トレーサビリティとは?意味や重要性を事例や図を用いて徹底解説
工場で生産していると、途中で製造品が本当にこれでいいのか?という疑問が出ることがあります。
そのようなことが起こると一旦製造ラインを停止し、問題の製造品が〇か×かを判断することになります。しかも、その判断ができるまで生産ラインが停止することになります。
さらに、これまで作った製造品についてもさかのぼらなければならないという大問題にまで発展することにもなりかねません。
製造工場でそのような事態が発生しないように、もし発生してもすぐに解決できるようにした仕組みがトレーサビリティといえるでしょう。
このコラムではトレーサビリティについての概要とポイントなどを紹介していきます。
もし、トレーサビリティのコンサルティングを受けて、
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目次
1.トレーサビリティとは
トレーサビリティとは、あるデータやある製造品が、確かなものであること、すなわち、信頼できるかどうかを補償する仕組みです。
トレーサビリティには、
・計測データの信頼に関するもの
・製造品の品質・信頼に関するもの
があります。もともとは計測データの確かさを補償するためのトレーサビリティが計量法が施行された当時からありました。
2000年ごろに企業のコンプライアンスの問題を解決する手段の1つとして、ISO9001の導入が図られ、その中にトレーサビリティの仕組みを構築することで、製造品の品質と信頼性を向上させることが必須条件となりました。
ISO9001では、トレーサビリティについて次のように書かれています(参照 JIS Q 9001:2015)。
1) 測定のトレーサビリティ(7.1.5.2項目)
・測定器は国際計量標準又は国家計量標準に対してトレーサブルである計量標準に照らして校正若しくは検証を、定期または使用前に行うこと。
2) 製品・サービスのトレーサビリティ(8.5.2項目JISQ9001)
製品及びサービスを確実にするために、アウトプットを識別する適切な手段を講じること。また、製造及びサービスを提供する全過程において、監視及び測定の要求事項に対し、アウトプットの状態を識別すること。
アウトプットの識別を管理し、トレーサビリティを可能とするために、必要な文書化情報を保持すること。
以下に、トレーサビリティに関する動画をご紹介します。
5分でわかる食品トレーサビリティの第一歩
引用:https://www.youtube.com/watch?v=N9EbOwkGxDI
よくわかる!「計量トレーサビリティ」
引用:https://www.youtube.com/watch?v=yAIfXU50dew
トレーサビリティシステム導入で何が出来る?
引用:https://www.youtube.com/watch?v=mTHtjpNnboQ
このコラムでは、製品・サービスのトレーサビリティについて紹介していきますが、はじめに、「トレーサビリティとはこんなもの」ということがわかりやすい、計測に関するトレーサビリティについて紹介します。
2.計測のトレーサビリティ
例えばノギスで製品の長さを測ることを考えてみましょう。
ノギスで測った値が、正しい(許容差にある)のか?と聞かれたときに、即座に大丈夫ですと答えたとします。それは何でそう言えるの?と問い直されたとき、何と答えるでしょう。
正解は、「このノギスは規定に定められた校正期間周期で校正をし、正しいことが検査証明書によって証明されています」と答えることでしょう。
長さに限らず、証明に使う全ての計測器や標準液や標準ガスは、校正用基準器で校正されている必要があります。
昔は長さの原器が世界に1台あり、その1台から基準器を製作して、必要な国家に1次標準器として配布されていました。今は、長さの単位が光の速度で定義され、それをもとに国家の基準器又は一次標準器が製作され、それをもとに長さの計測がされています。
実際には、校正すべき計測器は何十万台とあって、1台の国家一次標準器だけで校正することはできません。そのため、1次標準器から二次標準器を製作して、必要機関(例えば県の検定所など)に配布すればよいのですが、それでも数多くの計測器には対応できません。
そこで、2次標準器から、「実用標準器」という3次標準を作成し、校正機関に配布し、校正機関が企業の持つ計測器を校正します。
計量トレーサビリティの体系は図1のようになります。
図1から、ノギスによる計測結果が正しいという証明は、直接的にはノギスの校正証明書と校正データになります。
