産業用ロボットの特別教育とは?法律体系と教育内容、費用を解説
労働安全衛生法では、従業員が安全かつ健康に働けるように、特定の業務に対して「特別教育」の実施が義務付けられています。
産業用ロボットを取り扱う業務に対しても特別教育が必須であり、産業用ロボットの導入サポートやメンテナンスを行う会社はもちろん、導入先で実際に使用する作業員は、安全に作業を行うための教育を受けなければいけません。
本記事では、産業用ロボットの特別教育の内容や費用相場、従業員が社外研修を受ける前に準備すべきこと、特別教育を実施しているメーカについて紹介します。
もし、どこで特別教育を受けさせようか迷っている場合は、ぜひFAプロダクツの「Robodemy(ロボデミー)」をご活用ください。
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目次
1.産業用ロボットの特別教育とは?対象や不備があった場合の影響
ここでは、産業用ロボットの特別教育について法的な根拠を明確にしながら解説します。
(1) 産業用ロボットの特別教育とは
産業用ロボットの特別教育とは、事業者が作業員に対して、産業用ロボットに関する特定の講習を受けさせ、作業員に必要な知識や技能を習得させることです。
IoT技術の発展に伴う工場のFA化や生産効率の向上を目的として、国内外のメーカが産業用ロボットを導入しています。産業用ロボットの導入を行うメーカやSIer、現場で産業用ロボットを使用する作業員は、リスク回避のために組まれた特別な教育を受ける必要があるのです。
「特別教育」については労働安全衛生法をはじめとする法令等で規定されています。
以下の図2では、その要点を解説しています。
厚生労働省は労働者の安全を守るために、事業者に対して『労働安全衛生法第59条』で、対象業務の安全衛生に関する「特別教育」の実施を義務付けています。
また労働安全衛生規則第36条では危険・有害な業務として41項目が指定され、実施すべき特別教育の内容がそれぞれ規定されています。
さらに、特別教育の具体的な講義内容や時間配分については、安全衛生特別教育規定で示されます。(産業用ロボットについては、規定の第18条と19条)
特別教育が終了すれば、第37条にあるように、氏名と教育内容を記録として3年保存の義務があります。
また、協働ロボットについては以下の記事で解説しています。
産業用ロボットのリスクアセスメントについては以下の記事で詳述しています。
(2)特別教育の受講対象者
産業用ロボットに関する特別教育は、『安全衛生特別教育規程』によって以下のような作業に従事する人の受講が定められています。
・ロボットの設定や「ティーチング作業」などを行う、「教示等」の作業担当者(同第十八条)
・ロボットの動作確認や修理・調整などを行う、「検査等」の作業担当者(同第十九条)
なお、労働安全衛生規則第36条にある、「産業用ロボット」「教示等」「検査等」は、法文では以下の通りです。
(a) 産業用ロボット
可変シーケンス制御装置、固定シーケンス制御装置を含むマニプレータと記憶装置を有し、記憶装置の情報に基づき、マニプレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回動作、これらの複合動作を、自動的に行うことができる機械を「産業用ロボツト」と言います。
(b) 教示等
産業用ロボットの記憶装置の情報に基づき、マニプレータその他の産業用ロボツトの各部が動くことができる最大の可動範囲内で、産業用ロボットに行うマニプレータの動作順序、位置、速度の設定、変更および確認のことです。
(c) 検査等
産業用ロボットの可動範囲内において行う、教示等を除く産業用ロボットの検査、修理、調整、結果の確認のことです。
また、労働安全衛生規則第36条の産業ロボットの特別教育は、産業ロボットに関わる人が対象で、ロボットの研究や大臣が決めた機械(ロボット)については、この法律は適用されません。
大臣が決めた機械については、図2の労働省告示51号で規定されています。
法規上の受講対象者は上記の通りですが、製造現場では現時点でロボットとは関係のない業務に携わっていても、急な変更も珍しくありません。
