であり、それぞれの担当者やチームも独立して作業を進めることができます。さらに、変更や修正が必要な場合でも、影響範囲を局所化することができるため、全体の安定性や品質を維持しながら迅速な製品の改善が可能です。
(2)カプセル化
カプセル化は、製品やシステムの構成要素やプロセスを外部から隠すことを指します。
例えば、製造ライン内の各モジュールが独自の機能を持ち、外部からのアクセスを制限することで、各工程同士が影響を与えにくく、変更が必要な場合でも影響範囲を最小限に抑えることができます。このようにカプセル化された製造プロセスでは、各工程が相互に影響を受けずに独立して進行し、生産性や品質管理が向上します。
また、カプセル化によって、機密性や安全性の確保も可能であり、競合他社からの情報漏洩や不正アクセスを防ぐことができます。製造業におけるカプセル化は、効率性と安全性を両立させるための重要な手法であり、製品開発から生産までのプロセス全体に適用されます。
(3)連携性
連携性は、モジュール化の特徴の一つであり、異なる工程や装置が互いに効果的な連携をすることを指します。
例えば、自動車の生産ラインでは、ボディの組み立てや塗装などの工程が連携し、最終的に完成車が生産されます。この連携性によって、生産効率が向上し、生産ライン全体のスムーズな運用が実現されます。また、部品の供給や在庫管理といった補助的なプロセスも連携して行われるため、生産全体の効率が向上します。
連携性が高ければ、タイミング良く必要な部品や材料が供給されることで、生産計画の遅れや停滞を防ぎ、顧客への製品供給を確保します。
(4)拡張性
拡張性は、モジュール化の特徴の一つであり、システムや製品を容易に拡張できる能力を指します。モジュール化されたシステムは、この拡張性を持っています。
モジュール化されたシステムでは、各モジュールが独立して開発されており、相互に影響を与えることなく、新しい機能や機能の変更を追加することができます。このため、ビジネスの要求や市場の変化に対応するために、システム全体を再設計する必要がなくなります。また、拡張性の高いシステムでは、新しいモジュールを加えて機能を増やしやすいため、将来のニーズや要件の変化にも対応可能です。
さらに、モジュール化されたシステムは、部品の再利用性が高く、既存のモジュールを新しい製品に適用することができます。これにより、開発時間やコストを節約しながら、システムの機能や規模を拡大することができます。
3.モジュール化のメリット
モジュール化することのメリットはたくさんありますが、ここでは主に製造業に関して以下のメリットについて解説します。
・共通部品の管理
・設計情報の蓄積
・コストの削減
・品質の安定化
(1)共通部品の管理
1つ目のメリットとして、共通部品の管理ができるということが挙げられます。
製品全体をモジュール化すると、さまざまな製品やモジュールでひとつの部品を使いまわすことも可能なため、生産コストの削減や在庫管理の効率化を図れます。さらに、部品情報が一元管理できるようになるため、各モジュールの設計や生産を早急に行え、情報の一貫性や正確性も向上します。
品質は製品全体で維持しつつ、製造の効率を上げるためにも、共通部品の管理は極めて重要なメリットです。
(2)設計情報の確立
2つ目のメリットとして、設計情報が確立することが挙げられます。
モジュールのデータは保存され、新規に製品・システム等を作る際には再利用可能です。これにより、モジュールを一度開発すれば、他の製品でも簡単に使い回すことができます。例えば、製造業界では一度特定の機能を持つモジュールを設計・製造しておけば、そのモジュールを他の製品でも利用できます。
モジュール化により、設計時間の短縮やコスト削減が可能となります。また、設計情報の確立によって、過去のデータを参照し、設計プロセスの改善や最適化を行うことも可能です。
モジュール設計に関しては以下を参照ください。
(3)コストの削減
コストの削減も重要なメリットの一つです。
モジュール化によって、共通部品の活用や設計情報の再利用が可能となり、開発や製造の効率化が図られます。共通部品を活用することで、部品の調達コストや在庫管理コストを削減し、生産コストの削減に繋がります。また、設計情報の再利用によって、設計作業の短縮やミスの削減が可能となります。