そのため、ノギスを校正した上位の標準器の校正が有効期間内に実施され、さらに上位の標準器も適正に校正されていることが必要です。
そして、ノギスに対する社内規則通りに校正が実施されている記録が必要です。
このように、ノギスで測った長さの値は、トレーサビリティ体系に基づいて、信頼されるデータとなります。
3.製造品のトレーサビリティ
第1章でISOに定義されるトレーサビリティについて紹介しましたが、簡単に言い換えると以下のように説明できます。
トレーサビリティとは、製造品が材料の調達から加工・組立を経て流通・販売されて消費者の手元に届くまでの履歴がわかるように、仕入・製造・販売のどの工程でも記録が追記・明確となって、製造品がどの段階にあっても履歴が証明できるようにすることです。
(1)製造工場の製造イメージ
図2では、製品が材料から製品になって消費者に届くまでの工程のイメージを図に表しています。
図2を簡単に紹介すると、
- 製品は部品Aと部品Bから組立て製造されます。
- 部品A、Bは納品エリアに貯蔵され、受入検査後に製造ラインに回されます。
- 部品の加工ラインでは、部品A、Bともに組立前の加工がなされます。
- 部品A、Bの加工後に、製品組み立てラインに送られて、製造品として組立工程に入ります。
- 組立が終了し保管される前に、製造品としての検査が実施されます。
- 組立が終了すると、製品の貯蔵・出荷エリアに保管されます。
- 販売計画に基づいて顧客に納品されます。
トレーサビリティシステムが確立されていれば、「製品Xがどの部品を使っていつ製作されて製作時の問題はなかったか」を調る際、製品Xの管理番号を指定すれば即座に必要な情報が得られます。
(2)トラブル対応へ必須のトレーサビリティ
図2の製造体系で次のようなトラブル例が起こることは、よくあることです。問題はいかに早く解決し、今後、同様の問題を決して生じさせない対策を講じることで、そのためにトレーサビリティが重要になります。
問題には、次のような例があります。
・トラブル1 顧客に納品した製品が破損などの事故が起きた問題。
・トラブル2 組み立て後の検査で、仕様と異なる製造品が発見された問題。
このような問題が生じたときは、問題が生じた上流の工程に何らかの異常があると想像できます。
- トラブル1の場合は、製造工程だけでなく、部品納入メーカーも交えた受入、製品の保管状態や出荷の管理状況、顧客の製品使用方法まで原因追及が必要です。さらに、社内の人を含めた管理体制まで社会的に問われる大きな問題となる可能性があります。
- 一方、トラブル2であれば、製造方法か原材料に問題があると、ある程度絞った原因追及で問題解決が図られる可能性があります。
製造品に問題が生じたときにすぐに原因を調べるためには、製造に関わった全ての材料・組立品・完成品・受入・出荷などの情報が個別に開示できるようにしてあることが大切です。その仕組みこそが、トレーサビリティです。
例えば、トラブル2のような製品仕様と異なるものが出た場合には、材料A、Bの情報、製造ラインでの加工や組立品の情報、検査した器具の情報、製造に関わった人の情報が、すぐにわかります。
(3)製造業のトレーサビリティ体系イメージ
図3では、部品納入から製品出荷までの製造工程のトレーサビリティのイメージを紹介します。
材料や製造中間品、製品などの情報はそれぞれに打ち込まれたタグから、トレーサビリティ情報データベースに、いわゆる5W1H(いつ・誰が・何を・どこで・どのようにした・その理由目的など)方式の内容が書き加えられ、誰でも参照が可能です。
これらの1つ1つの情報は個別に管理されていますが、全体として見たときに図3のように階層構造とともに互いの関係が明確になる事でトラブルの要因を絞り、最終的には原因を探し出すこととどこまで波及しているかがわかるため根本対策をとることができます。
材料Aに問題があるかどうかについては、材料Aを納入するA社が同様な品質管理体制を取っているため、A社に確認するだけで材料Aの信頼性を確認できます。
納入品に関しては信頼性が取れた会社、例えばISO9001を取得している会社の製品を納入するようにすれば、各社ごとにトレーサビリティは確立されていて、納入品の信頼性は確保できます。
ただし、納入品の納入・検査・保管のトレーサビリティを確立する必要があります。
トレーサビリティ用のタグは機器に貼り付けられた製造番号、ICチップ、レーザーマーカー、カメラで読み取る方式など、色々なものがあり、現場に合ったものを選ぶことができます。
