工場の「見える化」とは?メリットや事例、生産効率アップ方法を解説
見える化とは、企業やその他組織において、業務の流れや問題点を目でもわかりやすくすることです。
この言葉は、岡本渉氏(トヨタ自動車株式会社)が1998年に発表した「生産保全活動の実態の見える化」という言葉が発祥と言われています。
見える化の考え方は製造現場を中心に広まっており、とくに工場現場では見える化の導入が進められています。「自社でも導入したいけど、工場の見える化を具体的にどう進めればよいかわからない」とお悩みの担当者もいるのではないでしょうか。
当記事では工場の見える化にフォーカスし、詳細や事例、実現するためのツールを解説します。
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目次
1.工場の「見える化」とは
見える化は「意志を持って(任意のタイミングで)確認を行える状態」である可視化と異なり、「意志の有無にかかわらず、リアルタイムですべての人が認知・共有可能かつ問題の改善に活用できること」です。
数値・図表・フローチャートなどを用いてより、視覚的にわかりやすくするのも有効です。
ビジネスにおける見える化は、業界・職種にかかわらずさまざまなシーンで活用されています。
例えば次のような具体例が挙げられます。
- SDGsの取り組み・省エネによるコストダウンを見据えた、経営力強化を目指すためのエネルギーの見える化
- 建設現場における区画、作業内容、熱中症危険レベル、ルールなど、安全性が関わる部分の見える化
- 業務効率化を目指した、勤怠管理や人材情報などのバックオフィス関係情報・業務の見える化
では、この見える化を工場において行うとはどういう意味なのでしょうか。
以下では、工場における「見える化」や効果、必要な準備などを解説します。
(1)工場における「見える化」とは
工場での見える化とは、工場の製造現場の業務内容、製造ラインの各種データ、在庫管理、原材料や製品の物流管理などを可視化・共有化した上で、見える化で収集した情報を活用して生産性向上や効率化を目指すことです。
状況を認識するだけではなく、見える化によって洗い出された工場の問題点や課題を解決するまでが、工場の見える化の目的となります。
(2)工場の見える化の必要性
工場の見える化に対する意識は高まっています。
現場帳票電子化ソリューションのi-Reporterを提供する株式会社シムトップスが実施した、製造業における「工場の見える化」に関する調査(n=107)によると、次の結果が出ていました。
- 工場の見える化が必要だと感じているのが86%(非常に感じている48.6%、やや感じている37.4%)と、9割近くの人が必要性を感じている
- 必要性を感じた理由には、「工場の課題や問題発見につながるから」、「生産性や品質を担保することができるから」、「無駄な業務やコストを削減できるから」といった回答が多かった
しかし一方で、工場の見える化の難しさに関して次のアンケート結果が出ています。
- 工場の見える化が達成できていると答えたのは43.0%と半数を下回っている
- 取り組みを実施しているが達成できていないと答えたのは39.0%と4割近くになっている
参考:製造業における「工場の見える化」に関する調査|株式会社シムトップス
(3)「見える化」の効果
工場の見える化を実施することで、次の効果が得られます。
- 工場業務における問題点・課題を抽出できる
- 現場の属人化・ブラックボックス化を防げる
- 情報共有による現場の活性化につながる
- 生産性向上によって収益アップ・コストダウンが見込める
順番に詳細を見ていきましょう。
①工場業務における問題点・課題を抽出できる
見える化によって業務プロセスや現場の状況が把握しやすくなるので、工場における問題点や課題を抽出しやすくなるという利点があります。
例えば、業務改善の3Mである現場の「ムリ(能力<負荷)」、「ムダ(能力>負荷)」、「ムラ(ムリ・ムラの混在。両者間を行き来している)」などを洗い出すことで、具体的な改善策を検討できます。
②現場の属人化・ブラックボックス化を防げる
工場現場では、特定の人しか持っていない技術・操作できない機械や、職場・工程ごとの独自ルールなどが定着してるケースがよく見受けられます。