さらに、モジュール化によって生産ラインの柔軟性が向上し、生産過程の効率化が図られます。製造工程の最適化や生産ラインの自動化によって、労働力の削減や生産効率の向上が実現され、製造コストが削減されます。
(4)品質の安定化
4つ目にメリットとして挙げられるものとして、品質の安定化があります。
モジュール化によって、製品の各部分を独立したモジュールに分割することで、製品の品質管理が容易になります。各モジュールごとに品質基準を確立し、検査やテストを行うことで、製品全体の品質を維持することができます。また、共通部品や設計情報の再利用によって、品質の一貫性を確保することが可能です。
さらに、モジュール化によって生産プロセスの効率化が図られ、人為的なミスや不良品の発生を減らすことができます。自動化された生産ラインや検査システムの導入によって、品質管理が徹底され、不良品の出荷を防ぐことができます。
4.モジュール化する際にすべきこと
ただ製品やシステムをモジュール化するといっても、事前に準備が必要です。モジュール化する際にすべきことの代表として、
・部品を共通しておくことや、互換性のある部品を開発する
・設計基準の確立
の2つが挙げられます。ここではこれらを詳しく解説します。
(1)部品共通化・互換性のある部品の開発
モジュール化を実現するため、部品の共通化や互換性のある部品の開発をモジュール化の際にすべきです。
製品ごとに開発担当を設定せず、モジュール単位のチームで開発を進めることで、ひとつのモジュールを複数の製品に適用可能な開発体制を整えます。部品の共通化によって、生産コストを削減し、製品の開発期間を短縮することが可能となります。
また、互換性のある部品の開発によって、製品間のスムーズな連携がされ、製品の柔軟性と拡張性が向上します。バリエーションが広がりカスタマイズも容易で、ニーズへの対応が迅速になります。
(2)設計基準の蓄積
設計基準の蓄積は、各機能のモジュールを流用可能にするために不可欠です。
各人の端末に保管されている設計情報やナレッジ、関連資料を共有することで、部門内外での知識共有が実現します。過去の情報を横断的に検索し、類似の図面や設計情報を利用することができるようになります。これにより、設計の再利用やノウハウの継承が促進され、製品開発の効率化や品質向上が実現されます。
5.自動車設計・製造におけるモジュール化の例
この章ではIT分野と自動車設計・製造を例に挙げてモジュール化によってどのような利益が生まれるかを解説します。
(1)ITにおけるモジュール化
ではまずITにおけるモジュール化について紹介します。
①開発効率(時間・精度)の向上
IT業界におけるモジュール化は、開発効率の向上に大きく貢献しています。システムやコードを再利用することで、開発に要する時間をかなり削減できます。
例えば、文字表示システムを開発した場合、それを複数のサービスや商品に利用することが可能です。1つのシステムで多様なサービスや商品の構成要素になります。
さらに、独自に部品を開発する際は、エラーを避けるために反復的な確認作業が必要です。しかし、既存の部品を利用すると、エラーの発生確率が大幅に低下します。その結果、商品の精度が向上し、信頼性の高い製品を開発することが容易になります。このように、モジュール化によってIT開発の効率性と品質が同時に向上することが実証されています。
②検査の簡易性の向上
モジュール化により、検査が簡易になります。エラー発生時には可能性のある部品をチェックしなければなりませんが、モジュール化されたシステムでは、エラーの内容から影響を受ける部品が限定され原因の特定が速まります。
そのため、検査すべき箇所が明確になり、検査にかかる時間が大幅に削減されます。部品が独立しているため、問題の特定と修正が容易になり、迅速な対応が可能です。これにより、製品の品質向上と開発プロセスの効率化が実現されます。
③エラー箇所の発見の簡易性の向上
モジュール化により、エラー箇所の発見が簡便化されます。システムのコードが明確に分割されるため、エラーが発生した箇所を特定しやすくなります。
各モジュールは独立しており、その機能が明確に定義されているため、エラーが発生した場合でも影響範囲が限定されます。そのため、エラーを特定した後の検査も迅速に行え、修正作業もスムーズに進められます。