4.トレーサビリティの分類について
トレーサビリティについては、コラム記事や書籍では次のような言葉で分類されています。簡単にご紹介しましょう。
(1)チェーントレーサビリティと内部トレーサビリティ
①チェーントレーサビリティ
材料や部品の納入から加工、流通、納品までを製品ごとに履歴を追求できる状態にあることです。製品を納入した人が、この製品はどこで作られたのか、C工場で製作した製品は今どこに有るのか、などの情報管理をしたい場合に使われます。
チェーントレーサビリティは、C工場でXX日YY時からZZ時まで製作された製品を回収する必要があるようなときに利用でき、即座に情報を得ることが可能です。
②内部トレーサビリティ
C工場において、製品Dはどの材料が使われ、どのラインで加工・組立がなされ、検査結果はどうだったか、今はどこに保管されているか、あるいはどこに納品されたのか、など1つの製品に対してトレーサビリティを追求します。
内部トレーサビリティは、製品Dに欠陥が見つかったため、原材料から製造工程、さらに保管までの製品の検査データのチェックだけでなく、関連する機械や人までチェックすることで、製品Dの欠陥原因と波及する製品の割り出しなどに利用できます。
(2)トレースフォワードとトレースバック
①トレースフォワード
トレーサビリティ情報を元に、製品の部品から納品までの足跡を時系列として追うことです。この方式は、製品の部品に不具合が出た場合に、製造の始めから納品までをトレースすることで、部品異常に対する製品回収などが可能です。
②トレースバック
納品からさかのぼって、製造品がどの工程で異常を生じたかを特定することです。納品した製品に不具合が生じたときに、製造の部品から製造工程までをさかのぼってトレースすることで、不具合の原因が特定することが可能です。
5.トレーサビリティを活用している業界の紹介
トレーサビリティを取り入れている業界は、製造業界のみならず、あらゆる分野の業界で取り入れられており、業界ごとの独自の信頼性確保のシステムを構築しています。
以下のいくつかの業界の例では、規格や規則または法文にトレーサビリティを規定して、何かが起きたときに対応がスムーズに行くよう規定しています。
また、この規格を自社の規格の中に取り入れている企業は、簡単にその業界の企業間の取引が成立しやすくなります。
(1)自動車業界
IATF16949:2016 自動車の製品・サービスの不具合を無くす品質マネジメントシステム規格です。
AIDC完成車物流適用ガイドライン RFIDによる完成車物流規格です。
(2)医療関連業界
医薬品へのバーコード表示
医薬品販売包装単位へのGS1データバー表示
医療機器へのダイレクトマーキング
(3)半導体業界
SEMI7 二次元マトリックスコードシンボルの両面研磨ウエハ裏面マーキング仕様
SEMI E47.1 300mmウエハ搬送および保管用FOUPの機械仕様
SEMI M31 300mmウエハ搬送および出荷用フロントオープニング・シッピングボックスの機械仕様
SEMI E99 キャリアIDリーダ/ライタ機能標準—概念・挙動・サービス仕様
(4)食品業界
食品衛生法—–販売先の名称などの情報の素早い提供
JAS法———–表示情報が記載された書類の保管
法人税法、所得税法—–税申告者に対する帳簿書類の整理と一定期間の保存
6.おすすめトレーサビリティの実施製造業
第6章では、トレーサビリティを使っている企業、トレーサビリティ・システムを提供する企業をご紹介します。多くの企業がありますが、サンプルとして数社を紹介します。
(1)株式会社日本マイクロシステム
【所在地】
鳥取県米子市夜見町2947-3
TEL:0859-46-0883
【営業品目】
・電子・電気機器および情報機器の設計・製造・販売
・トレーサビリティシステム
・ファームウェア開発
・計測用検査システム
・マイクロ水力発電
・技術者派遣
【トレーサビリティシステムの特徴】
https://www.jpms.co.jp/products_service/products/trace/
・製品・生産途中品・部材等には全て固有のIDを付与し、各工程の作業開始と作業終了の日時や作業者等の情報をデータベースで管理し、固有IDを元に必要な情報の管理を行っています。
・また、各工程での製造品の生産数のような生産情報・検査情報と連動させ、生産管理の支援システムとして運用も可能です。
・機能には、次工程不良流入防止、工程飛び防止、トレース検索、その他さまざまな機能があります。