こうした属人化・ブラックボックス化は、特定の人の欠勤・退職や非常時のトラブルの際に、誰も対応できなくなる可能性が出てきます。
また、引き継ぎや業務改善案の立案時には、情報不足でなかなか進められないかもしれません。
そこで見える化によって業務内容や進め方を明確にすれば、仕事のやり方や技術などを特定の人に限らず多くの人へ伝えることが可能となり、属人化やブラックボックス化を防げます。
③情報共有による現場の活性化につながる
見える化によって工場の課題や改善の方向性などを共有することで、製造現場やバックオフィス部門などに限らず、組織全体に一体感が生まれやすくなります。
同じ目標・意識を理解できることから、組織全体の活性化につながるでしょう。
また、職場改善の成果や人事評価なども見える化し方向性を示せば、従業員個人のモチベーションやエンゲージメント向上が見込めます。
④生産性向上によって収益アップ・コストダウンが見込める
見える化によって業務効率化ができれば、生産性向上による収益アップやコストダウンが見込めます。
収益アップ・コストダウンの例は次のとおりです。
- 製造機械のトラブル原因解消や作業の平準化による品質一定化などで、機械稼働率向上・ロス率低下につながる
- 無駄な作業工数の見直しによって人件費が削減できる
- 業務効率化による残業時間削減で従業員のワークライフバランスが改善され、従業員のパフォーマンスが向上する
工場の見える化による生産性向上は、最終目標の1つです。
「状況や問題が可視化されてよかった」で終わるのではなく、見える化による具体的なメリットや利益が出てこそ見える化が成功したと言えるでしょう。
(4)「見える化」に必要な準備
工場の見える化を成功させるために、必要な準備の流れを見ていきましょう。
【関連記事】生産ラインにおける見える化については、以下の記事も参考になさってください。
2.工場「見える化」の事例
工場「見える化」の事例として、製造業における「工場の見える化」に関する調査より、「Q2.あなたのお勤め先では、「工場の見える化」達成に向けてどのような取り組みを実施しましたか。(複数回答)」(n=46)の結果を見ていきましょう。
- 生産設備等の稼働情報の収集:71.7%
- カメラを使用した現場状況の把握:58.7%
- 現場帳票のペーパーレス化:56.5%
- センサーを設置して電力や温度データを収集:52.2%
- BI(データを分析・見える化)ツールの活用:43.5%
- 勤怠・工数管理システムの導入:34.8%
参考:製造業における「工場の見える化」に関する調査|株式会社シムトップス
ほとんどの企業が、新しい機械設備やシステムの導入によって見える化を達成を目指しています。
「異常が発生したときにランプを点滅させる」や「営業・マーケティング活動で集積した顧客データなどをツールを使って数値化・保存する」など、さまざまな部分の見える化が可能になるでしょう。
以下では、より具体的な工場の見える化の事例を紹介します。
【ロボコム・アンド・エフエイコム南相馬工場】
加工代行サービスや現場の自動化・ロボット化の提案を行うロボコム・アンド・エフエイコム株式会社は、2021年にロボコム・アンド・エフエイコム南相馬工場を立ち上げました。
ロボコム・アンド・エフエイコム南相馬工場は、IoT・AIを活用してデータの収集やシミュレーションを行い、工場を自動稼働させるデジタルファクトリーです。あらゆる工程・設備の状態やデータを見える化し、分析から稼働まで活用します。
当工場はAIによる自動見積り、生産設備まで連動した生産システム、デジタル上に構築された仮想生産ラインによるシミュレーションなどを実現しています。
これは稼働実績・故障率・加工時間・その他作業者のスキル別の処理時間など、さまざまなデータを収集・分析し、可視化によって改善・判断の基準にできたことが大きな要因です。
なお弊社株式会社FAプロダクツは、スマートファクトリー構築を一気通貫で実現するコンソーシアム「Team Cross FA」の幹事企業として、当工場の生産ライン立ち上げに携わりました。
参考記事:変種変量生産に対応するべく「見える化のその先」を示す ―FAプロダクツ貴田氏 インタビュー