また、各モジュールの機能が明確になることで、コードの可読性が良くなり、エラーをより早く理解できます。これにより、効率的なエラーの特定と修正が可能となり、製品の品質向上につながります。
(2)自動車設計・製造におけるモジュール化
次に自動車設計・製造におけるモジュール化について紹介します。
①セグメントを超えた「共通化」
自動車設計・製造におけるモジュール化は、異なる車種間で共通する部品を使用することを指します。従来は、車ごとに独自の部品を開発していたため、時間や費用が多くかかっていました。
しかし、モジュール化により、例えばa部品やb部品など特定の部品を異なる車種で共通して使用することが可能になります。これにより、開発にかかる時間や費用が削減されます。
また、部品の共通化により、製造工程が効率化され、在庫の最適化が実現されます。さらに、部品の共通化によって、製品のバリエーションが増加し、顧客のニーズに対応することが可能となります。
②モジュール化によるシンプルな設計と製造
自動車の制作において、モジュール化を採用することで、シンプルな設計と製造が実現されることがよくあります。自動車には様々な種類がありますが、各部分をモジュールに分割することで、設計や製造が容易になります。
例えば、エンジンやトランスミッションなどの主要な機能を個別のモジュールとして設計し、これらを組み合わせて車両を完成させることが可能です。モジュール化により、部品の交換や修理が簡単に行えるため、メンテナンスも容易になります。
また、設計や製造の段階でも、特定の機能に焦点を当てることで、詳細な工程や部品の配置を単純化することができます。これにより、製品の品質管理や生産性が向上し、効率的な生産が可能となります。
6.モジュール化の導入事例
ここでは、実際に行われたモジュール化の導入事例について紹介します。これらの事例を参考にしてあなたの職場でどういったものがモジュール化できるかぜひ考えてみましょう。
(1)デンソー・ラジエータ|自動車
1970年代、デンソー(当時は日本電装)は、自動車用ラジエータのモジュール化を推進しました。この取り組みは、いくつかの論文で報告されており、日本において本格的なモジュール化の先駆けとなりました。デンソーのモジュール化プロセスは以下のようなステップで進められました。
まず、冷却性能を維持しつつ、モジュール化ラジエータを10年間変更しないよう設計されました。これにより、冷却性能の向上と体積の50%縮小が実現されました。次に、世界中の自動車メーカーの要求に基づき、冷却性能を等比分割し、それぞれの要件に合わせてコアの設計を調整しました。そして、コアを構成する冷却チューブとフィンの種類を22種類に絞り、それぞれのモジュールを標準化しました。さらに、周辺部品もモジュール化され、製造の効率化が図られました。
この取り組みにより、従来必要だった7本の製造ラインが一貫自動生産を実現する工場に転換されました。
このデンソーのラジエータのモジュール化事例は、自動車業界だけでなく、他の部品にも展開され、デンソーの世界的な成長を後押ししました。この取り組みは、自動車部品の製造プロセスの変革と効率化において、画期的な例として挙げられます。
引用:日本機械学会誌 太田 和宏, 花井 嶺郎「フレキシブルオートメーションと設計 : 自動車用ラジエータを事例として」
(2)POSシステム|小売販売
POSシステムは、小売店舗で利用される販売時点情報管理システムの一つであり、モジュール化が活用されています。
POSシステムは、商品情報の入力や決済処理など、共通して利用される機能をモジュール化しています。そのため、複数のPOSシステムを比較すると、異なるシステムに見えるかもしれませんが、共通している部分にはモジュールが使われています。これにより、システム開発の効率化や品質の担保が実現されています。
各店舗ごとに若干の機能差分があるものの、共通しているモジュールを活用することで、開発コストの削減やシステムの保守性の向上が図られています。POSシステムのモジュール化は、小売業界における効率的な販売管理システムの実現に貢献しています。
引用:精密工学会誌 新村 猛, 竹中 毅, 上岡玲子, 蔵田武志, 大浦秀一「外食産業におけるサービス工学の導入事例」
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