・図はトレーサビリティシステムの概要図です。
(2)オムロン株式会社制御機器事業部
【所在地】
京都市下京区塩小路通堀川東入
075-344-7000
【営業品目】
センサ、スイッチ、セーフティ、リレー、コントロール、FAシステム機器、
モーション/ドライブ、ロボティックス、省エネ支援/環境対策機器、電源/周辺機器
【トレーサビリティシステムの特徴】
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/traceability/
工程の初めから完成まで、品質管理には途切れが無く進め、品質向上・リコール追跡・歩留まり向上などへの対応を進めています。また、「個体管理」と「群管理」をシームレスにつないで、部材の入荷から製品の出荷まで、途切れることのないような生産が必要です。
オムロンでは、このようなトレーサビリティシステムを支えるための機器を用意し、トレーサビリティによる品質管理を支えています。(下図参照)
(3)東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
【所在地】
東京都中央区八重洲1丁目3番22号
TEL:(03)3548-9500
【営業品目】
・生産管理システム、ICT/IoT関連ソフトウェア及びプラスチック・複合材料成形シミュレーションソフトウェアの開発・販売・保守
・電子機器の設計・製造・販売・据え付け・保守・消耗品の販売
・工場管理・生産管理システム、計測分析装置、成形シミュレーションシステム、業務用プリンタの製作販売
【トレーサビリティシステムの特徴】
https://www.toray-eng.co.jp/tds/product/tonops/ton_030.html
原材料入荷から製品出荷までのデータ一元管理し、トレーサビリティを実現しています。また、GMPやCSVなど各種規格への対応に実績があり、高度な管理が必要となる医薬業界や化粧品業界などでの活用実績があります。
トレーサビリティシステムは、トレースフォワードやトレースバックが可能で、不良製品ロットの特定や異常発生の原因究明に役立っています。
図は、トレーサビリティシステムの仕組みの説明図です。
出典:トレーサビリティシステム丨東レエンジニアリングDソリューションズ
7.トレーサビリティに関するご相談はFAプロダクツへ
製造工場であれば、製造品を作ることが目的であって、目的を達成するためには低コスト・高信頼性・高効率での運営などが求められます。
また、製造品には、製造途中での製品異常のトラブルや、出荷して顧客に納入後に不具合が生じるなど、異常状態が発生します。
そのような異常状態は直ちに原因を特定し全社一丸となって対処する必要があり、一歩でも遅れれば、企業としてのダメージが大きくなることを避けられません。
そのために、製造工場の品質管理が重要であって、商品一つ一つがいつでもその履歴や個別仕様が、材料入荷から顧客に商品が渡った後も常に最新情報で管理されなければならないでしょう。
それに貢献する仕組みがトレーサビリティですが、同じような商品でも、トレーサビリティの仕組みは企業ごと、生産工場ごと、工場内の商品ラインごとに皆異なります。
そのため、商品ごとに合ったトレーサビリティ管理方法を構築する必要があるでしょう。
今回の記事ではトレーサビリティシステムを構築するために欠かせない、センサーやタグ記録、検査記録の記録や保管などのについて触れることができませんでした。これらは多くの種類があり、製品の置かれる状況や環境に応じて最適なのものを選ぶ必要があります。
FAプロダクツでは、いろいろな製造現場で、製造品の信頼性とトレーサビリティを構築するために色々な業種・環境でのメーカー選定から設備の導入まで実績が多数あります。また、FAプロダクツがシステムパートナーを務める沖電気株式会社の「プロジェクションアッセンブリーシステム」の提供を通してを支援しております。
トレーサビリティ構築については、お気軽にFAプロダクツへご相談ください。
【特徴】
FAプロダクツでは、いろいろな製造現場で、製造品の信頼性とトレーサビリティを構築するために色々な業種・環境でのメーカー選定から設備の導入まで実績が多数あります。また、FAプロダクツがシステムパートナーを務める沖電気株式会社の「プロジェクションアッセンブリーシステム」の提供を通してを支援しております。
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