また、工場自動化についての事例をもっと見たい方は以下の記事も参考になさってください。
3.「見える化」を実現するツールの紹介
近年では、工場の見える化を実現する方法として、IoT(モノのインターネット)などの機械的なツールを活用するケースが増えてきました。
ここからは工場の見える化を実現するために活用できるツールを紹介します。
(1)作業進捗の管理
作業進捗の管理を実現するソリューションには、「組み立て作業支援棚」が適任です。
組み立て支援棚は、「組立検査のポカミスゼロへ!」を掲げた弊社FAプロダクツが提供するツールです。作業者のピッキングや組立作業の進捗に応じて、さまざまなサポートを実施してくれます。具体的には次のとおりです。
- パソコン上で作成した作業指示書を基に、プロジェクターから照射される光とセンサーが組立作業をサポートしてくれる
- ピッキングや組立を間違えたときに、作業者が分かるように警告してくれる
- 作業者や製品などに応じて、棚のサイズや構成を自由にカスタマイズできる
- 作業指示書を複数登録できるので、少量多品種生産を行う手作業の組立ラインで多くの実用化の実績がある
- 組立作業の各手順が終わる際にサーバー側に完了信号を出すので、生産数や生産の進捗状況をリアルタイムで追える
見える化の推進や多品種少量生産への対応などを求める際には、以下ページで紹介するソリューションの詳細をぜひご確認ください。
(2)設備の稼働監視
各設備の稼働状況を監視したい場合は、既存設備の稼働監視・帳票レスを実現できる「稼働監視パッケージ」の導入がおすすめです。
当システムはプラットフォーム型ではなく、現場のPLCや接点信号を取り込み、「表示機能付IoTサーバー(HMI:稼働監視用)」「Excelアドインソフト(帳票作成用)」、既存設備への組込みを可能にする「稼働監視ソフト」がセットになったパッケージとなっています。
国内外250種類以上のPLCに対応できるので、新しい設備の導入せず既存設備を活かしたデータ収集を実現できます。監視範囲を1つの工程から、段階的に拡張することも可能です。
オプションにて、取得データをデータベース化することもでき、稼働状況を見える化したい場合に最適のソリューションと言えるでしょう。
工程のボトルネックの解析、帳票の自動作成、設備生産性の向上をお考えの場合は、こちらよりソリューションの詳細をぜひご確認ください。
(3)設備の予知保全
事前に機械設備のトラブルや故障の予兆をキャッチしたい場合は、「予知保全パッケージ」にて対応できます。
予知保全パッケージなら、FFT変換による周波数分析によって外乱振動と観測対象の振動などが混在していても検知できます。
設定した閾値を超えると、指定したメールアドレスにアラート通知するので、遠隔地でも異常の把握が可能です。
振動の見える化によって、より先回りした保全活動や生産ラインの安全・品質保全につながる高い精度の予知保全ができます。
工場の安全面向上やトラブル防止を検討するなら、こちらよりソリューションの詳細をぜひご確認ください。
4.工場の「見える化」セミナー動画公開中
現在You Tubeでは、MODE, Inc.のパートナー共催オンラインセミナーにて実施した、弊社株式会社FAプロダクツの森松寿仁による「〜見える化のその先へ〜FAプロダクツ森松氏による製造現場DXオンラインセミナー」を無料公開しています。
引用:modejapan【製造業・工場のDX】〜見える化のその先へ〜FAプロダクツ森松氏による製造現場DXオンラインセミナー。データ活用によって製造現場・工場の効率化を図るには?
製造ラインの稼働監視・予知保全や作業者の稼働状況把握など、製造業におけるDXの現状などを解説しつつ、製造業・工場向けのデジタル化についての内容をお届けしています。
見える化を見据えたIoT導入や、データ活用による製造現場の効率化などを検討する担当者様は、ぜひ一度ご視聴ください。
5.工場の「見える化」ならFAプロダクツにおまかせ
工場の見える化やスマートファクトリー化についてご検討であれば、FAプロダクツへぜひご相談ください。
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