急な配置替え、人手不足による応援要請など、特に人の少ない現場では良く起こります。
製造現場の従業員には、あらかじめ全員にロボット特別教育を受けさせておくことも検討すべきでしょう。
(3)特別教育に不備が指摘された場合
図1では、特別教育で不備があった場合に、法律的に工場運営にどのような影響がでる可能性があるのかを解説しています。
(個々のケースによって変わります。あくまでも可能性です)
産業用ロボットによる事故が起きた場合、対応は図1のように進められ、産業用ロボットを使っていながら特別教育がなされていない人がいたり、その他の労安法に反する事項が発覚すると、工場の操業の停止命令が出る可能性があります。
操業停止となると、再発防止策や設備改造など、もう事故は起きることはないという報告が労働基準監督署に承認されるまで工場の運営が禁止されます。
産業用ロボットの特別教育については以下の動画も参考になります。
【必要不可欠】今後増加していくロボットの操作に必要な特別安全教育について解説!【需要増】
引用:https://www.youtube.com/watch?v=raqriM0VN8o
産業用ロボット 特別教育 in 福岡
引用:https://www.youtube.com/watch?v=uwb_aFubsLc
2.産業用ロボットの特別教育の内容や費用相場
産業用ロボットの特別教育は、自社に研修科目がない場合は関係機関や教育を行っているメーカなどで受講しなければいけません。ここでは、特別教育の具体的な内容や受講に際しての費用相場などを紹介します。
(1)教育内容と時間
特別教育の内容については、『安全衛生特別教育規程』で定められており、学科教育と実務教育に分けられています。
学科教育は座学が中心であり、産業用ロボットの種類や仕組みから作業に関連する法令について学びます。実技教育では、実際に産業用ロボットを使用しながら操作や検査などの作業を体験して学習します。
特別教育に要する時間については、最低学習時間が定められています。ただし、あくまで必須の学習時間であり、研修を行う機関やメーカによって実践的なスキルを学ぶ追加のカリキュラムもあるため、時間設定は異なります。
①教示作業に関する教育内容
<学科教育>
科目 | 範囲 | 最低時間 |
産業用ロボットに関する知識 | 産業用ロボットの種類、各部の機能及び取扱いの方法 | 2時間 |
産業用ロボットの教示等の作業に関する知識 | 教示等の作業の方法 教示等の作業の危険性 関連する機械等との連動の方法 | 4時間 |
関係法令 | 法、令及び安衛則中の関係条項 | 1時間 |
<実技教育>
科目 | 時間 |
産業用ロボットの操作方法 | 1時間以上 |
産業用ロボットの教示等の作業方法 | 2時間以上 |
②検査作業に関する教育内容
<学科教育>
科目 | 範囲 | 時間 |
産業用ロボットに関する知識 | 産業用ロボツトの種類、制御方式、駆動方式、各部の構造及び機能並びに取扱いの方法 制御部品の種類及び特性 | 4時間以上 |
産業用ロボットの検査等の作業に関する知識 | 検査等の作業の方法 検査等の作業の危険性 関連する機械等との連動の方法 | 4時間以上 |
関係法令 | 法、令及び安衛則中の関係条項 | 1時間以上 |
<実技教育>
科目 | 時間 |
産業用ロボットの操作方法 | 1時間以上 |
産業用ロボットの検査等の作業方法 | 3時間以上 |
(2)費用相場
産業用ロボットの特別教育の費用相場は、教育実施者によってはもちろんカリキュラムの内容や日数によっても異なります。学科だけを実施する場合もあれば、保守技能まで学べるセットコースなどさまざまですので、詳細については各教育実施場所に問い合わせましょう。
主な教育場所 | 例 | 費用相場 |
労働基準協会連合会 | 静岡県 | 1.5万円ほど(学科2日) |
愛知県 | 3万〜4万円(3日間) | |
民間の教育機関
(一般社団法人など) |
一般社団法人 HCI-RT協会 | 2万9,000円〜3万5,000円 |
産業用ロボットメーカやSIer | 安川電機 | 4〜5万円ほど(2日間) |
ファナック | 5.5〜11万円(2〜4日間) (高い理由は通常の特別教育以外にメーカー独自に技術講習も含むためです) |
|
アスカ株式会社 | 5万5,000円(2日間) |
なお、産業用ロボット製造メーカの場合、ロボット導入事業場は学科教育コースを無料で受講できることもあります。
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(3) 社内の人が講師になるケース
しかし、ロボットを数台入れて製造現場を操業している事業場であれば、ロボットに詳しい人、設計レベルやプログラミングが行える人などがいるはずです。
その人たちを講師として、学科と実ロボットを使っての実技を行えば、数万/一人のコスト低減ができるでしょう。
(4) ロボットインストラクタを育成する
社内で他の事業場も含め、ロボット特別教育を受ける人が多く、今後も新入社員・転入社員も増える会社もあるでしょう。
それを考えれば、ロボットインストラクターの資格(民間資格)を持つ人を、社内に何人か置くという方法もあります。
インストラクター資格を取る費用は1人4日間で10数万円くらいです。
3.産業用ロボットの特別教育を受けられる具体的な場所
産業用ロボットの特別教育を受けられるのは、労働基準協会連合会や産業用ロボットの製造販売を行っているメーカ、SIerなどさまざまです。ここでは、特別教育を実施しているメーカを3社紹介します。
ほとんどのメーカーは、特別教育を行っています。形態は、ロボット購入事業場へのサービス、座学講習会など、さまざまあります。
多くの台数の産業ロボットユーザーなら、講演者の工数分の支払いは必要ですが、メーカーから人を出すように話を出してはどうでしょうか。協力的なメーカーなら、答えてくれるはずです。
(1)株式会社FAプロダクツ
【特徴】
・年間200台もの装置導入実績がある関東最大級のロボットSIer
・工場のFA化のためにロボットだけでなく画像処理技術などの知見も豊富
・産業用ロボットの導入経験を生かした特別教育サービスを実施
【実技のご紹介】産業用ロボット特別安全教育サービス「Robodemy(ロボデミー)」
引用:https://www.youtube.com/watch?v=1NZuIfQPrIk
【特別教育サービス内容】
株式会社FAプロダクツ(JSS)では、産業用ロボットの教示作業について2日間で学べる「Robodemy(ロボデミー)」を実施しています。「Robodemy(ロボデミー)」の強みは以下の4つです。
1.学科だけでなく実技も受講できる
2.ロボットSIerとして30年培った知見を提供
3.講師は現役のエンジニアで最新ノウハウが学べる
4.工場・倉庫のロボット導入を支援
教示・検査ともに学科はオンデマンドでの開催もあるため、学科をオンラインで受講して実技のみ対面での受講も可能です。費用はカリキュラムによって異なり、2万2,000円〜3万8,500円のプランがあります。
【所在地】
〒300-0847 茨城県土浦市卸町2-1-1 LABOLABO
TEL.050-1743-0310(代表)
FAX.050-3156-2692(代表)
(2)株式会社ロボットテクニカルセンター
【特徴】
・ロボットメーカの髙丸工業株式会社とSIer企業の株式会社ジーネットが連携
・ロボットスクールの開催やロボット導入コンサルティング、導入トライアルを実施
・近畿経済産業局から「異分野連携新事業分野開拓計画(新連携)」に認定
【特別教育サービス内容】
「RTC兵庫」「RTC東京」にて、安全特別教育コースや安全特別教示コース、基本一日コースなどの産業用ロボット講習を実施しています。産業用ロボットシステム導入から、設計や製造などさまざまな業務の教育を提供する施設です。
産業用ロボット特別教示コースの費用は、2日間の日程で3万3,000円です。
【所在地】
〒662-0925 兵庫県西宮市朝凪町1-50
JFE西宮工場髙丸工業内
TEL.0798-38-9250
FAX.0798-38-1919
https://www.robotec-center.com/
(3)松栄テクノサービス株式会社
【特徴】
・産業用・協働ロボットの設備設計をシステムとワンパッケージで提案
・SIerとして工場のFA化などロボットの導入・メンテナンスをサポート
・教育事業としてTPM達成のためのスペシャリスト育成講習会を実施
【特別教育サービス内容】
産業用ロボット教示等の特別教育セミナーを、静岡県や愛知県で定期的に開催しています。2日間の日程で開催しており、受講費用は3万2,000円(2022年時点)です。学科修了者を対象に、実技セミナーのみを開催することもあります。
【所在地】
〒480-1153 愛知県長久手市作田2丁目909番地
TEL. 0561-63-0261
FAX. 0561-63-1597
https://www.shoeitechno.co.jp/
4.産業用ロボット特別教育の受講前にしておきたい準備
産業用ロボットの特別教育は、社外での研修を受ける場合がほとんどで、社員の成長には欠かせません。ここでは、特別教育を社員に受講させる際に、事前に準備すべきことを説明します。
(1)習得スキルに合わせてカリキュラムを選ぶ
産業用ロボットの特別教育は、最も基礎的な内容ならば労働基準協会連合会が開催しているような最低限必要なカリキュラムで習得できます。
しかし、ロボット技術の最新動向についての知識習得や、プログラミングや各種機能について学ばせたいならば、産業用ロボットメーカやSIerが主催している特別教育の受講が望ましいでしょう。自社の事業戦略に合わせて、社員育成の観点からカリキュラムを選ぶことが重要です。
(2)対象社員に学習目的を伝えてフォローアップする
産業用ロボットの特別教育は、該当業務に携わる場合は受講必須です。社員の目的意識がなければ学習効果が落ちます。個人の学習効果が落ちる・やる気がないなら、仕事を辞めさせるべきでしょう。
また、社員の成長のために研修終了後はフォローアップを行い、追加での技術研修受講や実地経験の機会を与えるなど、キャリアプランも明確にしておくことが必要です。
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(3)コストを把握する
産業用ロボットの特別教育を行う企業や団体、受講する科目はもちろん、日数によっても費用が異なります。労働基準協会連合会などが主催する2日間のセミナーで、最低限の教育を受けるならば3万円程度で済みますが、ファナックなどのメーカが行うカリキュラムの中には、11万円ほどのものもあります。
ただし、これは特別教育の内容以上の専門知識・技能を向上とした教育のためです。
そのような特別教育を選ぶかは、会社の人材育成の方針によります。
特別教育には、対象の社員が数日実務から離れるため、他の社員への業務負担の増加も発生します。
仕事の調整を考えてカリキュラムを組みましょう。
なお、「人材開発支援助成金」は特別教育が産業用ロボットの仕事をするための教育で、特別な人材育成の教育ではないため、当然適用外です。
5.産業用ロボットの特別教育に関するご相談はFAプロダクツへ
産業用ロボットの特別教育は、ロボットのティーチングやメンテナンス業務を担当する従業員は受講が義務付けられています。
特別教育は、労働基準協会連合会や各種メーカなどが行っていますが、習得できるスキルには差があり、最新のロボット技術の動向なども合わせて学習することが望ましいでしょう。
FAプロダクツでは、これまでの産業ロボットの導入実績をもとに「Robodemy(ロボデミー)」という特別教育講習を実施しています。実技講習では、ファナック株式会社や三菱電機株式会社、川崎重工業株式会社など主要メーカのロボットを取り扱っています。産業用ロボットの特別教育の受講先にお悩みの方は、お気軽にご連絡ください。
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【営業品目】
- 産業用ロボット
- 生産設備合理化・省力化の設計及び製作
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NM社(電子部品の製造販売)、HS製作所(情報通信・社会産業・電子装置・建設機械・高機能材料・生活の各システム製造販売)、TT社(ショッピングセンターなどリテール事業)、SM社(自動制御機器の製造・販売)、OR社(自動車安全システムの製造販売)
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